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こんにちは。 突然ですが、29日から入院してしまいました。 更新できず、また皆さんのところへ来訪できなくてすみません。 右肩が痛くて携帯をいじれるようになったのも、ごく最近です。 現在右鎖骨が折れていて、骨同士が離れています。 整形のドクターが言うには手術しないでいても普段の生活に支障がないとのことです。 まだ右肩が痛くて右手が痺れるので、当分の間ブログの更新や皆さんのところへ遊びに行くことはできないと思います。 ご心配をおかけしますが、手が使えるようになったらまた遊んでやってください。
November 9, 2010
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どもーーーーーーーーー。実はこのたび、以前から温めていた宇宙系統の小説『VIIの響き』をGooの方に作成いたしました。まだTOPしかないけど、Accelも忘れずにまったりと更新しますのでよろしくお願いしますwww[Accel]も、[VII]も、音楽用語です。今日は鍵盤が印刷されているグッツを買いました。楽譜がまくれないようにするヤツと、紙ばさみ(裏にマグネット付き)と、マウスパット。↑は、ちなみに、絵の本とかを捲れないようにするのにもベンリ~☆紙ばさみ。 のトコロにAccelをアップしてみました。フタツもならんでマス。***************************VIIのキャラ(過去絵)主人公 アフェル アフェルと、その先生のフェストリア ****************************明日ようやくヒマができます。コメ遅くなっておりまして申し訳ありません!ではおやすみなさい~・・・・
October 23, 2010
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いきなり、本日TYOに行ってきましたドンドンパフパフ~!!!!!相方が休日にしてたんですが、昨日いきなり、「とうきょういきたい」って・・・・。をーーーーーーーい、ココ宮城県ですよ~??????????????まあとりあえず?行ってしまったんで、ネオ・リーブスさんの韓国旅行報告をまねまして、報告いたします。といっても、東京だなんで身飽きてますよね。まあ↓↓こーーーーーーーゆーーーーーーーーるーーーーーーーーと↓↓を廻る予定なんで、かなり異端だと思います。キッタネエ字は相方作です。俺が少し清書?しました。クラシック音楽が好きなトンデモ相方に付き合わされた猫の哀れな?一日を、オネダンつきでレポート!!!!ではお付き合いください。************************************************ 朝食 188円・新幹線往復 約5万円・車内販売の飲み物等 668円東京着、品川へ(京浜なので乗り換え代不要)品川→京急蒲田 190円×2=380円 シアズへシアズ入口シアズ店舗内部(勿論スタッフさんの了解を得て撮影しています)店員の湯村さん曰く、トロンボーン(申し遅れましたが俺らはトロンボーン吹きです、以下TBと略)は写真に見えている分だけで40本程とのこと!!!店としては100本はあると!!!!!!ウッギョーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!相方のいつものワルイクセで、マウスピース(以下マッピと略)を散々選ぶ。毎度どこでもそうですが5,6本はこうしてマッピを試奏します(TTTこれのうち、結局1本買いました(を~い・・・・湯村さん、長い時間ホント色々ありがとうございました。マッピ 16,000円ついでに・・・ハズかしながら猫と相方です。ピクシブで似顔絵を描いているので出してみました。上着が二人とも白ですが、偶然ですw京急東北→お茶ノ水 350×2=700円お茶ノ水の出口で露店があり、実家へのお土産を買った。また、欲しいポンチョにとてもイメージが近いものがあり、それも買えました!しかも千円で!!!ポンチョ 1,000円お土産 7,740円昼食 2,010円お茶ノ水での一番の目的地、アカデミア。アカデミア入口アカデミアの店舗内部。勿論承諾を得て撮影しています。相方、オーケストラスコアなどを購入。楽譜等 4,460円疲れたのでドトールでお茶 820円本郷三丁目駅→秋葉原 260円×2=520円アキバブックオフで、俺がガサ買い。こんなんの。本 2,310円(ちなみに 夢枕 獏 さんの本を2冊買いましたがどちらも上刊しかありませんでした。 あとでアマゾンかなんかで下刊を揃えないと汗 更にちなみに獏さんのはこの2冊しかここには置いてませんでした泣)最後に東京駅に近づいて・・・今持っているコーチのバックにちょっと治してほしい所があったので寄ってみる。と・・・・・・コーチらヴの俺に、こーちからのあまああああああああああああああああああい罠が・・。きゃあ、どうしよう、いやああん。だめだわ・・・先日地元でコーチの財布買ったばっかだし・・・でもユウワクに勝てなかった・・・・・相方に秘密にしようと思ってたら、メンズコーナーで相方も買ってたので、安心(?)して買う事ができました(^^)v相方はグローブ。以前新幹線内でなくしたのでどうしよと思ってたところだったそうで。ちなみに珍しい鹿皮だそうです。俺はタイです。スカーフを巻いた事もあるけど綺麗に巻けず・・・・このタイはフツーに固結びでもキマまって綺麗ですハアト~!!!グローブ 29,000円タイ 9,000円実家に強制されてるお土産で、足りない人の分があったので東京駅でお菓子を買う。また、お世話になっている人に贈り物も買った。お土産 7,030円車中飲料 455円夕食1,265円**************************合計 133,546円!!!!!!!(計算合ってるかな?)わーーーをw(☆o◎)wしばし、清貧セイカツをせねば・・・・・でもTYOたのしかった~!!!コーチのタイ、いいわあああああうふっ(≧ω≦)bでわ、TYOサンサクにかかるマネーサンコウ?に?なればサイワイでs(∋_∈)
October 18, 2010
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少女は、ニルロゼの左腕から切り落とされた皮膚を無表情に見たが、軽く息を吐くと、後ろを振り向いて葉を取り出し、それを男性の左肩にあてがった。「治療しているというのに、傷を作る人は、初めて見ました」「へっ・・・」 ニルロゼは、軽く目を瞑った。 これまで、この紋章のために、何人の人を斬ってきただろうか。 そして、・・・、ンサージまで、この手にかけてしまうとは。 赤。 ヤツをみつけなければならない!!! だが・・・「どうしました?」 少女がそっと言った。 ニルロゼは、彼女の顔をじっと見ていた事に気がつき、ハッとなって慌てて首を振った。「あんた・・・ お礼はいらないって言ったな。 貰えばきりがないと。 それほどまでに、沢山の人を治して来たのか・・・」 ニルロゼは半ば独り言のように言った。 ひどく頭が重かった。 今まで、ハーギーでは、起きていようと思えば3日くらいならずっと起きている事も可能であった。 しかし・・・湖の底に沈んで行くかのようなこの感覚、これは・・・抑えられない・・・ ねむい・・・ 彼は、いつの間にか寝入ってしまった。 翌朝。 ニルロゼが目を覚ますと、少女はまだ、自分の胸に手をあててくれていた。 伏し目がちだからよく判らないが、まさか寝ずに看病を・・・「あんた・・・朝だぜ。 俺は、ずいぶんいい調子なんだ。 少しは休んだ方がいいんじゃないか?」 しかし、少女の体制は変わりはしなかった。「なあ、名前ぐらい、教えてくれよ。 あんたじゃ失礼だろ・・・??」 ニルロゼは、体に力を込め1て半身を起した。「まだ動いてはなりません」 急に少女が言うが、ニルロゼは鋭い声で言った。「あいつらだ。 あいつらが、こっちに来る!」 ニルロゼは力任せに立ち上がると、少女の右腕を掴んで洞窟を出ようとした。「まだ動いてはなりません!!」「駄目だ! ハーギーの奴らが来たんだぞ! 見つかったら殺される」 ニルロゼは南へと足を向けたが、少女が腕を強く引いた。「こちらに」「・・・!? おい、そっちは! 判ってるのか?あんた? まさか判ってて? あいつら、そっちから来るんだぞ?」「いいですからこちらへ」 少女に、ついていく、と明言した以上、少女の行動に意義申し立てをできないニルロゼだ。 黙って彼女について行く事にした。 いざとなれば、ヤツラをノセればいいのだが、今は彼らとやりあう自信があまりない。 できれば、ヤツらと遭遇するのは避けたかった。 今、あいつらは、あと1アワーでこちらに付く頃合いだろう。 こちらが見つからなければよいのだが・・・・ と? どこかで出逢った感触の香りがした。 この香は・・・ 東の鍛冶・・・!? と、木々の間に、キラリとなにかが光った。「!」 ニルロゼは走りださずにはいられなかった! そして、その光る物体を手に取った!「あった! あった!! あった~!!!!」 若々しい少年の、心の底からの歓喜の声が、森中に響いた! 彼の右手には、やや短めの、弧を描いた、美しく光る剣が掲げられていた!「まさか・・・見つかるなんて、すごい! こんなすばらしい剣は、本当に滅多にないんだぜ! こんなところに堕ちていたなんて・・・」 ニルロゼは感極まって何度も何度も剣を摩った。「そうですか。 よかったですね」 彼らは、先日遭遇した訳のわからない化け物を退治した場所に来ていたのである。 少年ニルロゼは、化け物の腕に剣を差していたので、もはやもうあの剣は手にする事はできぬであろうと思っていたのだ。「さあ、参りましょう」 少女はすっと体を西へと向けた。 ・・・? まさか・・・ こいつ、この剣がここにある事を判っていて、ここに来たのか? ニルロゼは、唇を噛んで彼女の後ろへと付いて歩くのだった。 それにしても、まだ動くなと少女が言ったのはまさに当たりであった。 肩から腹にかけてつけられた爪跡は、熱を持ったようにジンジンといちいち痛んだ。「私の家はここです」 森を抜け、一本道をしばらく歩くと、粗末な・・・というかボロ小屋というか・・・ そういう建て物に、彼女は指を差した。 ぎい、と音をたて、彼女は扉を開く。「どうぞ」 どうぞ? と言われても1? 一応相手は女だ。 そして一応俺は男である。 男女が密室に入るのは、あまり芳しくない、と思うのであるが・・・「いかがしました?」 少女は軽く首を傾けて促して来る。「あ、いや、ああ・・・ははは」 ニルロゼは、苦い笑いをこびりつかせながら、少女の家へと入った。 と!「なんじゃこりゃーーーーーー!!!!!!!」 彼の目に飛びこんできたのは野菜! 野菜、野菜、野菜! 白菜、きゅうり、大根、人参、ほうれん草、ごぼう、葉菜、等々・・・。「なんじゃ、こりゃ。 なんでこんなにあるの」 ニルロゼは思わず奥に入って、その野菜の大群の中から大根を取り出して手に持った。 少女は黙って家に入ると、扉を閉め・・・ 閂はかけていない。 いつも、閂をかけないのだろうか。 そして、彼女はおもむろに黒い外套を脱いだ。 その下には、灰色の服を着こんでいて、長い紐を首からぶら下げている。 紐の先には小さな布がついていた。 少女は、その紐を取ると、野菜が大量に乗った机の脇に無造作に置く。 そして、更に・・・ ふわり、と、灰色の服も脱いでしまった! ニルロゼが目を瞑る暇もない。 否が応でも目に入った。 少女の背は、顔と同じように透明がかった美しい白い肌の持ち主であった。「ん~」 というと、少女は部屋の奥の方へ行き、そこに転がっていた毛布へと潜り込んで行く。 しばし、唖然とその方向を見やっていたニルロゼだが・・・ ようやく、手の大根を野菜の大群の上に戻すと、少女の方にそっと近寄った。「・・・男・・・?」 ニルロゼは、なぜか自分の口元が震えるのを感じた。「お、男」 ニルロゼはとうとう叫んでしまった!「コレで男って、ありかよ~~~~~!!!!????」 蜂蜜色の少年の叫びは、狭い家を振動させるが如くであった。******************************************************猫さん太ったの・・・いやん!なんとかするからん!(独り言)どーもー。病気長引いてすみません。監獄にいれられ毎日管氏されてます。(このPC,監視っていれたいのにこう変換されるんですが、どうしてなんでしょうか、カンシで監視が入ってないってどうなんですか、ヴぁいをたん???ほわっと?)ぴくしぶにも書きましたが、危うく、丸刈りにされるところでした。それを振り切り、まいらヴイエローcarをかっとばし、「へいねーちゃんいつものいかすかみがたにしてくれよ」としてもらったんです。ああ、病気で休んで早●カ月、症状はよくなる兆しがまるで見えず、寄せて返す波のように、ある程度よくなったと思えば悪くなりで、職場への報告も「いつもと同じです」ばっかで、さすがのママりんも堪忍袋の緒が切れて丸刈りに・・・・という上段はこんぐらいにして(だからばいをたん冗談だっつーのに)というわけで、くそおおおおおおおこの病気でやってはいけない、いってはいけないことなんですが、きあいこんじょうこんにゃろーーーーーーーーーーーで、なおさなくてはいけないようです。それで治るんなら治ってんだよーーーーーーーーーーーー!はいここ、ソフトバンクのおとうさんみたいに吠えながら走る俺想像してね。くそ。ばーろー。やれるもんなら、なおってみろーーーーーーーーーーちくしょーーーーーーーあ、ああすんません、今日は宣伝だったんです。「俺のアホ生活HP」を更新しました。”お片づけ”コーナーの”リビング”です。あそこで俺の絵はめいきんぐなう!でございます。あーーー猫さんはやっぱり女だったのねん(涙えっつ猫さんってキコンだったの!がーーんおそかった(なにがなるほどーーーさすがこの猫でいいという奇特なひとはこういうものを持っているのか・・・等々タメになる情報を載せています。小説の内容もあり、実生活と切り離してHPを運営していましたが、画材・資料などをいかに収納し(できていない)ているかという中身になってまs時間がないので写真にコメをまだ入れてません。暇になったらいれますーーうをっやばいねます~。。。。。では、イラストもそろそろ!小説もそろそろ!手がけていきたいぞ!猫どーもー。病気長引いてすみません。監獄にいれられ毎日管氏されてます。(このPC,監視っていれたいのにこう変換されるんですが、どうしてなんでしょうか、カンシで監視が入ってないってどうなんですか、ヴぁいをたん???ほわっと?)ぴくしぶにも書きましたが、危うく、丸刈りにされるところでした。それを振り切り、まいらヴイエローcarをかっとばし、「へいねーちゃんいつものいかすかみがたにしてくれよ」としてもらったんです。ああ、病気で休んで早●カ月、症状はよくなる兆しがまるで見えず、寄せて返す波のように、ある程度よくなったと思えば悪くなりで、職場への報告も「いつもと同じです」ばっかで、さすがのママりんも堪忍袋の緒が切れて丸刈りに・・・・という上段はこんぐらいにして(だからばいをたん冗談だっつーのに)というわけで、くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおこの病気でやってはいけない、いってはいけないことなんですが、きあいこんじょうこんにゃろーーーーーーーーーーーで、なおさなくてはいけないようです。それで治るんなら治ってんだよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーはいここ、ソフトバンクのおとうさんみたいに吠えながら走る俺想像してね。くそ。ばーろー。やれるもんなら、なおってみろーーーーーーーーーーちくしょーーーーーーーあ、ああすんません、今日は宣伝だったんです。「俺のアホ生活HP」を更新しました。”お片づけ”コーナーの”リビング”です。あそこで俺の絵はめいきんぐなう!でございます。あーーー猫さんはやっぱり女だったのねん(涙えっつ猫さんってキコンだったの!がーーんおそかった(なにがなるほどーーーさすがこの猫でいいという奇特なひとはこういうものを持っているのか・・・等々タメになる情報を載せています。小説の内容もあり、実生活と切り離してHPを運営していましたが、画材・資料などをいかに収納し(できていない)ているかという中身になってまs時間がないので写真にコメをまだ入れてません。暇になったらいれますーーうをっやばいねます~。。。。。では、イラストもそろそろ!小説もそろそろ!手がけていきたいぞ!猫
October 15, 2010
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深い森の中であった。「ええい、くそっ!」 濃い緑の呼応の中に、少年の掛け声が響いた。 鳥が、どこかで鳴いている。 左右どこを見ても、老木ばかりだ。 木の上から差し込む光に、茶色の髪が輝いた。 茶色の髪を持つ少年は、セルヴィシュテといった。 年の頃は14歳くらいである。 皮でできた簡素な鎧を着ている。 足も、皮でできた長靴を履いている。 彼の足元には・・・大きな背負い鞄が置かれてあった。 少年、セルヴィシュテは、自分が今まで持っていた荷物を降ろし、その背に少年を背負っている。「な・・なんだこいつ・・・。 結構軽いな」 少年は、そう言いながらも、顔をひどくしかめた。 背負った少年から・・・なにか、恐ろしい痛みを感じた。「くそー、西だ、西!」 セルヴィシュテは、今まで背負っていた荷物をこの場に置いて行くことを決心したばかりである。 大事な荷物だけを小さな袋にまとめ、腰にくくり付けた。「ラトス! 死ぬなよ!!!」 背の少年に語りかけながら、歩き出した。 そもそも、ここはどこなのだろう。 どこに向かっているかもわからなかった。 ハザに?? ハザに・・・向かっていた・・・。 だが、ハザとは、どこにあるのか? 煌く城のチューレンドは、「ハザのチューレンド」と名乗っていた。 でも、またいずこへか、その城は姿を消している。 ハザ。 なぜハザに・・・ 俺は、ハザに、どうして行きたいんだっけ? よいしょ、と背中の少年を背負いなおす。 そうそう。 この布の謎を解き明かすためだ。 彼は腰に下げている、父から貰った布を思い描いた。 でも、その謎解きの前に・・・・「ラトス・・・」 茶色の瞳の少年は、西に向かった。「なんとか、お前を治してくれる人を、見つけなきゃ!!!!」 だが、少年が必死に目星をつけて歩く割には、相変わらずいつまでも深い森が続いた。 セルヴィシュテの歩みは、心なしか、重くなっている。 森が深くなったからか。 夕刻になってきたからだろうか。 森が・・・暗くなってきた。「誰か!誰かいませんか! 誰か!!!」 少年の声だけが、むなしく木霊する。 セルヴィシュテは、とうとう、立ち止まってしまった。 彼はすっかり疲れきっていた。 背負ったラトセィスを地面にゆっくり降ろす。 本当に、誰も居ないなあ・・・ セルヴィシュテは、軽く方膝をついて、自分で首筋を揉んでみた。 すっかりヘトヘトになってしまっている。 疲れ切った上、お腹もすいていた。 このままでは、ラトスが死んでしまうかもしれない・・・? ふと、転がったラトセィスを見ていると、急に不安になり、またラトセィスを背負った。「くそーーーーーーーっ!」 セルヴィシュテは、また、西を目指した。 とうとう、あたりは暗くなり、寒くなった。 おぼつかない足元のため、とうとうセルヴィシュテは転んでしまった。「うっ・・・いたた・・・」 セルヴィシュテは、なんとも言えない激痛にとうとう我慢できなくなっていた。 荒い息をしながら、ゆっくりラトセィスを降ろす。「あ・・・!?」 少年の右手に、べたりと、なにか黒いものがついていた。「ああっ・・・!?」 左手で背中をさすると、黒いものが、またついてくる。「ラトス・・・」 降ろしたラトセィスを見ると・・・ もはや、正視に堪えない姿になっていた。 ラトセィスの体は、黒く変色し、その皮膚は、焼けただれ、体からはがれてしまっているようだった・・・「くそっ・・・」 セルヴィシュテは、あたりを見回した。 誰か、誰か・・・居ないのか・・・・ 暗い森だった。 静かだ。 恐ろしいほどに。 獣の気配もしない。 ざわ・・・・・ 風が、吹いた。 セルヴィシュテが、再びラトセィスを背負おうと、相方に近づいた時だ。「リュベナ」 ラトセィスが急に話しかけてきた。「ラトス?」 セルヴィシュテは、ラトセィスを覗き込んだ。「セルヴィシュテ・・・ わたしは、リュベナのために、恐ろしい契約をしました・・・・」 ラトセィスは、瞳を開けずに、静かに言った。「お願いがあります、セルヴィシュテ・・・ リュベナを・・・」 ラトセィスがそこで言葉を切った。 ざわ・・・ 森が生きているかのように、生温かい空気を運んできた。 森の異様な雰囲気に・・・ セルヴィシュテは、思わず立ち上がった。 なんだ? これは・・・? どこからか・・・ なにかの声が・・・?「!?」 急に何かの危険を感じたセルヴィシュテは、剣を抜いた。 風から、おかしな気配を感じる・・? ざわり 森が・・・揺れている・・・ 背中が、ずきずきと痛んだ。 それでもセルヴィシュテは必死に気配の方へと剣を構えた。 向こうの方に、 なにかが・・・ なにかが、いる・・・・ はっ、と少年は息を飲んだ。 森の中の暗闇に・・・ なにか、恐ろしい存在を感じた。 額を流れる汗を拭いもせず、セルヴィシュテはそちらに剣を向けた。 じりっと近づく。 地獄の底から出る・・ まさに、その言葉がぴたりと当てはまる、そんな音がしてきた。 ふうう・・・・・・ 今や生暖かい空気が蔓延してきた。 セルヴィシュテは、震える手を必死に押さえ、音の方へと近づいた。「ぐうう」 恐ろしい声の主が、その姿・・をあらわす。 黒い塊だった。 大きな犬の位の寸法だが、犬とは全く違う雰囲気を醸し出している。 セルヴィシュテが、剣を構え、犬?を睨み付けていると・・・ 犬が、飛び掛ってきた! ひたすらに、剣を握っているしかできなかった。 恐る恐る顔を上げると、また犬がこちらへ飛び掛らんとするところである。 少年ンは果敢にも、今度は眼をつぶらなかった。 跳躍する犬の方向にあわせ、剣を繰り出した!「ぐうう!!!」 ずしりとした、手ごたえがあった。 セルヴィシュテは、目にかかって来る汗を、左手で拭った。 手が震えているのが自分でも判ったが、ここで下がる訳にはいかない。 ふうう 犬が、ゆっくり首を一回りさせた。「?」 見ているその間に・・・ 犬の雰囲気が変わった。「!?」 少年は、戦慄を抑えられなかった。 両手が震える・・・ 黒い物体、黒い塊が・・・大きくなっていく。 恐ろしい雰囲気そのものも、大きくなり、曲々しい雰囲気がどんどん増していた。 あまりのことに、少年は声も出ない・・・。 ガクガクと震え、目が眩みそうだった。 相手の黒さに、もはや、立ち向かえない・・・ 射てすくめられ、なすすべもなかった。 少年が突っ立っていると・・・ 黒い物体に、更に黒いものが、纏わり付いた! あいつは、さらに・・・さらに、おおきくなるというのか?! ただただ唖然とその姿を見ていたセルヴィシュテは、纏わり付いた”黒”に、思い当たる節を感づいた! そして、その”新たなる黒”の正体を操る人の名を呼んだのである。「ラトス!!」 セルヴィシュテが叫び、相方の方を見た! ラトセィスが、あの言葉を・・・唱えているに違いなかった!「ラトス!! やめろ! 魔法をこれ以上使うと、死ぬぞ!?」 思わず相方に駆け寄る。 するとラトセィスは、目を見開き、かすかに、笑っているようだった。「どうです。 見事に燃えましたね・・・」 ラトセィスは、かすれた声で言った。 セルヴィシュテはもはや、後ろを見なくても、判った。 黒い物体が、ラトセィスの恐るべき炎によって焼かれ、わめき、もがき、浸食されていくのを・・・。「や・・やめろ、もう・・・」 セルヴィシュテの瞳から、なぜか、涙が溢れた。「わたしが守りたかった人の名・・リュベナ・・・・ わたしには、もう守ることができない。 お願いできますね、セルヴィシュテ・・・」 ラトセィスが、途切れ途切れに言った。 セルヴィシュテは、首を振った。「馬鹿かお前は! お前が守りたい物は自分で守れよ・・!?」 必死に言ったが、もうラトセィスはその目を瞑っていた。「ラトス!ラトス! おい! お、お前が死んだら・・・、またあんなの来た時・・、困るぞ??」 ラトセィスの肩をゆすった。 その手に、びりっとした痛みが走る。「ラトス・・・」 すると、ラトスがまた言った。「リュベナは・・・ハザに・・・」 セルヴィシュテは、食いつくように言った。「ハザはどこだ!お前が案内しろ!!!!」「・・・・」 はっと、後ろを振り向いた。 燃えながらも、まだ・・・・ あの黒い物体が、うごめいている。「・・・・」 セルヴィシュテは、ラトセィスをゆっくり離すと、黒い物体に剣を向けた。 あの黒い物体と対峙しようとするセルヴィシュテの手首を、誰かが握って来た。「ラトス!駄目だ?」 握られた手の方に思わずそう叫んだ先に・・・ 美しく、笑う、少女がいた。「もう燃え尽きていますよ」 その笑みは、まさに花の咲くような笑みだ・・・ 煌く美しいその瞳は、あくまでも黒い。 その美しい視線の先で・・・ 黒い物体が、闇に消えていくのが見えた。「・・・・」 セルヴィシュテは、まだ自分の腕を握られながら、穴の開くほど少女を見つめた。 目の前にいるのは、見間違う事もない。 あの、来る途中の船で・・・ 出会った少女だった・・・・。**************参加ランキングです **************Accel HPを、第5章までUPしました!海外の音色さんの音楽は、多分3章くらいまで入ってマス★最近のイラストはpixivにのっけてます。よろしければ。**************おひさしぶりです。「どうです、みごとに燃えましたね」のセリフのところにどうしてもイラストをつけたかったので、がんばってつけました!ラトスの雰囲気が、段々最初と変わってきています・・・・うわああああああああああん(滝涙)体調はボチボチでんなあです。次の更新もお待たせするかと思いますが懲りずによろしければおつきあい下さい。
August 14, 2010
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今日実家に行ったら、顔を合わせるなり母「あんたあと10分も早く着てたら面白かったのに」俺「は?」母「パトカーが来てたのよ、3台も」俺「どこに」母「○●に(ここには、隣、後、向かい、等の言葉が入る)」俺「▼さんチね・・・(問題児の家)」母「地元の警察と県警と鑑識よ!」俺「なにがあったの」母「カメが置いてあったんだって!」俺「カメ~????」父「30cmくらいのカメで、多分水が入ってたんだと思うけどな」俺「なんだってわざわざ警察に・・・」母「▼さんチでも悩んだみたいだぞー」祖母「まったく警察だなんて馬鹿馬鹿しい」父「ぷぷぷぷ」俺「んーでも近頃物騒だし」父「物騒ったってねえ!こんな田舎に」*注釈*とってもイナカです。実家で飼っているチャボはテンに殺されたりします。ほたるも飛んでいます。散々▼さんチは俺実家内で馬鹿にされた揚句、結局カメの中身は水らしかった。*******************************俺「ってことだったんだー。 でも水でよかったよね。他の物だったら廃棄物遺棄されただけで、自分で処理しなきゃいけないし」相方「そりゃやっぱ警察だってば」俺「えーーーーーーーだってたかがカメだよ~実家でだって、警察に通報するなんてって言ってたよ。 もし実家にカメが置かれていたら、中身は水路に撒いてカメはちゃっかりGETしちゃうかも」相方「それはマズイ」俺「なして」相方「毒物だったら撒いた方がお縄だぜ」俺「えええ?どうして?中身が知らなくても?」相方「うん、そうだ」俺「えーーーひどーい知らないのになんで・・・ってそっか。 麻薬も中身を知らないで運んでも運んだ人がお縄になるのと同じ?」相方「まあそんな感じ。 とにかく危ない物は警察に限る」俺「まあ判るけどさーーー」****************危機感のなさすぎる平和ボケ俺と、冷淡で知能のある相方さんは、今日もボケツッコミを展開していたのでした。まる。↑今日も封筒の裏。ではここで質問。貴方の家の前に、液体の入ったカメ(ふたはしていない)が置いてありました。どうしますか?1・警察に電話する2・用水路に中身を投げて燃えないゴミに3・隣の家の前に置いちゃう4・中身を飲んでカメをGET5・家の軒下に置いておく(まじめに答えなくてもいいですよ~^^;ちなみに、こちらでは本当に田舎なので、3は実行不可能です。そんなことを隣組の人にはできないですね~。******************コメントありがとうございます。今日はカメ事件で盛り上がったのでまた落ち着いたらレスします~(^^
July 28, 2010
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ザザザザ・・・・ 闇だ。 森の中は木々が生い茂っているが、地面にその影はない。 どこをどう見回しても、暗闇ばかりだ。 空を見れば、星も見えたであろう。 だが、”見えて”はなかった。 太い木の幹の上に腰かけている人影があった。 のんびりと、居眠りしているようにも見える。 しかし、実はそう見えて、恐ろしい程に辺りを警戒していた。 その人影は追われていたのである。 「ケッ」 小さく闇夜に呟いた声質は、男のものである。 男は、身じろぎもせず木に背を預けていた。 と。「ん?」 ガサ・・・ガサ・・・ 向こうの方から、全く!警戒などしていない足音がやって来た。 おいおい。 こんな夜中の森の中、少しは足音を殺すとか、考えろよ?? 彼は、心の中で呟く。 件の足音は、とうとう彼の居る木の下を通り過ぎて行った。 あいつ、大丈夫かいな・・・? 男はそう思ったが、しかし、自分の身も、危険な立場にある。 と! 急に男の瞳が光った! その瞳は、蜂蜜色に輝いている。 男が立ち上がると、僅かながらに照らす月が、彼を映しだした。 すばらしい長身の持ち主であった。 ッツ! 音も立てず、男は地面に飛び降りる。 ”ヤツラ”が、先程通り過ぎた人物に向かって、襲おうとしているのを、彼は察知していた。 男がその場に付くと、ニヤケた嫌らしい声が、辺りから響いていた。「ケケケ・・・随分な上玉の女だな」「売ればかなりになる」「いや、待て、その前に、へへっ・・・ 俺らで楽しんでしまおうぜ?」「へへへへ・・・」 ガサ・・・ガサッ。 木から飛び降りた男が加勢しようとした時だ。 チーン! 金属音が響いた。 男らに囲まれた女が、相手に斬りつけたのだ。「なんだ!」「やっちまえ!」 カチーン! いきなり、その男は後ろから剣に斬りつけられた。「へへ。 どうも」 蜂蜜色の瞳を持つ男は、剣の向こうでニヤリと笑った。 7人程居た追手をのすと、男は女に言った。「なあ、あんた。 こんな夜遅くに出て歩く方が悪いんだ。 無謀にも程がある」 女は無言である。 こちらが助けたというのに、会釈の一つもしなかった。 月明かりが照らされると・・・ 黒い外套をすっぽりと着こんだ女の顔が、白く浮かび上がった。 透き通るような、白さであった。 その顔の上に、ゆるく弧を描く眉。 その下に、夜空を切り取ったかのような黒い瞳。 すらりとした鼻。 花弁のような唇・・・ これまで沢山の女を見た事があったが、これ程までに美しいと思える女性は初めてであった。 いや、女性、というか・・・ 少女、であった。 はかなげな年頃で・・・ きっと自分と同じくらいの年であろう。「なあ、あんたさ・・・」 男、いや、月に照らされた人物もまた、少年と言った年頃であった。 少年が、少女に軽く歩み寄った時である。 ハッ! 少年が急に後ろを振り返った。「!!!!!」 少年は少女を抱きかかえ、思いっきり左へ飛んだ。 その向こうを、風を切る早さで、”なにか”が動いた!「あんた、そこを動くな!」 少年は腰の剣をざらりと抜いた。 ぐうううううううう 暗闇の向こうから、なんとも形容しがたい音が、響き渡って来た。 少年は、久しぶりに脂汗をかいていた。 こんな、全身の毛がささくれ立つのは、”あの時”以来だ。 そう、メルサの前に出たあの時・・・ メルサを切った、少年ニルロゼは、今暗闇の中で、正体不明の物と対峙していた。 ぐうううううう!! ・・・早い!! ぎりぎりでかわす! くそ、なんだ、こいつは・・・ 手とか足とか、体の一部が見えればなんとかなるのに・・・「っつあっ!!!」 鈍い痛みが太ももを襲った。 相手は鋭い爪を持っているようである。 しかも、恐ろしく強そうな腕も持っているようだ。 そんなのに叩かれたら・・・ ニルロゼがそう思った瞬間、月が急に明るくなり、彼らの周りが見えるようになった。 なんということであろうか。 ニルロゼの対峙していた相手は、なまはんかではない大きさだった。 腕も足も、大きな木の株のようである。 目は赤々とこちらを照らしていた。 恐ろしい事に、口が横にでっかく開いていて、そこには容赦なく牙が並んでいる。 その手には5本の長い爪が光っていた。「・・・!」 恐ろしい腕が、ニルロゼを襲った! 彼は思わず右手で自身を防御してしまい、怪物の腕力で吹っ飛ばされた。「く、く・・・」 ニルロゼは、首を左右に振った。 これは・・・ 負ける・・・ 右手に持っていた東の鍛冶の剣が、奴の左腕に突き刺さっていた。「かはあっ!!」 見えぬ速さである。 ニルロゼは、思いっきり胸を奴の爪に抉られた。 つう・・・ これまでか!? しかし、彼は力を振り絞って、右の短剣に手を伸ばした。 奴の腕が、恐ろしくはっきりと、彼を襲ってくるのを、ニルロゼは見た。 それは、白い世界だった。 上を見ても、右を見ても、左を見ても、白かった。 白のなかで、ふんわりと浮いていた。 ここは、どこだろう? なんどか首を回したが、考える事をやめた。 白い色しか、なかった。 ここが、天国ってヤツか? 少年、ニルロゼは、蜂蜜色の髪の毛を揺らし、そう思った。 ああ、なんて素晴らしい感覚なんだろう・・・ 俺の・・・傷が・・・ そう、そう。 あの変なヤツにヤラれた傷が、すっごいいい気分で・・・ こんな素晴らしい感覚があるなんて・・・ なんて素晴らしい感覚なんだろう・・・ ナーダ? ナーダ・・・ そうだ ナーダだ。 あいつが、触ってくれてる。 この手は、ナーダじゃないか・・・ ナーダ・・・「・・・」 気が着くと、目の前には・・・ 白い、美しい顔の少女があった。 あの、恐ろしい魔物と対峙する前に出逢ったあの少女である。「・・・?」 ニルロゼは、少女が自分の胸に手を当てている事に気がついた。「すみません、ナーダさんではなくて」 少女がそう言った。「な!!! 俺はあいつの事なんか!!??」「・・・ナーダさんの事を、何度も呼んでいらしましたよ」 処女に言われ、ぐうの音も出ない。 くそっ。「つつつ」「ほら、まだ力まないで下さい。 ものすごく抉られていたのですからね」 少女は静かにそう言った。 そう言えば、彼女はずっと、ニルロゼの胸に手を当ててくれていたのである。「あんた・・・ 俺を治療してくれているのか?」「私は薬師です」「・・・」 やっと一呼吸入れると、ニルロゼは少女に聞いた。「ここは、どこだ? 洞窟?」「ええ。 私も時々身を隠す時に使います」 ほどほどに高い天井が見えた。 見える、という事は、明かりがある事である。 向こうで、パチパチと木がはぜる音がしていることに、やっとニルロゼは気が着いた。 そして、世にも言えない不思議な香りが充満している事にも。「あんた、名前は?」「そういうあなたは?」「俺はニルロゼ。 この礼はいずれ・・・」「お礼はいりません」「はっ?」「いちいち受け取っていたら、きりがございませんから・・・」「しかし、俺の気が済まない」「ですから、私はどなたからも、お礼を頂いておりません」 パチ・・・パチ・・・ 木のはぜる音だけが、静かな洞窟内に鼓動した。「なあ。 俺さ、大陸一と恐れられる、ハーギーから出て来たんだ」 ニルロゼは、首を左側に傾けると、必死の思いで短剣を取ろうとした。 少女が、不思議そうに短剣を手渡して来る。「俺、赤ってのを追っているんだよ。 でもさあ、なんだか、それよりももっと、面白いのを、見つけたような気がする」 さっ! 目にも止まらぬ速さであった。 少年は、自分の右肩に彫られていた紋章・・・ メルサが着けた紋章に、短剣をあてがうと、ざっくりと切り抜いてしまった!「あんたについて行くぜ。 なんと言われようともな」 少年は、ニヤリと白い歯を見せて言った。******************************おひさしぶりです。病気がよくなった訳ではないのですが、そろそろ書いておかないと「書く癖」が抜けてしまいそうなので、無理のない範囲で書いてみようと思います。言い回しや、小説の進行、背景など、もしかして手抜きになってしまうかもしれないです。それをしたくなかったので書かないでいたんだけど、病気がよくなるのを待っていても時間がロスするだけなので、あまり根を詰めずにやってみようかなと思います・・・よろしく(泣
