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2013.12.15
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カテゴリ: 歴史
歴史認識で中韓と対立する昨今であるが…
「日中戦争見聞記」という本を図書館で借りた一番の理由は、当時の中韓を知りたかったわけです。
オーストリア人の著者は日本社会の要人と会見できるなど、わりと親日的スタンスではあるにしろ…
とにかく、1939年当時の東アジアの雰囲気と著者の息吹きが伝わってくるレポートになっています。
(読み足した分を追記して、その2としています)



日中

コリン・ロス著、講談社、2003年刊

<「BOOK」データベース>より
盧溝橋での軍事衝突に始まる日中戦争。それは、軍国日本が東アジアに影を落とす時代の象徴的な事件である。1939年、この緊張高まる日本・朝鮮・中国・モンゴルをドイツのジャーナリストが訪れた。彼は、各地で会見した要人の人物像を犀利に語り、過酷な時局を生きる庶民の姿にそれぞれの民族性を洞察する。太平洋戦争前夜の極東を描く貴重な記録。

<読む前の大使寸評>
第二次世界大戦勃発時期の日中戦争をドイツ人ジャーナリストはどう見たか?
尖閣沖紛争がいつ起きても不思議でない昨今ですが、過去の日中戦争の実相が知りたいわけですね。

rakuten 日中戦争見聞記


今では漢族にほぼ同化された満州族であるが、その満州族および満州語のレポートが興味深いのです。
動物の絶滅危惧種が気になるが、絶滅危惧言語も気になるわけです(大使の場合)


<北風が勢いに乗る 新京> よりp114~118
 星野直樹は「満州国」の総務長官に1937年に就任する前の職務上の地位は枢密院の書記官長のようなものであった。しかしスターリンの称号もやはり単に書記長である。それと同様、星野の影響力と権力分野は彼の称号をはるかに上まわっていた。いやそればかりか多くの外国人は彼こそ「満州国」内閣官房の指導者であると見ている。
 星野は満州人ではなく日本人である。それにもかかわらず、彼を「満州国」人とするのは正しい。彼は血統では中国人である国務総理と同じように「満州国」人である。新生「満州国」のかかえる難題は、人類学的意味では満州人などいないということだ。
 それは実用面で満州語あるいは満州文字が使用されていないのと同じである。この間の事情はアイルランド語と似ている。現在アイルランド自由国の国語、ゲール語が文化の中心部ではほとんどすでに死滅しており、辺境の村落で事実上わずかに残されているのにすぎない。北満、東満においてもトルキスタンと同様、今や数万の満州族の「満州国民」がいるだけだ。

 彼らは有名な八旗とともに南方に馬を進め、1644年、北京に入った満州族の子孫ではない。かつてはあのように名声があったこの種族の血統正しい後継者は、今日では半遊牧民としてロシア人や中国人からも嫌われている辺境で暮らしている。彼らは互いに大いに食いちがった様々な方言を用いている。したがってこうした方言は「満州国」のような近代国家の国語としては、まったく不適当であろう。
 今はポツポツと家族単位で中国本部から元の故郷に戻ってきた満州族は、ずっと故郷に留まっていた同人種と共通するものを何ひとつ持たない。彼らは中国征服(清による明の征服)とともに中国の言語と文化を受け入れた。彼らはその種族の帝王と同様に中国人になりきってしまった。清の初代皇帝の任務は中国人女性を後宮から排除し、満州族は血統的ひも満州族のままに留まることであった。しかし清朝の君主たちは竜の王座にのぼったあとは、しだいに中国人になってしまった。
 たとえ血筋からいえば、中国人であり、使用されている言語は中国語、文字は漢字であるにせよ、「満州国」では満州人、満州語という表現を用いるのがしかるべきならわしとされている。事実上、「満州国」の人口の90%が、血筋でいえば純粋の中国人である。

 すでにこうした理由からも、アイルランドの実例をまねて、完全な死語を復活させることはできない。それにこうした試みは、ただでさえ容易ではないこの国の行政を、まったくどうしようもないほで困難にさせることであろう。かくして、中国語というところを満州語といって満足しているのが実情である。
 それにもかかわらず、たとえ血筋、言語、文化からいっても中国人であるとしても、この国の居住者は満州人と呼ぶのは、政策や宣伝を超越した正当性がある。
 またちょうど同じことが、日本人についてもあてはまる。日本人はどんなに彼らに適さない土地においても、おのれの風俗、習慣に信じられないほど執拗にしがみついている。しかしわたしがここで知り合いになった日本人は、ある意味ですべて満州人である。

 わたしの真向かいに座った異常なほど彫が深い顔立ちで賢明そうな人物星野についてもこのことがあてはまる。それも単に彼がこの国の高級官僚であり、指導者の一人であるからばかりではない。たしかに彼は日本列島に住む日本人に比べて、けっして遜色のない心身両面において完全な日本人である。もしかすると、彼は大日本帝国の帝国主義的目標にまったく個人的に固執している並の日本人以上に日本人的かもしれない。しかし、それにもかかわらず彼の全体の調子は、すでに列島に住む日本人とはかなりかけ離れていた。そのことはおそらく特別の雰囲気をかもし出す満州の気候や土地の影響ばかりではなく、ここでは日本人がもともと不得意であること、すなわち迅速に決意し、かつ速やかに行動する、ということが必要となって形成された気質であろう。
 そうしたことからして、ここ満州では西欧風の概念によれば、行き過ぎとさえ思われる日本のやかましい礼儀作法の大部分が放棄されてしまった。あらゆる業務上の会談に先立って行われ習慣化してしまった無限の敬礼や上品な挨拶の交換は、この土地では無用であった。そのことはとくに官僚相手の会談の際にあてはまる。会談の調子は、まさにアメリカ流、書生流である。わたしは「満州国」外務部の官僚と、まもなく「ハロー、ビル」といったアメリカ式の挨拶を交わすようになった。

