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2016.12.17
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『非常識な建築業界』という新書を手にしたのです。
おお もしかして豊洲市場疑惑やオリンピック施設予算の根っこも見えるかもしれないぞ・・・
とやや的外れの期待もあり、借りたわけでおます。



建築

森山高至著、光文社、2016年刊

<「BOOK」データベース>より
 2015年に騒動となった新国立競技場問題に続き、再コンペで選ばれた案にコンペ疑惑が浮上、横浜の傾斜マンション事件が発生するなど、建築業界の威信を揺るがす問題が立て続けに起きている。しかし、これらは氷山の一角にすぎない。建築の現場で起きていることを見れば、今後も似たような問題が起きる可能性は十分にある。
 いったい、この業界の裏では何が起こっているのだろうか?「どや顔」をした使いづらい公共施設で税金をムダにしないために、危険なマンションを買わないために、寿命の短い持ち家を建てないためにー。知っておきたいこの業界の「非常識」な実態。

<読む前の大使寸評>
おお もしかして豊洲市場疑惑やオリンピック施設予算の根っこも見えるかもしれないぞ・・・
とやや的外れの期待もあり、借りたわけでおます。

rakuten 非常識な建築業界


 日本全国に設計コンペの失敗が多発しているそうです。そのあたりが「はじめに」で述べられています。
p3~6
「はじめに」
 2013年9月、2020年の夏季オリンピックの開催地の開催地が東京に決まったというニュースが私たちのもとにもたらされました。同時に、そのメイン会場として、イラク出身の建築家ザハ・ハディド氏が設計した新国立競技場のイマージ画像が何度も紹介されました。

 私は嫌な予感を覚えました。
 あかのぼること1年前、国立競技場の改築に向けた国際デザイン・コンクールが開催され、ザハ・ハディド氏の案が最優秀賞に選ばれたことは知っていました。しかし当時は、東日本大震災からの復興がようやく緒に就いたばかりで、あの壮大で滑稽な案がそのまま設計されることはないだろうと「楽観視」していました。しかし、その壮大な計画は静かに着実に進行していたのです。

 「このままマズイことにならなければよいが…」

 嫌な予感を覚えてたのは、新国立競技場の設計コンペをめぐる一連の流れが、私がこれまで目にした日本全国の公共施設に関する設計コンペの失敗例とあまりに酷似していたからです。

 過大な要求を積み上げ、拙速に企画されたとしか思えない設計コンペの募集要項、そこに群がる斬新で奇抜な建物を作りたがる建築家たち、彼らの案を狭い視野でしか選り分けることのできない意識の低い審査委員たち。結果、せっかくの一大プロジェクトが最終的には誰も喜ばない、一過性のお祭り騒ぎに終わってしまう例を、私は数多く見てきました。あとに残るのは桁外れの維持管理費と、地元自治体を悩ます財政問題です。

 そして予想していた通り、新国立競技場は同じ道を歩んでいきました。幸い、ザハ氏の案はぎりぎりの段階で白紙撤回されましたが、その後も決して予断を許さない状況が続いています。本書執筆の時点でも、まだ火種はくすぶったままです。新国立競技場に関するこれらの一連の問題を、本書では「新国立競技場問題」と呼ぶことにしましょう。世間一般には、3000億円にものぼろうかという過大な建設費に非難が集中しましたが、新国立競技場問題の本質は、実はもっと根深いところにあります。そこには建築業界特有の、一般の感覚ではにわかに理解しがたい「非常識」な論理がいくつもまかり通っているのです。
(中略)

 私は常々、建築家には三つのタイプがあると考えています。
 一つは、建築物を設計する知識・技術を持つ「 建築士 」。一般的な住宅、公共施設、商業ビルなどの建物を設計する人です。独立開業している人、建設会社やアトリエに所属している人など就労形態はさまざまですが、いずれも高い倍率を勝ち抜いて一級建築士や二級建築士という国家試験を突破した人たちです。

 二つめは「 建築家 」。欧米諸国と日本では建築家の定義が異なります。欧米諸国の建築家は日本の建築家より業務の幅が広く、建築だけでなく広く社会問題や文化の発展といった事業に包括的に取り組む人を差します。建築家として身を立てるまでは狭き門で、社会的地位も非常に高い職種といえます。

 日本は明治維新以降、そのような欧米型の建築家像を目指してきました。しかし、未だに建築家の定義ははっきりしません。建築設計業務を行ううえでは建築士の資格が必要ですが、彼らがみな「建築家」であるかどうかは分かりません。取り組んできた業務内容の正否に応じて「自称」したり、日本建築家協会に所属することでお墨付きを得ているというのが実情です。

 そして三つめのタイプが、周囲の環境とまったく調和しない、それ単位での成立を目指す彫刻のような建物を設計する「 表現建築家 」です。一つの建物には、いくつもの価値が内包されます。住宅であればそこに住む家族の数だけ、公共施設であればそこを利用する人の数だけ、さまざまな価値基準で建物に接します。しかし表現建築家は、格好良い、新しいといった見た目の価値だけを追い求めていきます。そして彼らが設計する建物は、例外なく威圧的な「どや顔」をしています。どや顔をした建築を次々と生みだし、都市を、地方を、日本社会をあらぬ方向に導こうとするのが表現建築家です。


ウーム 建築家の分類が、なかなか個性的であるが、それはさておき・・・・
横並びの箱モノ行政が横行しているなか、金満の東京都はそのトップを牽引していたのでしょうね。

新国立競技場問題の核心を見てみましょう。
p47~48
コストの話は専門外
 審査会における一方的な勘違いは、建築に詳しい審査委員側にもあります。
 「施設に求められる機能や細かな条件は、あらかじめ募集要項に盛り込まれているのだから、審査会に上がってきている設計案はそれらをすべてクリアしているのだろう」という思い込みです。

 その最たる例がコストでしょう。募集要項には建設費の上限も示されていますから、応募者はその予算内に収まる案を提出しているだろうと勝手に了解しています。
 これは、新国立競技場問題で一般の人たちが最も疑問に感じた部分でもありました。

 「どうして審査委員はザハ・ハディド氏の案の建設費を疑問視しなかったのか?」
 残念ながら、建築に詳しい審査委員たてゃコストのことを十分に分かろうとしません。 実務経験の乏しい大学教授はもちろんのこと、設計実務を生業にしている建築家も「コスト調整の実務経験」に乏しいからです。おそらく施設計画を進めるにあたり、建設費をいちばん気にしているのは、施設管理者である自治体の担当者です。彼らが審査委員に入っている場合は、当然コストに関する意見も出されます。ただ残念ながら、コストに関する本質的な議論は深まりません。なにしろ審査に参加しているメンバーの誰も、応募案の建設費が本当のところいくらになるのかを具体的に積算できる技術的知見を持ち合わせていないからです。

 では、どうすればよいかといえば、「募集要項の建設予算は2~3割程度低めに発表しておいて、コンペのあとで本当の予算を公表する」ことです。ただしこれは理想論で、議会の承認も受けた上で進められる施設計画でこのようなウソを公に言うわけにもいきません。物価上昇を見込んで、追加予算や予備予算を計上していくという方法もありますが、新国立競技場計画のように、最終案が当初予算の2倍になってしまえば対処不能でしょう。


日本では公共施設のコスト積算ができる担当組織はコンサルのみであるが、残念ながら役所と民間企業の橋渡しのようなこの仕組みは限りなくグレーなところでしょうか。





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Last updated  2016.12.17 06:23:45
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