直後のロシアワールドカップ予選の初戦北アイルランド戦では、すでに化けの皮がはがれつつあったのだが、先週の土曜日のドイツ戦と、今日のアゼルバイジャン戦で、チェコ代表は悪い時期から抜け出せていないことが明らかになってしまった。十月の試合に関しては、けが人が多すぎるという事情もあるのだけど、ドイツ戦はもちろんのこと、アゼルバイジャン戦も試合開始直後を除けば、勝てそうな気配は感じられなかった。
ハンブルクで行なわれたドイツとの試合は、2007年にまだブリュックネルが監督だったころに、下馬評を覆してチェコが3対0で勝利したのと同じ会場だというので、少し期待してしまった。ドイツが圧倒的に優勢だろうという戦前の予想は同じだが、あのときはチェコ代表が得意とするヨーロッパ選手権の予選であった。
今回の二試合に関しては、ダリダが怪我で出場できなくなった時点で味噌がついていたわけだが、その後練習中に、ハンブルクでプレーしたことのあるドロブニーと、スパルタのフリーデクが、怪我をして欠場を余儀なくされた。ドロブニーは腕の骨折で、フリーデクは足をつき損ねて膝を怪我したらしい。すでに手術も終わったが、同時に今シーズン終了も決定した。つまり、怪我の回復時間とリハビリ期間を計算するとすでに今シーズン中の復帰は不可能だろうということだ。
今年のヨーロッパ選手権もシーズン終了間際に起こした脳震盪のせいでメンバーから外れたし、スパルタがインテルに勝った試合でも、ヘディングで競り合った際に顔から落ちて交代していたように、怪我が、それも不運な怪我が多い選手である。いろいろなポジションでプレーできるので監督からすると使いやすい選手なんだろうけど……。スラビアで活躍しかけたミラン・チェルニーみたいにならないことを祈ろう。
追加で招集されたメンバーには、驚かされた。スラビアのズムルハルとシュコダは、ある程度予想できたにしても、完全に忘れられていたロシアのトムスクでプレーするドロパは、スポーツ紙なんかの専門の記者にとっても意外な名前だったようだ。数年前にオストラバでプレーしていたのは覚えているけど、実はスロバーツコの出身で、十代半ばにスパルタに移籍してU19のチームのキャプテンを務めるまでになっていたが、チャンスが与えられなかったためにオストラバに移籍して、一部リーグにデビューしたらしい。その後、ポーランドとルーマニアのチームを経て今年からロシアリーグにステップアップしたのだという。
ヤロリームを評価すべきところは、こういう忘れられた選手たちにまで目を配って、召集することを恐れないことだ。ドイツからポーランドに移籍したフロウシェクと、ポーランドで活躍したけれどもスパルタに戻れずイスラエルに行ったバツェクについては、スポーツ新聞などで名前が挙がっていたけれども、ドロパについては、ルーマニアにいたことも、ロシアに移籍したことも報道されていなかったから、本人も含めて驚きだったに違いない。他にも、まだ隠し玉がいそうな気がする。
それはさておき、二試合ともひどい試合だった。予選開始以来一点も取れていないのは、チェコとキプロスの二チームだけだというから、攻撃陣しっかりしろと言いたいところなのだけど、試合を見ていると気になるのは、攻撃よりも守備である。攻撃はドイツとの試合でも、何回かおしいと思うようなシーンを作り出せていた。後は冷静に決めるだけというか、運がよければ一試合に一点ぐらいは取れるだろう。相手ゴール前での落ち着きと運のなさが今の代表の一番の攻撃面での問題である。
守備のほうは、相手ボールになったときに、マークに着くところまではいいのだけど、相手選手との距離がありすぎてフリーでプレーさせているのとあまり変わらない。相手チームが前に出てくるのに合わせて、みんな同じように下がるので、ゴール前にたくさんの選手がいても、ペナルティエリアの境界当たりで相手をフリーにしてしまって、いつ点を取られてもおかしくないような展開になってしまう。北アイルランドとアゼルバイジャンは、ミスしてくれたので何とか引き分けたけれども、ドイツとの試合は、3点で済んでありがたかったと言いたくなる。
アゼルバイジャンは、守備に人数をかけて引いて守っていたが、ペナルティエリアに近づくとボールを持った選手にきっちりついてパスを出しにくくするようなことはしていた。チェコもそれぐらいのことをやれば、ドイツに北アイルランドのほうが手ごわかったなんて言わせずに済んだだろうに。近づきすぎて抜かれることを警戒しているのだろうか。チェコの選手は相手をレスペクとしすぎたなんて言うけれども、言葉を飾らずに言えば怖がっているだけである。恐れを知らぬチェコ代表が見たいぞ。
とにかく、守備がゆるくて相手ボールになったら相手がミスしない限り、確実にゴール前まで到達されてしまうというのは、見ているほうにとっては心臓に悪い。もう少しボールを取りに行くような守備、相手選手にプレッシャーをかけるような守備をしないと、かつてのように強豪と言われるチームと互角以上の試合をするのは難しくなるし、格下相手にも引き分けどころかあっさり負けてしまうこともあるだろう。
結果は出ていないけれども、監督のヤロリームを強く批判する気はない。これまで代表と縁のなかった選手たちを呼んで、呼ぶだけではなく実際に試合に出場させて、試行錯誤しているのは、今回の予選が駄目だったとしても、将来に向けて大きな意味のあることである。試行錯誤の場であるべき親善試合一試合で予選に突入せざるを得なかったのは、監督の責任ではない。
二試合とも試合開始直後に攻めようという意識が見られたのも、評価していい。ドイツとの試合でも最初の3分ぐらいまでは、相手陣内で試合を進めていたわけだし。その後、守備の不安定さに足を引っ張られるように、攻め込むのがうまく行かなくなるのは、点を取られたドイツとの試合でも、取られなかったアゼルバイジャンとの試合でも大差はなかった。
所詮チェコはワールドカップの予選は苦手なのだから、ベテランに頼って、中途半端な成績を残すぐらいだったら、一気に若手に切り替えて、次のヨーロッパ選手権の予選を目標にしたほうがいい。その点で、新しい選手を招集することをためらわないヤロリームは、適任であろう。今回のシクのようにU21やU19の選手を何人かA代表に引き上げて戦力として育て上げることができれば、次のヨーロッパ選手権は期待できそうな気がする。
ブリュックネル以後、ブルバ以前の監督は親善試合でも、あまり新しい選手を試さず、どんな試合でも怪我人が出ない限り同じ選手ばかりで新鮮味がなかったけれども、ヤロリームの代表は負けても、勝てなくても、何かしら発見があるので、今後もベテラン優先のメンバー固定に走らない限りは、ロシアになんか行けなくても監督は交代させないでほしいものである。
10月13日10時。
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