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2015.02.28
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カテゴリ: アート
佐々木さんが生まれ育った神戸・新長田といえば、ドングリ国の縄張りであるが・・・
神戸にはニューカマーの大使が知らない昔のお話が、興味深いのです。

それから、村上春樹との交流も興味深いですね。芦屋と神戸はお隣という関係からなんだろうか?

図書館で借り出し予約して、約5ヶ月・・・それにしても長く待たされた本でした♪



佐々木

佐々木マキ著、亜紀書房、2014年刊

<「BOOK」データベースより>
マンガ家デビューから『やっぱりおおかみ』などの絵本創作の背景や『ガロ』で出会った人々との交流までを綴った書き下ろしエッセイ「ノー・シューズ」。神戸の下町で過ごした幼少期を描いたエッセイ「ぼくのスクラップ・スクリーン」。珠玉のエッセイと共に不思議な1コママンガの連作「スカラマンガ」も収録!

<読む前の大使寸評>
佐々木さんが生まれ育った神戸・新長田といえば、ドングリ国の縄張りであるが・・・
神戸にはニューカマーの大使が知らない昔のお話が、興味深いのです。

 それから、村上春樹との交流も興味深いですね。芦屋と神戸はお隣という関係からなんだろうか?

<図書館予約:(9/09予約、2/25受取>

rakuten ノー・シューズ


佐々木さんが生まれ育った新長田を語っているが、その街は阪神淡路大震災で様変わりしています。
新長田は大使が通勤で通った街でもあり、大震災前の佇まいがなつかしいのです。

<まち> よりp111~113
 大阪から下り快速に乗る。尼崎、西宮を過ぎて、芦屋川を渡れば間もなく神戸市なのだが、六甲山の斜面に沿った屈託ない家並みを見ても、ぼくには何の関係もない。
 灘を過ぎ、脇浜の煙が見えて、三宮。そこから大小色とりどりのビル群が元町、神戸と続いて、急に殺風景な感じの兵庫で、各停に乗り換えて次の駅、新長田。

 ここが、ぼくが生まれて育った街だ。1950年代に戻ろう。大雑把に言うと、駅の北は煙突の林立する工業地帯、南はごちゃごちゃした商業地だった。ぼくの家は駅のずっと南にあった。
 家のすぐそばに六間道という商店街があった。いつも人通りが多く繁昌していたが、ことに年の瀬には買物客で、夏の宵にはそぞろ歩きの人でとても賑わった。

 井上靖の短篇に、この六間道でちょっとしたカオの目玉のお竜というズベ公が、やはり不良少女の主人公と長田神社で決闘するという話があったが、似たようなことは実際にあったかも知れない。やくざ者やチンピラも多かった。その小説を読んだ時、この作家は絹の道から六間道まで知っている、と感心したものだ。

 六間道には芝居小屋があった。近所に何となくぶらぶらしている若い衆がいて、よく連れて行ってくれた。夜遅く銭湯へ行くと、役者たちが舞台化粧のまま、ぞろぞろとはいってきたりした。この小屋はその後、舞台裏から浮浪者の白骨死体が出てきたため、げんが悪いと改装して、三本立ての映画館になった。昭和20年代の終わり頃のことだ。

 朝鮮人の多い街で、街中に朝鮮人はいたし、川の両側には貧しい朝鮮人の密集地域が幾つかあった。
 差別や確執は当然あったが、絵に描いたような単純な形ではない。朝鮮人の間にも―出身地の違いや、貧富による―感情的な対立や差別があったし、朝鮮人日本人ひっくるめての貧富の差別、住んでいる地域による差別もあって、世の中しんどい仕組みになっていた。

 また、小学校の塀に寄りかかるようにして並ぶバラック塀は、奄美大島出身者の居住地だったし、鹿児島県出身者ばかりが住んでいる路地もあった。彼らはそれぞれ、アマミ、カゴシマと呼ばれて特別視されていた。

 ぼくは朝鮮人の子供を避けなかったが、何もぼくに平等博愛の精神があったからではない。彼らを避けていたら、遊び友達の半分以上を失うことになるからだ。それに、実際彼らとは結構うまが合っていた。

 その代わりに(というのも変だが)ぼくは家の裏に越して来た鹿児島の子をいじめた。平等博愛の精神なんてなかったのだ。初めのうちはメンチャ(メンコ)やラムネ(ビー玉)をして仲良くやっているのだが、決まって途中から、ぼくがいびりだすのだ。聞き取りにくい言葉を喋る、鈍感で卑屈で、図々しい相手(と、その時は思った)にいらいらして、泣き出すまで容赦しなかった。悪いことをしたと思う。


