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2018年06月30日

ワールドカップ雑感(六月卅日)




 チェコテレビがハーフタイムにプラハのスタジオから放送した番組で、アナウンサーと解説者たちが、ポーランドが1-0で勝って、コロンビアも1-0で勝ったら、イエローカードで決まるんだなんて話をしていたのだが、さすがにそんなことにはならないだろうと、前半は日本もそれほど悪くなかったし、話によればコロンビアのほうが劣勢だったらしいから、考えていた。解説者たちもそうなったら面白いけどねえと冗談交じりの話だったのだけど、現実にこんな事態が発生すると予想していた人はいるのだろうか。
 こんな他人事めいた感想を漏らすのは、サッカーでも日本代表よりもチェコ代表を応援するようになってひさしいからなのだが、チェコ代表があんなプレーをしたらどんな反応をするだろうか。個人的には、監督がブリュックネルだったら賞賛するし、ブリュックネル以外の監督だったら批判してしまうだろうと思う。ブリュックネルであれば、勝っても負けても酷い試合になっても、最終的な勝算があってあえてやっているのだと信じることができたのだ。それに対して他の監督の場合には打つ手がなくてああなったと理解して、ぼろくそに批判していただろう。監督とチームに対する信頼感というものがブリュックネル時代とそれ以外では雲泥の差なのである。

 今大会、ドイツがグループステージで敗退して大騒ぎになっているけれども、韓国に負けて敗退が決定したのは確かに意外である。ただ、敗退自体はすでに主審とビデオ審判に助けられたスウェーデンとの試合で決まっているはずだったのだから、それほど意外でもない。むしろ意外なのは2004年のヨーロッパ選手権のことを思い出す人がいないように見えることである。
 あの時、大会前のチェコは悲観的だった。ドイツとオランダと同じ組に入れられて、いかに監督がブリュックネルとはいえ、2002年のワールドカップの予選で惨敗したチェコが、ドイツとオランダのどちらかを押しのけられるのか、期待はしていても懐疑的な人が多かったと記憶する。自分自身も第二戦でオランダ相手に、今でもチェコ代表と言えばこれというぐらい語り草になっている大逆転劇を演じて勝ち抜けを決めるまでは、最後の試合でドイツに負けて終わりじゃないかと思っていた。
 それが、二戦目で勝ち抜けを決めてしまったのである。その後、ブリュックネルはドイツ戦にほぼ全員控え選手を出すというあからさまな戦力温存策にでて、一度はオランダを絶望させるのだが、チェコの控え選手たちがドイツに勝ってしまったのだ。やはりブリュックネルというのはとんでもない監督だったのだ。こんな実績があるから、ブリュックネルでだめならどうしようもないというあきらめもついたし、ブリュックネル以後のチェコ代表の低迷ぶりを見ると監督の存在の大きさというものを感じてしまう。あの頃は特にいい選手たちが集まっていたというのは、その通りだけれども、当時の控え選手と今の代表選手の比較なら大差はないと思う。

 そこで、疑問なのは、ワールドカップでフルメンバーの韓国に終了間際に点を入れられて負けたのと、ヨーロッパ選手権で勝ち抜けを決めて負けてもいいチェコに、それも控え選手ばかりのチェコに、先制はしたものもあっさり逆転されて完敗したのと、ドイツにとってどちらが大きな衝撃だったのだろうか。アジアに負けたということで韓国になるのかなあ。
 チェコ的に大衝撃だったのは、2004年の好結果を受けて、久しぶりに出場を決めた2006年のワールドカップで、好成績を上げるのはもちろん、優勝を期待する声さえあった中で、一試合しか勝てずに敗退したことだった。ファンもマスコミも天狗になっていたのだよ。ブリュックネル以降のチェコ代表は、抜け殻のようなもので、最近は試合を見ていちいち腹を立てるようなこともなくなってしまった。2016年のヨーロッパ選手権の予選の段階ではちょっと復活したけど……。
 それに比べれば、日本代表のファンは幸せである。ワールドカップへの出場を決めたチームを批判するだけでなく、グループステージを勝ち抜けを決めてなお批判の対象にできるのだから。それは、ワールドカップ前の親善試合でオーストラリアに惨敗したチェコ代表に、しょうがねえなあという感想しか持てず、正直どうでもいいやと思ってしまった人間にとっては、ものすごくうらやましいことである。
2018年6月30日0時22分





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