July 23, 2010
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どこにも遊びに行く予定がない俺です。ええ、まったくふりーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーデス。つまんないです。ああ、3日間ナニをすればいいんだろう。案1 「黄金の都シカン」に行く↑ケーナさんの影響です。ケーナさんの小説を知っていなかったら行こうと思っていない企画ですね。案2 水族館に行く案3 松島に行く案4 鳴子に行く案5 ・・・・(思いつかないこれらの案を、アッシーにお伝えしているのですが、運転手となるべきお方がいまいち反応が悪いのです・・・ううっ・・・ボクは3日間、ヒッキーになってなきゃいけないのでしょうか??ううううう・・・・・あ、びょーきですが、びみょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおに回復の!感じが!します!段々あちこちにコメントできているのはそのためです。絵も、段々「なにか」書きたいのですが、脳みそにイメージが浮かんでこないので、紙に手がどうしても行きません。あと一歩ですかね。まあ焦らずにのんびり参ります。ところで、俺のバイオたん、最近ご機嫌斜めなんですよね。ダブルクリックを聞いてくれなかったり、コピペをとらせてくれなかったり、ひどいとシングルクリックさえもいうこと聞かないんです。いやん。起動時間もやったら遅いし、フォトショは重いし(これは仕方がない部分があるとはいえこのPCに後からインストールしたのは年賀状ソフトとフォトショだけなのに、なんだってこんなに重いんでしょう。(あ、FFFTPも入れていた)どうして最近のPCはいらない機能が最初から大量に入っているんでしょうね~。最近の携帯に使いもしない機能が沢山あるのと同じように、俺はとってもメカ音痴あんどアナログ人間なので、判り易くして欲しいでがんすよ。バイオたん、たのむよ~?前のが「動かなくなって」あんたにしたんだからね~まったくメカというのは「記憶したものを捨てる事ができない」って便利な機能ですよね。勝手な妄想だけど、蓄積されていくデータで一杯になった時に、作動不能になったりするんかな~?その膨大な記憶力の1万分の1位?俺に分けて欲しい。***************************そろそろトップに飾っている絵を新しくしたいなーとずっと思っている俺です。今日はキャラの絵を描きたかったんですが、さっぱり脳みそが追い付かないので激適当に4人を描いてみてました。しかもこれ封筒の裏だよ奥さん?ドンダケ~????(爆
July 16, 2010
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猫です~。実は俺、今日で2歳年をクッたんです~。今の今まで、3●歳(実年齢マイナス1歳)だと思いこんで暮らしていたんです~。そして、昨日、「ハッ!?それっておかしくね?!?!」って急に思ったんです~。で、ママに「かーちゃん!俺何歳よ?」母「私は6●歳よ!」俺「だから俺だっつうの~!!!!」で、昨日、この1年間俺は勝手にサバヨミして生活していたんだと、気が付いたんです~(マジという訳で、俺は、今日、2歳年を経ったような気が、とってもいたします~。ああ、みじめ。いろんな書類・・・そう、デパートのアンケートとか、リサイクルショップとか、メンバーズ記入欄とか、ああいうのに、ぜーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんぶ、年齢サバヨミ・・・・生年月日とちゃうやんけワレ~ああアワレ~ああ、俺のお病気ですが、ちょっと今回はけっこうキツメで、しぶといです。まだまだ時間がかかるみたいです。治す時治さないと治らないので、もうしばしお待ちください・・・・4人でお誕生日(ラトス)を祝うの図。Gペンは3カ月ぶりで使いました。Gペンはあんまり好きじゃないツールなんですよ。やばいな~キャラの表情がなんかベツモノになってるよ~特にラトスは、あんな雰囲気の顔しないんだけどな~まあいいや。いいのよ・・・・うまく描けるようになりたいとか、もうかなぐり捨てたわ。山が高すぎる。
July 8, 2010
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こんにちは、猫です。持病を悪くして、ちょいとPC作業ができません。ネットを一時中断させていただきます。たまにあちこちご訪問はできそうですが、コメントもできないと思いますので、読み逃げ専門でよろしくです。ご心配をおかけしますが、ほおっておけば多分勝手に元気になって舞い戻ってきますので、それまでしばしお待ち下され~(って、忘れ去られてたりして・・・)猫
June 28, 2010
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ハーギーで兄弟のように暮らしつつも殺し合う、理不尽な運命を辿っていた沢山の男たち。 そして、女性たちといえば、個々に名前すら持ってはいなかった。 彼らは以前から、あのハーギーを出る手立てを模索していたのである。 個人的に出た者も居たが、命令により追われ殺されてしまった。 また、以前にも団結してハーギーを出ようとせんとする者があったが、とうとう叶わなかったのだ。 しかしこうして、ようやくの思いでハーギーを出てきたのだ。 だがどれほどあの場から離れても、過去の忌まわしい記憶が振り切れる訳がなかった。 遠くに逃げていると思えば思うほどに、大きく彼らに不安の雲が募ってくるのである。 この不安、苛立ち、焦りは、明らかに見え始めていた。 事態は早々に解決を求められていたのである。 大きな集団を統率する男たちは何人かいたが、最も上に立つ立場であったブナンも、この解決策についてよい案を見いだせないでいた。 しかし先日、カンによって出された意見・・・ まだ体力があまりない子供たちや、その子供を抱える女性、そして、これから子供を産む女性が、今の集団の移動速度について行けないのだという話を聞かされ、直ぐにブナンも現状を確認したのである。 そして、カンの言うとおり、この身重の女性集団を一つとした班を作り、残りの仲間を更に三つに分け、これから四つに集団を分散させることとしたのだった。 かくして、先日ブナンは主だった男たちと別れも告げ、とうとう、大きな集団は4つの班に別れた。 彼らは今後互いに、遭える日が再びあるのか・・・ 互いに別れがたい想いが強かったが、ブナンの強い口笛の合図を区切りに、とうとう人々は4つに離れ、そして、離れて行ったのであった。 西へ行くカンは、身重の女性が居る班に居た。 節くれだった分厚い手を持つブナンと共に。 頼もしき男が傍にいる、これ程心強い事はなかった。 あまり動けない女性のために、輿を作り、彼女達が自分で動かなくてもいいようにしたり、小さな子供を入れて運べるよう籠を作ったりと、なかなか最初は難儀したが、色々な物ができあがると、だんだんこの集団も早く動けるようになってきた。 そして、ある日、身重の女性の一人に、子供が生まれた。 この新たなる命は、もう”ハーギー”ではない!!! 人々は新たな希望を顔に浮かべ、少しの間陣営を作って祝宴をしたのであった。 これから大きくなる子供達には、もうハーギーのような恐ろしい経験をさせたくはなかった。 しかし、これからハーギーと闘っていかなければならないかもしれなかった。 身軽な女や、少年少女に、剣技を教えるのが、青年カンの役目の一つとなった。 心配されていた、ハーギーからの追っ手も特になく、ブナンの班は穏やかに移動が進んでいた。 数人の少年と共に、今日も和やかに食事を取っているカンの元に、女性が二人、やってきた。「あ・・・」 カンは、思わず、後ずさりした。 その一人は以前・・・自分の肩に包帯を巻いてくれたあの女性であった。 ニルロゼが追いかける”ナーダ”を見つけようとしていたら、なぜか何度も出逢って話をした女性でもあった。「いよっ! お兄ちゃんが二人に囲まれたぞ! どうしちゃったのかな!!」 少年達が一斉にはやし立て始める。「う、煩いぞ、お前ら! ちゃんとご飯を食べろ! 大きくなれないぞ!」「はーーーーい」 少年達は比較的おとなしく従った。 一応知らないふりをしてくれている少年達の顔を見てから、首を竦めつつカンは女性をチラっと見た。「や、やあ・・・」 カンは、我ながら情けない声だな、と思った。 そして、包帯を巻いてくれた女性は、以前と同じように、つまらなそうに言った。「あなた、身重の女の班には、入らないはずだったんじゃないの?」 カンは必死に身を細くして、食事を食べてごまかした。「いや、それが、どうも、予定が狂った・・・」「あら、そう・・・」 女性二人は、その場に腰をかけた。 食事を食べ終わった少年が、ダッと女性に駆け寄ると、甘えるようにその膝に飛び乗った。「えーと、君は、もう子供が生まれたようだね」 カンは、口元をぬぐって言った。「あたしは、サーシャっていう名前よ」「は?」 カンは、女性をまともに見てしまった。「”みんな”ナーダじゃ大変だから、好きな名前を持ったのよ」 隣の女性が笑ってそう言った。「あ、あ、そう」 カンは、なぜか吹き出る額の汗をぬぐった。 そして、”サーシャ”の隣の女性に目を移してなにげなく聞いてみた。「じゃあ、君の名前は?」「あたしは、ニルロゼにしちゃった」「はあああああああああ???????」 カンは思いっきりのけぞった!!「じゃ、じゃあ・・・君は・・・」 サーシャが隣の女性に笑いかけた。「ほんと、物好きよね、ニルロゼは」「うっ・・・」 カンはもはや頭を抱えるしかない。「なんでよりによってあいつと同じに・・・・??? これから、ど、どうするんだよ、一体・・・」 と、サーシャがあっけらかんとして言った。「まあ、いいじゃないの。 どうせ”あの子”は、この子に興味持たないんだから・・・」 カンは思いっきり深いため息を吐き、がっくりとした。「・・・そういう問題じゃないと思う・・・・」 すると、後ろの方から、年配の女性がやってきた。「こら!!! ニルロゼ!サーシャ! ここにいたのね! あんたたち、子供が泣いているわよ!」「あっ! ルーフーだわ! 怖いのよ、あのおばさん! じゃあね~!!!」 さっと女性たちは立ち上がる。 カンは、頭を抱えたまま言った。「うわっ。 鳥肌が立つぜ、ニルロゼ、かよ・・・。 女の考える事は、ほんっとわからん・・・・・」 すると、サーシャが振り向きざまに言った。「わかろうとしないのも、よくないかもよ!」 まだ頭を抱えているカンに、しみじみと言ってきた少年がいた。「お兄ちゃん、大変だね」 カンはまたも溜息をついた。「そりゃそうだ。 わからないものは、わからない」 少年は、へへへっと笑った。「わかろうとしないからじゃないの」 カンは、思いっきりムッとした。 お前に言われたくないわい! だが、核心を突かれているのも事実で、声に出して反論できないのが悲しすぎた。 わかろうとすれば、わかる日が来るのかなあ・・・ 今日も、日は、西へと、沈んで行った。**************参加ランキングです **************Accel HPを、第5章までUPしました!海外の音色さんの音楽は、多分3章くらいまで入ってマス★最近のイラストはpixivにのっけてます。よろしければ。
June 23, 2010
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先ほどまで明るい朝日に包まれていた川辺が不意に、薄暗く覆われた。 上方で流れる風によって、大きな雲が運ばれ、太陽の光を遮ったのだ。 遠くの山並みは相変わらず明るく見えるのに、川辺に集まった男たちの居る一帯は不安定な薄墨の流れに晒されている様だった。 ブナンに集められた男たちの一行は、そのブナンの手によって一人ひとりが最後の挨拶を受けていた。 そして、レンハーが一人、残っていたのである。 そのレンハーは・・・なぜか困ったような笑いを辺りに見せた。「さあ、行け、行け」 茶色がかった黒い髪のビュッツが、レンハーの背を押した。 レンハーが、あまり気が乗らない様子で川に入って行く。 そして、川にそびえ立つ大樹のようなブナンと対面しようとしていた時だ。 これまで、ぼんやりとその様子を見ていたカンが、いきなり走り出した! 無論、川の中腹、レンハーに向けてである! すらっ 金髪の青年は、自らの腰に治めていた剣を抜くと、右手を大きく振って、その剣を飛ばした!「・・・・」 ブナンによって川に落とされ、川辺で火にあたっていた男達は・・・ 唖然とした。 カンの放った剣は、レンハーの首をすっぱりと胴体から切り離し、川に落ちて行った。 ダバッ その後、レンハーの体は・・・ 音を立てて、川に、倒れ込んだ。「カ・・・カン・・・」 思わず、エグゾがカンの近くに駆け寄った。 ブナンが、川から上がって来る。 唇を噛みしめ、両手の拳はキリキリと握られていた。「どういう事なんだ! これは!」 ロジーがカンに詰め寄った。「ブナン! あんたもだ、答えてくれ! 一体どうしたんだ!」 ジューロとビュッツも、血相を変えて二人に詰め寄る。 カンは、やや上を向いて、はっきりと言った。「レンハーは・・・ 赤の手先だ・・・・」「な・・・ なに・・・」 男達は・・・ 目をやや泳がせ、みな、驚愕した。「な、なんだって? 赤の手先?」 ビュッツが泡を食って言う。 カンは、ようやく緩んだロジーの手をどかしもせずに、そのままの姿勢で言った。「おかしいと思わなかったか? あのハーギーに行ってくれと言ったのは確かにブナンだ。 だが、帰って来たレンハーの様子は、ここで一緒だった時のあいつと、同じだったと、思うか??」「・・・・」 しっかとしたカンの言葉を聞き、仲間達は・・・段々、怒りの顔色が不安の相へ変わってきた。「しかし、実は、確証はない・・・ もしかしたら、本当は、仲間だったのかもしれない・・・ だから、俺は間違っていたのかもしれない」 カンは、ちらり、とブナンを見た。「ブナンは悪くないのだ。 俺が表立つと、まずいから、立役者を頼んだのだ・・・」 ブナンは、カンの視線を受けると”ニルロゼの剣”を、中で2回転させ、言い放った。「そうとも。 あいつが、手先になったかどうかなど、誰もわからない。 だが俺は、カンに一杯喰わされた。 だから、だまされる俺も悪いってわけさ」「ブナン!」 カンは、思わず大男の方へ向き直った。「違う! あんたは悪くない・・俺が先入観を植え付けたから・・・」 ここまで来て、エグゾが呆れた声をだした。「で、確証もなく仲間を斬った、と。 それじゃあ、この俺も、斬られてもおかしくないな」 そしてカンの方に歩み出る。「どうだ? そういう事にならないか?」 エグゾの肩に・・ジューロが手を置いた。「いや。 レンハーは、赤の手先だ」 エグゾは今度はジューロに叫んだ!「なぜ判る!」 ジューロは、ブナンの持つ、ニルロゼの剣に指を刺した。「あれは、ニルロゼの剣ではない」「なに?!」 エグゾ、ロジー、ビュッツが声を出した。「よくよく見れば、判る。 幅が広いし、”使った跡”がない」 ジューロは、ブナンの方に行き、”ニルロゼの剣”を受け取った。「ニルロゼの剣は、もう少し幅が狭いし、もう少し弧を描いている。 これは、違う剣だ・・・」 ジューロは深い緑の瞳を剣に落とすと、美しい剣の腹に、指をあてがった。 ロジーが・・・こぼすように言った。「・・・違う剣? それが、レンハーが手先だと判る理由なのか???」 ジューロは頷いた。「勿論だ。 お前ら、ニルロゼの剣を、きちんと見たことがないだろう? だから、この剣を、あいつの剣だと思った・・・ だか、俺はあいつの剣を知っている。 これは、違う」 エグゾが・・・カンを穴を開くほど見つめた。「・・・・ レンハーは・・・・ ニルロゼの剣を知らなかったというのか・・・」 カンが、頷いた。「そうだ。 あいつは、ニルロゼの剣をきちんと知らないはずだ。 ニルロゼの剣は、だれもが興味を持つ・・・ だが、細部までは知らない」 カンは、ジューロを見て笑った。「だから、途中でお前が気が付いて、違う剣だと言ったらどうしようかと、冷や冷やしたよ!」 エグゾが、まだムスッとしながら言った。「だが、ニルロゼの剣に興味を持たないという理由で、赤の手先と言い切れない・・」 カンは、ジューロから剣を受け取った。「いや、かならず持つ・・・」 カンは、瞳を細めた。「赤は、ニルロゼが斬ったのだから・・・」 びゅう・・・ 冷たい風が男たちの間を吹いて行った。「エグゾ。 お前の言うとおり、あまり、確証がないまま、仲間を斬った。 俺の勝手な判断なんだ。 俺を斬れ」 エグゾはカンを見据えていたが・・・ 震える右手を、下ろした。「自害する勇気がない奴を斬るくらい、俺は廃れていないな」 エグゾは吐き捨てた。「で、ビュッツ、ロジーはどうだ? この裏切り者を、斬るか?」 エグゾの言葉を受けた他の二人も、黙っていた。「カン・・・ この剣は、なんだ、一体・・・」 エグゾは、再度歯を鳴らして言った。「すごく似ている・・・ レンハーを騙すために作ったのか? だとするには、よくできすぎている・・・」 カンが、答える前に、ジューロが言った。「なに、どうせ、ニルロゼが、東の鍛冶から貰ったんだ」「なんだと?」 エグゾを見ずに、ジューロが笑った。「考えて見ろよ。 ニルロゼはいつも、二日の時間を赤から貰っていた。 その時間を使って鍛冶の所へ行っていたんだろう? だが、今回はあいつ、たしか五日くらい、時間をかけている。 見たこともない、カンという男のために剣をくれと、必死に鍛冶に食いついていたんだろうよ」 ハッと笑い、エグゾはカンを見た。 ブナンが、ゆっくりと二人の間に割り入って、カンに剣を手渡した。 ブナンが言った。「みんな。 よく考えるんだ。 最初、レンハーは、なんと言った? ハーギーが”燃え続けている”と言ったはずだ。 なのに今日になって、燃えていないところもある、と言った」 ブナンは、一際高い声で言った。「そして、あいつは”必死になって”逃げてきた、と言ったはずだ。 なのに今日になって、残りのハーギーに追われるのが怖くて、なかなか出られなかった、と言い出した」「・・・」 男達が静かになった。「どうして話が食い違ったか、判るかな?」 ズシリと厚みのあるブナンの言葉に、誰も答えられない。 ブナンは、じっくりと言った。「昨日、カンは、ニルロゼに言われたそうだ。 ハーギーは燃えていない、大人も出てこない、とな・・・」 はっ、とエグゾの顔色が変わった。「・・・話が違っているわけか・・・」 ブナンが頷いた。「その通りだ・・・」 カンは、剣を抜いた。「その話。 あいつのでっちあげだろうよ・・・」 剣に朝の光が反射した。「ジューロの言うとおり、あいつは・・・ 見たこともない、カンという男のために剣をくれと、ずっと鍛冶のところにいたに違いない。 あいつの作り話さ、ハーギーのことは・・・」 ブナンが話を引き継いだ。「ニルロゼが、カンを試してみたのよ・・・ わざと、違う話を出して、レンハーをどうするのか、な・・・」 ブナンは、分厚い腰に両手をあて、脇の青年に言った。「あんな子供に試されるとは、ずいぶん堕ちたものだな、カン」 ジューロが横から言った。「カンに騙されるブナンはどうなるんだか?」「おお、これは痛い痛い・・・」 くっくっく、とブナンは笑った。「エグゾ、ロジー、ビュッツ、まだ、不満はあるかもしれないが、俺の顔を立ててくれ。 俺が信頼している男だ、間違いないだろう・・・」 エグゾが、ケッと応えた。「ブナンに勝てる訳がない。 そんな勝負は、受けないね・・・」 **************参加ランキングです **************●猫勝手にご復活キャンペーン実施中!参加されたい方はページをお読みのうえ、ご参加意思をコメントか掲示板、またはメールなどでお寄せ下さい☆●フォトアルバム整理のため、フリーページ大改造しました! 向かって右側のFreepage Listに多少イラストを載せましたのでお暇な時にぜひ~(^^Accel HPを、第5章までUPしました!海外の音色さんの音楽をお楽しみ下されっ★最近のイラストはpixivにのっけてます。よろしければ。
June 19, 2010
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はあああああああああああああああああああああああっ(深いため息)すんげえがんばった俺~ほめて~猫に小判にゃんにゃん~猫じゃらしでもいいよ~(イミフメイ*******セツメイシヨウ!********インカに密やかに咲く可憐な花、コイユールをこの手にせんとする男は、数多くいた。そして、その噂を耳にするだけで、顔かたちも知らぬというのに彼(か)の少女を一目この目に収めようとする男も増えてきている・・・・あくまでもしおらしく儚く、夢のように佇むと言われる幻のようなその少女をめがけ、男どもはインカへと突撃していたのであった!!その襲撃は彼女に向けられるばかりではない。彼女を狙う者同士も討ち合い、はたまた関係ない男も狙われる始末とまでなっていた。男どもから身を守るべく山岳の奥に居た、インカの皇帝の子イポーリトとその護衛達は、とうとう、彼らの餌食の的となってしまう。しかしその前にやって来た一人の男・・・イポーリト達の抜け道路を使わせてくれ、と、ぬけぬけとやってきた男、その男の名はシモンと言った。シモンもまた・・・・コイユールを狙う男でもあった。シモンと話し合い、己もコイユールへの愛を確たるものと感じる皇子!!「シモン!あなただけ抜け駆けはゆるさない!」「悪いね!これが大人の恋の戦術さ!!!!!」まだ幼い皇子の恋の行方は・・・そして、シモンの後に来る、大軍との決戦に向け、皇子は何度か目の怒濤の渦に巻き込まれる予感に翻弄されているのであった!!!!!!!!!***************************** ↑ このセツメイはすごくアレですwww ★☆★☆★☆本当のシーンはこちら★☆★☆★☆あーーーちかれた。金色入ってます~シモンばっか目立ったので、馬より小さい背なのに、14歳のイポさんを目立たせるかにかなり苦心いたしました。気づいてくれる人がいるかどうか・・・下書きシモンとはかなり違くなりましたよっ★でわねるのだーーーーーーーアヂューっ!!!
June 13, 2010
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とうとう、今日は皆が散り散りとなる日であった。 その朝・・・。 朝とといっても、まだ日が昇っていなかった。 薄暗い中で、いかつい体を堂々と揺らしたブナンが、数名の大人を集めた。 ラサ。 ジューロ。 エグゾ。 ロジー。 カン。 レンハー。 ビュッツ。 彼らは、それぞれ、4つの班に別れ、これから班の纏めをしていくこととなっていた。 ブナンは、近くに長れている大きな川辺まで、彼らを来させた。 そして、先に川辺に胡坐をかくと、どっこらせという感じで酒瓶を両脇にドスンと置いたのである。「おお、寒い中、悪い悪い。 俺らは、これから、別れ別れになる。 まあ、こうやってしんみりお別れするのも最後。 酒を用意しておいた。 まあ座れ」 ブナンは右脇に置いた瓶を取ると、直接口を付けて酒を飲み始めた。 エグゾは、はやくよこせといわんばかりの目線を送りながら腰を下ろした。 レンハーは、すっかり足を投げ出して、くつろいでいる。 ブナンは、すっかり髪をそりあげた頭をなで、へへっと言った。「いやあ、レンハー。 今回の功績は、一番お前があげた。 よく生きていてくれた。俺は嬉しいぜ」 ブナンはまず、レンハーに酒瓶を手渡した。「そうだな!」「そうだそうだ」 皆、口を揃えてにこやかに言った。「俺とレンハーは、身重の女の班に行く。 他の仲間は、お前と別れ別れだ。 レンハー、最後に、仲間になにか・・・、言っておきたいことがあるか?」 ブナンは、深緑の瞳をレンハーに向けた。 レンハーは、もじもじしている。 すると、ジューロが脇から言った。「数日は、ハーギーに居たんだろう? どうだった?」 ハーギーの言葉を聞いて、たちまち一同は、ふっと顔が険しくなった。 レンハーは、下を向いて静かに応えた。「うむ。 ハーギーは、燃えている部分と、燃えていない部分があった。 残りのハーギーには数名遭ったから、追われたら怖くて、なかなか出られなかったんだ」「燃えていない部分・・・」 エグゾがつぶやく。「まだ、ハーギーには、何人か居そうか」「まるで見当がつかない・・・」 ラサが問うたが、レンハーの応えは短かった。「抜け出してから、誰かに追われたか?」「いいや・・・」 他にも質問をした物がいたが、ぽつり、ぽつりとしたやりとりだった。 レンハーの隣に座ったロジーが、酒を取り上げた。「どっちにしろ、まだ、ハーギーは、”生きて”いるようだな・・・」 ブナンは、すると、酒を回せ、と手で合図した。「ああ、ところでだ。 実はこうやって集まって貰ったのは他にも理由がある。 あのカンがなあ。 ニルロゼの剣を貰ったそうだ」「えっ!?」 皆が、驚きの目を向けた。 カンが、にこりと笑う。 ブナンは酒瓶を手に収めると、残りを一気に飲み干し、それを地に置いた。「俺もなあ、あの剣に、とても興味があるのでなあ。 どうだ、みんな? あいつだけ貰うなんてずるいと思わないか?」 ラサが、ムッとしながら答えた。「おお、あの剣は、たしか東の鍛冶の剣だったな? そりゃ、すげえ」 そうだ、と他の男も言った。 ブナンは、立ち上がると、にっこりと言った。「とりあえず、見させてくれよ。 いやあ、触ってみたいもんだ」 金髪の青年カンは、ひょい、と右手を上に上げた。 すると、剣が・・・ブナンの方に、放り投げられる。 恐ろしいカンのその腕の力と、技量を示しており、音もなく正確にブナンの腕に剣は収まった。「ほう」 ブナンは、剣を抜いた。「これはすばらしい」「ブナン、俺にも!」「まあまあ、エグゾ、慌てるな。 右廻りから順に回そう」 ブナンは、ラサに剣を渡した。「へえーー。 すごいもんだ。 思ったより、軽い」 ラサは、立ち上がり、何度かその剣を振った。 そして、隣に渡す。 美しい剣は、ジューロ、エグゾ、ロジーの順を回った。 そして、カンの元に・・・「ほい」 カンは、剣を抜かず、レンハーに渡した。 レンハーも、剣を抜いて、振ってみた。 そして、最後のビュッツに渡した。 渡り終えると、ブナンが言った。「カンは、まだ若いからなあ。 俺に、頼んできたのだ。 この剣を、ぜひもっと”使える男”に渡したい、と」「なんだってっ!?」 男達が、色めき立ち、瞳に虹を浮かべて湧きあがっ!「す、すげえ!」「本当か!?カン!?」 皆の目線を受け、黙ってカンは頷いた。 ブナンは、逞しい腕で剣を掲げた。「そういう訳だ。 俺こそ、という男はあるか」 と、言われると、男達は、ただ、顔を見合わせるだけである。 ブナンは、笑って、川を指差した。「じゃあ、あの川に投げてしまうぞ」「な、なにーーー!?」 男達が、再度騒ぐ。「じゃ、じゃあ俺が」 エグゾが立ち上がる。「ほう」 ブナンは、顎で川を示した。「俺から取れたらやろう」 ブナンは、素早く川に入った。「こっちへ来な」「望むところ!」 二人は、鞘のままの剣で戦い始めたが、あっという間に勝敗がついた。「あちゃー」 ビュッツが腹を抱えて笑った。「ブナン相手に勝てる奴は、いるのかよ・・・ハハハ」 そういいながらも、彼も川に入っていく。 ブナンと闘うなど、これからもうないのだから。 とうとう、闘っていないのは、カンとレンハーだけになった。「レンハー、行けよ」 ブナンに倒され、水に濡れたロジーが笑いながら言った。 もう結果はわかっている。 ブナンのやっていることは、「その結果ではない」ことが、判明しているのだ。 ブナンは、こうやって互いに剣を合わせ、呼吸を交わし。 最後の別れをしようとしているのだ。「ブナンとやりあうなんて、もうないぜ」 ジューロも笑って、レンハーに言った。**************参加ランキングです **************●猫勝手にご復活キャンペーン実施中!参加されたい方はページをお読みのうえ、ご参加意思をコメントか掲示板、またはメールなどでお寄せ下さい☆●フォトアルバム整理のため、フリーページ大改造しました! 向かって右側のFreepage Listに多少イラストを載せましたのでお暇な時にぜひ~(^^Accel HPを、第5章までUPしました!海外の音色さんの音楽をお楽しみ下されっ★最近のイラストはpixivにのっけてます。よろしければ。
June 7, 2010
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上のお題は『ユリゲラーになりたい!ほしかった、あの超能力!』超能力って、あったらいいですよね~ステキ~☆でも、全部が全部使えたら困りますよね、たぶん・・・ひとつだけ、使えるならなにがいいですか?俺は「ワープ能力」そう、空間高速移動能力。A地点からB地点まで一瞬で移動する能力である。先日書いたオリキャラ達は、このワープ能力で星々を飛び歩き、果ては・・・●にも行きつくという内容になっています。次に欲しい能力は「ビーム発射能力」手とか目とか額とかwからビーーーーム!!!出して相手をやっつけたら、えんらぐきもぢいがんべな~!!!!次に欲しい能力は「動物が啼く言葉を聞き取る能力」あ?あれ?おれ、これを一番先に欲しくないの?おーい???*****************風とケーナさん用イラスト。珍しく途中経過です。彼の脇にもう一人誰か立ちます。コノカタが誰かはヒミツ~(って判るかっつうの!!!怒((BYケーナ様ケーナ様様から愛を分けて頂いたアレを模写しています。う・・・うまが・・・・馬がうまが馬があああああああああああああああつ・・・つかれたぽ・・・仕上げに何日かかるだろう。
June 5, 2010
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あーどもっ☆ご心配をお掛けしました。この猫も「知恵熱」みたいなものが出たらしく死んでまして、申し訳ありません。それで、プレゼントキャンペーンを開催いたしますので、よろしかったらどおぞ。**********************今、楽天でフラワーガーデンキャンペーンたるのをやっている。俺はあまりポイントに興味ないのでいつもはスルーなんだけど、ヒマ人なのでやってみてました。今日は『結婚式の引き出物、何あげる?何ほしい??』 のテーマ。引き出物は、貰うと困るの第一位が「寝具類」第二位「皿類」(重い)第三位「かまぼこ、かつおぶし」昔は開けるとがっかりするものが多かった・・・・太郎&花子って名前が入っているのも多かったなあ・・・・では俺が欲しいのは、素敵なグラス(バカラとか)ホウロウのキャニスター北欧系のフトンカバー・シーツ欲しいものって、人それぞれ、価値が違うから、やっぱ一番いいのは「カタログギフト」とか商品券なんだろうけど、でもそれじゃ味がないよね。一番記憶に残っているのは、函館での引き出物・・・新婦が焼いたクッキーと●●だけ、だったなあ。その●●がなんだか忘れたけど、手提げポーチ並に小さくてびっくりした。函館はシンプルって聞いてたけど、それがベストなのかもね。東北がゴタゴタやりすぎなんだって・・・(^^:::)**************************むか~しむかし、俺が0938(オクサマ)だったころ・・・・フッ(遠い目)に作ったHTMLを加工して、主婦向けっぽいHPを作りました。度胸のある方はどうぞ・・・フッ・・・(ため息)トップはまだリンクが外れてますんで。そこんとこ4649.