マンガ雑誌「ガロ」との関わりが語られています。
当時の大使は、「ガロ」を見たかもしれないが、気に留めるほどではなかったのです。

<ガロ> よりp149~151
 「ガロ」という奇妙な名前のマンガ雑誌を、私が初めて手にしたのは1966年のことだった。創刊号から最新号までの20冊ほどを、まとめて誰かから借りたのだ。
 目当てはもちろん白土三平の『カムイ伝』である。私はそれより少し前に三洋社版の『忍者武芸帳』全巻を通読して、その迫力とおもしろさに圧倒されたばかりだった。
 毎号百ページ掲載の『カムイ伝』はなるほど凄かったが、残りのページに載っているさまざまなマンガが、これまた非常におもしろかった。

 水木しげるという人のマンガを初めて見たが、とぼけた不思議な味わいの作品を描く人だと思った。
 つげ義春の作品とも久し振りに対面した。貸本屋以来お目にかかっていなかったので。 滝田ゆうという人のマンガも初めて見たが、とても好きになった。独特の線描と、ギャグとオチ。うまい落語を聞くような気分。

 それにしても、この一見野暮ったくて貧乏くさい(そして、かなりいい加減な)「ガロ」という雑誌が、その時の私にはどんなに新鮮で魅力的に見えたことだろう。ちょうど、身なりやマナーにはまるで無頓着だが、とびっきり自由で風通しのよい精神を持った放浪児に出会ったように。

 私は毎月「ガロ」を買って読むようになったが、それだけでは飽き足らなくなり、その年の夏、短い風刺マンガを描いて投稿した。私の投稿は採用され、その年の11月号に掲載された。
 天にも登る気持ちとは、この時のことを言うのだろう。

 原稿料2千円のはいった現金封筒には、メモ用紙を破りとったような紙切れに、恐ろしく下手な字で「アナタノ漫画ハ面白イノデ コレカラモ送ッテ下サイ」と書かれたものが同封されていた。私はこれを書いた人が青林堂社長にして「ガロ」編集長の長井勝一氏とは夢にも思わず、なぜか<アルバイトのおじいさん>の書いたものと思い込んでいた。
 マンガを描くことに私が熱中し出したのは、それからである。人の運命はこんなふうにして狂っていく。


それにしても赤瀬川原平といい、佐々木マキといい、『ガロ』には本当に異能の持ち主がいたんですね。
『ガロ』を見ずに過ごしてきた 」に載せています。

佐々木さんの通学ルートは、大使の通勤ルートでもあったので懐かしいのです。
10年ほどの時間差はあるが、ニアミスしていたようです。

<うんが> よりp157~159
 ぼくが通っていた高校は兵庫運河の南にあった。通学のコースは幾つかあったが、吉田町回りの市電だけは厭だった。
 その市電は和田岬の三菱重工へ通う連中で満員で、おれたちは三菱で働いているんだぞ、そこら辺の吹けば飛ぶような町工場へ行ってるような連中とはわけが違うんだという意識が、彼らのちょっとした物言いや態度の端々に表れていて、たとえ15分でもこの連中に揉まれているのは、実に不快だった。貧しい俗物ども。
 いきおい松原回りの市電に乗ることになる。中ノ島で降りて橋を渡り、運河に沿って歩いて行く。
(中略)

版画1川西英「運河」

 運河の岸にはさまざまな倉庫や木材置場が並んでいる。冬は水の上を渡ってくる風が冷たい。
 スズメや時にはハトが、荷揚げの際にこぼれた穀類に群がっている。小さなクレーンが軋み、人夫たちが猫車を押している。
 洗濯物をかざしたダルマ船の上で犬が啼いている。水に浮かんだ夥しい木材の上を、長い柄の鳶口を手にした男が跳びはねている。木材を区別したり移動させたりの仕事だろうが、ここから見ていると、大の男が退屈しきって無意味な跳躍をしているとしか見えない。
 高校の周りも工場が多かった。屋上から、運河一帯そして兵庫駅のほうを眺めていると、どうでもいいや、という気分になった。何がどうでもいいのかその時も今も説明できないけれど。雨の日には油脂工場が臭い、乾いた日には肥料工場が臭った。

 ビートルズは強烈だった。もうずっと以前から心の中にあったものが、やっと突破孔を見出したような感じだった。見えなかったものが見えたようで、荒々しく優しい気持ちになれた。






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Last updated  2015.02.28 10:59:09
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