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2014.10.05
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カテゴリ: 気になる本
<日本語文章がわかる>
『日本語文章がわかる』という本を図書館で借りて読んでいるのだが・・・
巻頭には、あの高名な加藤秀俊さんが「ひとはなぜ書くのか」という、やや哲学的な一文を述べています。

そのなかの一部を紹介します。

<読まれるために書くのではない> よりp6~7
 およそ人間にとって「書く」ということは、ちょうど生理が呼吸しているのとおなじような精神の代謝であって、それはみずからを「表現」する手段のひとつであるにすぎない。

 歌の好きな人は歌う。絵の好きな人は絵を描く。踊りたい人は踊る。太鼓たたきの好きな人は太鼓をたたく。それとならんで、「書く」ことが好きな人もいる。べつだん、たいそうなことではないのである。

 そんなに簡単きわまる行為なのに、「書く」ことが特別のことのように思われるようになったのは、これまで述べたことからあきらかなように、書いたものは他人によって「読まれる」ものだという根拠なき錯覚が、いつのまにやら定着してしまったからであろう。

 風呂のなかで好きな歌を口にする人間は、べつだん「聴衆」を想定してはいない。現代社会に即していえば、カラオケのマイクをにぎっている人物は、歌いたいから歌っているだけのこと。落語の「寝床」にでてくる旦那のように、じぶんひとりが夢中になって唸っていれば、それで幸福なのである。ヘタの横好きにおつきあいさせられるのは、たまったものではないが、べつだん聴くことを強制されないなら。ご自由なのである。

 じっさい、いまの日本の俳句人口は二千万とも三千万ともいうが、その大部分の作品は本人は満足していても、べつにどうということのない駄句である。だが、読者はじぶんひとりか、せいぜい家族、同人の範囲だから人畜無害。カラオケとその性質からしてかわるところがない。そして、このような「読者なき創作」こそが、人間としての至福の経験なのではあるまいか、とわたしは思っている。

 「書く」ものが日記であろうと、詩であろうと、はたまた研究論文であろうと、書いている本人がたのしければそれでよい。


なんだ・・・これでいいのか♪
偉い先生のお言葉だと構えて読んだのだが、どっと肩の力が抜ける思いがします。

高橋源一郎が創作のヒントを語っているので、その一部を紹介します

<「文章」に反対する> よりp56~58
■ぼくは本当に「文章」を書いているのか?
 ぼくが職業的に文章を書くようになって20年ぐらいになる。けれども、こうやって、文章を綴りながらも、ぼくは自分がほんとうに文章を書いているような気がしないのである。そのことをうまく説明できるかどうか、ぼくにはよくわからない。けれども、なんとか、やってみることにしよう。

 人は何かを考え、そのなにかを表現するために言葉を用いる、というのは嘘だ。人は、虚空でものを考えることはできない。言葉がなければ、考えることすらできない。人はただ言葉を用いることによってのみ、ものを考えることができる。あるいは、言葉を用いることは、ものを考えることと等しい、といってもいい。

 では、目の前におかれた本の中で、誰かが書いている「文章」ではどんなことが起こっているだろう。あるいは、どんなことが起こっているように見えるだろう。
 そこでは、やはり、なにかを考えたり、表現したり、といったことが、いままさに起こっているように見える。そこで、人は、なにかを思索したり、なにかの意図をもって、架空の人物に、何かを話させてたりしている。まさに、そのことによって、その作者は、彼が書く文章の、あるいは、彼の使う言葉の支配者になっているように見える。
 しかし、それは本当だろうか。

■誰かになりすました「ぼく」
 ぼくがそのことに、はじめて疑問をもったのは、20歳頃、文体模写に励んでいた時のことだった。
 もちろん、はじめからぼくに「文体模写」という意識があったわけではない。ぼくは、当時流行っていた、さまざまな作家たち、詩人たちの声を口真似する鸚鵡に過ぎなかった。しかし、ぼくは、それが口真似であることに気づかず、まるで自分が、彼らと同じような声を持ったと錯覚して、愚かな歌を歌い続けていたのだった。

 たとえば、吉本隆明が書くような評論を書くと、彼のように、世界を呪詛する言葉が、すらすらと生まれた。長田弘や堀川正美が書くような詩(のようなもの)を書くと、まだ経験したこともない、どこかにいる少女への愛の言葉が自然に紡ぎだせた。北川透が書きはじめていたような硬質で戦闘的な詩論を書くと、詩と政治の間のことが、するすると綺麗に解けるような気がした。埴谷雄高が遥か昔から書き続けていた、謎めいた政治評論に似たものを書くと、マルクス主義が死滅した後の景色がはっきり見えるような気がした。
 よく考えてみれば、それらの、ぼくが書いていたさまざまな「」の間に、内的な、そして強固な繋がりはなく、それぞれがばらばらに、まるで、分裂した人格が書いたものであるかの如くに存在していた。
 「分裂した人格」
 それは、当時のぼくを表現するのにもっとも適した言葉だったろう。ぼくは、ただ「文章」を模倣したのではなかった。その作家や詩人の口真似をすることによって、その作家や詩人に似た考えを持ち、似た感受性を持ったような気がした。つまりぼくは、彼らになりすましたのである。

(中略)

 それが頂点に達したのは、吉田健一に出会ったときのことだった。
 ぼくは、彼の「文章」に強くうたれ、また、以前と同じように、彼の口真似をはじめた。以前とちがったのは、しばらくの間、他の誰の口真似もしなかったことだ。ぼくは毎日、吉田健一が書くような「文章」を書いて暮らした。吉田健一のように感じ、吉田健一が書くであろう対象について書いた。そして、ある日、突然、ぼくは夢から覚めた。いや、悪夢から覚めたような気がした。

 手元に膨大なノートが残っていた。そこには、吉田健一風の「文章」で書かれた、長大な思索の跡があった。しかし、それは本当の思索ではなかった。ぼくは、ただ考えたような気がしただけだった。ぼくはなにも考えてはいなかった。自分の書く「文章」に酔いしれながら、考えているふりをしていただけだった。




日本語

ムック、朝日新聞社、2002年刊

<「MARC」データベース>より
「ことば」という絵の具を使って、一枚の絵を書こう。街角で、台所で、学校で、仕事場で、旅先で、人生で…。日本語文章は風景だ。文章の達人たちが、小説やエッセイの書き方、創作のヒント、作文の極意などを伝授する。

<読む前の大使寸評>
当代の人気エッセイストは誰か?・・・それは週刊誌のコラムを連載している人である。
そういう見方で、このムック本に出てくる人を見てみると・・・
2002年刊行とやや古いせいか、知らない人ばっかりです。
とりあえず、高橋源一郎、南伸坊など知っている人から読むことにしよう。

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Last updated  2014.10.05 23:17:13
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