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2017年04月21日

チェコサッカー界の薬物汚染(四月十八日)





 もうかなり昔のことになるが、プルゼニュがチェコリーグで優勝して、チャンピオンスリーグの本戦に出場していたときのこと、チャンピオンズリーグの試合の後のドーピングの検査で陽性反応が出た選手がいたというニュースが流れた。陽性反応が出た薬物が、筋肉増強剤などの運動能力を高める薬やその痕跡を消すための薬ではなく、コカインだった覚醒剤だったかの麻薬が検出されたという話だった。
 その選手は、ディフェンスの中心選手だったビストロニュで、二年間の出場停止処分を受けて、チェコサッカーの一部リーグからは姿を消した。その後、出場停止処分が解けた後、オロモウツが二部に落ちたときに、契約して二部で復帰したところまでは知っているが、現在どこのチームでプレーしているのかは知らない。
 ヨーロッパの社会は、麻薬の密売は厳しく取り締まるが、末端の使用者には寛容なところがあって、このビストロニュも、サッカー選手として出場停止処分を受けただけで、特に麻薬の使用で警察の捜査を受けたとかいう話は聞こえてこなかった。

 それで、今回麻薬がらみでスキャンダルになっている選手たちも、本人が麻薬の使用で摘発されたのではなく、摘発された麻薬の密売人の裁判で証人として名前が挙がっているだけである。
 一人は、ヤブロネツで活躍して、トルコを経てプルゼニュで去年の夏までプレーしていたバニェクである。現在はロシアのウファに所属しているのだが、昨シーズンの終盤の時期に、友人である麻薬の売人からコカインなどの麻薬を購入していたと言うことのようだ。逮捕された売人は、麻薬は売ったのではなくてあげたのであって自分もバニェクからもらったことがあると証言しているらしい。警察が売人の携帯電話を盗聴した記録にも登場してくるようだし、バニェクが麻薬を手に入れていたことは確実だと言えそうだ。
 だかららと言って、バニェクが警察の捜査の対象になったり、チームから契約を解消されたりと言うことはなさそうだ。ドーピングの検査で引っかかったわけでもないので、ヨーロッパのカップ戦での出場停止処分もなさそうだし、ロシアリーグでもないだろう。あるとすれば、チェコのサッカー協会が、何らかの罰を科すことだけど、どうなるかな。

 もう一人の事件に巻き込まれた選手は、プルゼニュに移籍して以来伸び悩みの感も強いコピツである。こちらは麻薬を買ったとかもらったとかいう話ではなく、売人に50万コルナ、だから200万円ほどの金を貸したらしい。しかも、知り合ったばかりの相手にである。バニェクの紹介だったからなのか、高い利子をつけるといわれたのか、軽率な行動であることは否定できない。
 こちらも、知人にお金を貸すこと自体は犯罪でもなんでもないので、警察沙汰にもならないだろうし、チームからの処罰もなさそうだ。この辺りのあんまり考えていなさそうなところが、コピツの伸び悩みの原因かもしれない。イフラバで活躍し始めたときは、怪我で成功できなかったけれども彗星のように現れてドイツに買われていったピラシュの後に続くんじゃないかと期待したんだけどなあ。

 この事件を受けてプルゼニュは、昨年秋のヨーロッパのチャンピオンズリーグの予選、ヨーロッパリーグの試合の際のドーピング検査の結果を公表した。UEFAの公式の検査で陽性反応は出ていないのだから、麻薬の常用者はいないということなのだけど、筋肉増強剤などの本来のドーピング用の薬物と比べて、麻薬は体内から使用の痕跡が消えるのが早いので、ドーピング検査を逃れるのは簡単だという話もある。
 プルゼニュは近年毎年のチャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグの最低でも予選には出場しているため、チェコのチームの中では最も頻繁にドーピング検査を受けているチームではあるのだけど、バニェクが麻薬を手に入れたといわれる昨年の五月ごろは、すでにヨーロッパリーグで敗退していたから、ドーピングの検査もなかったはずである。

 この件で、プルゼニュで麻薬の使用が常態化しているとは思いたくないが、イングランドでコカインを購入しようとしてゴシップ誌をにぎわしたチェコ人選手もいたし、麻薬が予想以上にスポーツ選手たちの間に広まっているのかもしれない。ヨーロッパのカップ戦に出場しないチームはドーピングの検査を受けることはほぼないと言うから、よほどのことがない限り発覚することはなさそうだ。酒や賭け事もそうだけれども、薬でせっかくの才能を開花させきらないままに消えていく選手が出てこないことを祈るのみである。
4月19日23時。




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