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2014.02.13
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カテゴリ: 歴史
 大使がもの心ついた頃には、朝鮮戦争が終わっていたが・・・
今では、日韓両国の民からはエアポケットのように話題に上がらない朝鮮戦争である。
しかし、米中対立が拡大する今、かつて経験した米中直接対決ともいえる朝鮮戦争を再認識したいと思う昨今である。

 この本を借りるのは2度目であることに後で気付いたけど、前回の読み方が杜撰だったのか、それともボケが始まったのか(笑)
今回は朝鮮の地図を横に置いて、読み進めたのです。


朝鮮

田中恒夫著、河出書房新社、2011年刊

<「BOOK」データベース>より
米ソの思惑によって分断された朝鮮半島。戦争はなぜ起きたのか、どんな戦いだったのか、日本はどのように関わったのか、そしてどのような影響を受けたのか―写真、作戦図など豊富な資料をもとに、朝鮮戦争を解き明かす。

<大使寸評>
大使がもの心ついた頃には、朝鮮戦争が終わっていたが・・・
今では、日韓両国の民からはエアポケットのように話題に上がらない朝鮮戦争である。
しかし、米中の対立が拡大する今、かつて世界が経験した米中直接対決ともいえる朝鮮戦争を再認識したいと思う昨今である。

amazon 図説朝鮮戦争



北朝鮮軍の南侵直後の7月時点での、国連軍の状況、日本の状況を見てみましょう。

<時間との戦い> p37~39より
 7月7日、北朝鮮軍は、「敵に時間的余裕を与えることなく、高い攻撃速度をもって敵に猛烈な打撃を加えて錦江と小白山脈を速やかに突破し、大田地域と小白山脈で敵の基本集団を包囲、殲滅することによって全州、論山、聞慶地域と蔚珍およびその南方地域を解放する」という第三次作戦を開始した。

 こうして北朝鮮軍は、予備の師団を戦線に投入して進撃を加速させ、一方の国連軍は、抵抗しつつ時間を稼ぎ、戦力を充実して反撃の機会を窺うこととなり、戦況は、北朝鮮軍の釜山占領が早いか、それとも国連軍の増援が早いか、まさに時間との戦いの様相を呈するようになった。

 7月7日には英国とオーストラリアの海空軍が参戦したものの、両国の地上軍は未だ到着できなかった。この点、米軍が日本に駐留していたことは大きな意味をもっていた。米軍は、九州の第24師団に続き、7月10日には関西の第25師団が釜山に、また18日には関東の第一騎兵師団が浦項に到着した。さらに7月末には米本土から第二師団も到着する予定であった。つまり米軍は、まず日本に駐留していた部隊を韓国に派遣し、その後米本国から逐次に到着してくる部隊を韓国に派遣していったのである。
 こうして日本には北日本の第7師団しか残らないことになった。このためマッカーサーは、日本政府に警察予備隊創設の書簡を送ることになる。

 また補給の面においては、国連軍も韓国政府も軍需支援体制の確立を急いだが、すぐに解決できるわけではなかった。このため、まず在日在庫品を輸送することによって当面の需要を満たし、不足分は米本土と日本で生産して輸送することにした。釜山港が日本に近く、すぐれた港湾能力を持っていることは国連軍にとっては幸いであった。

 釜山港は港内に24隻の船舶が碇泊でき、14隻のLSTが同時に荷役作業を行うことができ、7月の間、1日平均1万666トン、総計30万トンあまりが揚陸され、230余隻の船舶が入港していた。また北朝鮮軍が海空能力を欠いていてこれを妨害できなかったことっは、爾後の戦況に大きな影響を及ぼした。

 一方、北朝鮮軍にとっては、南下するにつれて補給線は延び、兵力の消耗も増加し、補給や補充が追いつかなくなっていった。時間との戦いは、補給と補充のスピードの戦いでもあった。



<9月の攻防> p51~55より
 8月下旬、米本土から第2師団の主力や補充部隊、戦車部隊等が到着し、さらに英第27旅団も到着した。その結果、ほとんどの師団は三個連隊三個大隊の本来の編成に充足され、戦力も充実してきた。この頃国連軍は、北朝鮮軍の兵力を約9万8千人と見積もり、兵力比では二倍、戦車は五倍国連軍の方が優勢であると判断していた。

 一方北朝鮮軍は、8月20日に「洛東江に圧縮した敵を、二つの強力な打撃集団によって西側と北側から打撃してテグ、永川一帯で米韓軍を包囲殲滅し、釜山根拠地を最終的に掃討する」という第5次作戦を指令し、その準備を進めた。そして総予備の第10・第7・第9師団の他に2個機甲旅団を戦線に投入し、以前から洛東江戦線にある部隊とともにこれらを二個の軍団に整理統合した。
 その構想は、「西部の第一軍団が8月31日に馬山、霊山正面を突破してテグ~釜山道を遮断し、北部の第二軍団は9月2日、倭館、多富洞、永川、安康・浦項正面を突破した後、釜山に進撃する」というものであり、北朝鮮軍の総力を挙げた最後の決戦であった。
(中略)
 北朝鮮軍は夜になっても攻撃を続け、6日未明には韓国軍を撃退して永川に侵入した。ところが永川を占領した北朝鮮第15師団は、テグには向かわず、なぜか慶州に向かって南下を始めた。これは第2軍団にとって幸いであった。同日午前、米軍の戦車小隊が到着すると、師団工兵隊はこれと共同して永川の奪還に向かった。この反撃は北朝鮮軍の不意を突き、車輌40余両、対戦車砲10余門を捕獲して一旦永川を奪回した。同日第1師団と第6師団から各一個連隊の増援部隊が到着した。

