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2015.09.26
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カテゴリ: 映画
図書館に借出し予約していた『台湾の歓び』をゲットしたのです。
待つこと6ヶ月か・・・・待機期間のバラツキは神戸市が何冊買うかにかかっているのかな?

さて、還暦を過ぎた四方田犬彦は、台湾という土地で、どのようなフィールドワークを見せてくれるのだろうか♪?・・・興味深いのです。



台湾

四方田犬彦著、岩波書店、2015年刊

<「BOOK」データベース>より
数多くの民族と言語を抱えながら、きわめて実験的な文学や、洗練された映画を産み出してやまない台湾。その文化・社会とはどのようなものか。台北、台南を拠点に街を歩き、詩人、映画人らと対話を重ね、夜を徹した媽祖巡礼へ参加し、その尽きせぬ魅力について縦横に語る。長期滞在を機に書き下ろす、初の台湾紀行。

<読む前の大使寸評>
還暦を過ぎた四方田犬彦は、台湾という土地で、どのようなフィールドワークを見せてくれるのだろうか♪?・・・興味深いのです。

<図書館予約:(3/15予約、9/19受取)>

rakuten 台湾の歓び


この本で、台湾のアイデンティティ、言語環境のあたりを見てみましょう。

<台北という都市> p5~7
 「先住民」という言葉は使われない。もはや絶滅してしまったという意味合いが強いからだ。1994年の第三次憲法修正によって、彼らは公式的に「台湾原住民」と呼ばれることになった。いずれにせよ交通行政は、台湾で用いられているすべての言語が対等であるという立場のもとになされている。

 わたしが滞在していたアパートに清掃に来る老人と若い女性は最初に、自分たちがアミ族出身であると誇らしげにいった。老人は流暢ではなかったが、かなり日本語を話した。子供のころ、家の近所にいた日本人が国に帰ることになったとき、海辺で自分を抱きしめてくれたという。それから野球は台湾も強いが、日本も強いねと付け加えた。

 台湾人はほとんど例外なしに、子供のときからいくつもの言語を横断し、使い分けしながら生きている。九州よりも小さな島のなかに、少なくとも17の言語がひしめきあい絡まりあっているのだ。単一言語幻想を素朴に信奉してきた日本人や韓国人には想像もできない複雑な言語環境を、彼らは日常的に生きている。どの言語を選んで話すかは、当人の出自と歴史、イデオロギーによるものだが、ときに彼らは複数の言語をジャグリングのように扱い、遊戯的に使いこなす。

 1990年代以降のロックでは、客家語や原住民の言葉をどんどん歌詞のなかに取り入れていくことが流行した。同じ内容の短篇小説を、台湾語と中国語の二通りに執筆して発表する宗澤莱という作家もいる。楊徳昌の『独立時代』(邦題は『エドワード・ヤンの恋愛時代』)というフィルムには、二人の男女がタクシーの中で中国語と台湾語を、冗談のように交互に使ってお喋りをするという場面がある。
 駅名のアナウンスに話を戻すと、土地の固有名詞を示す発音は複数ある。だが漢字表記は一つだから、標識が煩雑になることはない。漢字さえ正確に記されていれば、誰も自分の文化の伝統に応じて、どのように発音してもかまわない。社会は複数の文化と言語からなっているというのが、現在の台湾人の基本的認識である。

 それからもう一つ。漢字は政治体制の手でけっして簡略化してはならず、たとえいかに複雑に見えようとも、正しく綴らなければならないという理念。ヴェトナムは漢字を禁止され、韓国は民族主義の立場からそれを教育体系の周縁へ押しやった。日本は米軍占領下に漢字の簡略化を推し進め、中国も漢字の廃絶を最終目標としながら挫折し、略字の考案に勤しんだ。世界中で本来の漢字をそのまま使い続けているのは、香港と台湾だけとなった。それだけでも台湾の文化的意義は大きい。

 台湾の大学人がわたしに教えてくれた基本的なことの一つに、講義のなかでの中国の呼び方があった。誰もが知っているように、1949年に蒋介石率いる中国国民党が中国共産党の人民解放軍との戦いで敗北し、台湾に逃げ込んで以来、この地を「中華民国」の名のもとに統治してきた。大陸の側は「中華人民共和国」であり、両者はそれ以来反目しながら現在にいたっている。

 台湾のなかには、台湾を独立国として世界に承認させようという政治的動きもあれば、中国への統一を積極的に求めようという動きもある。もしあなたが「台湾」と「大陸」という言語を対にして口にしたならば、それは統一派と見なされることだろう。いずれの言葉も国名ではなく、地名にすぎないという意味になるからだ。だが、もし「台湾」と「中国」という語を並べて用いるならば、それはいずれも国名として認めていることになり、中国とは別個に成立している台湾の独立性を強調した表現になるだろう。日本人にとっては瑣末に見えることかもしれないが、台湾人にとってはこれは自分たちの政治的・文化的アイデンティティに関わる重要な問題である。ささいな語彙の用い方が、その人物の帰属しているイデオロギーの証立ててしまうことになると留意してほしい。ある教授はわたしに、次のように説明してくれた。

 台湾は中国の一部でもなければ、その服属国でもない。中国と日本の文化をともに吸収しながらも、いずれか片方に傾くことなく、島内にあるさらなる文化的多様性を取り込みながら成立している独自の社会である。たとえアメリカと日本、中国が正式の国交を結ぼうとせず、国連に議席の一つも与えられていないにもかかわらず、何人も台湾の文化的アイデンティティを揺るがすことはできない。 台湾は実在する。