なお、 消えゆく満州語 については、朝日デジタルに現状が報道されていました。




<チンギスハンの後継者 ホンホ> よりp154~159
 モンゴル人は数の上では極めて弱体化した民族である。いったいどのくらいいるのだろう?正確な統計は存在しない。300万といったら多すぎるくらいだ。彼らが世界帝国をつくていた時代でも、あまり大勢いたようには思われない。
 それにほとんど互いに争ってばかりいたこの小さな騎馬民族あるいは騎馬軍団の小集団が、すべての時代を通じて最大の世界帝国を建設することができた理由は、永遠に完全にはけっして解明できない大草原の謎として残るであろう。
 大草原はこうした謎を秘めている。そもそもなぜ人間がその中に住むのであろうか?大草原の中でくりひろげられる生活はきびしく、貧しく、しかも危険がいっぱいである。どこにその大きな魅力があるのか?

 偉大な征服民族が登場してきたのはつねに砂漠であり、大草原であった。このアジアの奥地の大草原から一体何が出現したか?わたしが今通過している国土からはモンゴル人の他にフン族、アヴァール族、トルコ人、それにタタール人がいる。彼らはすべての人数の上ではあまり多くはなかったかもしれない。大草原は広々としているが、少数の人間にしか居場所を与えなかった。大草原に強いて手を加え牧草地を畑に変えたりしても、遅かれ早かれ大嵐が吹き、あまりにも貧弱な畑の土壌を空中に吹き飛ばしてしまう。これが大草原の復讐なのだ。

 アメリカ人や、オーストラリア人も、青い山脈を越えて耕地を大草原の中につくろうとしたとき同じ目にあった。モンゴルでも、あまりにも広い大草原の中に漢民族移住者が開拓をしたとき、一部の者は同じ運命をたどった。
 数千年を通じ、つねに繰り返されてきたのは大地にどっかりと腰をおろした
農民と、遊牧民との間の根の深い闘争である。耕作者は大都市を建設し、彼らの文化をますます奥地にまで広げてゆくと、ついに大草原の遊牧民が立ち上がり、畑をこぼち、都市を破壊し、定住者の国を支配下におくようになる。
 勝った遊牧民は、支配はするけれども、やがて安逸な生活に慣れ親しむようになり、今度は別の新しい、きびしくきたえあげられた種族が、大草原から出現し、彼らを駆逐するようになる。こうした動きはいつになったら決着がつくのか?新しい時代のまったく別種の生活条件によって終わってしまうのか?大草原の壮大さを縮小できる技術の力によって、少なくともこうした動きは止まるのではなかろうか? 
 しかし他方では、大草原や砂漠の居住者も馬の飼育、調教が彼らに広い空間を制圧する可能性を与えたとき、はじめて世界征服者となった。

 カラハリ砂漠のサン・クァも、北アメリカのネイティブ・アメリカンと同様に、世界帝国を樹立し得なかった。しかし馬を新大陸に持ち込んだヨーロッパ人の植民者は、アパラチア山脈を超え、プレーリー(大草原)に入りこむや否や世界帝国を世界帝国をつくりあげた。広い空間を短時間で克服できる自動車は、広い土地に巨大な世界帝国をつくる上で、相当な刺激となるであろう。しかしこのあたりの大草原は、自動車、鉄道、いやそればかりか航空機が出現しても依然として広すぎる。
 大草原はやはり魔力があり、魅力を備え謎を秘めている。大草原の秘密はその中にまどろんでいる力であり、星をつかみ、無限の不可能をとらえようとする力と衝動である。単に世界帝国ばかりでなく、世界宗教の創設者、キリストやマホメットらも荒野から出現した。
(中略)
 ソ連と日本が、かの偉大なるチンギスハンの墓があり、彼の記憶がいまだに生々しいモンゴルを分割したのは、おそらく偶然以上の因子があるのではなかろうか?
 外モンゴルと新疆ウイグルをおのれの勢力下に置くことにより、ソ連は以前よりもはるかに強力にアジアの大国となった。モスクワなどは辺境になった。今や中央アジアにどっしりと腰を据えたこの国にとって適当な首都は、チンギスハンに次ぐモンゴルの英雄チムール大帝の遺骨が納められているサマルカンドであろう。
 ソ連のアジアの中心部への進出と併行してかつてはアジアで唯一、勝利に酔うモンゴルつまりかつての元に抵抗し、打ち破った国日本が第二の勢力として登場してきた。

 日本はあらゆる時代を通じ最大の世界帝国建設者の衣鉢を継ぐべく定められているのか、またそのような能力をもっているのか?
 たしかに日本列島にいる日本人は慎重で抑制しているかもしれない。しかし、大草原の精神、無限追求の意欲をもちつつここ満蒙の前哨にいる日本人は、彼らの最終目標が「チンギスハンの国」、アジアの世界帝国建設にあたることを隠そうとしない。

ここまで著者の夢想につきあってくると、やや危ないと思いはじめるのだ(笑)
とにかく、大草原にはそんな夢想まで誘う魅力があるようです。

いくらジャーナリストであっても、戦闘場面に立ち会うほどの義理はないわけで…
この本では戦時体制とか戦争のからくりを主にレポートされていました。
だけど日中紛争前夜にも似た今のご時世にこそ、意義深いレポートと言えるかもしれないですね。

独ジャーナリストが見た日中戦争(その1)






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Last updated  2013.12.17 00:21:47
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