June 5, 2010
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演奏の件ですが・・・ドタキャンになりました。以前から目がおかしいと思っていたのですが、とうとう耐えられず眼科に行ったところ飛蚊症『(ひぶんしょう)とは、明るい所(白い壁、青空)などを見つめたとき、目の前に虫や糸くずなどの『浮遊物』が飛んでいるように見える症状のことをいう』になっていました。随分症状は落ち着きましたが、目のせいで全身が萎縮するほど、見えないのを庇っていました。これではとてもでないけど俺は演奏できないので、今回はパスということになりました・・・まあ、演奏の機会はまた来るでしょう。ファイトだ俺。という訳でしばしネットサーフイン、コメント、レス、お休みです4649。絵のモデル用にフィギアを多数増やしましたwドレがナニかは説明しませんwww携帯には例の石を。偶然見つけたステキなミサンガにつけてみました。携帯の近くのモンスター、アレはなにかのおまけだろうけど他のに比べすごい凝ってるのが判りますよね。オマケなのにすごいなあ、作る人も泣かされたろうなあ・・・・・************************お気に入りの ネオ・リーブスさんのマネ。手塚 治虫 の「プライム・ローズ」を、俺は途中までしか読んだ事がなかった。理由は実家に「その部分までしか」なかったから。俺の母が手塚先生の漫画を持っていて俺が読んでいた、と言う訳だ。ずっとずっと、アレの続きが気になってしかたなかった。で、ひょんな拍子に買う事にしたので先日注文。文庫版です。****主人公プライム・ローズは、国の王女。生まれた時、戦争でいがみ合う隣国の王子と人質交換をさせられた。そして高貴な家の娘エミヤとして育てられていた。隣国の王子の一人ピラール殿下はある舞踏会でエミヤに目を付ける。事あるごとに彼はエミヤに接触を図るが、エミヤは激しく拒絶するのだった。エミヤはタロに恋をしていたが、タロはエミヤの父によって「コロニー」へ投獄させられる。コロニーに向かうエミヤはコローニの監視員であり剣の先生、ダンパラ・ガイと出逢う。先生「なぜそこまでしていかなくてはならない?」エミヤ「あんた恋をした事があって?」もう少しという所でピラールが待ち伏せしていた。殿下は脱走したタロを見つけるため必死に現場へと向かう。が、手違いでタロは撃ち殺される。一方先生はエミヤに激しく想いを寄せる自分に葛藤していた。そこへ殿下からの呼び出しが来る。殿下「お前はどうも胡散臭い。 コロニーの内部を嗅ぎまわっているスパイだな?」先生は激しく抵抗し白状せず、その弟子が自白台に乗せられる。出た映像が、エミヤだった。エミヤと先生が共に居る映像で嫉妬し、殿下は先生を「C地区」に送る。かくして先生はC地区の秘密を握る機械と出逢う。先生が選ぶのは愛か?死ぬ未来とは・・・?(中略)数々の冒険と経験を経てエミヤは自らの師を得、己を鍛えていたが、そこになぜか殿下が加わる。どのようにしてくれようと心煮える殿下。殿下が選ぶのは愛か、地位か・・・・という所までしか読んでなかったので。続きは、これからゆううううくり読みます。**********************************今更思い出しましたが、小説のネタはもう一つあるんです。今のうちに手の内を明かしておきましょう・・・何を隠そう、恐れ多くも手塚治虫先生の火の鳥がベースになっている物語です!!!!!!題名 まだ不明舞台は宇宙。登場人物リストロン星のリストロン家の王子 リストロン・オーレア(リオ)。ワレラがヒロイン アフェル。オーレアの友人フェストリア(フェスト)。モフレト星のモフレト家の王女 ライテナ。(リオの婚約者) ある日フェストは自宅の庭で記憶をなくした少女を見つける。名前だけは覚えていたが、他は全く思い出さない。フェストはリオとアフェルを引き合わせる・・・宇宙一!剣の腕が立つフェスト、そしてリオがどんどんとアフェルに翻弄されていくという衝撃(?)な小説~~になるよてい~wwwwww
June 2, 2010
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★意味不明な方はスルーして下さい☆おらほの近くさちょっくらコーヒー家あってさー。まんず、山ちゃんっつ人さ教えで貰ったんだけど、そこはまあうめえんだな。店長もきさぐだし、店も小ぢんまりしてであんまおっきぐねし、あんばいええんだな。そすたれば2がいさゲーム機置いでんのな。そいずがまあ、アーケードゲームっわけだ!!!まんずあいなのどっから持ってきたんだか、ホンモノな訳よ!!懐かし~なあ~100円入れるど、へっへ、おねえちゃんが出てくるマージャンとかできるわけ!!!俺も昔はずいぶん、アーケードゲームやったな。↑の、アーケードゲーム機と「同じ形の貯金箱」があったんだよあんだ!!!!!まんず見らいんでば!100円入れて、ゲームできて、貯金できて一石三鳥!!!!こらおったまげだあああああああああ!!!!!ペットロスになっているらしいので、ついつい動物のミニチュアを買ってしまいました。まんず、コーヒーでも飲まいん~。ピクシブに乗っけた「ゲームセンター承太郎
May 30, 2010
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つたやで3本千円げえむコーナーより漁ってきました。左から●ジェダイ・スターファイター どうやらシューティングゲームらしい。●ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド ジョナサンとディオさまさまの物語! 感じてくれっ!これが勇気の産物「波紋疾走(オーバードライブ)だ!!」 ドッギャアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!! バコオオオオオオオオオン!”!! らしい。●のだめカンタービレ 昔欲しいと思ったけどあえて買わなかった。 どんな感じかな?*******************************実は俺ってジョジョ好きなのよねん・・・・・・うふっ。ジョナサンとかジョースターとかじょーたろーとかうふ。いやん。イケメンによわいのん。千秋も好きだわん。だから玉木が好きだわん。どうしよう(なにがあと、シューティングが死ぬほど好きです。俺ははっきり言いましょう、ゲームセンター(昔の)に出入りしてましたよ。げーむせんたーあらしの世代です。俺、何歳?みたいな。いやん。きいちゃだめよそんなの。
May 30, 2010
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ヒミツでコッソリ風とケーナさんに、「●●」を描こうと『世界遺産 中央・南アメリカ』(厚さ約2.5センチ)を借りてた俺。ウツクシイ風景、雰囲気、装飾品にウットリはあと~(((●^^^^●本日よく行く中国料理屋に行ったらそちら方面の石が売ってて、チラリ見たら! な、ナニゲに「●●」が使いそうなみたいなカンジなftpwmbフジコ!!!大 5センチ位中 3センチ位小 15ミリくらいうっほおおおおおおおおおおおおおウツクシイイイイイイイイイ(^^^^^^^^余は満足ぢゃ。ふぉおおおおおっふぉff***********この石は、「十五眼 天珠」というもののようです。札には 「願望成就」と書いてます。きっと、願いがかなう石として大事にされているんでしょうね。石ですがガラス玉のようで、重くて、不思議な翡翠とかそういう感じで自然にできて行くんだと思います。模様は石を彫ってその上に何かを埋めているようですね。(ケバだっているのは、値札シールがベッタリくっついたままで。 水に入れておけば綺麗に取れると思います)素晴らしい工芸品です。
May 27, 2010
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こんばんは。ハムが旅立ち、傷心冷めぬ俺らですが・・・いきなり、演奏のチャンスが巡ってきました。相方がしばらく演奏する機会がなく、楽器を吹きたい吹きたいと騒いでいたので情報を探していたのですが、突然5日!!!に、公共の場での演奏のチャンスが!!!!!渋る相方を必死に説得し終えたところです。楽器はトロンボーンといって、あまりメジャーではありません。単身だと、ホントおもしろくないです。サックスやトランペットならキマルんですがね。ので!!!!!!!!!この俺が、伴奏することにしました!!!!!!!!!!!!!!!!!!といっても、実は・・・電子ピアノがあるものの全く触っておらず、まともに弾かなくなってン十年だぞ俺・・・・・・・・だいじょうぶ~???でも、このチャンス、逃したくないんです!どうしても相方に吹いて欲しい。これから必死に、マジ必死で練習しますので、ちょいUPできません。ちなみに曲は「キラキラ星変奏曲」きらきらひかる おそらのほしよ まばたきしては みんなをみてる きらきらひかる おそらのほしよきらきらひかる おそらのほしよ みんなのうたが とどくといいな きらきらひかる おそらのほしよおそらのほしに・・・たくさんのおもい、とどけ!画像は「のだめカンタービレINヨーロッパ ミュージックガイドブック」(月刊ピアノ)よりこの譜面はピアノソロです。上の部分をトロンボーン、下の部分をピアノにする予定でした。が、相方が上のトリルが大変だというので、俺がすることになりました。赤で色を塗った部分が主旋律「キ・ラ・キ・ラ・・・」の音です。トリルは後ろになると最高潮になり、「のだめ」に載っているヴァージョンは「やさしい」と書いてますが、ハードです・・・・がんばります!
May 26, 2010
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このイラストはpixivに大きくのっけてあります。よろしければ御覧下さい。寝たのは今朝2時過ぎました。今からもう一回寝ます。相方はフツウに仕事に行きました。俺も仕事してた時は、どんなに辛くても、どんなに遅くまで看護しても次の日仕事に行っていた・・・ハムよ、ほんと、ごめんね、今まで・・・・うう・・・ごめんなさい。
May 26, 2010
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ゴールデンハムスター(以下ハムと略)が、年も年だけど、今朝急に横に寝そべって動かなくなってしまった!!!今日俺は、俺自身の病院の日で、それが10時からだったんだけど、もう超ハムが心配で動物病院優先したよ(p・Д・;)あまりに動揺して、ひとつまがりかどっひとつまちがえて♪かなり別方向に!!!!!オォォーーー!! w(゚ロ゚;w(゚ロ゚)w;゚ロ゚)w オォォーーー!!ダメぽ、俺だって、俺の病院行かなきゃ、ヤクがなきゃ禁断症状なっちゃうから、慌ててUターン。勿論、ハムを運ぶ為の専用ミニケージがあるけど、更にそれを保冷機能のある、「普段買い物マイバック」に入れて!更にその上にアイス●ン乗っけて!だって、車のなか熱くなるよ、俺が病院行ってる間・・・・動物病院では、とりあえず食欲はあるね、という事で、もう仕方がないね状態。覚悟はしてたけど。ペットショップでビタミン剤と、注射器(水を飲ませるために)を買おうとしたら、注射器は置いてない。100均でも、薬局でもない!!!俺が子供のころよく遊んだような、注射器って、ないんですかねえええええ・・・・・薬局で、子供に飲ませる離乳用吸い口を買った。600円。で、帰ってきたら、いつものペレットが食べられなくなってる!!!!(持つ事ができない)うがああああペレットをミキサーにかけて、吸い口からやろうとしたら吸い口がない!?!?!?病院で、そして動物病院で、途中のスーパーで、時折水を飲ませていたから、ぜったいどっかにあるのにないないない!!!!!!食べたがってるからスプーンで与えてます。が、スプーンからやるのが大変なのでやっぱり吸い口が欲しいです!今から買いにいきます!!!!目を開けていることもできなくなているうちのハム。。痛々しい写真ですみません。もしかして最後の写真になるかもしれないと、これでも綺麗なものをここにUPしてます。もう自分でグルーミングもできないので、赤ちゃん用のシートでケアしてあげてます。ほんと、元気な時は、全然手乗りになってくれなくて、あんまりオモシロミはないんですよ、ちょっと。なのにどうしてだろう・・・いつも、いつもなんだ。ハム達、全部そう。死にそうになると、その時初めて、可愛いな、もっと生きて、お前のこと大事だよ、って思うんだよね・・・・ううう。。。やばい涙出て来た。では吸い口買ってきます・・・・
May 25, 2010
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カンが、川辺で包帯を巻いて貰ったナーダに語った内容は、その翌日、集団を作っていた皆に伝達された。 できるだけ早く、この集団を4つに分ける、と。 威厳と人望のあるブナンを筆頭とし、主だった大人達が、平等に人々を分けて行く。 まずは、男と女に。 次に、年齢順に。 そして、強い男らは均等に4つの班に分散されるよう、配慮された。 カンは、友のロジーと、少年らの分配に行き交いしていた。 人の表情というものは、ある程度見抜ける。 同じ班ではなんとなく立場が悪そうな雰囲気を出す者は、考慮し別の班に回したり・・・ 離れたくないという友同士でも、別の班に入れる提案もした。 班では、心、技、体の調和が必要だ。 仲がよい者が多く集まると、その者ばかりの意見が押し通される場合もある。 調整は難航していた。 ざわつく沢山の人々に指示を出しながら、カンはニルロゼの姿がないのに気が付いた。 そして、数日経過しても、ニルロゼはどこにも見当たらない。 この期に及んで逃げたり、どこかの輩に殺されるような男ではない。 心配に及ばない少年であるが、ややひっかかるのであった。 班がいよいよ分かれる日が来るという時が近づいていた。 ハーギーを出た集団の元に、ある人物がやってきた。 その人物は、レンハーという男だった。 重要な使命を帯び、これまでずっと、この集団と別行動を取っていた。 彼は素晴らしい脚力で、この集団が逃げて来た逆の方面・・・ハーギーへ行っていたのだ。 最新のハーギーの様子を見、それを皆に伝える役目を終え、必死になって逃げ伸びて帰って来たのだ。 レンハーは、ぎらつく瞳と、乾いた喉を潤す暇も惜しむように、恐ろしい事実を語った。 ハーギーが・・・ 今でも、燃えている。 赤い色を放ちながら・・・ 赤い色。 それは、あの恐るべきメルサの色・・・。 よもや、ハーギーは機能しているのか? いや、メルサが生きている!!?? 剣士達は一同に戦慄し、驚愕した。 もう、一刻の猶予もなかった。「明日にも移動を開始するぞ!」 ブナンが叫んだ! とうとう、集団は全体的に4つに区切りがついてきた。 その中の一つに収まっていた青年カンは、やや楽になった左肩を撫でて、ふっと空を見た。 ニルロゼ、一体どこに行っている? 夕方。 数人の大人の男達が話しこんでいる所に、誰かがやって来た。 その人物を見つけたのはジューロだ。「ニ、ニルロゼじゃないか?」 その声を聞いて、カンも振り向く。「ニルロゼ! どうしていたんだ? 全く、一人で行動なんて、危険だぞ」 ニルロゼは、やや荒い呼吸を吐き、ぐったりと両膝を地面に付いた。 近くに居たクュートが、逞しい手で少年を柔らかな藁の上に運び、いたわった。 が、カンの言ったとおり、別行動は、レンハー以外は許されていない。 大人たちは戸惑いを隠し切れなかった。 少年は、閉じた瞳を開けもせず、ごろりとうつ伏せになって言った。「ハーギーが、なんか、怪しい・・・」 大人たちは、顔を見合わせ、異口同音に言った「それは、もう判っている って・・・!! お前ハーギーに行ったのか!?」 誰かが大声を上げた。 大人たちは驚き、呆れ、そしてやや怒りを含んだ声を上げた。 怒るのは当然で、この集団は規律を守らないと成り立たない。 だというのに、一人で勝手に行動し、その上・・・ハーギーに行って来たとは。 そんな仲間の声を聞いて、逆に冷静になって来たカンは、いや、ニルロゼの気持ちは判る、とキラリと青い瞳を光らせる。 レンハーがハーギーに行っていたのは、ニルロゼは知らない事だった。 俺が一番、あいつの近くに居たから判る。 ハーギーがどうなっているのか、あいつは自分の目で、見たかったに違いない・・・「これから、どうするんだ?」 少年は、首だけ大人たちの方に向けてぼんやりと言った。 カンが素早くそれに答える。「明日からこの集団は、4つに分かれて移動する。 もしハーギーに攻めて来られたら、これだけの人数、目が行き届かない」「そう」 ニルロゼは、カンに目配せした。「カン、こっちの話が終わったら、来てくれ・・・」 少年は気だるそうに腕と膝を使って体を起こすと、じっくりと時間をかけてその場を去って行った。「しかしなんじゃ? あいつは・・・」 そういうレンハーに、カンが応えた。「剣は強いが、他の事にはぜんぜん疎い子供だよ」 すっかり夜が更け、カンは少年が居いそうな所へと向かった。 彼の思った通りの所に、蜂蜜色の髪の少年が居た。 いつぞやの朝、カンが少年を質問攻めにした場所だ。 まだそこには・・・カンが怒りを込めて剣の柄で叩いた丸太があった。 その前に、少年がきっちりと正座していた。「カン。 俺は、折り入ってあんたに頼みがある」「な、なんだ、改まって・・・」 カンは、やや焦りながら、丸太の前に座った。「ハーギーに行って来たよ、俺」 なに? 同じことを言うニルロゼが、なにを意図するか、一瞬カンには飲み込めなかった。「ハーギーは、遠くから見ると燃えているようだった。 だけど、近くへ行くと、それは幻で・・・ そう、まるで、メルサに纏わりついていた赤の色が、ハーギーを包んで居た、そういう風に感じた。 中にも入った。 ハーギーの大人の居る気配はあったけれど、敵は殆ど誰も出ても来ない。 ”アイツ”の部屋にも行ったけど、特段変化はなかった。 だけど、なにか、おかしい」 カンは、冷や水をかけられたように顔が引き締まって来た。 ハーギーを、潰さなければならぬ。 その思いに、キリキリと、腕が、手指が、闘士で充満されて行く。 それにしてもこの少年は・・・ そして、この俺も・・・ やはり、戦い抜く宿命か・・・「カン。 あんた、言ったよな。 メルサの力の元があると・・・ 俺、それを探そうと思うんだ」「なに?」 少年、ニルロゼは、ゆっくりと言った。「俺は、4つの斑どこにも入らない・・・ 俺は、メルサの力の元を探す! 俺は、そうしたい!」 ニルロゼが、真っ直ぐに青年を見据えている。「カン・・・ あんたに、頼みたいんだ。 ナーダのことを・・・。 俺は、あいつのことはさっぱり判らない。 けれど、あんたは”知っている”んだろ? なんだか俺は、あいつを悲しませるようだし。 カンは、頼れるからな。 俺は、本当は・・・」 ニルロゼはそこで初めて下を向いた。「本当は、ナーダの傍にいたい。 けれど、俺は、赤も、追いたい。 だがふたつのことは、選べない」 青年、カンは、あまりの事に両手が震えた。「ニルロゼ」 カンは思わず首を左右に振り、奥歯で物を言った。「かなり、自分勝手だ。 お前は・・・」「そうだね・・・」 カンは、改めて目の前の少年を見た。 こいつは本当に、俺よりも10位、年が下なのだろうか・・・ 恐ろしいことを言う男だ・・・ ヘッと顎を上げ、ぶっきらぼうにカンは言った。「勝手にしろ」「悪いな、カン」「でも、俺も、女の居る班に入るつもりはない」「ど? どうして?」 カンは、フフッと笑って応えた。「そりゃ、本当は俺も、全然わからないからさ」「な、なんだって・・・?」「そりゃそうだろ。 わかるわけない。 女の事は、ブナンの斑にまかせた」「そ、そんな」 ニルロゼはあっという間にヘナヘナと倒れこんだ。「じゃあ・・・ナーダはどうするんだ? あんたに頼もうと思っていたのに・・・」 カンは、しみじみと、少年に言い聞かせた。「いいか、女だって、好みというのがあるのだ。 ”あの女”はお前を好きだが、女達が必ずしも俺を好きになるとは限らない」 ニルロゼは、恨めしそうに唇を尖らせ、言った。「好きとか、関係ないじゃない」「は?」「好きって、必要かよ」「は・・・?」「好きじゃなきゃ、守れないのか?」 カンは、ドキリとした。「あんたなら、きっと、守れるよ・・・」 金髪の青年は・・・ とりあえず、頭を掻いた。「そ、そうかな・・・」「俺が好きになった男なら大丈夫だ」「うぐっ」「なんで嫌そうな顔をするんだよ」「お前、すごく、矛盾しているぞ・・・」「だから言っただろうが、信頼しているんだってば」 ニルロゼは、赤くなって言った。 カンは、ようやく渋い笑みを浮かべだ。「で、俺にどうしろと?」「だから、身重の女性を守ってくれ。 あんたなら、できる」「かな?」「できる!」「かな」 カンは、苦笑しながら、このニルロゼという少年の本質に、少し触れた気がしたのだった。 ああ。 こいつは、こういうところが・・・ 女に好かれたのだな・・・「じゃあ、お前に頼まれて、仕方なく、守るか」「仕方なくじゃ、駄目!」「はいはい!しっかり、守ります!」「本当だな!」「本当です!」「よしっ!」 なんだか一体、どっちが、年上だか・・・ カンは、青い瞳を瞑って、忍び笑いを漏らすのだった。 好きじゃなくても守れる、か。 そうだ。 確かにそうだ・・・ そう思い巡らす彼の手に、なにかが触れた。「?」 彼が瞳を開けると、それは剣の柄である。「それ、あんたの剣だ」 ニルロゼが、そう言って来る。 カンは、よく判らないまま、それを受け取った。「これは?」 聞かれて、少年が再び言った。「だから、あんたの剣」 カンは、やや重いその剣を、鞘ごと何度か振り回してみた。「俺の剣?」 ニルロゼが、向こう側を向いて言った。「俺が、剣を貰った人にだ、 頼んで、もう一つ、貰った。 これから、沢山の人を守る人の剣」 少年は、いきなり向こう側へと歩き出した。「俺はメルサを追いかける。 ナーダを頼んだよ」 カンは、なにか言いたかったが、言葉が首から出てこなかった。「ニルロゼ・・・」 やっと言うと、少年はもう、どこかに行っていた。 沢山の人を守る・・・ 俺が? すらり、と鞘から剣を抜いてみた。 夜にもかかわらず、それは美しく光った。 無駄のない、すばらしい、輝きだった。「へっ。 餌で俺を釣るのかよ・・・ 意外と頭が回るな、あいつ」 剣を構え、振ると、見事な美しい音が鳴った。 富豪に昔聞いた事がある。 ハーギーに剣をやらぬ男がいると。 ハーギーだった少年ニルロゼは、カンが知りうる限り唯一・・・ その男から、剣を譲り受けた。 そして、その少年が、カンに剣を持って来た・・・。 この剣は・・・東の鍛冶の剣・・・? カンの瞳に、剣の光が瞬いた。 美しい剣は、まるで己を照らすようだった。 この剣で・・・ 守るか。 あいつの頼みを・・・ **************参加ランキングです**************Accel HP 海外の音色さんの音楽が入ってマス★イラストはpixivに。よろしければご覧下さい☆
May 23, 2010
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岸壁に立ち尽くしていたニルロゼの気配が消えるまで、3刻もかかったろうか。 その間ずっと、川に首まで浸かって気配を殺していた青年、カンは、流石の事にふらふらの体たらくになった。 これでも、体力に自信はあったのだ。 が、今は少しばかり、違う・・・ 肩に負った傷は、彼本人は見ることはできないが浅くはなく、まだ血が滲んでいた。 その肩に節くれだった手をあてがいながら、彼は岸へと近づいた。 すると・・・川べりに、人影が居る・・・ あれはニルロゼか!? と、カンは一瞬思ったが、どうやら違う体型をしている。 女? その姿は女のようだ・・・ カンは、できるだけ平静を装い、どんどん川岸へと近づいた。「あっ・・・」 青年は口の中で小さくつぶやいた。 女性の顔に見覚えがあった。 あの、身重の女性が集まっていた場所で・・・ ニルロゼの相手を探そうとしていた時に、何度か話をした女性であった。 青年は、なんだか、盗み聞きを見られたようでバツが悪い。 彼は無言で川を上がり、前もって用意していた薪に火をつけた。 たちまち煙が上がり、きな臭いにおいが充満し始める。「もう時期、日が暮れるぜ・・・ こんな所で、なにをしている・・」 カンは、やや離れた場所に居る女性に向かい、ぶっきらぼうに言った。 すると、女性もぶっきらぼうに答えた。「そういうあなたは?」 カンは、ふんっと向こうを向いて、砂利が転がる河川敷に腰を下ろした。「精神統一をしていた」「ふうん? そうなの?」 風が吹いて、体の芯まで寒さが響いた。 カンは、早く焚火の火が枝に燃え広がらないかと、身をかがめて息を火元に吹きかける。「それで、君はなにをしていたんだ?」「あの子供が、変な行動をしないように見張っていたのよ」「へ?」 カンは、素直に驚きの声を上げた。「そ、そう・・・・」 彼は、左肩をさすりながら、ようやく程良い大きさになった火にあたった。 金髪の青年、カンは火にあたるとその髪の毛が赤茶色に輝き、ようやく彼の顔色は血色を取り戻しつつあった。 苦笑の表情に似た口元で、だが穏やかな瞳を焚火に落とし、カンは溜息をついた。「あいつなら、女に変な事はしないよ。 今までしていないんだ、いまさらする訳がない」 何度も左肩をなでるカンに、女性が言った。「じゃあ、なんであなたはあそこにいたの?」「な・・・なんでって・・・」 カンは思わず汗をかいて、バツが悪い表情を殺そうとしながら言った。「だから言っただろうが、俺は精神統一していただけだ。 たまたまそこにあいつらが来ただけで・・・」「あら、そう」 うう・・・ 俺、女苦手かも・・・ つっけんどんな女の様子に、カンは首を竦めながらそんな事を考えた。「と、とにかく、俺はあいつをあんな所まで追いかけて見るほど野暮じゃない! 判ったら、もう帰ってくれ。 俺はまだ、精神統一が足りないのだ!」「そう」 女は、立ち上がり、カンの脇を通り抜けようとした。 だが、しばし、留まっている・・・「な、なんだよ」「あなた、もしかして、怪我をしているの・・・?」「・・・悪いか」 女がカンの傍にやや近づいて来た。「ずいぶん、痛そうじゃない」「煩いな。 俺は勝手に一人でてきる、さっさとあっちに行け!」「ふうん」 カンは、自分で作った薬を自分で塗り始めた。「器用なのね・・・」「いつまで見ているつもりだ」「包帯はどうやって巻くのかと思って」「自分でできる。 俺らは常に一人だ」「・・・」 女がカンに更に近づいた。「撒いてあげる?」「い、いらん!」「あなた言ったじゃないの、ここはハーギーじゃないのよ。 だったら、一人でやらなくてもいいんじゃないの・・・?」「・・・」 カンは、黙って女に包帯を撒かせた。「ああ、すまないな。 これは、意外と、いいな」「意外と、は余計よ」 カンは、包帯を巻いてくれる女性を振り返らずに言った。「明日あたり、伝達があるだろうと思うが・・・。 俺らはこれから、4つの斑に分かれ、それぞれが別方向へと別れる。 君が言ったように、ハーギーの追っ手が来ないと限らない。 これほど大人数では、動けない人の事まで目が行き届かないだろう・・・。 俺ら、昔の経験で、そのように考えたのだが、君らには酷な事実かもしれない」 女性の手が丁寧に包帯を巻いて行くと、カンはちょっと、関係もないのに耳のあたりがくすぐったく感じた。「一応、俺らの考えでは、年齢別と、強さの別に分けていくつもりだ。 そして、それらを均一の数に分散させ、班に入れる。 そうすれば、どれか一つの班だけが虚弱化する事は避けられると思いたい。 君達は、そのうちの、一つの斑に入る・・・。 そこは一番、信頼のできる男を集めたつもりだよ。 ブナンと、ハヴァレだ。 まあ、少なくても昔のような馬鹿みたいな事は繰り返されないと思う」「そうなの・・・」 昔のような馬鹿みたいなこと・・・ それは、本当に繰り返されないのだろうか? 自分で言っておきながら、急に胸はその”昔にした事”が過ぎった。 女性たちの苦しみの叫びがハーギー中で響き渡っていた。 その声も、そして女性たちの驚愕の顔も、今にもまたすぐに、自分の目の前に現れてくるのではないかという震えが、彼の両手に僅かに現れる。 カンはそれでも、必死になって歯を食いしばった。 大丈夫、ブナンならば。 あの男は、まさにハーギーで最も恐れられ最も尊敬される、剣の使い手だ。 頭が切れ、人の上に立つには適材であろう。 以前のハーギー壊滅の時にはブナンはいなかったが、その時期ブナンは赤に目をつけられ、とある恐るべき場所に軟禁されていたという・・・ ハーギーの悪循環を切ろうと熱い思いを持っていたのは、ブナンもだったのだ。「俺は、君達の斑に入らないつもりだ。 だから、別れる前に教えてほしいな。 沢山いる男のなかから、たった一人を好きになるというのは、どういうことか・・・ ぜひ、あのニルロゼの相手から、聞いてみたい」「そうねえ・・・」 やや、間が開いた。「理由はないみたいよ」「は?」 すぱっとした応えに、カンは間抜けな口の開き方で声を出してしまった。「富豪のところで、”あの子”が変なことを言っているから気になったんだって。 それだけだって」「はあ・・・」「それから」「は?」「あの子はね、どのようにしてもいいと言っても、なにもしなかったから、だって」「・・・」 カンは、ふう、と溜息をついて、そっと言った。「やっぱり、女の考える事は判らん・・・・」 後ろで包帯を巻いている女性の手は、本当に不思議な感覚だった。 これまではハーギーで・・・牢で、手首を抑え外に連れ出したり・・・ 縄で縛ったり・・・ 色々、女の手に触れる事があったが、全然それらとは違う感覚であった。 これはなんだろうか・・・ ただ、包帯を巻いているその手が、今日一日ずっと痛かった嫌な痛みが、少しずつ、解きほぐしているような気がした。 ふと、カンはその手に触れてみたいという感覚に襲われ、右手を思わず上げたが、ハッと気が付くと彼は必死に己を抑えた。 何を考えているんだ、俺は。 今までずっと女を苦しめて来た手だぞ、この手は・・・ 包帯を巻いていた女・・・ 無論この女性も名前はナーダなのであったが、彼女は包帯を巻き終えると、ポンっとカンの肩を撫でた。「この傷でよくあんな長い時間川に居たわね、ほんと」 そう言うと、彼女は砂利を踏み鳴らして去って行った。 まだ、日も高かったが、もう昼刻は過ぎていた。 黙って女性の去る姿を追っていたカンは、丁寧に巻かれた包帯に右手を置くと、なぜ自分は余計な事まで知ってしまったのだろう、と悔恨が押し寄せ、胸が潰れそうな思いに駆られていた。 例え自分が欲した事ではなくとも、ずっとずっと、纏わりついてくる過去なのだ。 それがないから・・・ だから、ニルロゼは、真っ直ぐに女に逢いたいと言えるのだ、と・・・ そう思ったカンは、舌打ちすると、黙って焚火に両手を翳すのであった。**************参加ランキングです **************Accel HPを、第5章までUPしました!海外の音色さんの音楽は、多分3章くらいまで入ってマス★最近のイラストはpixivにのっけてます。よろしければ。
May 19, 2010