この言語に着目した論説で、台湾が漢字文化圏の文化的中心に位置することが分かるのだ!♪
中国の漢字簡略化や韓国の漢字排斥をこころよく思っていない著者のスタンスが、図らずもこの論説ににじみ出ているようです。(大使 読み方が偏っています)

大使一押しの台湾人映画監督といえば魏徳聖(ウェイ・ダーシェン)であるが・・・
そのあたりが載っています。

<魏徳聖と日本> p152~166
 とはいうものの、わたしはここで不用意に「反日」「親日」という二分法を使用しようとは思わない。韓国を反日、台湾を親日と呼んだところで、それ以上に議論が進展するとも思えない。またこうしたレッテル貼りが、個人個人の韓国人や台湾人が抱いている、日本に対する複雑な感情を強引に単純化し、ステレオタイプの枠のなかに押し込んでしまうことの害を、まず認めなければならない。自分と異なった出自や来歴をもつ人間を、かかる二種類に分類してよしとする態度こそ、当人を侮辱することではないか。

 韓国人にしても、台湾人にしても、日本が植民地化したことのある場所に生まれ育った人間にもし二分法を適用するとすれば、それは知日と無知日(あるいは無識日)の二通りしかないのだというのが、わたしの考えである。
(中略)

 嘉義農林の甲子園出場のことは、以前から聞いていた。わたしが大学で教えたことのある〇健裕という留学生が嘉義出身で、いつか国に戻って嘉農のことを話に映画にしたいと口癖のように話していたからである。彼はやがて台北に戻ると、台湾接収に来た日本軍と義勇軍との戦いを描いた『1895』の製作に関わり、戦争に懐疑的な青年軍医、森鴎外の肖像を描いた。だが嘉農の映画は実現しなかった。

 代わりにそのフィルムを製作したのは、『海角七号』と『セデック・バレ』の監督で知られる魏徳聖(ウェイ・ダーシェン)だった。魏は『セデック・バレ』に出演していたウミン・ボヤに『KANO』の監督を任せた。おそらく野球をよく知らなかったので、どう撮っていいのか、わからなかったのだろう。『KANO』と名づけられたその作品は、3時間半の長尺であったにもかかわらず、2014年2月に台湾で一斉公開されると台湾映画の配収記録を毎週塗り替えていった。それはいつもの魏徳聖の作品と同じ現象だった。

(中略)
KANO

 『KANO』は2014年の台湾映画界で未曾有の興行成績を収めた。映画評論家のなかには、八割の会話が日本語でなされていることを根拠に、このフィルムを「親日映画」として批判する者もいた。だが多くの観客はそれを問題としなかった。1970年代に国民党が国策映画として製作を命じた反共抗日映画のなかでは、侵略者である日本軍の兵士も将校も、誰もがよどみない中国語を口にし、ステレオタイプの悪役を演じている。その荒唐無稽と比較するならば、魏徳聖の製作したこの作品は、植民地時代の言語状況を隠蔽することなく表象していると判断されたためである。

 『KANO』が舞台にしている1929年から31年までの台湾中部とは、魏の前作でもある『セデック・バレ』が描いた霧社事件と、まったく時期を同じくしている。日本人の虐殺を描く『セデック・バレ』が反日映画でないように、台湾人の甲子園への情熱を映画版『KANO』もまた親日映画ではありえないと了解すべきだろう。明らかに魏徳聖は、この二本の作品を鏡の表と裏のように見なしている。彼が『KANO』の監督を、『セデック・バレ』に出演したウミン・ボヤに依頼したことが、何よりもそれを証拠立てている。

 魏徳聖という映画人の出現は、2000年代以降の台湾映画をもっとも特徴づける現象の一つである。候孝賢や楊徳昌が映像作家としての繊細な文体に拘泥し、世界中の国際映画祭に宛ててハイブロウな芸術映画を撮り続けたとすれば、その次の世代である魏徳聖は逆に、誰もが登場人物に同一化して、強い情動的興奮を体験するエンターテインメントに徹して、台湾映画をもう一度興隆へと導いた。

 日本統治時代に投函された手紙が、受取人も不詳のまま、何十年もの後に出現し、若者たちがそれを調査する『海角七号』という最初の評判作は、置き去りにされてきた過去の時間への遡行のフィルムである。回帰してきた手紙とは、日本統治時代の記憶に他ならず、人はその手紙を手掛かりとして甘やかなノスタルジアの庭のなかに足を踏み入れていくのだ。


台湾映画については 台湾映画アンソロジー


出張で台湾に行ったとき、都市や田舎にやたら廟あるいは祠が見られることに驚いたのであるが・・・そこには、種々の神仏が祀られているようです。

<マ祖 黒い面の女神> p187~197
 薄暗い空間のなか、休みなく燻される線香の煙に包まれて、夥しい数の神像があった。城〇爺、水仙尊王、観世音菩薩、四海龍王、太上老君、神農大帝、関聖帝君・・・・道教系の神紙もいれば、仏教の菩薩や大師もいる。自然現象の化身もいれば、歴史上の賢人や名君もいる。臨水夫人や註生娘娘のように、安産や子育てを司る民間の俗神もいる。だが、あまたの神々のなかでとりわけわたしを惹きつけたのは、マ祖という女神であった。

 マ祖は別名を「天井聖母」という。より公式的には、明代清代に「天妃」とか「天后」といった称号を授けられもしたが、庶民はより親しみをこめて「マ祖婆」とか、あるいはもっと簡単に「姑婆祖」と呼んだりもする。ご先祖の婆ちゃん、くらいの意味である。

(文字数制限により省略、全文は ここ )







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Last updated  2015.09.26 07:24:49
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