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2016.03.16
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カテゴリ: 中国
<語られざる中国の結末>

巨大国家が経験する近未来は旧ソ連のような民主化か、それとも分裂なのかという内容が刺激的である。

相変わらず中華関連本には、つい手が出る大使である。
でも、なんだか一度読んだような気がするけど、ま いいかと借りた次第です。



中国

宮家邦彦著、PHP研究所、2013年刊

<「BOOK」データベース>より
海洋進出への野心を隠そうともしない中国。「膨張するものは必ず縮小する」。アヘン戦争のトラウマを払拭するかのごとく米国に挑戦し、来るべき「第二次東アジア戦争」に「敗北」したあと、はたして巨大国家が経験するのは旧ソ連のような民主化か、それとも分裂なのかー。いま最も注目される外交評論家が、近未来のシナリオを大胆に予測する。
【著者情報】
宮家邦彦(ミヤケクニヒコ)
1953年神奈川県生まれ。外交政策研究所代表。78年東京大学法学部を卒業後、外務省に入省。76~77年米ミネソタ大学、台湾師範大学、79年カイロ・アメリカン大学、81年米ジョージタウン大学で語学研修。82年7月在イラク大使館二等書記官、86年5月外務大臣秘書官、91年10月在米国大使館一等書記官、98年1月中近東第一課長、同年8月日米安全保障条約課長、2000年9月在中国大使館公使、04年1月在イラク大使館公使、イラクCPA(連合国暫定当局)に出向、04年7月中東アフリカ局参事官などを歴任

<大使寸評>
巨大国家が経験する今未来は旧ソ連のような民主化か、それとも分裂なのかという内容が刺激的である。
それにしても、著者の経歴がすごい。

rakuten 語られざる中国の結末


まず、この本で漢族の自己認識、歴史認識を見てみましょう。
p81~85
<中国人にとって、「中華」民族とは何か>
 そもそも、中国人にとって、「中華」民族とは何なのか。
 辞書で調べると「中華」とは、地理的には「漢族の興った黄河流域一帯を指す」とある。文化的にみると、「中華」とは元来、周辺の蛮族との対比で、漢族が文化の優越性を誇示して自らを呼んだ称号だったようだ。現在の中華人民共和国政府の公式見解は次のとおりである。

▼中国は五千年の長い歴史をもっている。中華民族は中国という土地で生活し、繁栄し、各民族が互いに融合して、強大な凝集力をもち、統一を尊び、擁護するという価値観をかたちづくった。長い歴史の過程において、中国は王朝交代、政権更迭を繰り返し、地方割拠が現れ、外敵に侵入されたことがあり、とりわけ近代史上、外国列強の侵略と国土分割の苦しみをなめ尽くしたが、統一は終始、中国の歴史発展の主流であり、分裂するたびにその後、また統一し、しかも国の政治、経済、文化、科学技術の急速な発展をもたらした。…

▼…中華人民共和国の成立後、中国人民は得るのが容易ではなかった民族の独立をことのほか大切にし、断固として国の主権と領土保全を守り、祖国の完全な統一を実現するために奮闘努力している。中国の五千年にわたる歴史と文化は、中国人の心に、中国は必ず統一しなければならないという強い民族意識を深く根づかせた。…


 興味深いことに、ここで使われる「中国」「中華」「民族」なる用語は、漢族のみを意味する場合と非漢族を含む場合とが巧妙に使い分けられている。漢族以外の五五民族にとって、中国の歴史はほんとうに彼ら自身の歴史でもあるのだろうか。こればかりは各民族に聞いてみるしかないだろう。

 また、「統一は歴史発展の主流」というが、「中国という土地」は過去三千年のうち、約千年間は分裂していた。そのうち漢族によると現在の領土の支配はせいぜい数百年でしかない。これを「歴史発展の主流」などと捉えるのは客観性・知的中立性を欠いている。 さらに、「民族の独立をことのほか大切にする」というが、国内の少数民族が独立を求めた場合、中央政府は彼らの民族自決権を認めるのだろうか。「五千年にわたる歴史と文化」があるから非漢族地域の併合は正当化されるのか。そこらへんがどうしてもよくわからない。

