さて、以前ヤフーのスポーツナビだったと思うが、「ディナモ」という名称のスポーツチームが旧共産主義国家にいくつも存在していて、それは軍か秘密警察とつながりのあるスポーツチームだったんだという記事を読んだことがある。チェコも旧共産圏の国なのだが、ディナモのつくスポーツチームはそれほど聞いたことがない。ぱっと思いつくのは、チェスケー・ブデヨビツェのサッカーチームぐらいだろうか。パルドゥビツェのアイスホッケーチームもスポンサーの名前を剥がしたチーム名としてはディナモだったかもしれない。
チェコでディナモの代わりによく使われるチーム名が、本稿のテーマの「ドゥクラ」なのである。第二次世界大戦中の激戦地の名前を取っているということからもわかるように、戦後共産党政権が成立してから使われるようになった名前で、もともとは軍のスポーツクラブにつけられた名前だった。世界的に有名なスポーツ選手のほとんどは、このドゥクラに所属し同時に軍人として給料をもらっていたのである。オリンピックにプロが出場できなかった時代のいわゆるステートアマの一形態だったのである。
それが、2000年代に入ってドゥクラ・プラハを復活させようという動きが起こり、チームを設立し、プシーブラムからチームの名称だけでなく歴史の使用権も買い戻して、10年ぐらいかけて一部リーグに戻ってきたのである。現在では軍との関係は全くないが、軍の陸上チームドゥクラと同じユリスカのスタジアムを本拠地にしているようである。
他のスポーツでは、アイスホッケーでかつて最強を誇ったドゥクラ・イフラバがある。このチームもビロード革命の後、長い長い低迷を経験していることを考えると、軍との関係は切れて独立したチームとなっていると考えたほうがよさそうである。バレーボールではドゥクラ・リベレツというチームが一部リーグに参戦している。ハンドボールのドゥクラ・プラハもそうだが、一体にこの手のチームスポーツでプロリーグが機能しているものに関しては、ドゥクラという名称であっても、軍との関係はすでになくなっていると言ってよさそうである。
それに対して、ドゥクラ・リベレツというチーム名で真っ先に思い浮かぶノルディックスキーやバイアスロンのような個人競技で国内リーグが存在しない、存在できないスポーツの場合には、ドゥクラは軍のスポーツクラブであり続けており、在籍する選手たちは、スポーツ選手であると同時に軍人でもあるのである。もちろん他の軍人と全く同じ訓練を受けているわけではないが、毎年一定期間軍隊の訓練に参加することが義務付けられているらしい。
スポンサーを獲得しにくい競技の選手たちに、他の軍人と同じかどうかはわからないが、軍人としての給料を与えることで、生活のために選手としてのキャリアをあきらめる必要がないようにしているのだろうか。もちろん、ドゥクラの選手で、軍人として採用されるのは、チェコの中でも一部の有力選手だけだろうが、マイナースポーツでも選手生活を続けて行ける道があるというのは、素晴らしいことである。
ドゥクラのHP を見ると、所属選手たちの活躍を見ることができる。ちょっと見ただけでも冬季オリンピックで活躍した選手は、ほとんどみんなドゥクラの選手だし、陸上やカヌー、カヤックなどの競技も代表選手はみんなドゥクラの所属である。日本も企業スポーツが衰退して、特定のスポーツ以外は支援を集めにくくなっていることを考えると、自衛隊スポーツクラブを作ってそれを通じて国費で選手たちを支援してもいいのになんてことを考えてしまう。現在でもバイアスロンは自衛隊の選手が多かった気がするけど、それを他のマイナースポーツに広げると、自衛隊の存在意義も大きくなりはすまいか。日本には自衛隊の存在を悪だと断じる勢力の批判で実現は難しそうだけど。
2018年9月25日16時30分。
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