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2014.02.12
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カテゴリ: 歴史
 図書館で借りた「大阪アースダイバー」という本であるが・・・・
内容はディープな大阪案内であるが、切り口と本のタイトルが斬新なんですね♪
だいたい「ジャンジャン横丁のデュシャンたち」とか「ナニワのミトコンドリア戦略」とかいう切り口は、誰も設けないですよ。

とっつきには、著者中沢新一の独特な推論(イデオロギッシュというべきか?)に違和感があるが、読み進むと慣れてきます。
まあ、講談とか浪曲になじむようなものか♪

<湿った通天閣> よりp155~156
 上町台地の崖際に立つと、後ろに四天王寺五重塔、前方の崖下向こうに通天閣が見える。同じ塔でありながら、二つの塔はあきらかな違いを感じさせる。
 四天王寺五重塔は、創建者であった聖徳太子がそう願ったように、「太陽に近い」ことに意味を持つ塔である。そのために四天王寺の仏塔は、「乾いた」印象を与える。

 それに比較すると、通天閣は沼地から咲き出した蓮の華のように、「湿っている」のを感じる。じっさい通天閣の建つあたりは、長いこと沼だった。その沼から、通天閣はまるで水生植物のように、天をめざして生え出している。

 通天閣は、女性的なものの真ん中を貫いてこの世界に出現する、まだ皮をかぶって湿った部分を残している。子供のペニスをあらわしているのではないか。もっと言えば、それは胞衣をかぶって生まれたばかりの、新生児の精神を象徴しているのではないだろうか。
 通天閣は、新しいモダニズムの世界に生まれ出るはずの、「子供」としてのペニスなのである。いやモダニズムそのものが、既成の秩序を壊す子供の精神から、インスピレーションを受けた運動である。そのモダニズムの新世界を象徴する通天閣が、男の子のものを連想させたとしても、少しも不思議ではない。

ビリケン

 そうなると、この塔のマスコット的な存在として、「ビリケン」という精霊の像を選んだ人たちの想像力は、そのものずばり人類的な普遍性に触れていたことになる。たしかにビリケン像を着想したのは、アメリカの女性アーティストだったであろうが、その像を思いついたとき彼女の想像力は「子供の姿をした精霊」をめぐる、人類の心の奥深い謎に、触れていた。そして、大阪人はそれをこともなげに、通天閣とくっつけたのだった。

 こういうことが、「大阪の神秘」なのである。大阪人はモダニズムに浮かれまくっていながらも、アフリカやアジアの精神的古層との、たしかなつながりを保ちつづけている「人類」そのものである。こういう神秘は、東京にはほとんど見出すことができない。大阪アースダイバーの醍醐味は、こういうところにある。


大阪ミナミは霊的な場所だったようですね。更に読み進めます。
ふだんは無神論で罰当りの大使であっても、四天王寺には手を合わせたくなったりして(笑)

<最後の庇護の場所> よりp163~165
 四天王寺は上町台地の上にある。その四天王寺が、大阪ミナミに広がる低地のアースダイバー的構造を、完全に決定しているこの不思議。
 古代から今日にいたるまで、荒陵と呼ばれたあたりから、釜ケ崎を含むかつての今宮村まで広がる広大な地域が、時代ごとのプロレタリアに向かって、やさしく胸襟を開いていた。こんなことは、他の都市にはめったにおこらなかった。大阪にこのような愛隣的現象がおきたのは、崖の上に四天王寺が建っていたためである。

 四天王寺ははじめ森ノ宮にあったが、のちに荒陵に移されて、壮麗な仏教寺院のたたずまいを誇っていた。この寺は、古代河内戦争の敗者である物部守屋の霊を鎮めることを、隠されたもう一つの目的として建てられたため、死をまぬかれた物部氏の一部は、四天王寺の周辺に住み着いて、雑役をとおして寺に奉仕する下級僧として、生きのびることを許されたのであった。

 荒陵には、重い病気にかかった人々を収容する悲田院が設けられた。そればかりか、五重塔の脇にあった引声堂の床下には、古代末期になると、土地を捨てて逃亡した浮浪人や、病気のために村に住めなくなった人々が、住みつくようになっていた。こうした人々は、物乞いをしなければ生きていけない。いわば古代のプロレタリアであった。彼らは夜には四天王寺の床下に眠り、昼は村々に物乞いに出かけた。四天王寺は、そうやって無産者たちをまもっていた。

 そういう床下住人の群れのなかに、俊徳丸という若者がいたことを思い出していただきたい。今日でも河内音頭最大のヒーローであるこの物乞い人の活動範囲を、説経本や浄瑠璃本などから推測してみるに、荒陵から合邦辻あたりまで広がる、広いエリアをおおっていたことが想像される。合邦辻とはいまの新世界の近く、そこから少し足を延ばせば、西成・釜ヶ崎の近辺にたどり着く。そうすると、四天王寺居留のプロレタリアにとってこのあたりまでが、聖徳太子建立の寺院の霊力が、直接に及んでいるエリアだったことになる。
 近世には、荒陵にあった古代以来の飛田墓地と新しい千日前墓地は、ひとつながりの霊域と考えられていたために、荒陵一円をおおっていた、四天王寺の放つプロレタリア庇護の霊力は、千日前界隈にまで及ぶことになった。そのためか、近世のはじめに大量に出現した流民の群れにとって、千日前墓地も愛隣的区域として、かっこうの流入地となった。もともとここには大きな非人村があったため、公民権さえ奪われてしまった人々にとって、大阪ミナミは、自分らの生存のために地上に残された、わずかな土地となったのだった。