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「ナーダ!遭いたかった! 大丈夫なのかよ!」「あなた、同じ事しか言わないのねえ・・・」 ニルロゼの若さと嬉しさが溢れる声に、女ナーダの、どうしようもないわね、といった雰囲気がまざまざと、崖の下のカンにまで響いて来た。 「同じ事ってねえ・・・。 俺はずっとそればっかり考えていたよ・・・」「はあ・・・だからあなたは朴念仁なのよ・・・」 ざあ、ざあと川の流れる穏やかな音に混じり、崖の上には木々が茂っているのか、風に揺れる木の歯の音が、爽やかに辺りを包んでいた。「うーん・・・。 それっていけないのかよ・・・」「いけなくはないけど・・・ でも、あたしの事を、考えていたのね?」「う、うん」「なら、許してあげる・・・」 カンは、思わず、直立不動の姿勢になってしまった。 うわーーー! うわーーーーー! ここ、早く、立ち去りたいぞ? だけど、今、動く訳にはならんぞ~!?!? なんなんじゃ、こりゃーーー??? カンが真っ青な顔になって、川に浸っているなどとは崖の上の二人は勿論判る訳もない。 彼らは、恋人同士と言うにはちょっと何かが足りないような感じのやりとりを続けるのである。「ニルロゼ・・・ ハーギーの頃と今では、まるでここまで違くなるなんて、夢みたい。 あの頃は、貴方にはもう・・・遭えないと思っていたわ・・・」「でも、こうやって逢っているじゃない。 俺はうれしいよ?」 ざわ、ざわ・・・ 木々のこすれ合う音に誘われ・・・うかつにも上の方に目線を送りながら、カンは寒くもないのに歯を鳴らした。「・・・あんた、たまに、嫌な事言うわよね」「・・・? 嫌な事、言った?」「うれしいだなんて。 なにがどううれしいのよ?」「そりゃあ、君が無事だから」「ああ・・単細胞・・・・」 それはそうだ。 女の声を聞き、カンは、思いっきり頷いた。「あなたは、事の次第を全然判ってないわ。 大体、あたしの気持ちがきちんとわかっているの!?」「うーーーん」「ほら、わかってない!」 そうだっ! カンはなぜか両手に拳を作り、女の意見に同調した。「きゃあ! ちょっと、なにするの!!!」「え? だって、”こういう時”はこうするんだろう?」 わあああああ!!!! なんだ、なにをしたあ!!!!!! 金髪の青年は、思わず頭に手をやった。 少年ニルロゼが、ナーダになにやらやらかしているらしい!! くそ、あやつは~!!!!!「あ! ナーダ、腹が大きくなっているよ!? どうした! なにか悪いの食べた??」「・・・」 ナーダは黙っていたが、怒っているのはカンにも伝わって来た。 ああ、本当にあのアホニルロゼは、救いようのない少年だ・・・。「子供が大きくなったのよ!」 カンの予想通り、ナーダは叱責の声を高めている。「え? 子供が大きくなるの?」「馬鹿っ!!! あんたも大きくなったでしょーーーーっ!!!!!」「ああ・・・。 そういえばそうだね」 はああ~・・・。 カンは、途方もないため息と共に頭を抱え込んだ。 ・・・なんか、俺、怒っている”ナーダ”の気持ちが判る気がしてきた・・・「俺ね、君にずっとお礼を言いたかったんだ。 君に助けてもらったから・・・」「助けた・・って・・・?」「うん。 ハーギーの時・・・ 牢に君が来てくれた。 もしあの時、君が来てくれなかったら・・・ 俺は大事なものを、全部、放棄してしまっていたかもしれない」「・・・」 ざわり、強い風と共に、ほのかな木の花の匂いがカンの元に届いて来た。「君が、大事なものを、もう一度、俺に教えてくれたんだ。 だから・・・」「そう・・・?」 ああ・・これは、まずい展開だな。 カンは、密かにそう思った。 男女の想いに温度差があるのを、青年はこの会話だけで察知してしまったのである。「だから、その、君が来てくれてうれしかったんだ」「あ、そう」「あの・・・だから・・・」「ナーダ・・・ どうして泣くんだ? 俺・・・なんか悪いこと言っているかなあ・・・」 うう、充分言っている!!!! お前は、ナーダの気持ちに応えてやらなきゃならんのだよ!!! そこが判ってないっ!!!「君が泣くと、なんだか辛いよ。 泣くなよ」「うるさい!この女泣かせ!」「な、なんだよ」「もう、何回言わせるのよ! あたしあなたが好きなのよ!?」 しばし、無言。「前にも・・・聞いたな・・・好きになるとどうなるかって・・・ 魂が、引き寄せられるんだったよな」 ざあ、ざあ・・・ 青い川の流れに融けるように、青い空の風もまた、冷たかった。「ごめんよ・・・ 俺、どうやら、そういう気持ちは判らないんだ・・・」「ニルロゼ。 前にも言ったでしょう・・・ それならそれでも、別に構わないって・・・」「じゃあ、抱きしめてもいいかい?」 ぐっ。 カンは、いきなりの事に頭をこん棒で叩かれたような衝撃を勝手に受けた。 あいつう~、言っている事、かなり、矛盾している!「どうしてよ?」 そうだ! 女の言うとおりだ!「抱きしめてみたい」 う”う”っ! 流石のカンも、ニルロゼの歯に着せぬ言葉にキリキリと歯を鳴らした。 う”~!!! くそーーー!!! なんでだ~!!! どうして~!!!! 好きというのが判らない。 だというのに、女を追いかけ。 その上だ・・・・だきしめてみたい~~い~だと~!!! うううううゆるせんゆるせん・・・・「うん。 ありがとう。 君が無事でよかったよ。 ナーダ、また、逢える?」 しばし、間が開いた。「また会える?」「わからないわ・・・」「どうして?」「子供が生まれるの・・・」「子供が生まれると・・・どうして逢えないの」「そんなの知るか! あとで大人に聞け!朴念仁!」 女が大きな声を残し、去って行った。 うーーーむ。 朴念仁。 まさに、奴のためにあるような言葉だ・・・ やたら、首を縦に振り、一人で感心するカンであった。 だが、首のあたりまでずぼっと川に浸かっている身として、流石に寒くなって来た。 早くこの川から出たいが・・・ 問題は・・・アヤツが、いつまで、岸の上で、ぼへーーーーーとしているか、だ・・・。 ************参加ランキングです ************Accel HP 海外の音色つき★最近のイラストはpixivにのっけてます。よろしければ。
May 19, 2010
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とどのつまり・・・ ニルロゼは、クダンのナーダに”なにもしていない”と判明した。 まあ、していてもしてなくても、この際?・・・関係ないが、 とにもかくにも、当のニルロゼは、まだまだ子供で、女の事など、まーるで判っていなかった。 一体、相手の女は、あんなぼんやりした子供のどこがよいのか・・・? ニルロゼと同じ年頃の女なのだろうか? カンは、そんな事を考えながら女性の集まる場所に行き、例の場所・・・子供を身ごもっている女性が居る場所へ向かっていた。 カンは、それなりの経験年齢を重ね、富豪にも数度買われ、女性の扱いについて、ある程度知っているつもりである。 女とは、押しすぎても駄目、引きすぎても駄目。 優しい言葉を「少しだけ」かけ、さっと引いて、忘れた頃、また顔を出しに行く。 そういう戦法を取ればいい。 いや、”いい、らしい”。「おーい。 俺だぜ、カンだ。 また来たよ。 この間は失礼したね」 女性が奥から誰も出て来ないので、カンはつい痛む肩を摩り、一生懸命言葉を選んで言った。「えーとだ。 ハーギーではな、まあ君らも知っているだろう。 俺は東の塔で牢番してたんだ、でも、つまらない役だったよ。 そして更に知っての通り、この年になってもだ、まともに女と話した事がないぜ。 だから、俺と話してもつまらないかもしれんが、俺はニルロゼに興味があるんだ」 青年は一呼吸、入れた。「俺が興味のある男に対してだ・・・ そいつに興味を持っている女、というのも、同時に興味があるんだな・・・」 ぼそりと言った。 カンは、近くの樹にもたれ掛かった。 今日は、左の肩がひどく痛み、流石の彼も一瞬歯ぎしりをする。 右手で左肩をさすり、とうとう座り込んでしまった。「身重の女性・・・ねえ。 ハーギーでは、別の部屋にされていたなあ。 だからそういう人に出会った事がない。 どうすればいいか全然判らないよ・・・。 君達は、どう思っているんだ? 俺は、女の気持ちは、さっぱりわからない」 これは、彼の素直な気持ちだった。 同時に、ニルロゼの言葉の代弁でもある事に、カンは気がついてはいなかったが。 青年は、深く青い瞳をそっと伏せると、息を吐くように言った。「君たちの気持ちを判らないから、今まで俺らは酷い事ができたんだろう。 でも、俺も苦しんでいたんだ。 少なくても、俺の知っている範囲では、ここに居る仲間のほとんどは、そう思っていた。 ハーギーで強制されるのは、嫌だったんだろう? 嫌がっていたってわかっている、俺だって、嫌だった・・・」 青年がすっかり樹に半身を寄りかけると、太い樹が包み込むように、カンを抱きとめた。「女が嫌がる事をして、で、子供ができて、身重になった女性はどっかに纏められて・・・ その後どうなる? 生まれた子供はどこに行く? 子供がある程度大きくになると、少年少女は、また、ハーギーの闘技場の生贄のように、戦闘の下積みをさせられ・・・ そして、俺らも彼らの存在を知るようになる。 でも、今君たちが直面している事・・・ 子供がいる、小さい子供が生まれるという部分は、俺らは全く知らないんだ。 判っているだろう?」 カンは、胸で息をしながら、続けた。「でも今はもう、ハーギーじゃ、ないだろう・・・ 教えてくれ・・・ 俺は、わからないことばかりなんだ・・・」 カサリ・・・ 音を立て、誰かが・・・こちらへ近づいて来る。 カンは、瞳を閉じたまま、同じ格好を取り続けた。「俺ら・・俺らは・・・ 協力して、ハーギーを出たんだ。 だから、君達も、色々、教えてくれ・・・ 判らないと、対応ができないよ・・・」 女性の声が、した。「子供を生むと・・・すごく、体力を使うのよ・・・ そして、子供を生んでからも・・・」 カンは、瞳を開けた。 最初に小屋から出てきて話をした、あの女性だった。「体力を使う・・・。 動けなくなるのか?」「それもあるけれど、生まれた乳飲み子を抱えるわ」 そう言われ、カンは、ぼんやりと、昔を思い出した。 そうだ・・・ 女性が、俺を、育ててくれたんだな・・・・「そうだったな・・・ ハーギーの時は、一人の女性が、何人も、子供を育てていたな・・・」「そうね」 しばらく、さわさわと、二人の間に風が吹いた。「すまないが」 カンは、バツが悪そうに言った。「君が、ニルロゼを好きな人かい?」「いいえ?」 即答だ。「あ、ああ、そう。 あの、俺の、かなり、興味本位なのだが、奴の相手って、誰?」 女性はまた、つまらなそうな顔をした。「それを、野暮っていうのよ」「そうかも」 はあ、と女性が溜息をついた。「あなた、好きになるって、どういう事か、知っている?」 カンは、へっ?という顔になってややうろたえた。「どうて・・ええと・・・ 確か、なにもかにも投げ出してしまう感覚だと・・・」「それは、富豪に教わった言葉でしょ!」「うーーむ・・・」 カンは、頭を抱えた。「とにかく、私達、”そういう体”なのよ。 そこらへん、よく、考えなさい! 判らないうちは、来ないでよね!!」 冷たく言い放ち、女性は小屋に戻ろうと背を向けた。 えーーい、くそ!この際・・ カンはいきなり立ち上がって、大声を上げた。「ナーダ! ニルロゼのアホが”遭いたい”って、年不相応な事言っていたぞ! 俺は、伝言役は、冗談じゃない! だけれど、あいつは、純情なんだ。 その気持ちにくらいは、応えてやれ! 健全たる少年の育成には、不可欠だ!」 言ってから、カンは無性に馬鹿な役回りをしたものだと思い、勝手にイライラするのであった。 大体にして、女は全員”ナーダ”なのだ、どの人にその言葉が伝わったのやら。 あーーーっ。 本当に、むかっ腹立つ。 なんで俺が、橋渡しをせなあかんのだ。 はあ、情けないなあ・・・ カンは、思いっきり足元の小石を蹴って、その場を後にした。 果たして昼刻となった。 森や川で木の実や魚を採取した男達が、昼食を作り始める。 数人、女がその場にいる。 どうやら、食事の作り方を教える役らしい。 なんと不思議な光景だろうか。 ほんの数日前まで、殺伐とした所に居たとは、思えない。 女にまとわりついている小さな少年もいる。 そりゃそうだろう。 子供なんて、本能的に、優しいもの、暖かいものに、惹かれるのだから・・・ ん?本能的に? それだったら、ええと、俺も、同じなのだろうか・・・ 金髪の青年は、そのままの体勢を崩さず、料理を作る女性を遠目で見ていた。 女性らはやや、年配だ。 俺のおかあさんって・・・ どんな感じだったんだろう・・・ 青年がえもいえぬ感傷に浸った視線を送る先では、どうやら食事ができたらしい。 数人の女性は、男に鍋を担いで貰い、女性の集団に戻って行った。 小さな少年少女は、一緒に女性の群れに入って行く。 あ、いいな。 俺も、あそこに入りたいなあ。 と、考えてしまったカンは、勝手に頬を赤らめながら、こめかみを必要以上に掻いた。 なにを考えているのだ、俺は! 俺は子供じゃないぞ! 全く・・・ カンは、やたら変な事を考えてばかりだと気が付き、自分で頭を叩いた。 彼は、別な事を考えようと意識を集中させ始めた。 あの、ニルロゼの相手がいる所の女性が言っていたように、すごく小さな子供や、身重の女性の移動にまで、今まで考えていなかった。 他の仲間はどう考えているだろう? 彼は、食事を貰うと、仲間を数人集め、議論を交わしたのであった。 話し合って、大体の方向性が、決まって来た。 身重の女性や、年少の子供は、ここに留まること。 そして、大人がそれを守ること・・と・・・ なんだか、「ハーギーの時」と似ている、と思ったが、それ以外、方法はなかった。 好みの女性がいれば・・・その女性と共にここに残る・・・と言った雰囲気が、あったのだ。 好み・・・ねえ・・・。 金髪の青年は、煩悩を抱え、ふらふらと、川縁に行った。 細かい石が沢山あるのを踏みつけ、川に近づき、彼は肩に巻いてあった包帯を解く。 包帯は、血がこびり付いて、皮膚からなかなかはがれない。「うっ・・・ずいぶん痛むな」 彼は眉間に皺を寄せながら、川に入った。 水で流せば、包帯が取れる。 川の深い部分は、対岸の方であった。 そちら側は、切り立った崖になっていて、その上は、飛び上がっても見えない。 深い位置まですっかり身を川に晒し、カンは瞑想した。 俺は、まだまだ、女を守るなんて、無理だな。 好きとか、つまらない感情なんか持たないで、女性は他の奴にまかせよう・・・ 青年が瞑想していると、誰かの気配がした。 岸の上に、誰か来たらしい・・・「ニルロゼ」 女の声が呼びかける声がしてきた。 ニ・・ニルロゼ・・・だと? カンが、やや、体を揺さぶった。「ナーダ! 本当に、来てくれたの!」 少年ニルロゼの跳ね上がるような声が、崖の上から響き渡って来る! カンはまさに身震いした。 な、なぬ? こ・・・これって・・・ 俺、もしや、逢引現場に直面してるう!?!?**************参加ランキングです **************Accel HPを、第5章までUPしました!海外の音色さんの音楽は、多分3章くらいまで入ってマス★最近のイラストはpixivにのっけてます。よろしければ。
May 17, 2010
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「オニュウになる「かもしれない」HP版 Accel」ただいまステキなリストが流れております☆「リストに酔うがよろしい~」はこれで二回目。すみません、超愚痴に付き合って下さい。超アナログな俺、HPは全て俺のウツクシイまぢゅつのようなオテテでHTMLで鬱っているのでR。が、Accel HPの音楽が、最近うまく入らないんだよね~。折角入れても、久々に俺が身に行ってみると、勝手に音楽がなくなっている。許せない。で、入れようとすると、入らない。超むっかつく。で、以前からFTPで入れようとしてるんだけど、そのFTPもさっぱりいうこときかん。激むかつく!!!それで・・・なんとなくその・・・ジオなら行けるかなと遊びでやってみたら、いけました。できました。うふ。アホなのよ~ぼく~まだ、トップしかやってないの、ぼく~。美しい海外の音色さんの音楽、リストに酔いやがれ、こんちきしょ~!!!!!!!!!!”あ~、流石に今日8時から今の今までずうううううううううううううううううっとPC操作してて憑かれたわ・・・死ぬわ・・・・いい加減やんだぐなった。さあ、三銃士、三銃士~(お~い、猫さん、HPに音楽つけるよりも先にやることあんじゃねーかー)猫「いいえ、HPへの音楽は、とても大切なんです(きっぱり)
May 14, 2010
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その翌日の、朝の事。 朝露も美しく煌めき、さわさわとあたりの草が静かに風に揺れている。 のんびりとした空気の中で、ほれ!と男の声が上がり、小鳥が2,3羽向こうへと飛び立っていった。 低くてしかも苦味も甘みを含んだその声は、金髪を持つ青年カンのものである。 そのカンに小突かれるように、ちょっとひょろ長い感じの少年が歩いていた。 ひょろ長い・・・と表現するのは、ややおかしいかもしれない。 これは、カンと対象するとそう見えてしまうという事もある。 カンに並ぶその少年も、本来はきちんと幅広の腰や胸を持っているのだが、なんといってもまだ幼い部類の年頃であり、その上、青年カンは少年よりも10年程の鍛錬を積み重ねており、更に青年は甲冑を着こんでいた。 ハーギーに身を置いていた頃、まだ”ハーギー”に認定されていない者は、甲冑を着ることを許されてはいなかった。 故に少年は粗末で返り血だらけの服という格好なのである。 甲冑を着ているカンと並べば、頼りなげに見えても仕方のない事であろう。 カンは、転がっている丸太を見つけると、それを机にし、剣の柄でビシ!ビシ!と叩いた。 丸太の机の前では、蜂蜜色の髪の少年が、正座している。「ちゃーーーんと、正直に、答えるのだ。 お前の回答次第では、俺が、いい方向を考えてやる」 ビシ! 金髪の青年、カンが、剣の柄を丸太に叩き付けた。 その相手をさせられている?少年ニルロゼは、はあ、と、情けない声を出した。「いいか、”一人の女に逢いたい”というのは、特別な事なのだぞ」「は、はあ・・・」 ビシッ!「はあ!じゃない!」 情けない声を出す少年に、カンは眉間に皺を寄せ、キッキとなって丸太を叩いた。 な・・・なんか、前、ナーダにも、同じような事を言われた気がする・・・ ニルロゼは、首をすくめ、そんな事を考えた。「では、質問だ。 お前は、なぜ、”一人のナーダ”に逢いたいのだ? 理由があるはずだ。答えろ」 うーーん・・・ 少年は、首を右に傾けて、言った。「会いたいから」「だあああ! それは、理由ではないっ!」 ビシッ! カンは唇を尖らせ、剣の柄で丸太を鋭く叩きながら言った。「なぜ会いたいっ!」「なぜって・・・えーと、無事を確かめる」 カンは、思いっきりムッとし、この男~と思いながらも言った。「昨日確かめただろうが」 青年に言われると、ニルロゼは全く屈託のない笑顔で応えた。「そうだね」 はあ~・・・ こいつは、なんなんだ、一体。 カンは、危うく脱力しそうになるのを必死に堪えるしかない。 今、俺の目の前に居るのは、ハーギーを出る時に一緒だったあのニルロゼなのだろうか? この俺でさえも、近づくのが恐ろしいと思ってしまった程のあいつなのか? 燃えるような闘士、視線だけで相手を斬るかのような剣術を持っている、あいつなのだろうか? ハーギーでのニルロゼは、もしかして俺より強かったかもしれない。 剣の柄に手をかけすらりと立つ姿は、見ている俺でさえ、ぞくぞくとしたものだった。 立ち回りで何人も斬って行くあいつの手、脚、怒涛の精神は、間近で見て来た。 しかし、なんじゃ・・・・ カンは、ふう、と目の前の少年にまた瞳を据える。 今自分の前に居るのは、背はまあ高くなっているものの、ちょこんと座っていて、その瞳はなんの疑問も持たないようにさえ見える。 正座している膝に置かれたその手が、あの東の鍛冶の剣を持って立ち回りをしていたなどと、全く想像できないのであった。 これが、本来のニルロゼの姿なのだろうか。 カンは人差し指で唇をちょっといじりながら考えた。 そうだ。 こいつは、まだ15とかなんだから・・・。 「では、次の質問。 お前本当に、女を”知っている”のか!?」 カンが、やや顔を赤くしながら聞いた。「え?」 ニルロゼは、カンの言わんとする事が、掴みかねない。「だから、知っているってば・・・」 ビシッ!! カンは、額に血管を浮かばせ、またも剣の柄で丸太を叩いた!「どーゆーーふーーに!!!」「えっ??」 ニルロゼは、首を傾げ、ただそう言うだけだ。 ああ・・・こりゃ・・・ しらん、な・・・。 へいへい、と呆れながら、カンはぶっきらぼうに聞いた。「次の質問っ。 子供の作り方は知っているのか」 しーーーん。「ほら、知らないな」「いや、うーーん、っていうか、知っている・・のかな・・・?」「な!?なにっ!?!?」 カンは、いきなり立ち上がる。 ニルロゼが、その青年の様子を慌てて遮り、言った。「な、なんだよ。あいつが先にしてきたんだ」「な、な、、なんだと・・」 カンは・・かなり、狼狽した。「先に、してきた・・・?だと・・??? そ、そんな」 カンは、血相を変え、首を振り、頭を抱えた。「ありえん~!!!」「だって、そうだもん」「う”わあーーーーーそんなあああ」 カンは、とうとう抱えた頭を地面にこすりつけ、突っ伏した。「おい、大丈夫?カン?」 ニルロゼがおずおずと手を差し伸べたが、カンはいきなり、ガバっと立ち上がった! その顔は総毛だっている。「大丈夫な訳ないだろ! って事はなんだ! 相手からお前に・・・・し、してきた・・・と・!!!??」 カンにかなり近い距離に迫られ、ニルロゼは、戸惑った。「う、うん」「あ”あ”~」 再び、カンはがっくりとした。「うっうっ・・・そんなのありかよ・・・ なんでお前はそういうイイ目にあうのよ・・・」「なんでって知らないよ・・・ あ、そうだ、ナーダは、富豪の所で知り合ったんだ」「な、なんだと?」「そうだよ」「・・で、知り合って、目をつけられた、と・・?」 ニルロゼはすっとんきょうな声をだした。「なに?その、目を付けられるって・・・」 カンは、酷く情けない顔をして言った。「だから、相手がお前を好きに・・うっ・・・なったんだろ?」 ニルロゼは、やや、考えた。「うん。 俺の事が好きだって言っていた」「う”っ」 カンは、思いっきり衝撃を感じた。「好きって・・・どういう事か、知っているか・・・」 カンは、恐る恐る、聞いた。「うーーん。 わからない」「お前、アホか」「ナーダにもそういわれた」「・・だめだこりゃ・・・」「ねえ、カン。」 がっくりとしているカンは、少年に呼ばれて青い瞳を上げた。「なんだ?」 ニルロゼが、真面目な顔で言った。「あんた、ナーダと同じような事、言うね」 カンは、右手で拳を作ると、拳に、はあああああっと息を吹きかけて、言った。「お前、一発、なぐっていいか」**************参加ランキングです **************Accel HPを、第5章までUPしました!海外の音色さんの音楽は、多分3章くらいまで入ってマス★最近のイラストはpixivにのっけてます。よろしければ。
May 13, 2010
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「おい・・・ナーダ。 返事をしてくれ。 大丈夫かよ? 体は・・・変わりないのか? もう具合悪くない?」 ニルロゼの不安と優しさに溢れる声が、カンの耳に届くと、青年はまたも顔を渋くさせた。 一体全体どういう事なんだ、これっ! カンは、指先をプルプルさせながら、声の方に更に瞳を凝らす。 ニルロゼは、ハーギー崩壊に向けての事で頭が一杯のはずだった・・・。 あいつが居た牢に女をやったというメンの話でも、目もくれてもいなかった、という事だ。 これまでもずっと、女のことより剣術の事ばかり、ハーギーを出てからも、女などと口にはしなかったのに・・・。 こうして何度か、休息を取るようになって、いきなりなのだ。 女に逢いたいだなんて言いだして・・・ はあ~っ。 カンは、魂さえも抜けるようなため息をでっかくついた。 ハーギーでは、”女”は禁制された言葉に近かった。 ある一定の力を持つ男は、何人かの女を近くに置いていたようだが、その女達も子供ができれば別の場所に移される。 そして、自分達はといえば・・・ 時としてメルサの許可が出ると、牢に入っている女達に手を出す、という図式であった。 ああ、それらは思い出すのも苦痛で、自分が好きでやっていた訳ではないし、おもしろくもなんともなかった。 俺にももう少し力があれば、ある一定の女性を傍に置けたかもしれない。 そういう気持ちもどこかにはあった。 ずっとずっと以前に、俺が富豪に買われた時、沢山の書物を読ませて頂いた。 俺にはとても夢のような中身がそこには書いてあった。 人と人が、互いに心を通わせて共に居住する、という様式である。 それは、ハーギーの一部の男たちがしている姿とはまた違う、と未成熟であった自分の頭でも理解できたのだった。 俺にも、心を癒し、そして俺が癒してあげられる人がいないだろうか・・・ そんな事を、ぼんやりと考えた事もあった。 ああ、だというのに。 なんだ、あのニルロゼは。 あいつは、くっそー、俺がまだ到達してない、んーとえーと、なんだその、 とにかく、一人の女に絞るってのは、なんだか判らんがまだ早いっ!!!!!!「顔くらい、見せてくれよ。 どうしたんだよ。 俺、君に会いたかったのに・・・」 ニルロゼがそう言うと、カンはとうとう、くううう、と口の端から半泣きの声を漏らした。 うう! あいつは!いつの間に女泣かせな言葉を覚えたのだ!!「ねえ、どうしたんだよ・・・ ナーダ。 なぜ出てきてくれないんだ」 そこまで、ニルロゼの言葉に一々怒り燃えていたカンであったが、段々、なんだか彼が思っていたような状況とは違うような気がしてきた。「俺さあ・・・君と話したいんだ。 また、後で来るから、その時は逢ってくれる? じゃあね、ナーダ」 言葉が途切れ・・・ 少年の気配が消えた。 カンは、じりっ、と、体を動かした。 先ほど、会話が聞こえて来たあたりに、ニルロゼの相手がいるのだろうか・・・? すると、そこには大きな葉をまとめ上げて作った、ちょっとした小屋のようなものがあった。 彼は、相手を驚かせないよう、気配を殺さずに、ゆっくり近づき、声を出した。「やあ。 すまないね。 ちょっと、教えて欲しい事がある」 小屋から、数人の気配がした。 カンは、ちょっと唇を笑わせると、できるだけ陽気な声で大きく言った。「俺は、さっきのマセガキのお守りで、カンって言うんだ。 どうも、あいつは熱血漢で突っ走るからこうやって監視している。 ちょっと奴の情報が足りなくてね。 少し、ニルロゼの事を教えて欲しい。 礼はできないがな」 すると、小屋から一人、女性が出てきた。 カンの見覚えのある女性だ・・・ 牢で少し長く彼女を拘束していたことを、カンは覚えていた。 女性はつまらなそうな雰囲気で言った。「あなたねえ。 いい年していて判らないの? 私たちは身篭っているのよ。 私達がどれだけ苦しんだか、知らないとは言わせないわ」 カンは、面食らうと、やや後ずさりした。 女性はビシッと腰に手を当てると、ツンとした態度で言い放った。「ハーギーから出ても、今後、追っ手が来るかもしれないわ。 私達は、段々体が言うこときかなくなるの。 そうしたら、動けなくなるのよ。 判る? そして、この集団について行けなくなるわ。 ふっ・・・見捨てられるのよ、私たちは・・・」 女性は、鋭くカンを一瞥して、小屋に戻った。 カンは、思わず、その場に立ち尽くした。 身篭った女性だって・・・? これから異動できなくなる・・・? 今の今まで、全く考えてもいなかった事だった。 そうだった。 今後追っ手が来ないとは、言い切れない。 これからも、絶えずこの集団は異動していかねばならなかった。 そのくらいは、考えていた。 だけれども・・・・? ひゅう、と風が吹いて、彼の顔を撫でると、はっとカンは我に返った。 1刻で、ここから戻る約束だった。 しまった。 金髪の青年は、慌てて、女性の広場を、後にした。 カンが、とぼとぼと、元いた場所に戻ると・・・ 少年ニルロゼが、既にそこにいた。 カンが尾けていたとは、お見通し、という事だろう。 少年は、黙っていたが、どたっと仰向けになった。「わからん」 少年が言った。「女の考えることは、さっぱり、わからない、カン。 あんた、少し、わかる?」 いきなりそう言われ、カンは、戸惑った。「わ、わかるわけ、ないだろ」 ぶっきらぼうに言い、預かっていたニルロゼの剣を少年に投げやった。 鞘に納まった剣は、少年の腹の上に、ボタリと落ちた。「あんた、俺より、かなり年上だろ。 少しは”知っている”んじゃないの??」 うぐっ。 これは痛い。 直球の質問だ。「”知っている”よ・・・」 青年はとりあえず、そう答える。 ニルロゼは、ふう、と向こう側を向いて言った。「じゃあ、教えてよ。 前はさ、”あいつ”が、勝手に、俺にくっついて来たんだ。 なのに今度はさ、傍に行くのも、顔も見るのも、許してくれない」 カンは、やや、眉毛を上げた。「くっついて来た・・・って?」 彼は青い瞳を、キラリと光らせ、思わず少年に聞いた。「どのぐらい」「やってみせる?」 ニルロゼがいきなり近づいて来た!「いや、いや、いやだああああああああああ!!!!!! お、俺はそういう趣味はない!」 ぜー、ぜー。 呼吸を荒くしながら、カンは、胸に手を当てた。 こいつ、何を考えておるのだ! ニルロゼは、ふう、とまた下を向いて、指で地面を突いていた。「あいつにくっつかれて、俺も嫌だったんだけどね。 まあ、結果的に、俺はナーダに助けて貰ったんだ・・・」 少年は、ぽつり、と、言った。 はあ~・・と、深いため息を、カンが漏らした。「でもさあ。 お前、いくつになったよ」 蜂蜜色の髪の少年は、ちらり、とこちらを見た。「さあ。 14、5じゃないの」 カンは、両手を肩までの高さに上げ、しみじみとニルロゼに向かって言った。「お前な、人生は、長いぞ。 女は、一人ではない。 うん」 少年、ニルロゼは、上を向いて言った。「そうなの?」「そうなのって、そうだろうが。 女は一杯いる」「・・・・」 少年は、ふっとまた向こうを向いた。「一杯いるかもしれないけど、俺を助けてくれた人は一人だ」 うっ・・・ こやつ、なかなか、言うな・・・ まだ子供だと思っていたが、いっぱしの言葉を言いやがる。 なんだか面白くないぜ、と思ったカンは、それではどうだ!と、トドメの言葉を刺した!「おまえさ・・・ そいつにほれているのか」「・・・・」 少年は応えるのにしばらく、時間がかかった。「・・・そうじゃないっ!!!!!!!」 ニルロゼはいきなり高声になり、跳ね起きた! カンは、少年のその表情を見るや思いっきり腹を抱えて笑った。「くっ! こりゃ、傑作だ! ふふふ・・・惚れてる!絶対!」 カンに言われるが、ニルロゼは、やたらに両手と首を振った。「ち、ちがう!!」「くくくく」 カンは立ち上がり、腹を抱えて走りだした。 無論、怒っている少年から逃げるためである。「そんなんじゃない! ちがうーーっ!!!!」 追ってくる少年から逃げ、カンは叫んだ。「その年でまあ・・・ ・・・お兄さんとしては、まだ早いと助言しておく・・くくく」 ニルロゼも、カンを追いかけながら叫んだ!「だ、誰がお兄さんだ!」 カンは余裕の表情で後ろを振り返り、ヘヘっと悪戯っぽい表情で言った。「で、どういう女だよ」「どういうって・・・」「そこ、重要だろうが」「重要・・・?」「あらあ・・・重要だろう・・・ お前、好きなんだろ?」 カンにそう言われ、ニルロゼはまた、キッとなった。「だから、ちがううう!!!!!」 サッと木陰に逃げ隠れたカンは、チッチッチと指を鳴らすと、年上ならではの余裕の表情で言い放った。「うふふ。 弱味、発見」「だああああ!なにが弱味だ」「ふん。 お前はナーダにベタ惚れって事さ!!!」「ちがうちがうちがう」「どこらへんが違う!」「と、とにかく違う!」 段々、日が傾いて来た。 以前とは違った、大空の下。 すがすがしい風の中。 自由な時間。 樹の香りが充満している・・・ こんな伸びやかな中で、年の離れた者と、じゃれるように追いかけ合うなど、考えたこともなかった。 カンは、肩の痛みさえも忘れ、年端のいかぬ少年をからかう事に、つくづくとハーギーでは味わえない幸せを感じ、自らもまた我を忘れて年甲斐もなく、相手の少年と同じ年になったかのような気持ちになっていた。 ニルロゼは、ふっと足を止め、一枚上手で身を隠してしまったカンに叫びかけた。「好きって言うんだったら、俺はあんたが好きだぜ、カン!」 すると、カンが遠くから応えた。「おいおい、俺は男に好かれても、いい気分じゃ、ねえなあ~!!!」 夕日が・・・森に落ちて行く。 少年は、赤く染まる森をぽつんと一人で眺めていた。 カンに言われ、好きという言葉の意味を自分の中で繰り返してみる。 好き・・? ナーダを・・・? だが、相変わらず少年にはよくわからなかった。 これは、富豪の所に居た時から判らなかった言葉なのだ。 ”好き”という事が、ニルロゼには、理解できていないのであった。**************参加ランキングです **************Accel HPを、第5章までUPしました!海外の音色さんの音楽は、多分3章くらいまで入ってマス★最近のイラストはpixivにのっけてます。よろしければ。
May 10, 2010
