海外旅行紀行・戯言日記

海外旅行紀行・戯言日記

2023.09.27
XML
テーマ: 徒然日記(23439)
カテゴリ: Opinion


此の奇抜にも思える「書を捨てよ、町へ出よう」と言う言葉は、劇作家寺山修司の発案では無く、元来フランスの作家アンドレ・ジッドの小説に書かれた表現であるらしい。
狭い自己確認の世界に留まることを止め世の為人の為に活動して、この世に自分の生きる存在意義を確かめて欲しいと意味に判断したいのです。

「書を捨てよ、町へ出よう」は、1967年に劇作家寺山修司が書いた本で、刺激的なタイトルも広く知れ渡っていて、同じタイトルの戯曲や映画も作られている。
大学に入って病気になり、療養生活から快方に向かった頃、寺山は生きる実感を求めて読書三昧の生活から遠ざかろうと思い、それまでの豊富な読書体験から、アンドレ・ジッドの紀行的詩文集『地の糧』で、「書を捨てよ、町へ出よう」と言う表現を知るのである。

どうやら彼は「生」の実感を求め始めた後でも、猛烈な読書家であり続けたのだ。生の実感をもとめ、「書斎の知識」を去って巷に出て行くという発想は、それ程新しいものではない。
例えばゲーテの「ファウスト」で、大学で法学・哲学・医学・神学の全てに通暁した大博士ファウストが、昔よりちっとも利口になっていないことに絶望する処から始まる。彼の場合もそうした書斎の知識を去って、現実の体験、つまり「行為」の世界に、悪魔メフィストを従えて飛び込んでいくことになる。

ゲーテ、ジッド、寺山と、彼らは皆、「反読書」「反書物」的なスローガンの持ち主、読書無用論の弁護者と思われかねないが、事実はどうやら全く逆で、いずれ劣らぬ読書家で、言語によって創造的な仕事をなす人々がそうでないと考える方が、むしろ不自然であろう。

結論として、「書を捨てる」のもいいが、その前に「書を読む」必要がある。あるいは「町へ出る」のも良いが、出た後でも「書を読み続ける」必要が大いにある。寺山もジッドもゲーテも、実はその代表的実例を提供しているのではないだろうか。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2023.09.27 08:56:19
コメント(0) | コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Category

カテゴリ未分類

(201)

My Town

(561)

Little Journey

(795)

Overseas US

(235)

Overseas Europe

(193)

Opinion

(1334)

Classic Music

(527)

Technology

(204)

Flower

(614)

Books

(210)

Goto Islands

(268)

Gardening

(215)

PC

(176)

Social Security

(35)

Stock

(143)

Politics

(758)

技術士

(18)

Overseas Oceania

(19)

Paintings

(78)

TV

(74)

Profile

カーク船長4761

カーク船長4761

Favorite Blog

同性婚を認めないの… New! 七詩さん

パラグアイオオオニ… New! 隠居人はせじぃさん

迷い中 (;^ω^) Fugu-chanさん

雲の上はいつも蒼空 蒼空0205さん
旅でのひとり言 旅行好き2002さん

Comments

ミリオン@ Re:麻生祐未のドイツアルプストレッキングを観る(10/08) New! おはようございます。 レストランは美味し…
ミリオン@ Re:酔い給え(Enivrez-vous)-Baudelaire(12/18) New! こんにちは。 パリに行くのが楽しいですね…
ミリオン@ Re:綾の照葉吊り橋2007年3月(10/10) おはようございます。 九州中央山地国定公…
ミリオン@ Re:李克強亡き後は中国経済衰退(10/09) おはようございます。 嬉しいです。頑張っ…
ミリオン@ Re:シオニズムの正当性?(10/08) おはようございます。 嬉しいです。頑張っ…

Freepage List

東京都多摩市


多摩市周辺


神代植物園


自宅周辺で良く行くお店


近くの低山


低山でも注意を


供養登山-低山トレッキング


西海国立公園


上五島日記


下五島日記


海外旅行の思い出


ホテルが見つからない


レンタカーが変調


大都会の一方通行


北米家族旅行


北米家族旅行(2)


ヒューストンの住居


アメリカは広い!


テキサス州の州花


Deep South


住み良い都市統計


パクス・アメリカーナ


キャンプ生活


カリフォルニア1号線


カナダお国自慢


温泉国立公園


化石の森国立公園


カールスバード鍾乳洞


Everglades国立公園


Great Smoky Mt.


ニュージーランド南島


珈琲が美味しくない


Kingston Flyer


南ヨーロッパ旅行


チロルでは寄り道


パンと湯はホテルで


ザルツブルクの魅力


美しい夏の行方


北ヨーロッパ旅行


夏の個人旅行は難しい


天才アーベル


Clara Haskil ?


ディヌ・リパッティ


ホルン信号


Charllote Church


ヨーゼフ・シゲティ


エミール・ギレリス


ナルシソ・イェペス


キリ・テ・カナワ


半額チケット


ブレンデル


Andras Schiff


バレンボイム


コレルリ


ヘルマン・プライ


へブラー


グレン・グールド


ラズモフスキー3番


デュ・プレ


カール・ライスター


油絵を描く楽しみ


美術館での写真


レンブラント


如意輪観音


拙いパステル画


スケッチと模写


ゲーテの詩は如何?


陶淵明の雑詩


奥の細道


ヨーロッパとは何か


魔法使いの弟子


ボードレール


杜甫


すみれ-ゲーテ


北米の国立公園


米国 国立公園


カナダ国立公園


ドイツ旅行


遅れてきた国民


プロテスタント


フランクフルトと京都


Riemenschneider


ドイツとゲルマン


ベートーベン生家


シュヴァイツァー博士


フランス旅行


星の王子さま


落葉


ボードレール


東欧旅行


幻想都市プラハ


スイス旅行


アインシュタイン


ハイジの道


シオンの城


ベネルックス三国旅行


夢の跡-ブリュージュ


英国旅行


三越のライオン


オーストラリア旅行


海外生活


JCBが使える


Globalization


レッド・ドラゴン


「大学」-宇野哲人


世界の美術館 訪問記


読書評


イタリア旅行


ポルチーニ


カナダ旅行


メキシコ旅行


インド旅行



© Rakuten Group, Inc.
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: