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2015.12.16
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カテゴリ: 気になる本
図書館に借出し予約していた村上龍の『オールド・テロリスト』をゲットしたのです。
村上龍の長編小説を読むのは『歌うクジラ』以来ではなかろうか…楽しみやでぇ♪

この本は5ヶ月待たされたわけで、神戸市の図書館ではよくある待機期間です。



村上

村上龍著、文藝春秋、2015年刊

<「BOOK」データベース>より
「年寄りの冷や水とはよく言ったものだ。年寄りは、寒中水泳などすべきじゃない。別に元気じゃなくてもいいし、がんばることもない。年寄りは、静かに暮らし、あとはテロをやって歴史を変えればそれでいいんだ」怒れる老人たち、粛々と暴走す。

<読む前の大使寸評>
村上龍の長編小説を読むのは『歌うクジラ』以来ではなかろうか…楽しみやでぇ♪
この本は5ヶ月待たされたわけで、神戸市の図書館ではよくある待機期間です。

<図書館予約:(7/21予約、12/13受取)>

rakuten オールド・テロリスト


前半で、お話が加速するあたりを見てみましょう。
p87~89
「(前略)
 そういった分散型の組織は、仮にテロがどこかのタイミングで発覚しても組織的な被害が最小で済みますね。全体が壊滅することがないのです。それに、たとえば実行直前に警備状況から判断して攻撃対象をとっさに変えるような柔軟性があるのでテロ対策がとりづらいんです。そういった先端的なシステムは、そのあと、アメリカ陸軍やグローバル企業の組織に応用されていくわけです。
 現代の戦争はほとんどが市街戦なんですね。第二次大戦後期にロシアの大平原で戦われた数千台の戦車戦とか、もはやあり得ないんですね。市街戦は近くに非戦闘員の市民がいるので、分隊とか小隊レベルでの現場での判断が重要になるわけです。だから分隊や小隊という小グループのリーダーは、戦術をとっさに変更できる能力が求められます。典型的なアメーバ型組織ですね。

 あと、企業でも、たとえばある世界的な消費財メーカーがあるとしますね。シャンプーを製造しているとします。するとアジアのインドと中国では微妙に髪質が違うので、シャンプーの成分や香料を変えるんですね。その場合、現地法人に決定権があるわけです。数年前まで絶大な売り上げを誇ったユニクロでも、各店舗の店長の仕入れや商品レイアウトが任されていました」

 缶ビール一本でこんなに人が変わるのかというくらい、マツノ君は身振り手振りを交えてよく喋った。爆弾の運搬というところでは、実際にデスクの上の鉛筆削りを大切そうに抱え椅子から立ち上がって数歩歩いたり、自爆テロの実行犯のくだりでは、両手でハンドルを握る恰好をして天を仰ぎ小声でアッラー・アクバルと言った。だが、アル・カイーダタイプの組織と、マイクロフィルムに収められていた稚拙な絵がどう関係するのだろうか。

「たとえ普通の上手な絵でも、誰が描いた絵か、ぼくたちは、確かにわからないです。でも、仲間内だったらどうですかね。わかるじゃないですか。このタッチは誰だとか、人の顔の描き方とかで、あいつが描いたんだなって、仲間だったらをかりますよね。アル・カイーダ、実は、やってます。攻撃目標の略図とか、特別な起爆装置とか、手書きの画像が必要なときに、子どもが描くような絵柄にしたことがあったんですね」

 要するに、分散型のアメーバのような組織では、誰の計画か特定できないように、わざとひどく稚拙な絵を使うということがあるということだった。

「セキグチさん、イメージしてくださいよ。大久保でしたっけ、将棋道場がある、それと駒込のカラオケ教室っですか。似たような場所が東京都内や近郊にいくつもあるって、学生服のじいさんが言ったわけでしょう?そこにじいさんたちが集まっているわけでしょう。その中に別の顔を持つ連中が潜んでいるはずだと、セキグチさんは考えているわけですよね。その中の誰かがテロを計画し、NHK西玄関の見取り図を描いて、マイクロフィルムや他の媒体で実行グループに送る必用があるわけですよね。普通に図や絵を描けば、たとえば、これは駒込のキニシスギオだと特定されるじゃないですか。でも幼稚園児のような絵柄にすれば誰が立案したのかわからないです」

 情報の送り先は実行グループだけではなく複数あるはずだとマツノ君は言った。

(後略)


主人公の関口は、謎めいたアキヅキ・メンタル・クリニックに取材するのです。
p143~154
 アキヅキは、淡々とそんな話をする。天下国家について語るときの気負いというか、大仰なところが微塵もない。

「簡単なんだよ。福島第一の事故は、津波が原因ではなく、古くなっていかれかけてた冷却系の配管が大地震で壊れたのだという指摘があるのは知っているだろう。配管が古くなっているのは、冷却系だけじゃないんだよ。原子炉と直接につながる配管だって、大半はふるくなっている。それが割れたり外れたり、ひびが入るだけでも、どうなるか。想像できるか。それに、タービンだって、かなり古い。タービンからの蒸気だが、副水器に回せなくなったらどうなると思う?副水器がつまったりしても冷却はもうアウトだし、循環ポンプが故障してもアウトだし、冷却系の配管が破断したら、あとはもう、カタストロフまで一直線だ。まだある。日本各地に、使用済み核燃料棒を貯蔵したプールがあるらしい。だいたい数千本単位で貯蔵されていた、当然、冷却し続けなければいけない。数千本の核燃料棒といえば、だいたい原子炉十基分の燃料体だそうだ。しかしだね、それらは原子炉と違って、格納容器も頑丈な防御壁もない。周囲は単に薄いコンクリートの壁で覆ってあるだけだから、たかだか数百度の熱で崩壊する。海外のメディアが指摘するのは、そこで何かが起こったらどうするのかということだ。危ない奴がダイナマイトを数本放り投げるとどうなる?ドッカーン。核燃料棒がばらまかれる。君に聞こう。これが、焼け野原でないなら、いったい何なんだ」

(文字数制限により省略、全文は ここ )

 アキヅキの言うとおりだった。おれが、推測や憶測を交えて勝手に言葉を組み合わせてしまっただけだ。アキヅキは、勝新太郎や高倉健が出演する予定だったという映画企画の説明で、彼らがテロリストと戦うというストーリーを話し、そのときだけ、テロという言葉を使った。しかも、それは映画の中の話なのだ。もうだめだ、と思った。とんでもない失敗ばかりだ。このクリニックに来てすでに2時間以上経っているが、肝心なことは何一つわかっていない。

(中略)
 映画、と聞いて、突然おれは思い出した。何が引っかかっていたのか、わかった。アキヅキは、本当の秘密を語ると言っておれを緊張させ、実は昔役者の端くれだったなどと、下らないことを話しはじめた。おれは、またしても話をはぐらされたとがっかりしたのだが、そのあと、演劇の時代はとっくに終わっていて、今は映画しかないのだと、そういうことを言った。だが、問題はそのあとだ。映画館だ、そう言った。今でも歌舞伎町の映画館に行く。

「意味、わかるよね。歌舞伎町の映画館ですよ。歌舞伎町の、映画館ね」


この後、歌舞伎町の映画館で800人超の被害者の出たテロ事件が起きるのだが…
現在より数年だけ近未来のニッポンを描く村上ワールドは、かなりリアルである。

怒りという感情を持続しているのは、もはやオールド・テロリストしかいないのか?
村上龍の危険な挑発とでも言うんでしょうね。





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Last updated  2015.12.24 07:51:17
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