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「なぬいいいい~!?!?」 明るい日差しが降り注ぐ広間で、すっとんきょうな声があがった。 声の主は、金髪の髪を持っている。 なかなかの美青年といっていいであろう、眉目が深く青い瞳は明るい光を湛えている。 年頃は大体、24歳位。 その青年、カンが、端正な口を、思いっきりでっかくして、すごい声を上げたのだ。「な、なんだよ、そんな大きな声だすなよ」 カンの目の前に居た14、5の少年は、周りを気にしながら唇に人差し指を当てた。「なんで、驚くんだよ・・」 カンは、青い瞳を動揺させ、なぜか汗までかきながら、呼吸を荒くして言った。「お、お前、お前が、女に逢いたい・・だと・・・・??」 カンは、再々度、驚きを口にした。 そんなこと・・・あ、ありえん。 「ニルロゼ・・・お前、女に、興味、あるのか・・・」 カンは、かなり首を捻りながら、やっと目前の少年、ニルロゼにそう言った。 彼の左肩は、ぐるぐる包帯が巻かれてある。 彼の肩は、ハーギーを出る際に敵に斬られていた。 その上に、この少年に、踏み台にされのた。 今でもその痛みがジンジンと響くが、そのそぶりは彼の顔つきには全く表していない。 流石は闘技場屈指の剣士集団の一員で、弱みなどは一切出さないのが彼らの上下関係を保つのに役立ち、事によれば自身が殺戮の対象にならないための保身のためでもあった。 もはや、ハーギーを出ている身であったにかかわらず、長らく・・・というか、生まれた時からその生活であった彼にとって、すっかり板についているこの行動、今更治る訳でもなく、勿論意識してそうしている訳でもなかった。 痛むからといって庇うこともなく、こうして胸を張り背を伸ばしているのである。「きょ・・・興味・・・」 少年、ニルロゼは、自分よりも背の高い大人の青年の呆れた声を聞き、首を傾げるしかない。「興味? うーーん・・・わからない」「そ、そうだろうなあ・・・」 カンは、答えに詰まる少年に、眉間に皺を寄せた。 額に滲んで来た汗に気が付くと、はっと肩を上げ、ぐりぐりと左手でぬぐった。 そして、青い瞳を宙に泳がせながらモンモンと頭を巡らせる。 こやつ、女を、”抱かなかった”はずでは? というか、そういう情報なのだが・・・「お・・お前さあ、女を、”知っている”のか?」 ずずずいっと、カンは少年の耳に近づき、ぼそりと言った。 少年は、へ?という顔をしたが、答えた。「知ってるよ」「だ、だあああああああああああああああああああ」「わあーー! カン、だから、声がでかい!!!」 ぜー、ぜー。 カンは逞しい指で頭をガシガシと上下に掻きむしり、ブンブンと首を左右に振る。 いや、いや落ち着け。 そう、そうだ。 俺だって、そう。 あの年には、うん、”している”。 別に、ニルロゼが、していても、おかしく、ないのだ。 うん。「で?つまりだ。 その”知っている”女に、逢いたい、そういう事か」 ニルロゼは屈託ない笑顔で応えた。「うん」「・・・・。 お前・・・意外と・・・ 熱血なのな・・・」 カンが途方に暮れたため息をつくが、少年は意に介さない。「そう? 俺が熱いのは、あんたがよく知ってるんだと思うけど」「・・・・」 「って訳で、俺、ナーダの所に行って来るから、これ、預かってて」 ぽーーーい、と、ニルロゼは東の鍛冶の剣をカンに投げ寄こして来た。「あ”あ”っ!!! お、お、お前だけ・・・・~ ・・・なんか、ずるい・・・」 カンは、鍛冶の剣を受け取ったものの、思いっきり打ちのめされた。 なんということだあ! あの、滅茶苦茶、女に無縁そうな野郎が、 ”一人の”女に逢いたい、だとおおお!? というかメンの話じゃ、まだ、女を・・・というはずだぞおおお カンは、勝手にメラメラと燃え上がると、ふんっと立ち上がり、がっしと両手に拳を作った。 あんのやろうーーー! ガキのくせに、絶対生意気だああ! この俺だってだなっ、”一人”に絞った事はないんだぞーーー!!! ”それ”がどーゆーことか、わかってるんかああああああ!!!!! と、訳の判らない事を頭で数秒で考え、気配を殺して、カンは少年の後を尾け始めた。 そうだっ!!! 今は、ハーギーの内じゃないから、いくら”自由”とはいえ! そんなの許さんぞ!! 大体俺だってだなあ! お、俺だって、女にきょーみあるんだぞっ!!!うん。 そうだ、他の男達だって、 ”我慢”してるのだ!うん!!! カンの瞳がギラリと光った! この俺が、えーと、うーんと、 そう、お目付け役としてだ! あやつを、よーーーーく、偵察しておかねばならぬ! ニルロゼの”お目付け役”に勝手になったカンは、少年に気づかれないよう距離を取りつつ、その後を尾行して行った。 ハーギーを出てから、時は既に2月は経過していた。 あの場所からどれ程離れたであろうか。 最初の頃こそ、昼夜を問わず異動していたが、流石に張り詰めた緊張がほぐれるにつれ、時に怪我をする者もあったり、疲れる者も出るようになった。 何分、女性は特にその傾向が強かった。 女性たちの安心のためーーー、それが大きな目的でハーギーを出た訳であったからにして、集団は一時期の休息の場を所々に設けながら、少しずつ東へ移動していたのである。 現在、やや大きな集落めいた物を作って休んでいるところであった。 程良く森も沼もが近くにあり、くぼ地があって、食材を取ったり何かの際は逃げたりするのに適する場所だった。 移動して歩いている間もそうであるが、女性は一つの塊になっている。 その周りは、十数名の大人と、同じ位の人数の少年が守っていた。 そして、こうして休息の場を作った時も同じで、女性は男性と別の場所に纏まっており、一定の男性が守っているという形となっていた。 少年ニルロゼは、その集団の中へとノコノコ向かい・・そして正面突破ですんなり入ってしまった。「あ、ああ・・・あっさり入って行ったぞ・・・うう・・・」 それを見ていたカンは、なぜか涙目になってきた。「はあ、なんなんだ、あいつが子供だから入れるのだろうか・・・ いや、というか、俺も入れるんかしら・・・」 カンは、恐る恐る、女性の集団を守る一帯に近づくと、そこを守る仲間に言った。「あのーーーー」「よっ!カン! お前もここに入りたいの? 1刻の間なら、いいぜ」「あ、あ、そう・・・」 あら・・・ いいの・・・?それで・・・ 肩までの長さの金髪を掻きながら、カンは中に入った。 これまで牢番という立場だったカンは、女性が纏まっているという場所の想像がひどく偏っていたのだが、まるでそれとは違っていた。 女性たちは何人かで笑いあいながら話をしたり、髪を結びあったり・・・ 驚くべきは、数名、男性もいた事だった。 一人の男性が数人の女性に囲まれ、話し込んでいる。 その光景に、驚きを禁じ得ながらも、カンは辺りを見回した。 ニルロゼは、どこに行ったのか? あら あの人カンじゃないの? こっそり、そういう声が聞こえる。 ハッと青年がそちらを振り返ると、数名の女性が彼に視線を送っていた。 途端に、彼は顔を青くし、身が縮みあがる思いがして来た。 これまで、何人牢獄に出し入れしただろうか。 全てはメルサの命令のままであったが、自分の扱った人の割合の多くは女性が占めていた。 女性が自分に見せた憎悪、疎ましげな表情、涙は、ハーギーを出てからも消して脳裏から離れる事がなかった。 彼はその場を逃げ出したかったが、なにしろ女性だけの集団の場である、どこに行っても女性ばかりであった。 くそ、もう出る、こんなとこ!!!! 顔を両手で覆い、当てずっぽうに歩を進め始める。 ニルロゼ・・・ あいつは若いし、まだ俺のような苦しみを知らないから、のん気に女と逢おうなんて思えるんだ。 ハーギーではどんな女でも、男が身近にいてもいいなどと思う奴なんて、いる訳ないよ。 まったくこれだから、ふん、どうせどうせ・・・ と、ここでカンはふと空しくなって手を降ろすと、自分の居る場所から逃れないために顔を上げ、唇を結んだ。 理不尽さは何度も感じて来た。 悲しむ女性を増やしたくなかった。 だが、メルサの恐ろしさに、従うしかなかった・・・「でも、今はハーギーではない。 しかしニルロゼは、なんだって数多くの女性の中から? 誰かを一人、思っているなんて・・・」 そこでカンは、瞳を釣り上げながら、ぐるりと後ろを振り返って、あの憎き少年の姿を再度探した。 その肩は微妙に揺れ、彼の心中を表しているようである。 大体にしてだ、あいつはこの俺より10歳位年下の子供だぞっ!!! だっつうのに、特定の女に逢いたいというのは、これいかにということなのだ!!! 俺でさえ、まだ悟りの境地に至っていないというのに! カンはなぜか、鼻息を荒くして、左右に目をやる。 あやつは、どこに!?見失ったか? 少年の姿は、どんなに見回しても見つからなかった。「俺も大人気ないかなあ・・・」 青年は、肩を落として、傍に生えている樹にもたれ掛かった。 すると、ぼそぼそと・・・ 小さな声が、どこからか聞こえた。「ナーダってば」 カンの青い瞳が、ちらり、と左を見つめる。「ナーダ。 俺だよ。ニルロゼだよ・・・」 ニ・・・ニルロゼ・・・? カンは、ゆっくり、樹から、声の方に身をずらしてみた。 少年、ニルロゼの姿は、それでも、見えなかった。「ナーダ。 どうしたんだよ・・・俺だよ・・・。 ねえ、居るんだろう?」 な、なんじゃこりゃああああ! カンは、わなわなと、髪の毛をかきむしった。 こ、これは! 俺の知っている、アヤツの声色と、ぜんぜん!ちがうっ!!!! こんなんゆるさねえええええ~・・・ あいつ、あとでぎったんぎったんにしてやるう・・・ カンはなぜか、勝手に瞳を燃えあがらせると、樹の幹に指を喰い込ませた。 というか、彼は今にも樹に噛みつきそうな勢いであった。**************参加ランキングです **************Accel HPを、第5章までUPしました!海外の音色さんの音楽は、多分3章くらいまで入ってマス★最近のイラストはpixivにのっけてます。よろしければ。
May 9, 2010
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金色の髪を揺らし、カンが首を振った。 肩も、震えていた。 すらり カンが、剣を抜いた。「ニルロゼ。 外へ」 短く言った。 無駄のない動きで足を進め、剣を繰り出した。 卓上の赤い蝋燭を、切り落とす。 ふふふふ 奥から赤い笑い声が聞こえた。「カン」 少年の声がカンを追いかけて来た。「馬鹿野郎! 外に出ろ!」 振り返らずに叫ぶカンに、ニルロゼは突拍子もない事を言った。「いや、少し肩を貸してくれ」「な、なに?」「いいから、そのままじっとしていてくれ」 カンが、マンサガや赤を見据えながら、剣を構えていると、突然肩に衝撃が走った! 少年が、彼の肩に飛び乗ったのだ! いや、飛び乗ったのではなく・・・・ カンはニルロゼに踏み台にされた!「でえええあ!」 飛び上がると、気合を入れ、ニルロゼは天井に剣を叩き付けた!「が、があああああ??」 天井を刺された赤は、まさに血相を変えた! その顔色を見て、ニルロゼが最高の笑みを見せた!「けっ・・・ もしかとは思ったけどココだったか」 ニルロゼは、天井に刺した剣でぶら下がっていた。 天井から、どろりと・・・ 赤いモノが、流れてきた。 ビキ ビキビキ 天井が音を立てて割れて来る。 どお、と・・赤いモノが、大量に落ちた。 ニルロゼも、天井から落ちた。「カン! マンサガを斬れ!」 少年が叫んだ! カンが同時に動いた! ニルロゼは、カンの方はそれ以上見なかった。 蜂蜜色の瞳は、メルサに向けられた。 赤き衣装のメルサ。 少年は東の鍛冶の剣を、構えた。「みんなの命、すすってここまでなったのだろうな、メルサ・・・ 並みの剣では斬れないだろうが、それでも俺はやる・・・! 東の方から頂いた剣でっ! そして・・・ この剣はンサージの魂だ!!!!!!!!!!」 少年の瞳が、細くなった。 そう、ンサージの魂よ・・・・ ンサージ! 力をかしてくれ!!!! 赤を斬る! このハーギーを斬る力を!!!!! 剣が上段に構えられた。 メルサは、ぼんやりと突っ立っていた。 少年は、剣を回転させ、さらりと左に移動した。「!?」 ニルロゼが向かった先を見たメルサの雰囲気が変わった。 少年ニルロゼは、天井から落ちてきた赤いモノに・・ わき目も振らず、剣を立てた。「や、や・め・・ろ」 メルサが、ひび割れた声で言った。「やめるわけ、ないだろ」 少年は恐ろしい表情で返した。「貴様の正体、ここにありってやつか?」 ぶすり! 少年は再度、赤いモノを、刺した。 「を、を、を・・・」 メルサは、わなわなと頭を抱え、段々体が小さくなってきたようだった。 少年は、粘っこい”赤”を何度も何度も斬った。 斬っていた赤が、やっと、色を失ってきた・・・ そんな少年の肩に手を置いた男が居た。 カンである。 眉間に皺を寄せ、やや疲れていたようだが、ふわりとした笑みを見せてきた。 絶命した”赤”を見届け、ニルロゼはメルサに向き直った。「貴様の魂、どこに”使われる”んだろうな・・・」 言い終えると、少年は、”メルサ”を斬った。 ”赤”がなくなって、メルサもまた、”力がなくなった”のだ。 ずさり・・・ あっけなく、メルサは、倒れ、赤い煙のように消えて行った。 カンは、小さな瓶を取り出し、その場に油を撒き始めた。「さあ、ニルロゼ、ここから出ろ」「あんたも一緒にだ」 カンは青い瞳を笑わせた。「フッ・・・ お前はそう言うと思ったぜ」 轟々と火の上がるハーギーから、少年と大人が出てきた。 彼らは、切ない表情をしていた。 また、大事な人を失って・・・ そうして生きていかねばならない。 カンは、とうとう、友が”友でない”事を確認できぬまま、 その男をなくしてしまった。「メンーーー!!!!!!」 カンが、一度だけ、ハーギーを振り返り、高く叫んだ! 共に同じ部屋で育った友よ・・・ 共に同じ女性の元で育った友よ・・・ もしかしてあんた、俺の兄貴だったんじゃなかったのか・・・? 燃えあがるハーギーの炎の光に照らされたカンの頬に涙が伝った。 友が、兄弟かもしれない・・・ ずっと、確かめてみたいと思っていたのに、叶わぬ事となった。 だが、確かめてどうなるというのだ。 このハーギーでは皆が兄弟のようなものではないか・・・ でも、それでも・・・ 首を伏せると、カンは瞳を拭いもせず、肩をいつまでも震わせていた。 かくして、最後にハーギーから出て来た少年と大人の二人を出迎えた仲間に、彼らは吸い込まれて行った。 あたりは既に夕闇に包まれていて、近くの森の中に人影が入って行くと、森はなにごともなかったように木々が風に揺れるだけだった。 だが、この一帯の最も大きな建造物・・・ ハーギーは、大きな炎で包まれていた。 この形で壊そうと望んだ人々の心を象徴するように、熱く燃えていた。 燃えはぜる音と光は、闇夜を割き、時々鳥を驚かせるのだった。 ハーギーから出た者たちは、誰もが、その音と光から逃れたいと思うほどだった。 選んで掴んだこの結果に、皆が疲れ、空しささえも感じられた。 あの炎の音と光はいつまで続くのだろうか・・・ 皆が、思いもしていなかったのだ。 考えなくてはならなかったのに、考えていなかったのだ。 ハーギーを燃やせばどうなるかという結果を・・・・ どんな闘いや制裁、懲罰であっても耐えて来た、ハーギー内の面々は、憑かれた様子でひたすらに、燃えるハーギーから一歩でも遠くへ行こうと、足を引きずるように闇夜を移動して行った。 **************参加ランキングです **************猫より☆メンは、カンの後で考えたキャラなので、名前が超手抜きです・・カンに似た名前と考えたらメンになったんですが、「乾麺」なんて、あんまり笑えない名前・・・メンは最初「赤」の方につかせる設定が、なぜかカンの親友になるあたり、物書きしている人じゃないと判らないブラックホール(wwそれから、ニルロゼが赤の部屋の天井を刺す設定が・・・この小説これで3回書いていて、ちゃんとこの理由というかつじつまを提示しようと思っていたのに、それをしないまま結局こうなりました(汗いいんです。あんまりつじつまを描くと、長くなってオモシロミがなくなることもあるんです(本当)全然今まで一回も話が出てきていない天井の設定がなんでいきなり出てくるんだ~と突っ込んでやって下さい。いいんですこれで(きっぱり)←開き直り(爆*****************Accel HPを、第5章までUPしました!海外の音色さんの音楽は、多分3章くらいまで入ってマス★最近のイラストはpixivにのっけてます。よろしければ。
May 4, 2010
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少年の踏み込んだ先は、赤の色、それ以外の表現ができない場所であった。 赤以外が、そこにはなかった。 赤に囲まれ、目はくらみ、息は詰まり、頭がおかしくなりそうだった。 赤い机の前に座るは、赤い衣装の男二人。 マンサガと、”赤”、メルサである・・・ くくく ほほほ 彼らは揃って、小さく笑っていた。 少年ニルロゼは、唇を軽く噛んで、剣の柄を握った。「マンサガ・・・そしてメルサ! お前たちがそうしてのうのうとゆっくり構えているって事は、 俺等のしている事、筒抜けというところか」 さらり、少年は剣を抜くと、その先をマンサガに向けた。 ぎい その時・・・ 閉めたはずの、赤い扉が重い音を開けた。「!?」 流石のニルロゼも驚き、後ろへと振り向いた。 少年が目にしたのは・・・ 大人のハーギーだった。 血塗られた剣を右手に持っていた。「俺の出番に間に合ったなあ」 大人は、ニヤリと言った。 その甲冑が、血だらに染まっている。 それは、返り血だけではないようである・・・。 赤茶色の瞳を持つ男・・・ 屋上で少年が油を分けたハーギーの仲間、メンである。「ニルロゼ。 役者交代だ」 メンはそう言うと、すっと、前に出た。 ニルロゼは首を振り、思わず剣を振りかざしてメンの出足を遮ろうとする。「だ、駄目だ! ここは俺が!?」 だが、メンは、有無を言わさなかった。 よもやすれば、剣術だけを取ると、ニルロゼが腕が上かもしれなかった。 しかしそれでも、ここは大人の貫禄と、圧倒的な熟練の厚みで、メンは少年に威圧感を与えたのである。「ふん。 こんなに格好いい場面をやるくらい、俺は心が広くないんでねえ・・・」 すると、開いたままの扉の向こうから・・・ もう一人、顔を出した男がいる。「ニルロゼ。 メルサはメンに任せろ。 こっちへ来い」 ハーギーの男が少年に手招きをしていた。 金髪の持ち主のカンである。 カンは、メンと共に、屋上からここへと来ていたのだろう。「早く行けえ!!!!」 メンが叫んだ!「駄目だ! 俺は・・・」 ニルロゼは、剣を仕舞うのも忘れてメンににじり寄り、食い下がった。「お、俺がここは! あんたは、あんたのような人は、生きて外に出て欲しいんだ! 外に出た皆を守って欲しいのに、どうして判らないんだ!!!」「お前がここをヤルってかよ・・・ふふ?」 メンがゆっくり笑うと、少年の方に振り返った。「このハーギー、ぶっこわしたいんだったら、お前が外に出るんだ、 ニルロゼ。 お前だって本当は判っているだろ? こいつら、斬っても死なねえんだぜ」 メンは再び振りかぶると、赤の方へと向き直った。「ニルロゼ。 ハーギーをぶっこわしたいのは、大事な人を守りたいからだろ? だったら生きろ・・・。 早く! 外に出ろ!!!!!!」 少年・・・ ニルロゼは・・・ 幅広の背を向けるメンの姿をただ見ることしかできなかった。 彼の手は震えていた。 赤い扉の向こうから・・・ カンがゆっくり入って来て、ニルロゼの肩を優しく引き寄せた。「さあ。 ここはメンで大丈夫だ・・・行くぞ」 カンがぐいっと外の方へと少年を連れて行こうとする。「い・・・嫌だ・・・ 俺は・・・もう・・・ もう、”ああいう思い”をしたくない! 駄目だ」 手を振り解こうとする少年に、カンが優しく言った。「大丈夫だ・・・ ”ああいう思い”なら、もうとっくに俺等もしている」 それを聞いて、少年は、メンが言っていた言葉を思い出し、ハッとした。”前にもハーギーを壊そうとして・・ 生き残ったのは・・・・”「カン・・・」 ニルロゼが茫然と呟くと、カンは、青い瞳で頷いた。 大人と少年は、赤い部屋を出た。 扉の前を守っていたハーギーは、一人残らず斬り倒されていた。 流石、このカンとメンの二人の剣技を示す痕跡であった。 扉をすっかりとは閉めず、カンが言った。「お前も、重々判っているだろう。 あのメルサは、尋常な者ではない。 斬っても死なない。 その理由は、俺もわからない・・・ だから、多分、このハーギー、お前達が出ても、また機能し始めるだろう」 そこで一旦唇を閉じ、ふう、とため息をついて、またカンはじっくりと言った。「ニルロゼ。 お前は、外に出ろ。 外に出て、残った者を守るんだ。 そして、メルサの力の元を・・・ その元を見つけろ!」 その言葉が終わるやいなや・・ はっ!とカンの顔色がいきなり変わった。「メン!?」 そう言うと、金髪の青年は飛びつくように扉に手をかけた!「メン!」 カンは叫びながら、扉を開ける! 扉の向こうは、相変わらず赤かった。 全てが、赤かった。 赤い床に・・・ 真っ赤に染まったメンが・・・ 倒れていた。**************参加ランキングです **************Accel HPを、第5章までUPしました!海外の音色さんの音楽は、多分3章くらいまで入ってマス★最近のイラストはpixivにのっけてます。よろしければ。
May 4, 2010
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「火だ!」「火が・・・ 火が、上がっているぞ!!!」 東、南、西。 それら3つの塔で、怒号が飛び交っていた。 最初に火が上がったのは西だった。 実は、少年ニルロゼが、長い縄に火をつけていたのだ。 その縄が時間と共に短く短くなって行って・・・そして、終点に辿り着いていた。 そう、つまり、縄の先は油が撒かれた水路。 ハーギーの屋上の水路へと、縄が引かれていたのだ。 水路に火をつけるのはたやすかったが、つまりはすぐに敵に見つかることにもなり、強いては本来の目的・・・赤を倒すという目的に辿り着かなくなってしまう。 ハーギーを燃やし壊すという事も大事なことではあるが、油を撒いた張本人としては、なによりも抹殺すべき相手は”赤”である、と胸に刻んでいた。 西に上がったその火を見たかのように、東と南とでも、火が上がっていた。「一体なにが起きた・・・??」 ハーギー達はワタワタと走り廻りながら、事態を飲み込めずにただ顔を見合わせるだけである。 そうこうしているうちに、とうとう誰かが死んだハーギーを発見した。「おいっ!? こ・・・こっちに沢山・・・仲間が死んでいるぞ・・・?」 各塔で、騒ぎが大きくなって行った。「火の元はどこなんだ!」 誰かが大声で騒ぎ立てる。「レンハー、お前上に行って様子をみろ!」 言われたレンハーは、まだハーギーになって時間が経ってないため、やや格下で、どうもこういうときは使いっ走りにさせられる役回りであった。 格上の者に命令されたが、レンハーは思いきって反発の声を上げる。「行ってどうするんです! この足元を見て下さい、水に油が混じっている。 それより、燃えるものを、水の周りに置かないようにするのが先だと思います!」「そ、そうだな」 塔の中で・・・ まだ、外に出ていない仲間の・・大人のハーギーがいた。 残っている敵を、少しでも減らさねば・・・ レンハーは、格上のハーギーが向こうに行った隙を見て、小さな瓶からこっそり油をあちこちに撒いた。 この火の勢いが衰えなければ・・・ 主要な部分を焼けば、この建物、焼け落ちるかもしれない。 ひゅっ! 音と共に・・・ まさに、音だけで、斬っているようだった。 剣が止まり、目に見える状態になると、その時には、もう相手は絶命している。 ニルロゼが繰り出すその剣術は、まさに恐るべきものだった。 流石に、あのンサージを相手にしただけのことはある・・・ 少年を遠巻きに相手取っている誰もが、尻込みしながら唾を飲んだ。「く、くく・・・」 状況を見ていた敵は、とうとう方向転換し、その場を逃げようとした。 ひゅっ! わき目も振らず、少年は左手をひらめかせた。 逃げ出したハーギーの背に・・・短剣が突き刺さった。「はあ~。 短剣は、数が少ないのよね。 あまり手放したくないんだよなあ」 にやりともせずに、ニルロゼは左手をそっと東の鍛冶の剣に添えた。「さ。 皆さん、どんどん相手になって貰おうか・・・ そうすると、俺が奥に行く時間が短くなるって訳だ」 少年は、その年齢に全く見合わない恐ろしい言葉を吐いて、剣を構えた。 とうとう、北の塔に、火が上がった。 ニルロゼの仕掛けによって、またも、火が・・・ ほう? どこかで・・・ だれかが・・・ つぶやいた・・・ これは 赤き火か・・・? ほほほほほ・・・ 「さあ、どんどんかかって来い。 まとめて一気に。 どうぞ」 ひゅう・・・ きらり、と剣が煌く。 少年ニルロゼは、どんどんと先へ進んだ。 たまに、彼に背を向けて逃げていくハーギーも居たが無視した。 油が回って建物が焼ければ・・・ ハーギーの女性や子供がいなくなれば・・・ いずれハーギーは機能しなくなる。 そう。 ”赤”がいなくなれば!!!!!!! ひゅう! ニルロゼの剣が風を斬る音を立てる度、ハーギーが倒れた。「く、くそ・・ 恐ろしく強い・・・」 大人達は、久しぶりに動揺していた。 これ程強い相手を間近に見るのは初めてかもしれなかった。 しかも、相手はまだ少年だ。 なんということであろう・・・ 少年は、あっと言う間に目的の場所にたどり着いた。 それは赤い扉であった。 彼を後ろで取り囲んでいる数人の大人の気配がする。「いいぜ? 俺を止めても。 どうぞ遠慮なく」 こんな状況だというのに、少年は振り返らない。 切り込んで来る大人はいなかった。 結果がわかっていたから・・・ 少年は、瞳を燃やしながら赤い扉に手をかけた。 両手に”赤い痛み”が走った。「くっ・・・」 少年の右腕に彫られている紋様に・・・痺れが来た。 流石に、赤が彫った紋様だからだろうか。 この奥に入るのを邪魔するというのか? しかしそれでも、少年は腕に力を込めて、扉を開ける。 ぎいい 赤い扉が開いた。 中は・・・ 赤い。 ”赤”の部屋である。 このハーギーの・・・・ このハーギーの、核である赤の部屋。 ハーギーの中枢の赤。 ニルロゼは、まさに赤の赤たる赤の部屋へ、呼ばれもしていないのに入ろうとしていた。 奴を・・・ 倒す!********************参加ランキングです Accel HPを、第5章まで!UPしました!!FTPが調子悪くて音楽がついてないけど、見てけらいん~☆海外の音色さんの音楽は、多分3章くらいまで入ってマス★最近のイラストはpixivにのっけてます。よろしければ。
April 29, 2010
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西の塔に、小走りに走る少年の影があった。 このハーギー崩壊の作戦での伝令役、ズーシーである。 彼は、とうとう西門の周りのハーギーを堕とした事を伝えるために、南へと移動していた。 ズーシーは先ほどまで主に西を攻略する少年や仲間のハーギーの情報を収集し、それらを頭で整理しながらも足を動かしていた。 彼がいたこの西の塔では、仲間は女性の部屋にたどり着き、そして女性たちを解放させることにも成功して、彼女達を外に向け少しずつ移動させ始めていた。 だが、とにもかくにも、焦りは禁物だった。 行く先々、どこにハーギーが居るかわからない。 目立つ行動は、避けなければならなかった。 それにしても・・・ とてもではないが、回りくどい方法であった。 赤や、敵にばれないように、見つかりにくいようにという点を最も重要視されていたが、こういう方法を採り続ければ、マンサガが赤の部屋から出るまでの時間に間に合わなくなってしまう・・・。 既に、計画を実行してから3刻ほど、経過している。 しかし、ズーシーは仲間に言った。 落ち着いて、少しずつ行動しろ。 マンサガが出る1刻前になったら、一斉に脱出だ。 それまでは、少しずつ、だ。 少しでも、多くの仲間を出すことに専念しろ・・・・ 今、事がばれれば、ほんの少しの、一握りの仲間しか出ることができない・・・ ぎりぎりまで、粘るんだ。 そして、そのマンサガの様子を監視していたのはジルダという少年だった。 ”赤”の部屋が見える場所から、密かにずっと、変わりがないかを見ていた。 とは言っても、実際きちんと”見ていた”のは、大人のハーギーのエグゾという男だ。 この男は、赤の部屋の手前の廊下を監視するハーギーだった。 エグゾはたまに、おもむろに手で顎を掻いている。 それがジルダへの”変わりなし”の合図だ。 すると、ジルダは、仲間の少年に、それを仲間に伝えるように言って散らせるのだった。 この作戦で何人もの少年と大人が・・・ 色々な役目を担っていた。 そして、戦闘だけが、戦いではない、と・・・ 大人のハーギーが言っていた。 ただ、切り込めば、それでいい訳ではない。 ”皆”で出る、それが目的であれば・・・ 地道に。 確実に。 状況を伝える。 それが、一番の、功績である、と・・・ その、功績の一部を担っていることを、数名の伝令係りは誇りに思っていた。 実際、年上で剣術も上のハーギーに、態度と言葉で褒められ、少年らは完璧に自分の任務の重要性を認識していたのである。 そして、ハーギーの外にまでもう出ている者たちもあった。 数人の少年が、中から出て来た女性を纏め始める。 彼女達が捕らえられてはまた元の木阿弥。 ハーギーから離れた場所へと・・・彼らは足を向けて行くのであった・・・。 もう、マンサガか来てから5の刻が経過した。 赤の部屋の前のハーギーが、両手で顎を掻いた。 ”そろそろ時間だ” そうだ。 いつもであれば、あと1刻過ぎると、マンサガは出てくる・・・。 ジルダは、仲間を再び散らせ、自らも行動に出た。 時間がもうないのだ。 あとは、とにかく、女性と仲間の移動に専念するのみ! 段々、移動する女性の数が増えた。 少年達は、移動にかなり気を使いながら行動していた。 裏手で、誰かが死んでいく気配が伝わって来る・・・。 敵を減らす役の少年達が、剣を振って闘っているのだ。 自分達も、自分達の役を全うするのだ。 このハーギーを、出るために。 ひゅう・・・ 西の塔に、風が吹いた。 塔の屋上は、ほぼ平らでなにもない空間が寒々と続いていた。 この下で、今沢山の仲間が外に出るべく移動しているのだとは、到底信じられない程、この屋上は静まり返っていた。 静かな風を受け、ゆっくりと、壺を傾けて中身を水路に流す少年がいた。 水路に流されているものは、塔の上の小屋になぜか一杯あった油の一部である。 少年は脇に小さな壷も5つ用意していた。 これからそれぞれの塔に持って行き、撒く予定である。「おい、気配くらい、殺せば?」 ニルロゼは、急に小さな声で言った。 そのニルロゼの脇に気配も殺さずやって来たのは・・ ニルロゼと先刻まで共に闘っていたメンだった。 メンは、赤茶色の瞳をにやりとさせた。「油、俺にも売りなよ」 ニルロゼは・・・黙ってメンを見つめていたが・・・ そこに、カンもやってきた。「高く買うぜ」 カンも、笑みを見せた。 ニルロゼは首を振った。「駄目だ。 あんたらは、外に出た後の、みんなの守りを頼んだじゃないか。 あんた達がいなきゃ、みんなが困る」 カンは、ふっと鼻で笑った。「とか、ガキが言ってるぜ。 メン、どうする?」 すると、メンがひょいと壷を持ち上げた。「大丈夫だ。 俺ら二人よりも、頼もしいのが、”あっち”に居る」 メンの声を受け、歯を見せて一瞬カンは笑うと、彼も壷を持った。「俺は東に行こう」「お、おい!駄目だ!」 そう言うニルロゼを無視し、もうカンは歩き出した。 「よう、ニルロゼ。 結構楽しかったぜ・・・」 カンは、少しだけニルロゼを振り返ると、両手に持った油をひょいと肩まで上げて言った。「俺らも昔な・・・ 富豪に買われたんだ。 あの時にも、ハーギーから出ようって皆で頑張ったんだが、結局駄目だったのさ。 なぜだと思う」 カンは向こうを向き、彼の厚い肩が波打つ。 大きくため息をついたようだ。「ある一人の大馬鹿が、最後の仕上げを独り占めしたのさ・・・」 カンは、言い残すとそのまま東へと行ってしまった。 メンも、指先で壷を取った。「あの時の仲間で生き残ったのは俺とカンだけさ」 メンは・・・・西へと行った・・・。 油を撒いて火をつける。 すなわち・・・ 撒いたものは命を落とす。 ニルロゼは・・・ ゆっくり、北へ向かった。 赤の部屋がある北へ。 ニルロゼは、風のある屋上から階段を使って下の階に下りると、窓からそっと外を見た。 外に数名の少年が隠れていたが、ズーシーが、鏡を使った合図を送っていた。 もう、殆どの者が出たようだ。 どうやら、時間に間に合ったのだ。 ふっと、ニルロゼの唇から穏やかな吐息が漏れた。 それから彼は、その唇を湿らせると、瞳を細くつり上がらせた。 赤の部屋への廊下を・・・ 長い影がゆっくり。 音もなく、歩き出す。 蜂蜜色の髪の毛。 蜂蜜色の瞳。 鍛えられたその体の腰には、東の鍛冶の剣が下がっている。 ふらりとしてやる気のなさそうな歩き方だが・・・ 隙は全くない。「マンサガ様は、お帰りになられたかな?」 少年はわざと声を出して、赤の部屋の廊下に姿を出した。 数人のハーギーが、殺気立て自らの左腰に手を回す。「てめえ、なんだ!?」 ハーギーが、5人。 少年を囲んだ。 囲まれた少年は、それでも表情を全く変えなかった。 「マンサガ様は、お帰りになられたか、知りたいんだ」 少年は、再度言った。「なにい??」 一人の大人が剣を抜く。 別の大人が、それを制した。「まあ待て、まて。 ガキ相手にそう色気立つな。 おい、ガキ、マンサガ様のことなど聞いて、どうする」「こうする」 あっと言う間もなかった!「・・・」 どたり。 いきなり・・・ 先ほど、剣を抜いた大人が倒れた。 蜂蜜色の髪の少年の右手に・・・ 血が滴る剣が握られていた。 少年は静かに言った。「さて。 俺の抜刀が見えた奴がいたら、相手になって貰おうか」 少年は、赤く染まった美しい剣を上段に。 構えた。********************参加ランキングです Accel HPを、第5章まで!UPしました!!FTPが調子悪くて音楽がついてないけど、見てけらいん~☆海外の音色さんの音楽は、多分3章くらいまで入ってマス★最近のイラストはpixivにのっけてます。よろしければ。
April 28, 2010