 第2軍団は、10日から総反撃に転じ、第21・第19の二個連隊で北朝鮮第15師団の退路を遮断し、永川南側から五個連隊をもって総攻撃していった。

 北朝鮮軍の9月攻勢は、9月10日過ぎ頃から次第に下火になっていった。永川のようにまだ依然として激戦が続いている地域はあったものの、全般としてみればもはや北朝鮮軍には国連軍の戦線を突破してテグや釜山を目指す力は残っていなかった。

 北朝鮮軍の9月攻勢は、総予備の師団を戦線に加入させ、その総力を挙げた最後の決戦であった。だが国連軍による絶対制空権下の作戦は、戦闘力の集中を著しく困難にし、北朝鮮軍にとって、9月攻勢は、既に戦力の限界を超えた作戦であったのである。

この後、9月15日の仁川上陸作戦、10月19日の中共軍介入と続くわけですが・・・
この本の核心部分を書き写すのは事だから、省略します。

このところ嫌韓本が多いなかで、著者が示す韓国観は少数派と言えるかもしれないが・・・


<日本と韓国> p135~137より
 朝鮮戦争が終わって60年近く経った現在でも、日韓両国は朝鮮戦争における互いの国の状況も実態も理解しているとは言えないように思う。韓国では、少数の研究者を除けば、朝鮮戦争において韓国は戦い抜き、その結果として日本を守ってやったという優越感と、韓国が血をもって戦っている間に、日本は特需によって一方的に儲けたという一種の妬みに似た感情がある。反面、日本が国連軍に協力するという姿勢で戦争を後方から支援したということについてほとんどの者が認識していない。

 一方日本は、韓国が国連軍とともに戦い共産軍の進出を阻止したおかげで、日本の危機は免れたということを認識する者は少なく、また国連軍への協力は密かに行われたことが多く、ほとんどの人は協力の内容についても知らないことが多い。今や両国の関係は密接になり、経済ばかりでなく、人や文化の交流も盛んになってきたにも拘わらず、朝鮮戦争についてはお互いの理解は進んでいないといえる。

 朝鮮戦争に米軍と一緒に参加したある在日韓国人から聞いた言葉がある。「日本があるのは韓国のおかげ、韓国があるのは日本のおかげ」。日本と韓国をよく知る彼は、自らの戦争の体験からそれを感じている日本人は少なく、韓国でもごく少数の人が感じているだけであろう。


この本の最後に朝鮮半島に関する著者の歴史認識が披露されているので紹介します。
卓見であるとは思うのですが、元防衛大学教授という著者の経歴が色濃く出ていると思うのです。

<朝鮮半島に関する戦略的関心の喪失> p139~140より
 朝鮮半島は、歴史的に、我が国の対外関心の最重要地域であった。それは近世まで、我が国の対外的脅威は必ずといってよいほど朝鮮半島からやってきたことからも頷ける。7世紀の百済滅亡と白村江の敗戦、同後半期の唐と新羅の戦争、11世紀の契丹の高麗侵攻、13世紀の蒙古襲来、17世紀の後金(清)による李氏朝鮮への侵攻など、我が国への脅威はすべて朝鮮半島を通じてやってきた。秀吉の朝鮮出兵はこの中での特異な事件である。

 東アジアは長く華夷秩序の世界にあり、中でも朝鮮半島は中華に近く、しかも地続きであることからその影響を強く受け、何度も圧倒的な大陸の勢力に攻め込まれ、戦い、ある時はこれを撃退しながらも宗属関係に入ることを余儀なくされることが多かった。一方我が国は、中華から遠い距離にあり、しかも四面海に囲まれているという地理的な利、さらに朝鮮民族の防戦もあって、ただ一度元寇の時を除いては大陸勢力の直接脅威に曝されることはなかった。
 朝鮮半島は、我が国のバッファー・ゾーンとしての役割を果たしていたのである。一方で秀吉による大陸への出兵や、後の日露戦争やその後の大陸進出に際しては、朝鮮半島は大陸への進出基地であった。

 では、朝鮮半島にとって日本はどのような地位にあったのか。おそらく危機に際しての避難地ではあっても、背後を支え、あるいは共に戦ってくれる心強い友邦とは感じていなかったであろう。二千年の間、朝鮮半島の勢力が我が国に来援を要請したのは、滅亡した百済の遺臣が、百済復興のために朝廷に援軍の派遣を要請した時と、蒙古軍の侵攻によって高麗の王朝が服属した後、これに対抗した三別抄が鎌倉幕府に援軍を要請した時の二度だけである。いずれも施政者からの要請ではなかった。我が国は、隣国からあまり信頼されていなかったといえる。

 この華夷秩序が崩れるのは19世紀後半になってからである。列強の東アジア進出の中で、我が国は北方、南方、東方からの脅威に晒された。その中で、いち早く開国し近代化に乗り出すと、対外関心の最重要地域である朝鮮における覇権を確立し、我が国の安全保障を図るために朝鮮半島に出兵して清国と戦い、勝利を収めた。これが二千年以上にわたって続いた東アジアの華夷秩序の崩壊を決定づけ、朝鮮が大陸との宗属関係から脱する契機となった。

 第2次大戦後は、そうした日本の課題が、米国の日本占領統治によってすべて米国に継承されたといえる。ジョージ・ケナンは、回顧録の中で「われわれは、日本がこの半島において大陸の勢力を封じこめるため長い間担ってきた負担を、自ら肩代わりする事態に直面することになった」と述べている。それは、米国が朝鮮の危機に軍事介入し、日本がそれを後方で支えることになった朝鮮戦争の構図が、改めて朝鮮半島の戦略的地勢を米国に示したということであり、日本も韓国も、米国の世界戦略、アジア戦略の中に組み込まれたのである。これは極東の歴史上初めてのことである。






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Last updated  2014.02.13 09:36:11
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