 徳川期にキリスト教の信仰が厳しく禁止されると、千日前墓地には、公民権を奪われ非人に落とされた、たくさんの「転びキリシタン」が流れ込んできた。ことに、女性の転びキリシタンが多かった。信仰者であることを暴露されて転んだこれらの女性たちは、在所に住むことを許されなかった。女性たちは流れ流れて、千日前墓地にたどり着き、そこで非人の男を見つけて夫婦になることができた。

 古代には重い病気によって、近世には信仰によって、流民化しプロレタリア化せざるを得なかった人々にとって、広い意味での荒陵の土地は、最低ぎりぎりの暮らしぶりとはいえ、生命をつなぐことは可能にしてくれる、最後の庇護の場所となってくれていた。大阪には古代以来、けっして狭くない領域にまたがって、このような愛隣的区域が形成されていたが、その精神的な中心には、いつも四天王寺の存在があったといえる。


ときどき、鶴橋の焼肉が無性に食べたくなる大使にとって、このあたりのコリア世界が興味深いのです。

<生野区と平野区を掘る> よりp245~247
コリア

 大阪に堆積したコリア世界の地層は、大きく分けて「古層」「中層」「表層」という、三つの層でできている。
 古層はもっとも早い時期に、上町台地に上陸した、三韓からの渡来民が搗き固めた、大阪という都市の土台にあたる部分を言う。彼らがやってきたのは、ずいぶんと古い話になるし、そののち長い時間をかけて日本文化とのハイブリッド化も進んだので、アースダイバーの手法でも借りないかぎり、この地層を直接掘り出すのは難しい。

 中層は近代になって形成されてきたもので、三層のなかでもいちばん分厚い層をなしている。この層は、地表にさらされている部分が多いから、現在でもすぐに見分けることができる。この地層の形成は、日本の資本主義の発達によってもたされた。かつてのいわゆる「帝国主義」の時代に、安価な労働力として朝鮮半島からやってきた、おびただしい数のコリアンたちが、異国の地につくりあげた生活世界の地層でもあり、たえずきびしい差別にさらされてきたところが、古層のコリア世界との違いである。

 中層から表層への変化をもたらしたのは、ごく最近の「韓流ブーム」である。昨今の韓国の資本主義の発達はめざましく、いまやいくつもの分野で、日本をしのぐ実力を身につけている。この変化にもっとも早い時期に、的確な感覚的反応をしめしたのが、例によって「大阪のおばちゃん」たちだった。彼女たちの感覚は、男たちよりもずっと柔軟だから、現実の深層部で進行していることに、敏感に反応することができたのである。

 「韓流はかっこええんやない?」。こういう感性的反応が登場してしまうと、それまでの面倒くさい歴史問題や感情のもつれなどは、無思考の大阪に飲み込まれてしまい、ミーハー思考によってコリア世界を取り巻く状況は大きく変わってしまった。桃谷のコリア街などは、これまで生活用品を売る店が建ち並ぶ細々とした商店街にすぎなかった。そこがいまや軽量エキゾチズムを求めて訪れてくるたくさんの韓流ファンによって、にぎやかなコリア・タウンに変貌した。中層から表層への変化をつくりだしているのは、ここでも資本主義の現代的変化にほかならない。中層コリア世界が生産型資本主義によって生み出された現実であったのにたいして、新しく生まれつつあるこの表層のコリアは、情報型資本主義がつくりだした現実にほかならない。

 大阪の文化は、このような三層をなしてダイナミックに活動をつづける。このコリア世界との関わりなしには、考えることはできない。この地層から放出されてくる力が、「大阪のバイタリティ」と言われるものの、おおもとをなしているからである。この三つの地層は、面白いことにほぼ同じ場所で堆積をおこしているから、同じ地点を掘り下げていくだけで、大阪におけるコリア世界の歴史的全貌に近づいていくことができる。有力な発掘場所は、その多くが生野区と平野区に分布している。

 大阪にコリア世界の確かな古層が形成されだしたのは、5世紀の頃である。高津古代港から上陸を果たした百済人の大集団は、上町台地をこえて、東に広がっていった。彼らは平野川の扇状大地にたどり着き、そこを開拓地と定めた。まず「ヒメコソ」の森となる場所を定め、それから村づくりにとりかかった。





大阪

中沢新一著、講談社、2012年刊

<「BOOK」データベース>より
南方と半島からの「海民」が先住民と出会い、砂州の上に融通無碍な商いの都が誕生・発展する。上町台地=南北軸と住吉~四天王寺~生駒=東西軸が交差する大地の一大叙事詩を歌いあげる。

<読む前の大使寸評>
内容はディープな大阪案内であるが、切り口と本のタイトルが斬新なんですね♪
だいたい「ジャンジャン横丁のデュシャンたち」とか「ナニワのミトコンドリア戦略」とかいう切り口は、誰も設けないですよ。

rakuten 大阪アースダイバー


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Last updated  2014.02.16 07:42:47
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