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*****あらすじ******* 沢山の少年達は、自分の意思とは関係なく毎日を闘いに駆り出される日を送っていた。 それに疑問を持つきっかけを、数人が感じ、そしてその疑問を共有し、かくも窮屈で暗く陰湿な場所、このハーギーを脱出せんと団結した。 そんな彼らに救いの手が見えてくる。 それは、大人にも同じ思いの仲間がいたことであった。 このハーギーの核、”赤”が面会するマンサガが来る警備の薄い日を狙い、とうとう少年らと大人は剣を手に同じ方向を見つめて足を進めんとしていた。 *************** 前方を歩くハーギーの青年はメンといって、しなやかな長身をそびえさせていた。 メンの後ろには、まるで彼の子供のように、少年が5人1列になってについて歩いていた。 特にメンが仕切っている訳ではなかったが、必然的に大人を先頭にするのが物の道理である。 一番後ろに陣取っているのが、メンに負けず劣らずといった身長の、蜂蜜色の髪を持った少年である。 髪と同じく蜂蜜色の瞳を、ちらりと四方にぬかりなく放ちながら、黙って最後尾を歩いていた。「おい」 メンの声が小さく響いて来た。「気をつけろ。 あっちに二人いるぜ」 メンは、左手で少年らを制し、その場に居るように掌で指示すると、すっと”仲間”の方に姿を出した。「よう。 お前たち、お疲れだな」 メンがこうして堂々とハーギーの前に顔を出せるのはたわいもない理由であった。 なにしろ、彼が今、少年達と手を組んでハーギー崩壊の軸の一人になっているなどと、”仲間”には知られていない事である。 この点が、この”大人”のハーギーの最も利点とする面であった。 これが、少年だと、話が違ってくるのである。 少年達は、まだ”ハーギー”の一員としての最後の試練を潜っておらず、大人の仲間ではない。 このような場面で、少年の誰かが”ここ”に現れるのは、かなりおかしい立場になる訳なのだ。 まさに森の中の木、砂漠の中の石といった具合に、ハーギーという身分のメンは、違和感なくこの空間に融けこめていたのである。 立っていた男の一人が愛想よく声を発した。「おお、メン。 どうした? お前がこっちの塔に来るなんて、珍しい」 するとメンは、急に体を”仲間”の方に寄せて、彼らの耳に小声で伝えた。「牢に、とびきりいいのが来たんだよ・・・ 見に行って来ないか? 俺がここに代わりに居てもいいぜ?」「おい、本当かよ・・・へへ・・」 大人の二人がだらしない声を発すると、動き出す。 追いかけるようにメンが慌てて言った。「おいおい、待てよ、ここに俺一人置くのかよ? 一人ずつ行けよ。 いい子は逃げていかねえからさ」「それも、そうだ。 じゃあ、どっちが先に行く?」「見るだけだぞ?」「よし、じゃあ俺だ」 大人が一人・・・少年たちが隠れている方へと歩み寄る音がしてきた。 と、蜂蜜色の瞳の瞳を揺らし、少年ニルロゼが音もなく、剣を抜いた。 少年達が揃えて息を呑み、ニルロゼの表情を仰ぎ見るしかない。 蜂蜜色の少年は、目で合図し、他の少年を下がらせた。 つっ。 ニルロゼが足を一歩。 踏み出す。 この呼吸は、あと三歩で相手がこちらへと来る! 少年は剣を繰り出した! 真横から。 わき腹に。 剣で、貫いた。 相手のハーギーは・・・ 暫く泡を吹いていたが・・・ こちら側へと倒れかかって来た。 それを、受け止めた少年がいた。 ひゅっ、 ハーギーからニルロゼが剣を抜くと、向こう側でも、誰かが死んだ気配がした。 メンが、残った相手の一人を、仕留めていた。 少年達は、メンの方へと走り寄り、合流した。 メンが、静かに言った。「この扉の先には、三人いるはずだ。 さっきのような方法は使えない。 入りざまに、一気に行くぞ」 メンは、彫りの深い顔を見せ、鋭くそう言った。 少年達はそれぞれ、さらりと自らの剣を鞘から抜いた。 一方、他の塔でも、順調に、少年達は敵のハーギーを減らしていた。 こちらでも、仲間の大人にうまく囮になって貰いながら、進んでいた。 東の塔では、とうとう、女性の部屋までたどり着いた。 一番の難関は、外への門だった。 ここは、レガンが担当していた。 一番やっかいな場所だった。 門の周りは、10人以上のハーギーが居た。 さて、どうしたものか・・・ 茶色の髪の生え際を自らの爪で掻きむしりながら、レガンは大きくため息をついた。 自分たちの仲間にいる大人も10人いたが、彼らでさえも、あの門をどう攻めるか、決めあぐねている。 こちらが姿を見せた以上は短時間で決着をつけねばならなないであろう。 敵を確実に全員、仕留めなければ、誰かに逃げられればこちらの情報が漏れてしまうのだ。 だが、あの門の前に出て行くまでに、かなりの距離が必要だった。 誰にも不審に思われず、敵に近づいて、しかも相手と闘い、その間逃げる隙を与えない、そんな方法を考えなければならなかった。 門が開かれなければ、外に出て行くことはできないのだから。 じっと門を見つめていたレガンは、そこに張り付いている門番の顔を見ているうちに思いついた。 そうだ、中から外に出ようとするから大変なのだ。 逆に、外から中に入るのはどうだろうか・・・? レガンは、一番年少の少年に、小窓から外に出るよう指示した。 それからしばらくすると・・・「お願いします、俺をハーギーに入れて下さい! ぜひ、ハーギーで闘いたいんで!!!」 必死に騒ぎ立てる声が響き渡って来た。「お願いします! どうか俺もハーギーの一員に!」 必死だが、まるで幼いその少年の声を聞き、門の周辺を守る大人の失笑が漏れた。 けけけ 一員になりてえってよ・・? 門番達が、少年の声に気をとられていた時・・・「な・・?」 一人の門番が、目にした信じられない光景があった。 それは、数十本の剣が閃いている光景だった。 少年。 そして、仲間のハーギーが手に持つ剣の輝きであった。 「ふんっ」 と声を出し終わるまでもなく、一人のハーギーを刃にかけた男が、血塗られた剣を更に天に掲げた。「な、なにを血迷ったか、ブナン」 ブナンと呼ばれた男は、数人の仲間のハーギーが残りの門番を仕留め、そして、少年らが無事なのを確認すると、武骨な顎を小さく開けて言いのけた。「血迷っていたのは、今までの俺さ」 ブナンは幅広の剣を恐ろしい速度で、かつ的確に相手の急所へ振り落とした。 このハーギーのどこもかしこもが・・・ 真っ赤な鮮血で・・・ 飛散していた・・・。 「ほほほ・・・」 真っ赤な部屋で・・・ 赤い声が・・・笑った。「感じる・・・」 にたり、と赤い声が言った。「あかのいろ・・・・」 マンサガが・・・ 赤の声に、ゆっくり、同調した。 赤い部屋で・・・ ”赤”と、客人マンサガは、赤い色の箱を目の前にしていた。 箱の中は、部屋の赤より更に赤い色をし、脈打つかのように見えていた。 でろでろと、煮えたぎるように・・・ ぐるぐると、呼吸するように・・・・ 延々と、赤いなにかが、箱の中で蠢くと、それを囲む者共も、益々と赤の色を享受しているかのようだった・・・。********************長らく更新をお休みしていて申し訳ありませんでした。久々の小説で、文章表現力が落ちたかもしれません。やはりマメに書かないと駄目なんですね、文章も・・・(泣)モロッコの旅があたる(かもしれない)の答えは意外にも?3です!!!↑でも、残念ながら、過ぎ去りし、です。東京も行きたいし、行ってないけど金がなくなってアブナイ仕事をしていたのもかなり切羽詰まって当たってる俺・・・結局ドレをとってもかなりあたってるけど(w)********************参加ランキングです Accel HPを、第5章まで!UPしました!!FTPが調子悪くて音楽がついてないけど、見てけらいん~☆海外の音色さんの音楽は、多分3章くらいまで入ってマス★最近のイラストはpixivにのっけてます。よろしければ。
April 24, 2010
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ネオさんのバトンにお答えしてから、俺は楽天に出入りしていませんでした。その理由を、あてた人には、ご褒美に「ケーナさんと一緒に行くモロッコの旅5泊7日」が当たります!!!! え?なんでモロッコかって?いやなんとなく・・・・ なお、ご褒美はケーナさんの気分次第でオナガレになる場合があるので予めご了承ください。(ってを~い???????) Q「猫は約1ヵ月間もロクにネットもせずなにをしていたか??」1・キャラに流行りの服を買うために東京に行っていた2・キャラに服を買ったら金がなくなったのでドカタをしていた3・ドカタをしていたら知り合った人と恋に落ちて春を満喫していた4・知り合った恋人に金を貢がされ更に金がなくなってアブナイお仕事をしていたさあ~ドレでしょう~ふぉおおおおおおおっふぉっふぉふぉ******************************キャラが華やかに流行りの服を着ているの図です。結構苦労しました(激泣)総キャラに近い程のオイシイ勢ぞろいの図だわ(自画自賛)でっかいイラストはピクシブにのっけてますのでぜひ見て下さい。
April 22, 2010
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こっちは小説以外書かないことにしてましたが、楽天じゃないとお持ち帰りが無料にならないので(嘘)のっけてみました~!!!☆【どれがすき・バトン】 三択から選んでね☆◆◇◆◇◆好きな人と遊びに行くなら?A.遊園地B.ぶらぶら買い物C.男の子の家→C!ただしジジババ同居不可!フタリキリであまああああああい世界へふぉっふぉっふぉ◆◇◆◇◆相手からなら?→天野喜孝さんの工房もしくは東京の美術館博物館図書館(俺は”館”が好き)◆◇◆◇◆告白されるなら?A.メールB.直接C.電話→B どんなシュチュエーションでも、肉声で言え!告白するなら?→ 好きデス!!!◆◇◆◇◆なんて言われたい?A.好きだから付き合ってB.付き合ってみないC.◯◯が好き→ 好きかもしれない! (かもしれない がポイント◆◇◆◇◆恋人がいるのにメールで告白された!!!どうする?A.返事をする前に恋人にいうB.返事をしてから恋人にいうC.恋人にはいわない→完全無視!メールで告る奴には用はない ◆◇◆◇◆どこから浮気?A.2人であうB.手をつなぐC.ぎゅーする→目と目があっちゃったら☆(ボク純粋だから、すぐ赤くなっちゃうよ~ん☆はあとっ)***************ピクシブに載っけたやつ。「キャラに流行りの服を着せた」。詳細を知りたいキトクなお方はピクシブを御覧くだされ。ピクシブに書いてない事を一点。ビアちゃんだけは雑誌のモデル体型をそのまま模写に近い感じで書いているので、体のバランスがいつも俺の書いてる体型と少し(多分)違います。
April 5, 2010
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沢山の少年らで埋め尽くされた部屋は、しばし凍てついたように静まり返っていた。 この中に居る一人残らずが、恐るべきハーギーの闘技場で戦ったことのある戦士たちであった。 すなわちそれは、幾度とない戦いに勝ち抜いている手練の者の集団の証しでもある。 平均年齢、16、7歳。 一番小さい者は13位の者さえいた。 そのあどけない顔立ち、体つきからは、到底並の人からは、彼らが恐るべき剣技の持ち主で、数多くの者を殺し抜き、今ここに居るとは思えぬであろう。 殺戮、流血のみが求められるこのハーギーで育った彼らでさえも、皆が口をつぼみ、あからさまに脅威の感覚で体を震えさせている者さえあった。 部屋の奥で仁王立ちになっている、蜂蜜色の髪をした少年・・・ ハーギーにやって来る者の中で、最も強いのではないかと言われた者を手にかけた少年が、自らの短剣を壁に食い込ませる程に突き立て、燃えるような声で言ったのだ。 ハーギーに、油を撒いて、燃やす。 その前に、皆は出ろ、と。 しばし、誰もが圧倒されていたそのニルロゼの姿に、ようやく一人の少年が足を近づけた。「それは、許さないぜ・・・」 茶色がかった金髪の少年、エフィールは、腰の長剣を鞘ごと抜くと、それを杖振り上げてニルロゼに指示した。「ニルロゼ。 お前、それは・・・ 自分だけ、いい所を持って行こうって魂胆が見え見えだぜ。 それは、野暮ってもんじゃないかな」 ざわり・・・ 室内で小さなざわめきが・・・大きくなった。 蜂蜜色の瞳の少年、ニルロゼは・・・自分に向けられる沢山の少年達の目線から、逃げなかった。「ああ、そうさ。 最高に、いい所、美味しいところってやつかな。 そこんとこ、俺にくれないか」 ニルロゼは、歯を出して笑った。 そして、そのままの顔で、エフォールの剣の鞘を左手で触り、下げさせると、方目をパチリと瞑って言った。「女性を外に出し、その後彼女達を守る人が欲しい。 エフィール。 お前にまかせる」 ニルロゼは、壁に突き立てていた短剣を、エフィールの向こう、アモに向けた。「アモ。 お前は、弓を活かして欲しい。 常に、誰かと行動してくれ。 多分地味な役回りだが、お前にしか頼めない。 お前は前線には出ず、裏手で偵察になり・・・ 見方が敵に見つかりそうとなった暁には、敵を射って欲しいんだ」 ニルロゼの剣の柄は、ズーシーに向けられた。「ズーシー。 お前にも、地味な作業を頼みたい。 大人と俺らの橋渡し、つまり伝言役だ。 この闘いは大掛かりとなるだろう。 離れて闘う者同士、連絡が取れなければ、お互い潰れる」 ニルロゼは、短剣を抜いた。 その切っ先は、さらり、と、彼自身の首筋に当てられた。「油の役は、俺にくれないか。 みんなは、ここから出てくれ。 女性のために・・・」 ニルロゼを睨むように立っていたエフィールが、姿勢を崩さずに黙って被りを振った。 蜂蜜色の瞳をやや伏せ、ニルロゼは低いながらも強い覚悟の言葉を紡いだ。「俺らは、外に出ても、外のことを知らない。 この闘いが成功したら・・・今後は、お互いに、手を取り合って、外で暮らして行くんだ・・・。 だけど、このハーギーが残れば、追っ手は来るだろう。 このハーギーが残れば、女性が捕まえられる。 そしてハーギーは増える。 頼む。 俺に、最後の役を。 このハーギー、堕ちる様、見届けたい」 しばらくして・・・ ふっと・・ 立った少年が居た。 レガンだった。「嫌な奴だな」 レガンは、銅でできた胸あてと肩あてを鳴らしながらニルロゼの前に出てきた。 そして、すらりと剣を抜いた。 エフィールがやや右に体をずらすと、レガンは切れ長の瞳でニルロゼを見据え、鼻にかかるような声で言った。「お前、最高の、花形を、やるっていうわけかい。 随分俺らは損な役回りなようだな。 それで、なんか、俺らに見返りはあるか?」 レガンは、剣をニルロゼの剣に当てた。 ニルロゼは、蜂蜜色の瞳を・・・ 笑わせた。「ない」 レガンも、つられるようにニヤリと笑った。「全く、お前は嫌な奴だよ」 秋が来た。 ニルロゼの手には、新しい剣が治められていた。 東の鍛冶から、貰った剣だった。 ンサージを手にかけてしまった、と言ったら、好きなものを持ってよい、と言われて頂いた剣である。 やや中型の長さで、少し湾曲している。 流石にあのンサージの剣を鍛えた鍛冶の剣である。 こうして暗い中で見ていても、星の欠片で創られたかのように美しく光った。 そして・・・手に最もなじむ、素晴らしい剣であった。 この心に棲む人、ンサージを斬ってしまった、その事に鍛冶はなにも質問はしなかった。 ただはっきりしているのは・・・ 今手元にある剣が、鍛冶の心そのもの、魂そのものの宿る剣であろうことだった。 ハーギーでありながら・・・ 自分の意志ではないに関わらず、沢山の人を殺す身でありながら・・・ 彼(か)の人が持つ剣と同じ人が作った剣が、ここに。 この剣で・・・ 必ず、このハーギーから、不条理な思いをする人々を、解放しよう! ニルロゼは、鍛冶の剣に映る自分の瞳にそう誓うのであった。 あと、あと少しでマンサガが来る。 仲間の戦略や配置は、もう決めてある。 実行あるのみ!!「マンサガだ! 来たぞ!!」 どんよりと暗い日の事だった。 その日は闘技場での闘いが行われないのが判っていたので、よもやとは思ったが・・・ マンサガの到着を、誰かが小さく言い、それは口々に伝わった。 少年達は、一斉に・・・配置に着いた。 今頃、仲間の大人も配置に着いている事だろう。 マンサガが、赤の部屋に入ると、また合図があった。 よし。 まずは、女性が拘束されている部屋に繋がる廊下を監視する大人から狙う。 その部屋は、西、北、南、東、全ての塔に、ある。 ニルロゼたちは、北の塔に居た。 廊下の入り口を監視する大人にまず狙いを定める。 大人のハーギーが、その監視の男の後ろから巧妙に近づき・・・ 巧みな剣術で監視に致命傷を負わせた。 斬られた男は・・・声も立てられず・・・ しかも、どさりと倒れる事も許されなかった。 念には念を入れ、倒れこむ音さえも、立てないよう・・・ 少年らが抱きかかえ、目に付きにくいところに置いた。 今しがた、監視を仕留めた大人の、仲間のハーギーは、背後の少年らに目配せをした。 これから更に奥に行くのだ。 大人に対抗するには、やはり大人が必要なのだった。 ニルロゼは、この仲間のハーギーに、絶対なる信頼を置いていた。 その男の名はメンと言った。 以前・・・このメンが、自分達に、女性をいたぶることを教える、などという行動を取っていたが、実はあれは、計算されていたらしかった。 カンとメンとは、無二の親友なのだという。 カンからそれを教わる前から、よもやそうではないかとは気が付いてはいた。 彼らが繋がってなければ、あの時あれ程に都合よく、カンが現れる訳がなかったのだから・・・ ハーギー崩壊に向けた計画は、大人たちの間でも考えられていた事であったのだ。 だが、かなり昔実行した人が失敗したのだという・・・ それでも諦められないでいた大人たちの燻った火種に、少年らの計画が匂ったようなのだ。 それを確かめるために、カンとメンとで芝居を打ってみた、ということらしかったが、なんともこのハーギーでは、暗い方法、遠まわしな方法でしか、仲間を見つけることができないとは、と、カンは独づいていたのであった。 とかくにも、それらが実り、計画はまさに実行に移されていた。 ハーギーの至るところで、大人を先頭に、少年達が剣を手に息を殺し、瞳を燃えあがらせた。********************参加ランキングです Accel HPを、第5章まで!UPしました!!FTPが調子悪くて音楽がついてないけど、見てけらいん~☆海外の音色さんの音楽は、多分3章くらいまで入ってマス★最近のイラストはpixivにのっけてます。よろしければ。
March 31, 2010
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ニルロゼは、今まで居た部屋から出ると、まずカンの居る所へと赴いた。 そして、彼から赤が居ない理由を教わった。 赤は、以前自分が闘技場でンサージと戦った時、ンサージの剣を手中にしたという国王の所に行っているらしかった。 カンは、再び精気を取り戻したニルロゼの顔を見ると喜び、今現在の、計画の進捗状況を詳しく教えてくれたのである。 大人のハーギーの中で、”仲間”であるのはその数、34名。 残りの大人のハーギーの数がどれほどかは、流石のカンも判らないとのことであった。 ニルロゼは、素早く仲間の少年達の所に戻り、彼らにできるだけ人目に付かないようにハーギーの内部全部を回るように言った。 普段の赤の居る日であると、自分たちは他の所に出入りできない。 今日であれば、ある程度他の部分も見ることができそうである。 じき、秋が来る。 そして、あのマンサガが・・・ 赤が、いつも取引をしているマンサガが、やって来るのだ。 彼奴らが取引をしている間に、秘密裏に行おうという、少年らと大人の仲間との計画・・・ ハーギーをぶっこわす、という大きな計画のために、色々情報が必要だ。 このハーギーのどこになにがあるのかを・・・知っておかねばならない! ニルロゼ自身も、可能な限りの場所を偵察していた。 少し身長が伸びた彼は、敵に見つかり易く、やや不利な条件であったが、素早い身のこなし、そして気配を殺す方法を体得していた。 多少影が相手に見えようとも、自分の存在を感じさせる事ができなければ、それでいいのだ。 少年は、一度も出たことがなかった、ハーギーの建物の屋上にも行ってみた。 そこは以外にも、誰もハーギーが見回っておらず、延々と続く回廊のようになっている屋根はやや四角形になっていた。 その、真中に・・・忌むべき闘技場があった。 あそこで、毎日のように闘っていたのか、そう思うと、ニルロゼの蜂蜜色の瞳が燃えるようにギラギラとつり上がる。 人気のない屋上を、それでも気配と足音を殺して歩いていると、所々に物置小屋があるのに気がついた。 どれにも、鍵もかかっていない。 それもそうだろう、この屋上に来るためには、誰かハーギーの許可・・・つまりは”赤”の許可が必要で・・・ それは強いては”鍵”が入用である、という事を意味していた。 屋上に来ることそのものに鍵が必要なのであるからして、物置には鍵は必要はない、というところだろう・・・。 ニルロゼは、その物置に、それぞれ全てに油の入った瓶を発見した。 ハーギーの中で火を使うために必要なのであろうが、物置全てを覆いつくすように、ひとつ残らずの瓶に油が入っていた。 少年は、これほどの量の油にやや疑問を感じつつ、一個の瓶を手にとって見る。 と、その床が、赤黒く変色していた。「・・・」 蜂蜜色の髪の少年は、やや戸惑った。 この色は・・・ 恐る恐る、指で触れると、生ぬるい感触がした。 ほんのさっき、誰かが、ここで血を流していた、そんな感じの床だ。 ニルロゼは、流石にぞっと鳥肌を立て、思わずその場所に瓶を置いた。 そして冷や汗を流しながらその場を離れようとしたが・・・ 自分の指になお残る血を見て、思いなおすと、唇を少し噛みながらまた瓶を移動させた。 二つ・・・三つ・・・瓶を、持ち上げては、別の所に置いた。 床は、全体が、どこも隙間なく・・・血で染まっていた。「・・・常に誰かがここで処刑されているのか?」 思わずそう言いながら、移動させた瓶を戻していると、ある事に気がつく。 瓶の底は、血が付いていないのだ。 ざわり、と、底なしの冷たい風が、物置から吹いて来たような気がした。 ニルロゼは、出した瓶を丁寧に戻すと、別の物置にも行ってみて、瓶を移した。「・・・! これは・・・」 思わず、少年も口から驚きの声を上げてしまう。 そちらは、至って普通の床であったからだ。 他の物置も、同様であった。 血塗られた物置の床、しかもあの物置だけ、と、ニルロゼは若々しい眉毛に皺を刻むと、再び件の物置に行こうと思ったが、他にも見ておかねばならぬ場所もあった。 あまり、時間はなかった。 かくして、ニルロゼは、多方面の場所を見終え、また仲間もあちこちを見て来て戻った顔ぶれを確認すると、少年らの集まる部屋に数十人の少年を集め、こう言った。「これは俺の勝手な考えだ。 別の考えがあれば、構わずに言ってくれ。 まず、マンサガは、赤と対面する。 その会合時間はいつも半日かかる。 その間に、敵の目を盗んで、仲間ではない大人のハーギーを殺してしまう。 これが、一応、俺の考えている第一の作戦だ」 少年らは一同に、頷いた。 その同意の顔を見たニルロゼは、更に続けた。「その時に、騒ぎが起これば、俺らのやっている事が・・・マンサガや赤は、気がついてしまう。 だから、大人一人を狙ってこっそりと殺るんだ」「一理あり」 という鋭い声が上がった。 ニルロゼは、すらりとした背を少し曲げて左手を上げた。「そういう方法を採って、大人のハーギーを減らす。 それから、女性を、外に出す係りが欲しい。 殺すだけでは駄目だ。 女性を、敵に見つからないよう、こっそり外に出す。 つまりだ。 最初に殺すべき相手は、女性の居る場所から外に繋がる道に居る敵だ」 少年らはみな、頷く。「そうすれば、つまり、俺らが逃げる道も確保できるな」 少年の誰かが言った。 その声を受け、ニルロゼも言った。「そう、そのとおりだ。 誰かを助けること、すなわち自らを助けること! でも、目的を誤ってはならない。 女性がここに居る限り、女性は苦しむ。 女性はハーギーを増やす。 俺ら男は、ただ戦うだけだが、女性の苦しみは、それより辛いことを、俺は女性から教わった」 少年達は、静かになった。 ニルロゼは、腰の短剣の鞘に指で触れながら言った。「だから、まずは、女性をここから出すことだ。 女性の部屋の前から、出口までの間の敵は・・・みな、仲間ではない大人のハーギーだ。 そいつらを、全員、一人ずつ、殺すのは、難しい。 さあ、みんななら、どうする?」 少年らはやや考えた。「こういうのはどうだ? 仲間の大人に、囮になっておびき出して貰う・・」「なるほど!」 囮の案には、少年らの喝采があがり、わっと明るい雰囲気になった。 ここにいるのは少年ばかりなのだ。 いくら個々人強いとはいえ、大人との差が出るのは必須だった。 大人にも仲間がいる・・・ その仲間に、大人の”相手”になって貰えば、非常に心強かった。 ニルロゼは皆の方向性が纏まっている事に喜びながら、両手を開いて大きく言った。「相手は確実に、一人ずつ、やるんだ。 あせってはだめだ。 ばれたら一貫の終わりなんだ」 少年らの一人が立ち上がった。 富豪のところでニルロゼと一緒だったズーシーという少年である。「さて、では、女性を外に出したら、どうする?」 ニルロゼは、ズーシーに向けニヤっと笑った。「俺達は、”外”のことを全く知らない。 信頼できる大人一人と、あと、俺らの中の誰か三人くらいで、女性を守るんだ。 じゃないと、全然知らない外に出た女性が困るからな」 アモが立ち上がった。 このアモも、富豪に買われた少年である。 その先で出逢った人に見込まれ、矢を習っていたというだけあって、こうして赤がいない日であっても中振りの矢と、矢筒を背にしょっていた。 アモは、黒い髪を短く自分で切ったばかりで、比較的端正な顔立ちをしているというのに台無しの髪型になっている。 が、格好など全くお構いなしの少年は、これから起こる大きな革命に似た流れに向け、その行く末を見ようとするような瞳で言った。「女性を出したその後は? どうやって行くんだ?」 ニルロゼはいじっていた短剣を鞘ごと抜いて、壁に剣の柄を当てた。「後は、前と同じさ。 中に残った俺らで、敵のハーギーを減らす! そして、マンサガが出る前に、俺らは全員ハーギーから逃走するのさ」 同じく富豪に買われた少年、ズーシーも立って言った。「でも、それでも、まだ残るハーギーは? 全員をやっつけるなんて、できるのか?」 ニルロゼは、そこで初めてふっと下を向いた。 そして、ゆっくりと言った。「このハーギーの屋上には、大量の油がある・・・。 あれをハーギーのあっちこっちに撒いて、火を放つ! 流石にこのハーギーも、焼け落ちるだろうよ」「え!?」 数人が一瞬、喜びとも驚きとも交った声を出したが、次のニルロゼの言葉には、誰も声を挟む事ができなかった。 「火は、俺がやる。 だから、皆はそれまでにここから出るんだ」 ニルロゼは、反論を全く許さない瞳を燃えさせていた。 その意志の強さが、体中から湯けむりのように立ち上がるかのように見えるようである。 少年らは、ニルロゼの圧倒的な気迫でビリビリと包まれ、誰もが身動きが取れずにいた。 ********************参加ランキングです Accel HPを、第5章まで!UPしました!!FTPが調子悪くて音楽がついてないけど、見てけらいん~☆海外の音色さんの音楽は、多分3章くらいまで入ってマス★最近のイラストはpixivにのっけてます。よろしければ。
March 22, 2010
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女性の髪の毛が、少年ニルロゼの首元にあたり、くすぐったく感じた彼は必要以上に顎を上げていた。 ナーダを抱きしめていると、そのあたたかさに、少年はこれまでに感じたことのない動悸がして、自分でも指や肩が震えているのがわかる。 ニルロゼは、この奇妙な感覚が怖くさえあった。 これまで、どのような状況にあっても、こんな思いはしたことはなかった。 これまで、何度となく恐ろしい相手と殺し合う羽目となった事がある。 心臓が高鳴り、体の血が熱く滾るのを感じた。 だが、今の・・・今、感じているこの鼓動や、体の熱は、それまでの物とは異種であることは、はっきりしていた。「あ、あの」 ニルロゼはとうとう、蚊の泣くような声を絞り出した。「ええと、その、そろそろ離してもいい?」 途端にナーダは抱きしめていた腕にぎゅっと力を加え、ますますくっついて来た。 そして、ふわっと柔らかい声で言うのである。「どうして?」「・・・」 ナーダがそう言うと、全く応える事ができない少年は、蜂蜜色の眉毛を情けなく眉間に寄せた。 これは・・・困ったな・・・。 どうして、と言われると、さて、はたして・・・・ 少年は、必死になりながらも言った。「う、うーんと、そうだな、なんか、くすぐったいから」「そういう理由じゃ、駄目」「・・・」 少年は、眉間に皺を寄せて、どうしたものかと考えを一生懸命に巡らせる。 これは、困った。 今まで、俺は、単純に生きて来すぎたのだろうか!?「う、うーんと、くっついていると、変な気持ちになる」 ナーダが言った。「どういうふうに?」 少年はまた考えた。「うーん・・・なんだな。 なんか、わかんない」 ナーダは、少しだけ、腕の力を抜いて・・・ 少年の顔を見た。「何度でも言うわ・・・ あたしはあなたが好きなの。 好きな人のために、こうして、ここに来ているのよ・・・」 少年は、ナーダの目線をまともに受けられなかった。 闘う時は、相手の目が見れない事など、ないのに・・・「・・・ごめんよ・・・ 好きっていう気持ちがわからないよ・・」 少年は、そう言うしかなかった・・・ すると、ナーダは、またくっついて来た。「別にいいわ・・それでも。 いつかあなた、判るわ・・・ だから教えてあげる。 魂を引き寄せられるように・・・ ぜーーーんぶ、かけて、相手を求めるのよ・・・」「・・・」 ニルロゼは、自然に自分の手が動いて、ナーダの背をそっと抱いた。 魂が引き寄せられる。 そのような人がいるというのか。 俺は・・・ ンサージだ。 あの人に、俺はまさに、引き寄せられたのだ。 そしてあの人は、魂をかけて・・・この俺に・・・ この俺に、行くべき道を示したのだ。「ナーダ」 ニルロゼの顔が、少しばかり遠くを見る雰囲気になった。「今日は赤が・・・いないんだったな」 少年の蜂蜜色の瞳が、きりっと煌いた。「俺は・・・仲間の所へ行くよ・・・ 教えてくれてありがとう・・・」 ニルロゼは、そう言うと、ナーダの体をゆっくり、離した。「君が来てくれて・・・ 教えてくれて・・・ うれしかったよ。 ありがとう」 ナーダは、きっぱりとした表情のニルロゼを見、ふう、と、笑った。「あ・・・それから」 ニルロゼは、ちょっと照れて言った。「ええと、その・・・ 前、牢で一緒だったとき、なにもできなくて辛かった。 今も、君の気持ちが、まだよくわからないよ。 だから辛い。 こういうときは、どうすれば、いいかな?」 ナーダは、急に、赤くなった。「あ、あなた、いきなりそう来るか・・・」 ナーダの言うとおりで、このニルロゼ、まったく状況を把握していないのである。 ほんの先ほど、もう仲間の所に行くと言いきったではないか。 だというのに、彼は、話の方向性と真逆の事を言いだしている。 ナーダの気持ちに応えるにはどうしたらいいか、と言っているのだ。 本来、この言葉に対し、ナーダは怒りを覚えるべきなのだが、あまりに突拍子すぎて、彼女は動転するしかない。 なにしろ、心奪われている相手が・・・ 自分の気持ちに応えるために、どうすればいいか、と言っているのだ。 ナーダは、今まで自分から好意を明らかにしていたにかかわらず、急に振られたこの言葉に、しばし顔を真っ赤に染め上げ、少年に背を向けて一人で照れてしまうしかなかった。 そして、ようやく呼吸を整えると、瞳をキラリとさせて少年の方へと振り向いた。「ニルロゼ。 こういうときは・・・ とりあえず・・・」 ナーダは一歩彼に歩み寄った。「あたしの唇に、口付けを・・・」「は、はあ・・・」 少年の間の開いた返事に、ナーダは本来の姿を取り戻し、やや声を高くしてキッと言った!「はあ! じゃないの! 前に牢を出るとき、あたしあなたにしたでしょ! あれよ!!!! さあ! するの!しないの!」「あ、あれ、ね・・・」 ニルロゼは、首を捻り、ええっと、と口の中で呟いて、頭を掻いた。 そして、おずおずと女性に近づいて、えいっ!と唇を重ねた。 あっと言う間に少年が離れてしまうと、ナーダは、はあーーーーーーーーっ、と深く溜息をついた。「ああ・・・あんたは・・・ 情けないわ・・・。 将来、一体どうするつもりなの・・・ まあ、あんたはそういう男なのよね。 そういう男に惚れたあたしが悪いのよ・・・ このぐらいで勘弁してあげる。 さっさと行きなさい、朴念仁」「う、うん」 少年が部屋から出ようとした時・・・「待って・・・」 ナーダは・・・少年の服を引っ張った。「もう一度」 ナーダは、すがるような目つきでニルロゼを見つめ、ニルロゼはその瞳に一瞬囚われた。 と、ナーダは少年の二の腕に手をかけて来た。 ニルロゼは、ナーダの、自分へ向けた視線を、解くことは無理であった。 引力、なのであろうか。 それとも違った。 これはなんだろう? だが、考えている時間が、なかった。 彼らは、再び唇を重ねた。 少年は、温かくも胸がざわつく感覚に囚われてしまう恐れを感じ、すぐに離れてしまいたかったのに、ナーダは両手で首元に抱きついてきた。 このままでもいいのだろうか? この感覚はなんだろうか? 熱い思いが、こみ上げて・・・ナーダの知らなかった部分が自分に入って来る気分だった。 ナーダが腕をほどくと、ようやくニルロゼは解放されたが、しばし少年は自分の感覚を取り戻すのに時間がかかった。 少年は、己になにが起こっているか判っていなかった。 しかし、少年がそのような状態になってしまっているとは流石に判らないナーダの方は、自分の気持ちの整理をつけるのに必死なのであった。「ニルロゼ・・・ 多分、もう、二度と、こうして二人でゆっくりできないのね・・・」 ナーダは瞳から溢れる涙を何度も指で拭った。「あなたと逢えて、うれしかった」「・・・」 ニルロゼは・・ナーダを見つめていたが・・・「俺も、うれしかったよ」 そう言うと、さっと彼女から背を向け、部屋から足早に出てしまった。 そんな少年の去った先を見つめていたナーダは、ちょっとお腹をさすり、それから瞳を伏せて笑うしかなかった。 あーあ。 なにが、”うれしかった”んだか。 どうせ、あの男のことだから、 ”別の事”がうれしかったのよ。 あいつはあたしのことは・・・ 眼中にないのよね。 まあ、でも、 そういうところが・・・ 好きになっちゃったんだけど・・・ これほど、熱く引き留めたいと想う人が現れるなんて、思いもしなかった。 でも、一緒に居ることができたのは、一時であった。 なんと短い時間であったろうか。 本当に、一時の間だけだった。 以前も・・・今回も。 この、ほんの少し彼に触れた時間を糧に、これからも、ずっと想い続けるのだろうか・・・ ********************参加ランキングです Accel HPを、第5章まで!UPしました!!FTPが調子悪くて音楽がついてないけど、見てけらいん~☆海外の音色さんの音楽は、多分3章くらいまで入ってマス★最近のイラストはpixivにのっけてます。よろしければ。
