こういう情報を手にすると、言語学の人だったら、ラテン語起源の言葉が、スロバキア語とかスラブ系の言葉だけじゃなくて、ドイツ語なんかの別の言葉ではどんな扱いを受けているのだろうかなんてことを考えて、あれこれ調べるのかもしれないが、こちとら外国語はチェコ語ひとつでおなか一杯の人間である。自分では調べる気になれない。だからと言って知りたくないと言うわけではないので、情報をお持ちの方に教えてもらえるとありがたい。
自分で調べようかなと思うのは(思うだけだろうけど)、外来語である「drama」の格変化で語幹を拡張する「t」が現れてくるのと、外来語だとは思われない「ku?e」型の名詞の格変化に「t」が現れるのに関係があるのだろうかということである。「drama」も「ku?e」も中性名詞で、中性名詞については、まだ復習をしていないので、久しぶりにチェコ語の文法について真面目に書くことにする。
チェコ語の勉強を始めて最初に出てくる中性名詞は、「o」で終わるものである。「m?sto(町)」「místo(場所)」のどちらかに最初に出会うはずである。いや「nádra?í(駅)」という可能性もあるか。とまれ、中性名詞の第一回は「o」で終わる名詞である。
単数の変化は以下の通り。
1格 m?st-o
2格 m?st-a
3格m?st-u
4格m?st-o
5格m?st-o
6格m?st-u/-?
7格m?st-em
中性名詞はどれも1、4、5格が同じ形をとる。そして、中性名詞の硬変化で、2格が「-a」で7格が「-em」となるのは、男性名詞活動体硬変化と同じである。これらの覚えやすいところを覚えてしまえば、あとは困ったときの「u」で何とかなる。6格は「 -e」「-?」になることもあるけれども、「-ko」で終わるものなど「-u」しか取れない名詞もかなりあるのである。1、4、5格を除けば男性名詞活動体の硬変化と同じだと言ってもいい。
複数はちょっと違う。
1格 m?st-a
2格 m?st-
3格m?st-?m
4格m?st-a
5格m?st-a
6格m?st-ech
7格m?st-y
複数1格が、ということは4格と5格も、単数の2格と同じだというのは、女性名詞の硬変化と共通する。2格で語尾が消えるのも女性名詞的で、「m?sto」は「st」で発音しにくくはないのでそのままだが、二つ以上の子音で終わる場合に、例の出没母音の「e」が出てくるものがあることを忘れてはいけない。例えば「divadlo」の複数2格が「divadel」になるが如きである。この辺は名詞から形容詞を作るのにもかかわってくることがあるので、しっかり覚えておいたほうがいい。「divadlo」から作られる形容詞は、発音上の問題もあるのだろうけど、「divadelní」になるのである。
その一方で、3格、6格、7格は男性名詞と共通の語尾になる。6格で語尾の前に来る子音によっては子音交代が起こって、語尾が「-ích」になるのも、男性名詞の硬変化と共通する。こういうのに気づくと名詞の文法上の性の中性とは、男性と女性の間であることの謂いだったのかと納得してしまいそうになる。問題はそれがわかったからと言って覚えるのが楽になるというわけではないところにある。
中性名詞というのは、数が少ないこともあって、ついつい男性名詞、女性名詞を優先してしまい、覚えるのを後回しにしてしまうところがある。だから、この一番基本的な中性名詞である「o」で終わる硬変化だけは、正確に使いたいのだけど、現実というものはままならぬものなのである。
2017年11月12日14時。
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