<今後も少数民族の不幸は続く>
 いまでこそ中国の国名にも堂々と使われているが、そもそも「中華」なる語は清代末期まで一般的には使われていなかった言葉だ。それでは、「中華」とは漢族のみの民族主義的称号なのかというと、歴史的には必ずしもそうではない。

 政治的に「中華」とは、もともと漢族の民族主義を象徴する言葉だった。孫文を中心とする「革命派」の考え方は、「清朝を廃して漢族の復興を図る」というものであり、当時は「異民族」からの「漢族の解放」に重点が置かれていた。

 ところが、辛亥革命によって、実際に清朝が倒れたあと、ウイグル族やチベット族は反旗を翻しはじめた。しかも、その背後ではロシアやイギリスといった列強が糸をひいていた。漢族による革命が成功しても、新国家自体は弱体化して、かえって列強の干渉が激しくなった。

 この時点で、中国では初めて近代的な「国家」の概念が生まれ、「異民族からの解放」という革命初期の理念が大きく変質していく。南京の民国臨時政府は、少数民族の反漢族感情にも配慮し、「漢族国家」ではなく、「五族共和」を新政府のスローガンとして唱えはじめた。

 つまり、新政府の重点は「漢族の復興」から、新しくできた中国という「国家」を他国から守ることに移っていった。その結果、民族の問題は、その後、あまり議論されなくなる。これこそが今日の「中華」概念の混乱の原因である。中華人民共和国政府は、中華民族とは中国五六民族の総称であり、中華文化とは「全中国人民を結ぶ精神的紐帯」だというが、ここでいう「五六民族」は、「五族共和」を継承したものではないのか。
(中略)

 いずれにせよ、「中国」と「中華」の関係を整理しなければ、欧米からの文化的挑戦に勝つことはできない。現在のように、これらの概念整理が不明瞭であるかぎり、中国に真の国民国家は生まれない。今後も、帝国内での漢族中国人の優越と少数民族の不幸は続くだろう。


p85~88
<文化大革命と倫理観の関係>
 中国であらゆる種類の不正・腐敗が報道されるごとに、筆者は文化大革命を思い出す。文革が中国社会、とくに人びとの倫理観に与えた影響は計り知れないと思うからだ。他方、文革が中国一般庶民の「心」をいかに傷つけたかについての包括的研究はあまりみかけない。
(中略)

■天安門事件以後
 ところが、1989年6月の天安門事件により、こうした「自由と民主」への期待が脆くも崩れ去る。人民解放軍による弾圧は、トウ小平に未来を託した中国人の「自由化」への淡い期待をも粉砕していった。その後、現在に至るまで、中国人の「心」の真空状態は続いているのではないか。
 一方、「生活向上」への期待は一部実現され、たしかに一般庶民の生活水準は徐々に向上していった。さらに、一部の成功者は平均的庶民をはるかに超える速度で豊かになったが、その結果、貧富の格差は逆に拡大した。いまやその格差は一般庶民では挽回不能なレベルにまで拡大しつつある。
(中略)

 現代中国の「金儲け主義」だけでは、文革で傷ついた人びとの「心」は癒されない。この当たり前の現実を、今日の中国の指導者は正確に理解しているはずだ。だからこそ、彼らは「法輪功」の危険性を的確に察知し、徹底的に弾圧しているのだろう。

 だが、己の心が癒されないかぎり、他人を思いやる心は生まれない。文革時代には「殺るか、殺られるか」がすべてだったが、いまも「儲けるか、騙されるか」という二者択一は変わらない。こうした自己中心的メンタリティが幅を利かすかぎり、中国に健全な社会は生まれないだろう。

 いまの中国に最も必用なことは、「魂の救済」と新たな「社会契約」である。新たな「社会契約」では、各個人に平等の機会を与えて「正直者が馬鹿をみない」社会を実現し、人びとに信仰の自由を認めて、傷ついた「心」を救済しなければならない。






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Last updated  2016.03.16 22:41:30
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