March 22, 2010
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命でも、なんでも惜しくない。 そうはっきり、後ろにもたれる女性、ナーダは言った。 宙を見ていたニルロゼは・・・ あっけにとられてしまった。 その唇は、やや色も抜け、ポカーンと半分開けているが、少しだけ僅かに動いた。 彼は、ナーダの言った言葉を、オウムの様に口の中で繰り返した。 命が惜しくない? そう・・・ そうだ。 これまでも・・・今までだって、いつ死ぬか判らない状況だった。 いつ、死んでも、おかしくない。それがハーギー。 でも、好きな人のために・・・? 好きな人のために、死ぬ?「・・・好きになると・・・ 死んでもいいって・・・こと・・?」 ぽつり、と、少年ニルロゼはやっと言った。 後ろの女性は、肩を揺らして笑っているようである。「ニルロゼ。 あなた、死ぬの、怖いと思ったことある?」 少年は、実に率直に素早く応えた。「・・・いや?」「じゅあ、いつか死ぬと思っている?」「ああ」 これもまた、春風に花弁が舞うよりも自然に少年は当たり前のように応えた。「じゃあ、死ぬ前にしておきたいこと、ある?」「・・・・?」 ニルロゼは考えた。「さあ・・・・」 ナーダは、体の向きを少年の方に向けると、彼に手を伸ばし、抱きつきながら言った。「人っていうのは・・・ 人を求めるように・・・できているんだって・・・。 それは、人が弱いからだ、と、あたしは富豪に教わったわ・・・」 流石に、ニルロゼは、ナーダの体がふわりと温かく感じられると、首を竦めながらも、彼女の言おうとする事を必死に理解しようと頭を色々巡らせる。「・・・」 ナーダが耳元で囁いた。「弱いから、誰かを求めるのよ・・・」「・・・」「例えば、親は、一番、求めたいわよね・・・」「・・・そうだな・・・・」 確かに、失われた両親の事を思えば、一番あの人たちを求めたかった。 どうしてこんなにも、求めたいのだろうか。 でも、それとこれとは別問題で、ナーダがくっついている部分がむずがゆかった。「でも、普通は、親の方が年が上だから・・・ いつかは先に居なくなるでしょう」「・・・」 ニルロゼは、一瞬ムっと唇を尖らせた。 そんなものなのだろうか。 親は先に居なくなるものなのか? すると、ナーダは静かに言った。「だから、今度は、自分が、親になるの」「え?」 ナーダは、軽く笑いながら、更にニルロゼにもたれかかって来た。「あたしは、もう・・・ 親に、なりかけているの。 ねえ、わかる? 好きな人がみつかると、その人と、親になるのよ・・・」「・・・親に・・・」「そう。 子供ができるの」「子供」 ニルロゼは、じっと床を見ているばかりだった。 考えた事がなかった。 富豪の所で、ナーダから聞いた話は・・・ 誰の子供を産むか判らない、という事だったのに・・・ 今、彼女が言っている事は、なんだか違う話のようだ。 それが、頭の中で交錯し、どちらの話も食い違うのに、でもどちらの話も同じのような・・・ 彼にとって、いつまでもそれは、終着点のない疑問なのであった。「ねえってば!」 急にナーダの声が上がった。「な、なんだよ」「あたしの手ぐらい、握りなさい!」「は? ・・・はい」 少年は、肩を竦めながら、そっと自分の手をゆっくり上げて・・ ナーダの指先に触れてみた。「そうそう、それでいいのよ。 もー、ほんとうに、あなたは、駄目駄目だわ」 ナーダは、ちょっと冷たい指で、ニルロゼの指を何度かさすった。「ねえ、いつか、あなただって、好きな人ができるのよ。 そうしたら・・・ ちゃんと、好きな人に、きちんと、好きだって、表現をしないと。 女は、わからないのよ。 伝わらないのよ」「は、はあ・・・」 なんだか自分でも情けないなあと思うような声を出しながら、ニルロゼはナーダの指先を、思い切ってもう少し上の方までなぞってみた。 彼女の手は・・・すべすべしていて、柔らかい。 その手首は、びっくりするぐらいに細かった。 ちょっと手を離してしまったニルロゼは、またナーダが怒りだすかなと思って、思わず彼女の手をつかんだ。 と、ふんわりした柔らかな手は、とても小さくて、ニルロゼの手にすっかり包み込まれてしまう。「君の手は、小さいんだね」 思わず呟くと、ナーダは何も言わずに、黙って残された手を、握られている手の上に重ねた。 しばし、そんな状態が続いていると、なんだかニルロゼはまた変な気分になって来た。 とにもかくにも、どうやら、自分は、女とあんまりくっついていると、この”変な気持ち”になるのだ、というのだけは、理解できたのだ。 少しだけ、彼女がくっついている部分から自分の体をずらし、呼吸を少し上げて言った。「で、でもさ、 その、君は・・・命も惜しくないって言ったよな? 死んだら、親になれないじゃないか・・・」 ナーダは、目を瞑った。「命をかけてでも・・・ 命をささげてもいい、そう思える人が、一生に一人はいるのよ・・・」 ニルロゼは、思わず、唾を飲み込んだ。「命を・・・」 ニルロゼは、ナーダの手を握りながら、何度かその言葉を繰り返した・・・「命・・・」 ナーダも呟いた。「魂よ」「魂?」「魂が、惹きこまれるのよ・・・ 魂をかけてもいいと・・・」 ニルロゼは、急に、ナーダの手を振り解くと、いきなり立ち上がった!「魂をかけて・・・」 少年は、天井を仰いだ。 そうだ・・・ ンサージが言っていた! 「相手の魂が・・・ わかるもの・・・」 少年は、自分の手のひらを見つめた。 そうか・・・? そうなのか??? ンサージは・・・魂を・・・? 確かにンサージは言った。 相手の魂がわかるもの、と・・・「ンサージ・・・ 俺に・・・ 魂とはなにかを・・・ 俺に、伝えてくれたのか・・・ 命をかけて、俺に・・・」 呆然と立ち尽くす少年に・・・ ふわり、と、 まとわりついて来た者がいた。「また、男の事・・考えているのね・・」 ナーダが、顔を伏せて少年の手に取りすがって来た。「あなたは、あたしの事なんて、考えないのねえ・・・」 ナーダは心の底から諦めのため息を吐き、そう言った。 ニルロゼは、そこまでもして自分に寄り添う女性の姿を見ると、今までの顔とは別の表情でナーダに向き直った。「いいや?」 ニルロゼは、頭を掻いたり、足をもじもじさせて、言った。「なんだ、その、ええと、 君の事は考えては、いたよ。 牢で一緒だった後・・・ 君が余興に出るというのになにもしてあげられなくて・・・ 辛かった・・」 ナーダは、ふうん、とそっけなく横を向いた。「どうしてあげればよかったか・・・ ずっと、考えていたよ・・・」 少年がそう言うと、ナーダの頬に、見る間に涙が伝わり、さっとそれを彼女は拭うと、思い余ったようにナーダは少年に抱きついた。「だからあなたは馬鹿なのよ・・ 最悪」 少年は、いきなりの事に戸惑い、やや、赤くなった。「だって・・・」「だってじゃないのっ!」 ナーダが泣きながら言った。「もう! 馬鹿! あたしを抱きしめなさい!!!!」「は・・・はい・・・」 少年は、その手を、女性の背に・・・ 回した。 驚くほど細くて、柔らかい、体だった。********************Accel HPを、第5章まで!UPしました!!FTPが調子悪くて音楽がついてないけど、見てけらいん~☆海外の音色さんの音楽は、多分3章くらいまで入ってマス★参加ランキングです 最近のイラストはpixivにのっけてます。よろしければ。
March 19, 2010
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ンサージを殺してしまってから・・・今まで、なにも感覚がないような状態だったニルロゼであるが、彼の全く思いもよらない形でナーダと再会を果たしていた。 ナーダは既に死んでいると思っていただけに、、驚きと戸惑い、そしてえもいえぬ感情が一気に押し寄せ、急な事で少年の心は気持ちの整理ができていなかった。 なんでだろう? なにがあったんだ? どうしたんだ? そういった事で頭が一杯で、ナーダに言われるまま、食べ物を詰め込んでいたというありさまである。 しかしそれでも、体の中に温かいものが満たされた感じがし、少年はふう、と吐息を吐いた。 その顔を見て、ナーダが笑いかけて来た。「やっと、柔らかい顔になったわね」 そう言われ、ニルロゼは思わず横を向き、つまらなそうに言った。「煩いな・・・。 俺はさ、どうしたらいいのか判らないんだよ・・・。 俺はなんのために闘ってきたんだよ・・・ 大事な人まで斬ってしまって・・・」 ニルロゼの表情がみるまに曇り、若々しい顔の眉毛や目つき、口元があっという間に厳しい形を結ぶ。 ナーダは構わずに、ゆっくり、彼に寄りかかると、語りかけた。「それは・・・。 ハーギーをぶっこわす、 ために・・・ 闘ってきた、 んじゃなかったの・・・」 ナーダはニルロゼの肩に寄りかかると、自分の瞳を閉じた。 ニルロゼは、寄りかかる女性を退けようとはしなかった。 以前、牢で・・・こうして、ナーダと二人で過ごした時とは・・ また、違う感覚があった。 今日は、赤が、居ないからだろうか。 ナーダがこうして自分に触れていると、なぜか、心につかえた重石が融けて行くような・・・ ナーダの考えていることが、自分の中に入って来るような・・・ そんな、ゆるやかな波に包まれているような、気がする。 この感じは、嫌ではなかった。 ニルロゼは、自分の背中に寄りかかっているナーダに、肩越しで問いかけた。「なあ・・・ 子供ができたって? だから、君は余興に出ないで済んだのか?」 ナーダは向こうで大きく頷いた。「そうよ。 私が子供を産めば、ハーギーの子供が増えるからね・・・」 ニルロゼが、ふっと、険しい顔になる。「そうか・・・ 君が死ぬと、ハーギーが減るからなのか・・・」 ナーダはニルロゼから一旦離れ、彼の前に回った。 そして、少年の瞳を覗きこみ、彼の肩に両手を置いた。「その通りよ」 ナーダは、ニルロゼを見据え、どことなく力を込めたような雰囲気で言った。「ハーギーがハーギーを生んでいく・・・ だからハーギーは減らないのよ・・・。 ニルロゼ、 いつまでも、こんなところに居ないで! もう秋の時期が来るじゃないの・・・。 あなたが、あなたが居ないで、誰がハーギーをぶっこわすの? あなた、あなたがいなくても、皆が一致すればどうにかなると思うの?」 やや厳しく言われ、少年ニルロゼは瞳を伏せて下を向いた。 ナーダの耳によく届く声が、続く。「違うわ。 誰かが欠ければ、ダメなのよ・・・ あなたが、こんな体たらくじゃ、ダメじゃないの」 ナーダは、ゆっくり、少年に体を近づけて来た。「ねえ、ちょっとは大きくなってきたのよ。 触ってみる?」 ニルロゼはナーダに手を握られた。「?」 ニルロゼは、素朴な疑問の顔のままだ。 特に彼は抵抗もせず、ナーダの手に引かれるままに任せていると、彼女のお腹に、手をあてがわれた。「これは?」 ナーダのお腹を触ったニルロゼは、思わず首も唇も前に出して疑問符を投げかけるしかない。 ナーダがクックと、肩を笑わせ、輝くような笑顔で言った。「だから、これが子供なんだってば」 ニルロゼはしかめっ面になり、ナーダの顔を見ながら何度も首を左右に振った。「・・・これが?」 そんなニルロゼの様子を、ナーダは、はあ、と溜息をつきながら見るしかない。「ああ、あなたは、本当に、なにも知らないのねえ・・・ 子供っていうのは、女性の、お腹の中にできるのよ」 そう言われ、ニルロゼはきょとんとするだけである。「あ、そ、そうなの」 ナーダはやや腰を浮かせ、キッと眉毛を上げて言った。「そうなのじゃないのよ! あんたは・・・・もーーーー。 なんなら、作り方を教えるっ!?」 思わずニルロゼも腰を浮かせている。 まさに、腰が浮いている、という状況である。「あ、いや、知らなくていい、いい、です・・・」 ナーダはとうとう仁王立ちになり、キリっと言い放った!「いいですじゃない、この朴念仁!!!」 ニルロゼは、両手を前に突き出し、情けなくもナーダに恐れなしているようである。「いや、俺は、その、ハーギーを増やすつもりないから・・・わ、わーー」「逃げるな!」「わーーー勘弁してくれ! 俺は闘う以外は・・・」「どうしてそんなに嫌がるか~、 あ、いたたた」「あ、どうした」 狭い部屋で追いかけごっこが行われていたが、急にそれも終わった。 ナーダが座り込んだのだ。 ニルロゼは慌てて彼女に駆け寄った。「大丈夫?」 ナーダは少年に苦笑を見せた。「馬鹿ねえ、あなたは。 でも・・・女のこと、色々知っておいた方がいいわよ。 今後のためにも、ね」 やや顔色が青いナーダが心配になったニルロゼは、彼女を横にさせた。「今後、ってなあ・・・ 女の事なんて、知ってどうするのよ・・・」「どうって?」 ナーダは両の手を伸ばすと、目の前の少年の頬を挟んだ。「誰かを好きになるって・・・ とても、素敵なことなのよ・・・」「は、はあ・・・」「はあ!じゃないの! 前にも言ったでしょ! わたしあなたが好きなの!」「ええ? えっと、えっと・・・うーーーん・・・」「ああ・・だめだこりゃ・・・・」 ナーダは流石にがっくりしてしまった。 この少年、色恋には、無縁なのかもしれない。 情けなすぎるわ・・・・ なんでこんなチビ好きになったのかしら。 チビったって、背だけはおっきいけど! もう、嫌になるわ・・・「ねえ、ニルロゼ・・ 床じゃ、寒いのよ。 あなたに寄りかからせて」 ナーダは少し体を起き上がらせ、また少年の背にもたれかかった。 しばらく・・・二人は、そのまま無言だった。「ねえ・・・」 ナーダが言った。「なんでも、できちゃうのよ・・・」 ナーダの言いだした事は、突拍子もない、言葉だった。 「なんでも? なにが?」 ニルロゼが、ナーダと反対側を向きながら言った。 どうも、自分は”女”は、苦手みたいだ。「好きになると、なんでも、できるのよ・・・」 ニルロゼは、首を捻った。 なんでも?「なんでも、よ。 なんだって、できるわ・・・ 例えば、今日みたいに、”赤”がいない日を、知ることもできたわ・・・ そして、ここに来たわ・・・」「・・・」 ニルロゼは、自分にもたれ掛かる女性の言わんとする事に、やや、戸惑った。「あなたに遭う為に・・・」「・・・」 ニルロゼは、なんだか、背中がむず痒くなった。 実際に、肩を掻きながら、しかし、なんと応えてよいやら、判らない。「もっとすごいこともできちゃうのよ・・・」「・・・?」「命も惜しくないわ」 ナーダのその言葉に、流石のニルロゼも、ビクリとした。「以前・・・ あなたに逢いに、牢に行ったでしょう・・・ なぜ・・・行ったか・・・知っている?」 ニルロゼは、眉毛をしかめながら、答えた。「そ、そりゃ・・・余興に出るから? その前に、俺に遭いたかったって・・・? 君が言ってたじゃないか」 ナーダは細い腕を少年の体に回し、唇を笑わせて言った。「馬鹿ね・・・」 やや、間が開いた。「あなたに遭うため・・・ そのために・・・ 余興に出ることにしたのよ。 順番は逆よ・・・」 ニルロゼの背に、女性は顔をうずめて来た。「いずれ・・・ 死ぬことが・・・ 判っていたわ。 富豪に買われて・・・ ”赤”に、目をつけられたのよ。 他に買われた子も、念入りに、殺されたらしいわ」 ナーダは一旦言葉を切った。「余興があるって聞いたから・・・ だから”赤”に申し出たのよ。 余興に出るって・・・ そのかわりに・・・ 好みの男の傍で過ごしたいって・・・」 彼女が言葉を閉ざしてから、どのぐらい・・・ 時間が経ったか・・・ やっと、少年が・・・ 言った。「・・・よく・・・ わからないよ・・・。 なんでだ? どうしてそんなことを・・・」 ナーダは、また、溜息をついた。「だから、あなたは、”女性を知らなすぎる”のよ・・・。 好きな人のためなら、 なんでも、 するわ。 さっきも言ったでしょう。 命でもなんでも惜しくないわ・・・」********************Accel HPを、第5章まで!UPしました!!FTPが調子悪くて音楽がついてないけど、見てけらいん~☆海外の音色さんの音楽は、多分3章くらいまで入ってマス★参加ランキングです 最近のイラストはpixivにのっけてます。よろしければ。
March 8, 2010
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************ これまでのあらすじ 恐るべき闘技場ハーギーは、強き者を求めて戦いに来る者と、”内”に入ったまま出られぬ者たちがあった。 ”内”で育ったニルロゼ達は、とある大いなる者の意思により、富豪に買われ、それぞれ外に出たいと思うようになる。 彼らは、富豪の家にて結託し、ハーギーを内部崩壊させようと決めたのであった。 その言い出しであったニルロゼは、最も尊敬すべき人、ンサージと闘うこととなった。 ニルロゼは、ンサージを斬ることはできなかった・・・ しかし、こともあろうに、ンサージは、自らの身をニルロゼに斬らせたのであった・・・************** 暗く・・・冷たい場所だった・・・。 静かなその場所の奥で、蛹のように、身を屈めている少年がいた。 どうして どうしてこんなことになったのだろう・・・ 少年の服は、乾いた大量の血で、どす黒くなっている。 暗い空虚な空間を、少年はまったく虚ろな瞳を見開いたまま、微動だにしないで蹲(うずくま)っていた。 その場所は、少年一人の部屋であった。 この少年は、いつもこの場所で闘いを強いられていた。 強いられていたが、もはやもうそれが日常であった。 当たり前に近かった。 あの場に出て、相手を倒す、それが当たり前になってしまっていた。 だが、相手を殺すことはすなわち己を殺すこと。 心を殺してなにになるだろう。 ずっと疑問だった。 ここでの生活は、意味があるか? 答えもなく、無論誰か話す相手もなく、時間だけが過ぎ、戦う日々が過ぎた。 その時なのだ、あの人に出会ったのは・・・・・ 最近目覚ましい実力をつけ、戦うごとに技量が増しているとさえ思えるその少年の名は、ニルロゼと言った。 このニルロゼは、先日まさに素晴らしい功績を挙げた。 このハーギーにやって来る剣士の中でも最高に強いのではないかとされる、ンサージを倒したのだ。 それに対する、国王の褒章は大変な量と質のものであった。 ただし、その褒章は少年に対してではなく、「ハーギー」に対して、であったが。 国王からの褒章の一部は少年に向けられたが、少年は全く受け付けなかった。 受け付けられなかった、というだろう。 何を言っても、何を与えても・・ まったく少年は応えず、彼の焦点は・・・合ってなかった。 闘いで疲れているのであろう。 その一言で片付けられ、少年は、今まで沢山の少年と相部屋だったが、一人の部屋に入れられた。 一人の部屋、というより、雰囲気的には、牢屋に近いかもしれない・・・ もう、この少年は、4日、なにも食べていなかった。 食事を運ぶ係りのハーギーの青年は、暗い廊下をいつものようにきびきびと歩いていた。 薄茶色の髪の毛をさらりとさせる、その青年の名はジューロ。 今日も、手下を配置させ、食事をあちこち配っていた。 ジューロは、鳶色の瞳をもち、ちょっぴり顎鬚を生やしている、30代の男である。 食事を配膳する時となると、ジューロも皿などが沢山入る台をガラガラ引いて回っているが、今日は珍しく、食事を一人分だけ、その手に持っていた。「おい」 ジューロは、先日・・・恐るべき剣士ンサージを見事仕留めたといわれる少年が入っている部屋の入り口で声を出した。「おい、入るぜ」 ジューロは、勝手に少年の部屋に入った。 ジューロは、やや髭が生えている口を曲げながら、肩を上げた。「小僧。 いいかげん、食いなよ。 死んでしまうぜ」 ジューロが差し出すその食事を目の前にしても・・・ 部屋の中の少年はピクリともしなかった。 「まあ、おめえが死のうが俺には関係ないが」 ジューロは食事を少年の目の前に置いた。「あ、そうそう。 おめえ、まだ女を断っているって? 今日辺りから、とうとうここにも女が入るようだぜ? ま、適当にやっとけ」「いらない」 はっと、ジューロは息をのみ込み、少年を振り返って見た。 この4日、この少年とこうして相対したが、初めて少年が喋ったのだ。「いらない。 なにも」 少年は、静かに言った。 ジューロは、ふう、とため息をついた。 ジューロは、ゆっくり、優しい声で言った。「よう。 お前が死のうが、俺には関係ない。 それだけは、覚えておけ」 ジューロは、身を屈めて、少年の頬を、左手でゆっくり撫でた。 その手がすこし離れる・・・。 すると、少年の目に・・・ 映った。 ジューロの左の手の平が。「忘れるなよ。 俺の言ったこと」 ジューロは立ち上がった。「じゃあ、判ったら、それ、食え」 ジューロは部屋から立ち去った。 少年の蜂蜜色の瞳に・・・ 僅かに光がともった。 ジューロの左手の・・手の平に・・・ 刃物で切った線の跡があった。 ハーギーをぶっこわそう、 そのために大人たちが交わしている印が、あのジューロの手に。 そうだ・・・。 大人も そうだ 仲間も ハーギーをぶっ壊そう、 その高まりの気持ちが皆・・・一致して・・いた・・・。 だけど、 だけど どうしたというのだ・・・ それがどうしたと・・・・ ンサージ・・・ 俺の道を示したンサージ! あの人を・・・ あの人を殺してしまうなんて!!!!!!「わああああああああっ」 少年、ニルロゼは、大きく声を上げ頭を抱えて突っ伏した。 俺が、 俺が、 俺が!!!! 俺があの人を殺してしまった! いくら泣いても泣いても、 ニルロゼの心を導くものはどこにも見えなかった・・・。 それから・・・数刻もしないというのに・・・ ぎい・・・ わずかに、音がして・・ 少年の居る部屋の扉が開いた。 誰かが、少年の部屋に入って来たのだ。 ニルロゼは、唇を噛んで血が出て、泣きはらした顔を拭いもせず、ただ、ぼろきれのように床に視線を落としているだけだった。「ニルロゼ・・」 女性の声が、少年の名を呼んだ。「ニルロゼ・・・あたしよ・・」 女性は、食事を持ってきたようだった。 女性は、少年の近くに寄ると、彼の肩を叩いた。「ニルロゼってば・・・」 女性が少年を揺さぶった。 少年は、気だるげに瞳をあけ、うるさい、と言わんばかりに振り返ると・・・「・・・!!!!! ナ・・・ナーダ・・・!」 少年の表情は、先ほどまでと打って変わった! はっとしたように瞳を開け、自分の肩に触れる女性の名を呼んだ。「ナーダ! どうして? 君は・・・」 ナーダと呼ばれた女性は、微笑みながら、ニルロゼの唇に自分の指を触れさせた。「あらあら。 あたしから色々聞きたいなら、まず、これを食べなさい」 ナーダは自ら持ってきたのだろう、色々な食べ物が乗っている皿を差し出した。 少年は、しばらく、それを見ていたが・・・「食べさせてあげようか?」 女性が言い出したので、仕方なく、自分で食べ始める。「一体君は、どうしたんだよ・・・ 『余興』に・・・出たんじゃなかったのか?」 少年、ニルロゼは、食べながら聞いた。 この、目の前の女性・・・ ナーダは、かなり前に・・・ ”余興”で獣に喰われる、はずだった。「うん・・それが・・・」 ナーダは、やや、俯いた。 ニルロゼは、モジモジしているナーダを見つめ、いぶかしげな顔になった。 そのニルロゼより、5つか6つは年上の女性が、まるで弟にたしなめるように言った。「ダメ! 聞きたいなら食べるの!」「はいはい・・・」 肩をすぼめて、少年はまた食べ始める。 と、ナーダはこそっと小声で・・・ なんだか、恥ずかしそうな雰囲気で・・・そっと言った。「あのね、あたし。 子供が・・・できたみたいで・・」 ニルロゼの手が止まった。「は?」 ・・・・・・ ニルロゼは頭を左右に振りながら考えた。「俺の子供?」 ナーダは、ぐっ・・・・と前かがみになった!「あなた・・・・底なしの馬鹿ね・・・・」 ナーダは、くっくっと、涙目になりながら、肩を震わせた。 そしてとうとう我慢しきれなくなったらしく、両手をお腹に当てながら大声を上げて笑いだしたのである。「お、おいおい、そんな大きな声だして? ・・・大丈夫か?」 ナーダは、少年に言われ、ようやく深呼吸をした。 大丈夫、なのは、自分に言われたのではない事は知っていた。 彼女は、笑って涙が出た目を擦りながら言った。「大丈夫よ。 今日はね・・・実は、”赤”が居ないの・・・ このことは、ほんの数人しか知らないわ。 あたしは、カンに教わって、ジューロにここまで連れてきてもらったの」 ニルロゼは流石の事に驚き、素直にその表情に戸惑いの色を浮かべた。「そうだったのか・・・・」 少年が、皿に盛られた食事を全部食べ終わると、ナーダは、更に、保存食を出し始めた。「まだ足りないはずよ。 ちゃんと食べて。 あたしのためにも」 ニルロゼは、ナーダを見ていると、あの富豪の家での会食を思い出し、切ない気持ちになった。 常に怯えていた女性たち。 自分より年上なのに、か細く、身長も同じくらいの女性が、涙を浮かべている姿は、今でも忘れてはいない。 それにしたって、あの時ナーダに教わった、子供の事が、今まさに目の前のナーダの身に起こっているらしい。 ニルロゼは無理に口の中身を飲み込むと、率直に彼女に聞いた。「なあ。 子供ができたって? どういうことだよ?」 ニルロゼに問われ、ナーダは首を振った。「だから言ったでしょ、聞きたいなら食べなさい!」「はい、はい・・・」 このハーギーの中で、かなりの強さの位置にいるであろうこの少年だが、ナーダに頭が上がらなかった。 ようやく食べ終わると、ニルロゼはちょっと上目遣いで、混じり気のない瞳をナーダに見せるのであった。「で? 子供ってさ? どこにできるの?」「あなたねえ・・・ どうしたら、そこまで馬鹿になれるの・・・・」 ナーダはつくづくと、溜息をついた。********************◆お知らせ◆Accel HPを、第5章まで!!UPしました!!!ドンドンパフパフ♪FTPが調子悪くて音楽がついてないけど、見てけらいん~☆海外の音色さんの音楽は、多分3章くらいまで入ってマス★参加ランキングです 最近のイラストはpixivにのっけてます。よろしければ。
March 5, 2010
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・・・ガルトニルマから“還えされた”リュベナは・・・ 既に、魂は、なかった。 ただ、生きている。 それだけ、のようだった。 でも、私にとってリュベナであることに・・・ 変わりはなかった。 業火の神ガルトニルマ・・・ 彼奴は、人の魂を喰ろうているという。 この私が、彼奴の好む魂を見つけたあかつきには・・・ リュベナの魂を、戻してもよい、と・・・ 私は、あの子の魂のために、私の魂を彼奴に売り渡したようなものであった。 私などどうでもいいのだ、あの子が目覚めて笑ってさえくれれば・・・ だが・・・リュベナの為に、他の誰かを陥れるなどとは・・ 本当は私の好むことではなかった。 彼奴は言った。 エルダーヤ大陸に、忌むべき魂あり・・・ エルダーヤはその魂によりて混沌たる世界に陥っている・・・ エルダーヤの忌むべき魂を焼け! エルダーヤの汚れた大地を焼け!! エルダーヤの全てを! 全てを!!!!!!! さすれば、この世界も浄化され 迷える魂も戻るであろう・・・・ 焼くのだ 焼くのだ・・・ わが力は常に わがものなれば すべては わがものから分かつ すべては わがものより分かつ 炎 業火 わが炎 わが炎は常に わがものなれば 炎は わがものから分かつ 炎は わがものより分かつ ここは本当にどこまでも白い世界であった。 白い風が吹いて、わたしの長く黒い髪がなびいた。 しなやかな自分の髪を手に取り、見つめながら、ふっとわたしはため息ではない・・・なんというか、軽い吐息に近いようなものを唇から漏らした。 とうとうわたしは、てきとうの神と契約を交わした。 800年。 わたしが死して、800年が経過しているという。 わたしは、「てきとうの神」との契約により・・・ “人”でありながら、「この世界」と人世とを、行き来する事とした。 それがよかったのか、悪かったのかはよくは判らないが・・ わたしが求めていた、本来の目的・・・ 我が治める大地が潤い、そして我が大地が活気を取り戻すこと・・・ それが、神へ申したき事だった。 だが、もはや・・・わたしを慕っていた民は、もう死んでいるであろう。 今までわたしが治めていた地も、他の者が治めているであろう。 大切なものは既にもうなく、代わりに、あの地は今潤い、美しき地となった。 わたしは、てきとうの神の仕事を手伝わないか、とまで言われたが、わたしは神にはなるつもりはなかった。 わたしは、人の身近な苦しみを、この目で見て、 大地の苦しみを、この目で見て、 このちから、使っていきたい。 我がミョール神のちから・・・ わたしが、そろそろ、人界に戻ろうと思っていた時であった。 ふわり・・・ 白い光が・・・・ 近づいてきた。 小さい、光だ。 わたしをここに導いた「みならいの神」だ。 どんなに目をこらしても、唯の光の塊である。 わたしはそちら側に言った。「いかがされました、みならいの神。 わたしはそろそろ、参ります。」 すると、小さき光は小さく言った。 ウーよ・・ これを・・・ ふっと、わたしの足元に、黒い外套が現れた。 それは、今までわたしが着ていた、『ラ家』の外套だった。 身をかがめて外套を取り上げ、押し寄せるようなこれまでの想いを抱き、つくづくとその外套を撫でるように見つめる。 だが・・・これまで着ていた外套とは・・どこかが違うようだ。 小さき光が言った。 あなたが ながらく きていたこのふく よろしければ また と おもいまして わたしはさらに外套に瞳を落とした。 これまでとその黒さは変わらなかったが・・・ 『ラ』の文様が・・・なくなっている。 わたしは、ふっと、笑った。「ちいさき神。 粋な計らい、ありがとうございます。」 わたしは、黒き外套をばさりと羽織った。 わたしは思わず振り返り、声を張り上げて白き世界に語りかけた。「人の世に参りて、この目で大地を踏み、あなた様方と合間見える・・・ このわたしにその大役が、身に余ること、重々承知しております。 この我侭をお聞きいただいたことに感謝申し上げ・・・ あなたさまにお仕えしましょう、てきとうの神よ・・・・」 わたしは白き世界を後にした。 後にした、といいたいところだったが、後ろに下がったやら、下におりたやら、定かではなかったが。 ふっとわたしが気が付いたその場所は・・・ どこかの大きな屋敷の、庭のようであった。 ここがどこの大陸なのか、いったいどのような世情になっているか、無論わたしには判るわけがない。 流石に、やや緊張しながら周りを何度も見回した。 あの”白い世界”と違い、目で見れば風景を見ることができるという事が、なんとも嬉しい事であった。 確かにここは、下界・・・ いやいや。 ここが、わたしの生きるべき「現世」のはずだ。 庭の中ではあちこちにすばらしく美しい花が咲いている。 屋敷は、まるで、城のように塔がそびえている。 塔は大理石でできているようだ。 こんな処に急に来てしまった? これは困ったことになってしまった・・・ もし、ここが富豪や貴族、ましてや王族の城の類となれば? わたしは今、勝手に侵入している事になる。 しかし、静かだった。 庭には、池があった。 ゆっくりと近づいて、池に映るわたしを見る・・・ 神は、約束どおり、額の紋章を取ったようだ。 水に映ったわたしの顔は、あいかわらず白い顔。 黒い髪・・・ そこで、そんな自分の顔をみたわたしは、黙って膝をついて池に映る自分の姿に対峙した。 わたしは、「人の世界」に戻ったら、最初にしようと決めていたことを、その場でした。 やり終えると、ふっと、池の自分に笑った。 いにしえの『ラ家』の・・ 荘厳で、厳粛たるあの末裔でありながら。 800年経った現在も、こうして「わたし」は居る! 「誰?」 女性の声が向こうからした。 誰かにみつかってしまった。 一応、言葉を聞き取れるということは、同じ語源を使ってよいということか・・・ わたしは、できるだけ、平静を装っていた。 そう、わたしは唯の迷い人。 それも、まさか、800年も迷っていたなど、誰に言えるものか・・・「誰なの?」 落ち着いた声をさせながら、女性が姿を現した。 わたしは、そちらの方に向き直り、にっこりと、ほほえみかけた。********************◆お知らせ◆Accel HPを、第5章まで!!UPしました!!!ドンドンパフパフ♪FTPが調子悪くて音楽がついてないけど、見てけらいん~☆海外の音色さんの音楽は、多分3章くらいまで入ってマス★参加ランキングです 最近のイラストはpixivにのっけてます。よろしければ。
February 25, 2010
