クビトバーが2016年の12月にプロスチェヨフの自宅で強盗に襲われ、ナイフで利き手の左手を切られたという話は、事件が起こってすぐ書いたはずである。その後、治療とリハビリを経て復帰したのが、事件から半年ほど後、去年のフレンチオープンでのことだった。それでこれまで二回優勝と相性のいいウィンブルドンで優勝したら出来過ぎの物語が完成すると期待も高まったのだけど、復帰したばかりで普段以上に調子が安定せず、あっさり敗退したのだった。
負傷から一年以上を経過した今年、いわゆるグランドスラムの大会では早期敗退が続いていたけれども、ウィンブルドンの前哨戦となる芝のコートでの大会では負け知らずのまま、ウィンブルドン本戦を迎えたことで、去年以上に期待は高まった。ランキングも再び上げて来て、トップ10に復帰した後、プリーシュコバーを抜いてチェコで一番ランキングが高い選手にも返り咲いたのである。
しかも、ウィンブルドンが始まる前に、クビトバーを負傷させた強盗犯が逮捕されたというニュースも流れたのである。これはもう大団円としての優勝しかないと、流れはクビトバーの優勝に向かっていると思ったのだけど、こういうところであっさり負けてしまう安定感のなさがクビトバーなんだよなあ。調子がいいときには、それこそ最強と言っても過言ではないぐらいの強さを発揮するのだけど……。だからこそ、見ている側としては応援したくなるというのもあるのかなあ。次にウィンブルドンで優勝するまで、クビトバーの復活の物語は続いていくことになる。
ところで、捕まった犯人については、ウィンブルドンの前にクビトバーが警察に出向いて、確認をさせられたという報道もあって、やっと捕まったというのと、犯人を再び目にしなければならなかったのとどちらがクビトバーの精神状態に影響を与えたのか気になるところである。犯人を逮捕した後の拘留期間の関係もあったのだろうが、ウィンブルドンの後に回していたらと思わなくもない。
これまでの報道で把握している情報によれば、犯人は家宅侵入、窃盗の常習犯で、特にクビトバーを狙っての犯行ではなかったらしい。この手の言わば行き当たりばったりの強盗は、犯人が捕まりにくく警察もいつまでもかかわっていられないので、二三ヶ月で犯人を逮捕できないままに捜査を中止してしまう。犯人が判明するのは別件で現行犯で逮捕された場合に余罪を追及した結果というのが多いようである。だから、去年事件から半年後にクビトバーが復帰したときに捕まっていなかった時点で、この事件の犯人は捕まらず、数年後に偶然逮捕された人物が実はクビトバーの事件の犯人だったということになるのが落ちだろうと予想した。
しかし、この事件に関しては警察はあきらめることなく、事件未解決のまま捜査を中止することなく、犯人逮捕に至った。捜査の主体をになったであろうプロスチェヨフの警察署としても、市内在住の人々の中でも最重要と言えるクビトバーが選手生命の危機にさらされるような怪我をさせられた事件を解決できないというのは、警察の威信にかけても許せることではなかったのだろう。以前日本から旅行に来ていた知り合いがスリに遭ったときには、被害届は受理してもらえたもののろくに、すぐに犯人を逮捕できないままに捜査中止の扱いになったのを思い出すとなかなか複雑なものがあるけれども、クビトバーの事件の犯人が捕まったこと自体は喜ぶべきことである。これが、クビトバーのウィンブルドン優勝を暗示していると思ったんだけどねえ。
ちなみに、クビトバーはチェコでの拠点はプロスチェヨフにおいているのだが、住民登録をしているのは、実はモナコらしい。これはスポーツ選手がよくやる節税策である。チェコに限らず無駄に高いと言いたくなる所得税を避けたくなる気持ちはよくわかる。これに噛み付いたのがゼマン大統領で、母国に税金を払うことを嫌って他の国に住所を移すような人間はチェコから出ていけだったか、チェコ人扱いする必要はないだったか、とにかくそんな発言をしたことがある。確かその直後にクビトバーがウィンブルドンで二度目の優勝を遂げて赤っ恥をかくことになったんだったかな。
テニス好きで、デビスカップやフェドカップのチェコでの試合には必ずと言っていいほど顔を出していたクラウス大統領とは違って、ゼマン大統領はテニスはあまり好きではないようである。その結果、フェドカップの中継で、観客席にいる政治家の中で一番目立っていたのがオカムラ氏だったなんてこともあったなあ。あの人目立つの好きだから、どこにでも顔を出すのである。
今日はバビシュ内閣の信任投票が行われているのだが、投票前の演説が長引いてここまで書いた時点で投票すら始まっていない。テレビ中継されると、とにかく目立つために長々と関係ない話をしたり、同じ話を繰り返したりする政治家ばかりなのは、チェコも日本も同じなのである。
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