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2015.05.02
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カテゴリ: 映画
図書館で『伝説の映画美術監督たち×種田陽平』という本を手にしたが・・・・
この本に『トラ・トラ・トラ!』の黒澤監督降板劇の真相が載っていて、興味深々でんがな♪



種田

種田陽平著、スペースシャワーネットワーク、2014年刊

<「BOOK」データベース>より
映画監督・種田陽平が聞く13人の映画美術の巨匠たち。
【目次】
木村威夫/横尾嘉良/間野重雄/水谷浩/西岡善信/朝倉摂/池谷仙克/竹中和雄/井川徳道/森田郷平/村木与四郎/ワダエミ/ダンテ・フェレッティ

<大使寸評>
村木与四郎さんとの対談で、『トラ・トラ・トラ!』の黒澤監督降板劇の真相が出てくるのだが・・・・
日米の交渉スタッフが映画作りの部外者だったので、黒澤監督がおかんむりだったようですね。

rakuten 伝説の映画美術監督たち×種田陽平


『トラ・トラ・トラ!』の黒澤監督降板劇の真相あたりです。
p177~180
 06年6月に行われた対談に際し、村木は当時刊行されたばかりの「黒澤明vsハリウッド―『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべて」(田草川弘著)を用意して種田を待っていた。この本は60年代後半、黒澤明が20世紀フォックス資本で撮るはずだった映画『トラ・トラ・トラ!』の監督降板劇の真相を探ったものである。

村木:この本は、日本側に関しては事実と違う記述も見受けられるけど、20世紀フォックス側のデータはよく調べてある。これを読むと、日本側のプロジューサーだった青柳哲郎がおかしなことを言っているのがよく分かります。要するに、それまで1回も映画の現場で揉まれたことのないスタッフが、英語ができるだけで重要な交渉の場に立ってしまったから話がこんがらがっちゃった。クロさんも思い込みが強いから、脚本は全部自分で書いて、その通りに撮れると思っていた。

種田:最近でこそハリウッドとのやり方が日本側も分かってきたけれど、当時の考え方のギャップがあまりにも大きかったんでしょうね。

村木:間違いの種は、フォックス側が何かにつけてクロさんに安請け合いしたこと、例えば向こうは一度、零戦が奇襲するハワイ島・真珠湾のミニチュア模型を、日本のスクリーンの3倍の大きさで作れると言ったんだ。ところがしばらくして、「そこまでサイズが大きいと、ライティングの光量が足りなくてピントが合わない」と言い出した。要はアメリカ側も映画を知らない人間が交渉の場に立っているから、できるできないの判断が付かず、それが現場に降りてきて揉めてしまう。

種田:黒澤監督は『トラ・トラ・トラ!』の前、66年にアメリカのエンバシー・ピクチャーで「Ranaway Train」を撮ることになっていましたが、このときはどうだったんですか?

村木:『暴走機関車』は機関士が心臓発作を起こし、機関車が逆方向に暴走する話だけれど、この際もアメリカ側は鉄道の運行を止め撮影すると言っていたんです。逆走し始めた機関車と、それを知らずに進行してきた機関車がぶつかる直前ですれ違うシーンも、実物を動かして撮ろうと、今考えればそんな危険な撮影、許可なんて下りるわけないんだけど。クロさんは始末に負えないほど人が好くてね。出来ると言われるとすぐに信じちゃうんです。うまく行くと批評家は「凄い」と褒めるけど、そうじゃないときは『トラ・トラ・トラ!』になってしまう。

種田:例えば『羅生門』(50)では黒澤さんのビジョンがうまく映像化したわけですが、その違いは何なのでしょう?

村木:敗戦直後の東宝争議で、クロさんは山本嘉次郎さん、成瀬(巳喜男)さん、谷口千吉さんと東宝を退社して「映画芸術協会」を設立するでしょう。それで49年、大映に赴いて『静かなる決闘』を撮るんだけど、大映の方も監督の扱い方が分かって、次の『羅生門』では永田雅一社長を始めスタッフがうまくクロさんを乗せた。

種田:セットが大きくなるのは、静岡の御殿場で撮るようになってからですか?

村木:御殿場は、ロケ先で野次馬に騒がれるようになったのも大きい。だったら人が簡単には来られらない場所にセットを組もうという発想になった。ただ、『七人の侍』の頃からすでに、セットが大規模になる傾向があって、1年以上の制作期間中、3回ぐらい途中で撮影がストップしたんだけど。

種田:むしろ3度止まっても完成できたのが凄いなと。

村木:クロさんは狙って撮影を途中で止めるんですよ。一番いい場面のチャンバラの手前で撮影を止めて、そこまでのラッシュ映像を製作陣に見せる。そうすると話は面白いし、「もうちょっとで終わりだから・・・」と製作側もお金を出す。そしたら、より大きく作り直しちゃう。

種田:でも、そのスケールの大きさが黒澤さんの持ち味なんですよね。例えば『羅生門』にしたって、脚本に具体的説明はなく、ただ一言「門」とあるだけ。それが映画になると、巨大なモニュメントのようにそびえ立っています。村木さんが手掛けた『隠し砦の三悪人』(58)の石段にしても、日本映画では見たことがないほどのスケール感ですよね。

村木:『隠し砦』の石段は、他の作品よりは小さいですよ(笑)。まあ、僕はいつも一回り大きく作るからね。

種田:それはなぜですか?

村木:そうしないと、クロさんから必ず何か言われて癪だからね。ただ、本当を言うと僕は脚本に合わせて作るのが上手いんだ。東宝でも最も安い美術製作費で作られた『小象物語 地上に降りた天使』(86)も僕、あの映画は夜の話ですから、さすがに象舎だけは作りましたが、あとは撮影所内の建物に金網なんかをあしらって檻っぽく見せた。

種田:なるほど、村木さんの場合は小さく安くもできるけれど、黒澤作品に限っては一回り大きくなっちゃうと(笑)。

村木:そういう意味では、僕のやっていることは大体インチキなんです。『夢』(90)では珍しく、クロさんが幼少期を過ごしたという本郷近くの家の門を本物らしく再現したら、「僕のうちの門は近所でも有名なくらい大きかった」とくる(笑)。そういう人なんだよ。だから、『椿三十郎』では部屋の隅っこに茶室を作った。その手前の庭に椿の木を置いて、それを一番端から望遠で撮ると、とても奥行きが出るからね。

種田:普通の日本人が見ている風景よりも大きい世界観は、黒澤さんの肉体の大きさの反映ですか?それとも村木さんの志向性?

(中略)
村木:結局、映画美術なんて、現実の借り物である映画のさらに借り物だからね。借り物だけが独立して、大きく発展するなんてありえない。大きい企画を生み出すプロジューサーが現れないと、次世代のクロさんは生まれないんじゃないかね。僕はそう、思いますね。






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Last updated  2015.05.02 14:21:58
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