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めらり 黒く、冷たく、底知れぬ重々しいものが、私の体を包んだ。 頭の中で、何度も何度も割れ鐘のような響きが鳴り、耳をふさいでもそれは追いかけてくる。 寒い! 私はガクガクと全身が震え、膝も腕も頭も地面になすりつけ、大きな声で叫ぶしかなかった。 熱い、あつい、あつい!!! なのに、寒いのだ!!! ガルトニルマ・・・ これが これが、 これが! 黒の中の黒き炎、 悪魔の中の悪魔の力! ガルトニルマの炎か・・・! 黒き中の黒の空間で、業炎の踊り狂う声がしずやかに響き渡った。 ほほほほ さて けいやくを むすんだ そのちから わがために つかうのだ わがほのおで けがれ くされ よどんだものを やくがよい エルダーヤにて いむべきちかあり そのちから いずれわれにもおよぶ ごおおおおおおおおお 冷たい炎が、めらり、赤く揺れた。 ふふ さあ やくがよいわ わがもうしご・・・ その力はまさに恐るべき力であった。 焼こうと念じれば何でも焼けた。 その炎は色がなかった。 足元、手元、手から離れたところ。 ありとあらゆる場所を焼くことができた。 私を襲う悪を焼いたこともある。 娘を浚う集団を焼いたこともある。 エルダーヤ。 そこにも、私が焼くべきものがある・・ そうとも。 リュベナのために・・・ 白い、白い・・・ 下も上も右も左も。 白い。 煌めきに満ちた、白い世界に不釣り合いな、黒い衣装の人物が、茫然としたように座り込んでいた。 はあーーーー。 なんなんですか・・ ここは。 黒い衣装の人物は、長々とした美しい髪を憂いの表情で撫でた。 ああ、なにがどう間違ったのだろう。 我が神ミョールの元へと来るつもりだったのが・・・。 なんだかよくわからない神のところへ来てしまったらしい。 しかもそのうえ!!? 「間違って」死んでしまって? 800年も、経ってしまっているらしい??? まったくもって、わたしの来てしまったこの神は・・・ 「てきとう」のなにものでもなかった・・・ わたしは多少うんざりしながら、項垂れていた。 わたしの目の前には、以前、彼の神が示してくれたミョール大陸の図が、相変わらず浮かんでいる。 すると・・・ ふっと、白い光が下の方から昇ってくる。 ひとつ ふたつ。 わたしは、思わずその光を追いかけてみると・・・ 行きついた先に、あの「みならい」の「てきとう」がいた。 いた、というより、見ることはできないので、いたという表現は正しいか判らないが・・・。 わたしは、ちいさな光の神に語りかけた。「みならいの神。 なにをなさっておりますか?」 すると、小さき光は言った。 はい これが しするたましい わたしのしごとは しするたましいを みちびくこと 神の周りに、光がぐるぐると円を描いていた。「なるほど・・・ そのようにして、わたしも、ここへ来たのですね・・・」 言う先から、はあ、とわたしの口に溜息が出る。 わたしは、かなり、辛き生活だったはずだ・・・ 架せられた重荷と 架せられた民と 架せられた土地と 架せられた人生と それらが全て、 ”この世界”では、全く無意味だった。「ちいさき神。 わたしを、死の魂にはできませぬか・・・ わたしは、生きることにもう疲れました。 我が神も、我が父母も、我が姉も、そしてわたしを慕った民も・・・ 全ておりませぬ。 もうなにも残ってはおりませぬ・・・ なぜ、死の魂と誘っておきながら・・ 死することもできぬのですか・・・」 わたしは何度目かの涙を流した。 『この世界』でも、涙がでるようだ。 ちいさき光は応えた。 ざんねんですが あなたはほんとうにまちがったのです ほんらいは いきているのです ところが このせかいに わたしがつれてきてしまいました・・・ ちいさき神は、なんだか申し訳なさそうだった。 あなたは、ほんとうにふしぎなかた・・ ほんらい、まちがいであっても しのたましいとして ここにきたれば そのたましいは しぬ しかし あなたはこうして たましいがいきている あなたのせかいの 800ねんと いうじかん あなたはずっと しの ふちに いらした そして こうして めざめられたのです ちいさき光は、ふっと、光を強めた。 おかんがえになりましたか? わが おおいなるかみの つかえになると? そうだった。 「てきとう」の神の、手伝いになれと、言われていたのだった・・・ わたしは、再び我がミョール大陸の図を見て、唇を開いた。 「小さき神よ・・・ 死する事叶わずば・・・ 再び立ちたい、あの大地へ。 我が故郷へ・・・」 わたしの周りで、白い風が吹いた・・・・ そうですか・・・・・・・ ちいさき神が、ちいさくつぶやいた・・・「神よ、わたしは・・・ 人の世に、戻れますか・・・」 ちいさき神は、応えなかった。 そのまま黙っていると、すこしずつ・・・ だんだん、大きな光が・・・ こちらに近づいて来た。 ほほほ おぬしも あきぬのう ひとのせかい こいしいか おおいなる光、てきとうの神の存在を感じ、私は自らの額に触れた。「飽きぬ・・とか、そういう事ではありません。 人間には、”生きる”という道があるのです。 たとえ、仕えた神が滅び、父母が亡くなろうとも、 私は人間には変わりありませぬ。 あの大地に再び下り立ちたいのです。 この渇望、判って頂けますか!?」 しばらく・・・ 静かだった。 うむ おしいのう おぬしのようなものが そばにおれば よいのにのう・・・ まあ、 しかたないであろう しかし、どうするのだね そのひたいは「あ・・・」 わたしは、呟いて触れていた額の手を放した。 そうだ。 この額にある紋章は、ミョールの紋章。 この紋章のある姿で、人界に戻るとなると・・・? 紋章のある人など、現世にいるのだろうか・・・? あきらめて ”こちら”に こないかねえ・・・ わたしは、てきとうの神の声にやや、むっとした。「わかりましたよ? あなたの魂胆が・・・ わたしを傍に置きたいのですね?」 わたしは、ばさり、と外套を脱いだ。「わたしの力はミョールの力。 その力は、わたしと、わたしの神との契約。 あなたとのものではない。 わたしを人界に戻さぬとおっしゃるなら、わたしに死を!!!!」 ひゅう・・・ しろい しろい、光が・・・ また、下から上がって来る・・・。 ラ・ルー・ヴァ・ウーよ・・ たしかに・・ そのちから、ほしい。 そなたをみこんでいいことを おしえてやろう そなたのじだいから 800ねん けいかしておるが いまのじだいは もろもろのかみが けつれつし いむべき ちからをこのむ そのようなかみもおる ざあああああ 風が吹いた。 その風に乗るように、てきとうの神の美しい声が響く。 いむべきちから そのちからで われらのせかい くるいはじめておる たましいをくってしまうかみもある さすれば わがもとへ くる たましいがなくなる「・・・? てきとうの神のところに来る魂がなくなると、 なにか不都合が?」 そう くるべきたましが こなくなると うまれるべき たましいへと うまれかわらない つまり かみにたべられた たましいは うまれる たましいにならない たましはへるばかり ぼう・・・ 先ほどまで、ミョール大陸の図だった部分が、色々な光を帯びた。 そして、色々な大陸の図へと変化した。 わかるかな? つまりは、ひとが どんどんすくなくなっておるのだ「・・・」 わたしは、目を細めた・・・「・・・ てきとうの神よ、あなたのおっしゃることはわかりました。 それが、なぜ、わたしがあなたの元に留まる理由となりますか・・・」 ふふ さあああああああああ 白き風が吹く。 おぬし そのちから つかうつもりは もうないのかな いぜん ミョールのかみに たまわったちから ミョールはすばらしき かみだった しかし いむべき かみに くわれた・・・ おぬしがちからを よきほうこうに つかっていけば おぬし いぜん くるしんだようなことが もうないように そのように みちびいていけるぞよ・・・「・・・」 わたしは、首を振った。「てきとうの神よ。 あなたは隠していますね。 あなたは力をもっていらっしゃる。 このわたしから、この紋章を取り、 そして人界に戻す力がある。 ・・・ しかし、わたしを手元におきたいから隠している。 そうなのですね・・・」 ほほほほ これはこれは まいったの わたしは、長き髪を撫ぜた。「よろしいでしょう。 我が先祖がミョールに仕えたように・・・ あなたさまに、お仕えします。 ただ、みっつ、お願いが」 ほう、みっつとな「はい。 この3本の槍にかけ、みっつ、お願いが。 ひとつは、この紋章をとること」 わたしは額に触れた。「ひとつは、わたしを人界に戻すこと」 ざあっ! 風がたなびき、白き世界が白銀の光と交わった!「ひとつは、わたしは、人界とこことを行き来すること。 ふふ・・ 我が足で踏むべき大地を見ずして”神”にはなれませぬからね」 わたしは、そう言うと、にこり、と笑った。********************参加ランキングです 最近のイラストはpixivにのっけてます。よろしければ。Accel HPは、海外の音色さんの音楽でお楽しみ頂けます★
February 20, 2010
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白い光の中で、白さを更なる白にするような、そんな声だった。 いきなり出逢った不思議な神は、白い世界をゆるやかに満たしながら言った。 われ わがつとめは いきること しすること それらあらゆるせいめいの いとなみを そのいとなみの おわりがきたときは おわりの いくべきばしょへ いとなみが うまれたときは うまれいずるべく ばしょへ いのちを はこぶ それが われのつとめ わたしは呟いた・・・「・・・生命の神・・・?」 いやいや てきとう これが われのちからよ しするものがあれば しのみちにみちびき いきるものがあれば そのばにみちびき ただ みちびくのみ ところが まあ このわたしも たしょう つかれてのう「か、神も疲れるのでございますか・・・」 それはそうとも もともと われも ”ひと” なのだから わたしはぎょっとした。「な!なんですって! 人間だったのですか!」 おや おぬしも・・もうしたであろう かみのまつえい・・だと・・ かみがひとである かくたるしょうこ 確かに・・・そう言われてみれば・・・。 わたしはなぜか半分納得してしまった。 後から思えば・・・なんだか既にこの時点で”いいくるめられて”いたのかもしれなかった。 まあそれで たしょう つかれたわたしは てきとうに やくめを かわるやからをみつけた それが”これ” どうやら、”これ”は、小さい光の事のようだった。 ”これ”はしゅぎょうちゅうでなあ ちょっと、800ねんほど、 まちがったのじゃ「は、はあ」 わたしは、なんとも変な返事をした。 で、それが、おぬし「は、はあ?」 だから、おぬしじゃ ”これ”がまちがって、 おぬしを しするほうへみちびいてしもうた「は、はああああああああ????? ちょ、ちょっとお待ちください! 死んだのですか!? わたしが?? わたしは、まだ死する訳には」 まあ、まあ、おちつきなさい「落ち着いていられますか! 我が大陸は! 我が民は!?!?!?!」 半狂乱のわたしの目の前に・・・ ふんわりと・・・ 我が大陸を見下ろす図が浮かび上がった。 ミョールたいりくは みどりさかえ みずがあふれ かぜがふく すばらしき だいちとなっておる これが、”いま”の”おぬし”のたいりくよ「おお・・・なんと・・・」 わたしは、取りすがるように、その図に近づいた。 とは言っても、触れる事はできないが・・・「し、しかし・・・ わたしは・・・ 神を求め、導かれてここに来たのだと思っておりました・・・ 大地は寂びれ、民は苦しんでおりました。 わが神に、われらの昔の約束・・・ 神の御力を頂いて、わが地をうるおして頂きたいと思っておりました。 それがなぜ・・・」 思わずわたしがそう言うと、厳かなる光の言葉が言った。 ルー・ヴァ・ウーよ・・・ ひとのよは おもしろきように できておる ほろぶる ときもあれば さかえる ときもくる「・・・」 白い世界を白い光で満たす神の声を受け、わたしの瞳から・・・・ 涙が溢れた。「神よ・・・ それではわたしは一体、800年・・・ どこをさまよっていたのです・・・」 すると、ちいさい光が・・ ちいさな声で言った。 あなたは しする たましいではなかった しかし しするものとして つれてきてしまった そのために ふたたび もどすべく なんどもなんども ためしたのですが・・ わたしは、ようやく自分の置かれた立場が判りかけて来た。「・・・ つまり、800年程、”戻れなかった”、と・・・」 わたしは長い髪をさらりと靡かせた。「神よ・・・ わたしには両親と姉と・・そして民がいた。 かれらに、かならずや戻ると、約束した。 わたしの死が間違いであるなら、戻していただきたい!」 光は・・・ しばらく黙っていたが・・ そなたの やくそく もはやかなって おるであろう だいちと たみと ふたたび うるおう それが かみに たのみたきこと なのではなかったか わたしは、応えられなかった・・・ そうだ そうだとも わたしの望みはそれだけだ・・・「・・・・ では・・・ わたしはどうすればよいのです・・・ 『ラ家』ももはやないのでございましょう。 わたしの”存在”も800年ない・・・ わたしの今のこの身分は・・・ 一体・・・」 わたしは、啼くまいと思いながらも、両瞳から涙が溢れた。 うむ おまえは なかなかおもしろい いちど このばに しする ものとして きた いじょう おぬしのように”にんげん”の いしきをもつことはむずかしい もはやおぬし この てきとうのかみの やくめをになってみるかね「な、なんですって?」 白い世界で・・・ 我が大陸が潤ったことを喜ぶべきなのか・・ それとも我が身を憂いるべきか・・・ なんだかよくわからない状態だった。 これが、”てきとう”ということなのであろうか・・・ わたしは頭がこんがらがってきた。********************参加ランキングです ********************最近のイラストはpixivにのっけてます。よろしければ。Accel HPは、海外の音色さんの音楽でお楽しみ頂けます★
February 16, 2010
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ふと、わたしは、”白”の中に居ることに気がついた。 周りは・・・ただ、白い。 上も 下も 右も 左も ここは我が神の指し示した世界なのだろうか? ちょっとばかり、手足を差し出してもまるで掴むものもなく、進んでいるのか後退しているのか。 上昇しているのか下降しているのか。 時間も、ないのだろうか。 もしや、母上のいらしたような、桃色の世界のようなものであろうか? だが、恐れはなかった。 神の、お近くにいる、その確信がおおいにわたしの胸を満たしていた。 この光はわたしを包んでいるような気がするのだ。 ・・・どこからか 音がしてくる。 白い中から、音が・・・ どうしよう こっちにくる・・・・ 誰かがそう言っている。「ミョール神・・・?」 わたしは声を出してみた。 この世界でも、声は出るようだ。 わたしは、自分の黒い衣装の袖で前と思われる方を押しやりながら言った。「我が神よ? あなたの末裔、ラ家のルー・ヴァ・ウーでございます! このお声、我が神、ミョール神でございますか!?」 だが、わたしの声は、空しく白き世界に吸い込まれる。 声はまるで散り散りとなり、神に届いていないようであったが、どこからともなく・・・・ 輝かしい光が・・・ 満ちてきた・・・。「ミョール神!? 我が神よ! どうか、どうかわたしの話を聞いていただきたく・・・・1 さての・・・ これは、こまったこととなったの 威厳ある深い声が・・ しかし、穏やかに、わたしの心に響いてきた。「ミョール神? いらっしゃるのですか? この、辺りの”白さで”は拝見できかねます。 ああしかし、お姿拝見叶わずとも、構いございませぬ。 わたしは、あなたの末裔の・・・」 だから こまったの、といっておる 厳かな声が言った。 わたしは そなたの かみ、ではない「えっ?」 わたしは、目を見張った。 見張ったところで、辺りは白いままだったが・・・ 威厳ある深い声が響いた。 そなた、なんという かみ、と・・・もうした「はい。 我が神はミョールです」 ふむ それで、そのかみに、どのような ようけんだったかな「いえ・・それより・・・」 わたしは、何度も辺りを見回した。「恐れ入ります。 わたしは、我が神の元に参るつもりでございました。 ですが、どうやら間違えて別の方の所へ来てしまったようでございます。 とんだ御無礼をお許しください。 我が神への陳述は、わたしの神にのみ。 他へは申し上げることはできません。 ですが、この麗しい世界へ来てしまった以上、わたしはあなた様と繋がりができたようです。 失礼なければ、あなた様のお名前を・・・」 穏やかなる光は言った。 ほほ これはおもしろいな「・・いえ、麗しき声のお方、これは大事な事なのでございます。 私の神との約束は、うかつに他の方には申し上げられませぬ」 ほほう・・・・ 白き中から・・・ 煌煌とした光が・・・ 光の塊が・・・ ゆっくりと、”白”をかきわけて”こちら”へと来た。 おごぞかなるその声が、ゆっくりと、はっきりと言った。。 では、おしえてやろう ミョールは、おぬしら にんげんの ”じだい”でいえば はや800ねん その800ねんまえに ほろんだ な・・・・ なんと・・・ わたしは、あまりの事に、声も・・・出なかった・・・。 さあ、ではおしえてもらおうか ミョールと、どのような はなしをするつもりだったかな 我が神が滅んだ、という内容に愕然となり、一瞬だけ判断力を失いそうになった。 そんなはずがない、馬鹿な!? 崩れ行きそうな自分の感覚を、ただ一つの強い疑問だけが支えた。「いえ、我が神の約束のことよりも、その前にあなた様は?」 ほほほ なかなか くえないにんげんだ おもしろい・・・ この空間では、自分の感覚もあまり強く感じ取ることがないのだろうか。 体内からの熱い想いや、手の震えが、なんだか城にいた時より少ない感じがした。 それでも、我が神がもはやいらしゃらないという事は、わたしに大変な衝撃をもたらし、わたしは無駄だというのに何度もあちこちを振りかぶっていた。 そう、あちこちをみたところで、ここはどこも”白い”のだ。 動揺しているわたしの前で、大いなる威厳のある光の脇に、小さな光がすっと寄り添うように現れた。 そして、厳かな声が言った。 わたしは てきとうのかみ「は?」 そう、 にんげんでいうところの ”できとう” だから てきとうのかみ、とよばれておるわ「は・・・はあ・・・」 わたしは、やや頭を掻いた。「あ・・・あの・・・ では、神でいらっしゃるのですね? ミョール大陸は??? 神が800年前に滅んだとおっしゃいましたね!? あの大陸は?!」 わたしは急き込んだ。 ほおう おぬし、あの たいりくの ことがしりたいか「その通りです! わたしは、ミョール神の末裔。 ミョール神の力にて、あの地を治めておりました 大地は枯れ果てて、民は苦しんでおります! いったい、では、”今”どうなって・・・??? 母は!父は!姉・・」 そこまで貫いて言い尽くし、はっと気が付いた。 800年前? てきとうの神は、800年、と言った。「神よ、 800年? すくなくとも、我が父は、ミョール神に、お目通り叶ったと聞きます! なのに、それから800年経ったというのですか・・・? 一体どのような意味ですか・・・」 すると、大きな光の塊が言った。 うむ まあそうあわてるな ひとつひとつ こたえてやろう このみならいの ちょっとしたまちがいの おわび、かのう・・・ 大きな光の脇に寄り添う、小さな光が、なんだか更に小さく見えたような気がした。 ********************参加ランキングです ********************最近のイラストはpixivにのっけてます。よろしければ。Accel HPは、海外の音色さんの音楽でお楽しみ頂けます★
February 16, 2010
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やわらかな桃色がまぶしく感じられる程である。 ふわりとした、その色の香りさえも漂ってきそうだ。 その部屋の中に、黒い衣装の我が母が・・・鎮座していた。「母上・・・!」 わたしは、思わず、真中に座る母の傍に歩み寄ろうとした。 母は・・・うっすらと、美しい笑みを浮かべた・・・。 そして、相変わらず背筋を伸ばし、正座したままの姿を崩さずに、長いまつげだけを伏せて言った。「ウー・・・あなたか、またはナーかが・・・。 そなた等がいずれ来るであろう、この日を・・ 待っておりました・・・」 母のその声は、桃色の空間に吸収されてしまいそうである。 ああ、なんということか。 母は、最期にわたしが目にしたその時の姿と・・・ 全く変わりのない姿であった。 母は言った。「ウーよ・・・ そなたが、なにを求めて此処へ来たのかは・・ 判っております。 実は、わたしも、我が神を求め、ここへ来だのです」 わが母の言葉を聞き、わたしは自分の頬が涙で塗れるのを感じた。 なんと・・・この恐るべき『ラ族』の宿命から逃れるため、大陸を放浪していると、噂では聞いた母であったのに・・・ ずっと・・・ ずっと、この部屋に、これまで居たというのか・・・ 母の声が吐息のように言った。「ウー。 この場には、神はおりません。 しかし、ここは、また別の次元なのです。 ここは、”神の領域の扉”・・・ わたしは、ここにおります。 わたしがここに居る限りは、この大陸、枯れる事はないでしょう。 このわたしとて、ラの末端。 なんとか努めようと思っております」 語る母の瞳にも、涙が溢れていた。「ウー。 神への場は、ここではございません。 あなたなら、神との交渉の場がみつけられますでしょう。 さあ、早くここを出るのです。 あなたがこの場に留まりたくないのであれば・・・・」 わたしは、母に抱きつきたい衝動を必死に抑え、わななく足を無理に後ろに下がらせた。 どれほど、時間をかけたことだろう。 母から目を離さずに足を少しずつ下げ、入口の扉に私の手が触れた。 わたしは、鼻にかかったような情けない声を一瞬出してしまった。「母上・・・」 自分の声に気が付き、ぐっと顔を振り、左手の指に力を込め、わたしは自分の額を鷲掴みにした。「母上。 わたしが・・・ わたしが、神とお目通り叶ったあかつきには・・・・ ふたたびお会いしましょう。 我が母よ・・」 わたしは、溢れる涙の瞳を閉じて・・・・ 桃色の部屋から出て・・ 美しき、扉を、閉めた。 三本の槍の描かれた扉を後にすると、わたしは暗い階段を上がって行った。 一度降りた階段であるが、母の居た場所が一番下であったからには、上にまた上がるしかない。 この城のどこに・・・ 神と繋がる場所があるはず・・・・ 我が神よ。 遠い遠い昔、共にこの大地にいたという神よ! わが、ミョール神よ・・・ ふふ ふ どこからか・・・ 父の声がする。 わたしは、階段の踊り場まで戻って来ていた。 城の塔の上にでも、昇ろうか・・・?? ふと 鏡が目に入った。 わたしの姿。 わたしの、この三本の槍の紋章。「神よ・・・」 わたしは、紋章を見ると、わが神に聞こえぬかと、つい口走ってしまう。 ふふふ ふふ 鏡に映ったわたしに、右手で触れてみた。 三本の槍 それは 大地 空 太陽 それらを示しているという そして ひとつかけているものがある それが「われら”ラ”に架せられた・・・ 月の力・・・・」 月が足りない、我らラは、名前にその月を頂いている。 私は、三つの槍の紋章・・・無論鏡の中の紋章に、触れてみた。「月を示しているものを探せは、我が神の所へ・・・・?」 ふと、つぶやいた。 ふふ ふ すすす・・・・ 静かな音で・・・・ わたしの背後から・・・・ 父が・・・ 出てきた。 わたしとよく似ているその姿 黒い髪 黒い服 白い顔・・・「ウーよ・・・ 神に近づくと・・ ふふ・・ 失うぞ・・ 己を・・・ ふふふ」 ふふ 父は、笑っていた。 なんということか・・・ 父は、ミョール神と、既に交渉していたのか!?「父上! 父上・・・ 神とお目通りなられたのですか?? お願いです! わたしはどうなっても構わないのです! この大地! そしてこの大地の民! そのため神の所へ交渉しにまいりたいのです。 民のためなら己など・・・」 ふふ「ふ ふふ もちろんだ わたしもそういったとも 神に・・・ ふふふ・・・・」 わたしはやや下を向いたが、再び顔を上げた。「それでも、参ります」 わたしは、階段を上がろうとした。「まて」 父の声が静かに響いた。「戻れぬぞ・・ わたしのように・・ つまのようにな・・・ ふふふ・・・」 父の声を無視して、そのまま階段を上がって行った。 上に行っているというのに、徐々に暗くなって行く・・・ 戻れぬことを恐れ、先に行けるであろうか? 己を失うなど、なにが怖いか? この大地と わが民のために・・・ わが神よ! 神よ、あなたは、あなたの民を、ごらんになっていないのですか! ひたり ひたり、 石段を上がる足の音さえも、ここでは響く! 上に昇れば昇るほどに・・・ 塔の幅が狭く 階段の幅も狭く だというのに上にきりがない。「神よ! 我が神よ! お応え下さい! ”わたしはここにいます!”」 わたしの声は、何度も何度も、楼閣の中を響き渡り・・・ 反響し、吸い込まれ、静かになった。「神よ・・・ 父とお会いになった神よ・・・ わたくし、”ラ・ルー・ヴァ・ウー”の名にかけ・・・ あなた様の末裔の末裔、ラの一族の名にかけ・・ ミョールよ・・・」 わたしは、ゆっくり、左手で、西を示し、その手をそのまま上にと翳した。 右手を、東に示す。「いらすのであれば、あなたの末裔の御前に・・・・」 わたしは何度も、ミョールと我らに交わされた礎・・・ わたしがわたしであり、わたしがラ家の者であることを示すもの、そして、そのラ家がミョールと大いなる繋がりを示すもの・・・ それを、わたしは、唇を軽く開けて・・・喉の奥から、息を吐くように、そっと言った。「この地を愛したもうわれらの神ミョールよ」 わたしは、首をそっと上に伸ばし、瞳を半開きにし・・・ 言葉にならぬ、ため息のような、長い長い呼吸の中で陰影をつけるその独特の”音”を、絞り出した。 きけよ わがこえを わが われらをあいしたもう われらのかみ あたえられし このちからより たかくひびきたる このこえをきけよ すう、と深く息をゆっくり肺に入れ、また大きく長く、静かに、神へのことばを紡いだ。 いずこかより まいられらん うつくしきひかりと あたたかきひかりと かぐわしきひかりと それら もてして このちをうるおし それら もてして たみをうるおし だが、どこまで紡いでも・・・・ なにも、なにも変化がない ここには、神の領域ではないのであろうか?「この白き・・・」 わたしがそこまで言った途端、急に、空から光が一筋、煌めいてこちらを照らしたような気がした。 細い、細い光の筋だ。 ゆらめいて、ちらちらと、くねっている・・ 神よ・・? あなたの光? わたしは、迷わず、その光に触れた。 手を触れた途端に、その光に囲まれ・・・ 目の前が白い世界となった・・・ ********************参加ランキングです ********************最近のイラストはpixivにのっけてます。よろしければ。Accel HPは、海外の音色さんの音楽でお楽しみ頂けます★
February 12, 2010
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ごおお この地の底の、鼓動の音のような、暗く冷たい風が、果てもない闇を切って吹き荒れる。 その吹き付ける、恐ろしき黒い風・・・ 暗雲たる霧が立ち込み、 黒くどんよりした”なにか”があたりに充満してきた。 ききき くくく あちこちから、小さな”黒い”音がする。 き き あちこちから、私を引こうとする力が、群れてきて、手、足、胴へと絡みかかってくる。 しかし、その力を振り切り、ただひとつ。 最も大きな力の元へと、私は歯を食いしばって足を向けた。 ごお おおきな黒き塊の音がした。 黒い、黒い闇の塊だ・・・。 その塊から、黒い、瘴気のような風が吹きつけ、私は一瞬呼吸が止まった。 黒さの圧力に・・・押しつぶされそうだ。 ”黒”から黒い、音がした。 ふふ・・ ふふふ・・・ おまえか おまえか また こりもせず ここへくるとは・・・ 黒い、暗い、無限の暗さ。 そこから、辺りの黒さを一層”黒”に染めるかのような、心臓を握りつぶされそうな分厚い暗い音が、私を包んだ。 そう、ここへは二度目だ。 音もない。 温度もない。 風もない。 魔物のなかの真髄、悪魔の王、ガルトニルマの場所・・・・ 炎を司るガルトニルマは、あらゆる僕から、数々の人間をを集め、その生血をすすっているという。 その悪魔の炎の力は、人々の血の涙からできている、ともいう・・・ 飲み込まれたものは、悪魔のものとなり、そして悪魔の炎は更なる炎の力となるという・・・・ その炎は、全てを飲み込み、焼き尽くされる・・ ごおおお 熱風がこちらへ吹き付ける。 だが、この程度で、引き下がれるものか・・・ これまでの悪魔とのやりとり、そして、こたびは再度、この王と対面している。 この私ももやは尋常の域ではないであろう。 しかし、相手は悪魔の王、炎の王、王の中の王。 どこまで、この私が取引できるであろうか・・・・ 黒い音が、黒く語りかけてきた・・・・ わたしのちからを えたいというなら それなりのものを よこすのだな「その前にリュベナを!!!」 私は叫んだ!「リュベナは! リュベナは契約に入っていない! エゲルからもう私は聞いた、まだ、リュベナは居るはずだ! リュベナを戻して頂きたい!!!!」 ふっ・・・と遠くに明かりがともった。 おろかな ひとりをとりもどしてどうする ほかのものは ほかのものは、どうでもいい・・と? ごおっ つまらぬものよ、にんげんは・・・・・・・「つまらぬと申しますか?」 私は更に声を上げた!「あなた方の目的こそつまらない・・・ それに、大体にして、リュベナは二人目の女の子だ! その約束を破ったのはあなた方! 私がとやかく言われる筋合いはない! リュベナを!」 向こうにともった明かりが・・・ こちらへと近づいてくる・・・・・「リュベナ・・」 私は呟いた。 短い金色の髪。 青い瞳。 なんという事であろう。 あのほのかな明かりの中に・・・リュベナが、居る。 さて・・・ とりひきだ おぬしはなにを さしだすのかな・・・ ごおおおおお 黒い、黒い炎が、今にもリュベナを包む光を覆ってしまいそうである。「ふふ・・・勿論・・・ もう既に、大抵の物を以前貴方に出してしまった。 この私の過去を・・・ 残るは 私の未来 私の現在 私の体 私の魂」 私が言うなり、大きな黒い塊が押し寄せた!「リュベナ! リュベナは! 戻して頂けるのですね!?!?」 ごおお ごおうう ごおっっっ 怒涛の黒い炎がのたうちまわり、亡者の悲鳴、泣き声、呻き、それらを乗せた炎の音がドロドロと押し寄せた。 せいりつだ せいりつする ぎらり、と赤い光が一点。 こちらを見据えていた。 黒い力が私の体を撫でた。 あの炎の神の、底なしの力が、さわり、と身体の上を沿って行く。 私は、黙って黒い炎に身を任せた。 この神の、申し子たりと、一度は決心したものの、またもこの味わいを感じなければならぬとは、と一瞬だけ想いながら・・・ いや、リュベナ。 君を取り戻すから・・・・ 君の所に行くためなら・・・・ さらり、黒く長い服が床を擦ったが、その衣装をまとう者の足音はしない。 衣装には、長く美しい黒い髪が、さらさらとこぼれるように流れていた。 ちらり、と足元がめくれると、その足は裸足であり、輝くように白く瑞々しい、つま先を一瞬見せた。 『ラ』の城内では、燭台も持たず、一人暗い階段を・・・下へ、奥へと降りて行く者がいた。 下の更に下。 果てなく続くかと思われた階段に・・・ 突如、終点が現れた。 それは、扉であった。 扉を見ると、わたしは流石に瞳を何度も瞬かせるしかない。 確かに、この階段を下りてみたことはこれが初めてであったが、一瞬、扉に対しての恐怖を感じたのだ。 ここの先に行くことへの、躊躇である。 すぐに、右手を軽く握り、顎を引いて軽く扉をにらんだ。 三本の槍が、細やかに彫られた美しい扉。 その槍が交差する真ん中にわたしは触れてみた。 三本の槍は、われらの紋章。 この『ラ家』の紋章。 そして、守護神ミョールの紋章でもある。 扉に手を触れると、彫られている紋章が蒼く輝きだした。 と、なんとなくわたしの額が熱く感じる・・・ 思わず、扉の紋章を両手でなぞるように触れた。 それは急なことであった。 音も無く、左右に扉が開いたのだ。 わたしは、感覚が麻痺していたのかもしれない。 なにも考えずに、その先へと、踏み込んだ。 桃色の、ふわりとした床・・・ なんと、柔らかな世界なのだろう。 桃色の光で充満していた。 やわらかな、おとが聞こえる・・・。 なつかしき、この音・・・。「・・・」 扉の奥の、桃色の世界は・・ 小さな部屋、であった。 柔らかな、部屋だった。 柔らかな部屋の真ん中に・・・ その、桃色の部屋に・・・ 黒い服があった。 黒き 黒き服。 その黒き服に黒き髪が流れていた。 その黒き髪に包まれているのは 白き顔 わたしに 似た顔・・・ わたしは・・・ 母の姿を見た。「はは・・うえ・・・」 桃色の部屋の中で、わたしは夢を見るような声を出すしかなかった。 そこに居たのはまぎれもなく、美しき、わが母の姿であった。 ********************参加ランキングです ********************最近のイラストはpixivにのっけてます。よろしければ。Accel HPは、海外の音色さんの音楽でお楽しみ頂けます★
February 9, 2010
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