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2018.09.26
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カテゴリ: 歴史
図書館で『歴史・小説・人生』という本を、手にしたのです。
腰巻を見ると、「浅田次郎はじめての対談集」とのことで・・・
これは期待できそうでおます。






浅田次郎著、河出書房、2005年刊

<「BOOK」データベース>より
中国・新選組・見栄っ張り東京人。自作・男気・愛国心…。浅田次郎はじめての対談集。名匠・浅田次郎のこれまでの人生、小説、そして歴史と世の中の動きを、大きく細かく掘り下げる、魅力のエッセンス。ファン待望の一冊ついに登場。

<読む前の大使寸評>
腰巻を見ると、「浅田次郎はじめての対談集」とのことで・・・
これは期待できそうでおます。

amazon 歴史・小説・人生


高橋克彦さんとの対談を、見てみましょう。
(高橋克彦:1947年、盛岡市生まれ、著書に『火怨』『炎立つ』など)
p109~114
<世界を描くか人を描くか>
高橋: これは同業者としてすごく興味がある点なんだけれど、そもそもなぜ、20年前に吉村貫一郎に興味を持って小説を書いたんですか。

浅田: ひとつにはただの新選組おたくですね。それで、新選組の誰かを書きたいと思ったときに、吉村貫一郎という、かっこ悪い新選組隊士、惨めな新選組隊士というのにすごく興味を持ったわけです。僕自身結婚したのが早くて、親丸抱えで、食うのにも不自由した覚えがあるので(笑)。

高橋: シンパシーがあった(笑)。

浅田: ただ新選組のメンバーというのは多かれ少なかれみんな吉村貫一郎だったというのが、そもそも僕の考えなんです。だって、大そうな家の人なんていないわけだし、みんなドロップアウトしてきたか、侍になりたかった人たちの集団でしょう。出稼ぎ浪人的な人がすごく多かったと思うんです。だからこそ逆に、士道、士道と、徹底してそこにこだわったんだと思う。

 そのなかで、吉村だけは本音で生きたみたいな気がするんですよ。武士道万能の世の中で、しかも武士になりたかった人たちが集まった中で、吉村貫一郎だけはまるっきりの本音。だからみんなからしゃらくさいと思われ、斎藤一にしても、生かしておけないと思うぐらい腹が立ったんじゃないかなという想像なんですけどね。

高橋: まわりからしたら、たまらんかもしれないね。

浅田: でも、妻子を食わせるためと言い切る吉村の姿勢は、いつの世にも変わらぬまるっきりの本音だと思うんですよ。僕だって、一生懸命仕事をしているのは妻子を食わせるためでして、それ以外のことを口にするのは、やっぱりちょっと衒いが入る。そのへんは変わらないんじゃないですかねえ。僕はそういうふうに思って書いたんですけど。

高橋: なるほどなあ。ただ『壬生義士伝』読んでてね、吉村貫一郎を軸にしながら、実は浅田さんは新選組を書いてるんだなと感じたんですよ。確かに語り手は吉村は何をしたかを話しているんだけども、実はそのときに、永倉新八が何をしたかとか、斎藤一がどこでどうやってたかとか、そこに浅田さんは興味を持ってるよね。だから、あ、これは読み方を間違う人がいるかもしれないなと思いましたよね、反対に。吉村貫一郎が主人公だと思って読み進めていくと、わきに入り込んでる部分の面白さが見えなくなっちゃうかもしれんなあと。

 そこで思ったんだけど、例えば僕が同じことをやろうとすると、吉村貫一郎を主人公にしない。例えば新選組が何をしたかということを書こうとするときに、常にその中心にいた人物にスポットを当てたほうが書きやすい。さっき言った、世界を書くか人を書くかという問題でいうと、浅田さんは新選組おたくだから、要するに新選組が義であるということは暗黙の前提としてあるんですよね。でも、なぜ新選組が義なのかということを書くのが私の小説で、そのときに吉村貫一郎を主人公に据えちゃうと見えなくなってくるんです、新選組が義であるということが。

 それをやるためには、どうしたって近藤勇だったり、土方だったりする必要がある。で、吉村を選んだということは、もうすでに世界は必要ないんだろうね、浅田さんにとって。これはもう義なんだと。そのなかの人物を描いていくことによって、新選組とは何だったのかという問題をやっているんですよね。

浅田: いやあ、怖い指摘だなあ。
 高橋さんの場合、『炎立つ』から『火怨』というと、やっぱり東北の歴史へのこだわりがあるわけですか。

高橋: ありますね。東北の人たちが、文化的に相当自信を失ってるんじゃないか、そういう思いがありますから。

 阿弖流為(あてるい)の時代から、もう東北というのは全敗の歴史です、戦さでいえばね。そして負けるごとに誇りというのを奪われていってるわけですよね。今戦ったら分かんないですよ、相当東北も力を盛り返してきてるから(笑)。

 ただ、いかんせん歴史の教科書なんかでも、東北にいい話はほとんどないわけえすよ。ああいう教育を受けてきちゃうとどうしても文化的コンプレクスみたいなのが子供たちにあるわけですよ。自分たちの責任ではないのに、先祖の時代を引きずってしまって、口ごもったり、都会に行くと気後れしたりするでしょう。自分自身がそうだったという思いがあって、それで何年か無駄にした思いがあるんです。それをなんとか払拭したいと。

 じゃあ何をすればいいかっていうと、僕はもの書きなわけだから、東北の歴史を書こうと思った。負けた側にだって理屈はあるんです。そこをきちんと書いていくことで、東北の人たちが元気を取り戻せるんじゃないかな、みたいなね。

浅田: 藤原文化なんて、中央となんら遜色ないですよね。

高橋: ことによったら勝っていた部分だってあるんですから。

<東北人と東京人の違い>
浅田: そもそも蝦夷っていうのは、どういう民族なんですか。
高橋: やっぱりアイヌ、つまり東北に住んでいた原住民たちと、それから出雲のほうから追われて津軽のほうに入って行った、いわゆるアイヌではない日本の先住民ですね。その人たちが合体したかたちで、たぶんエミシというふうに呼ばれていたと思いますよね。

浅田: そうすると単一の民族を指す言葉ではなくて、大和朝廷に対する東夷ということでしょうか。

高橋: そうですね。つまり東北というのがね、要するにいろんな人たちの吹き溜まり的な土地ではあったんですよ。朝廷の支配する土地の範囲外というか、化外ということで、アイヌ人が住み、大陸から渡ってきた人も住む。さらにツボケ族とかアソベ族とか呼ばれた出雲一族が逃れてくる。当然、流刑地になっているし、貴種流離譚と言って、いわゆる何か問題があると、津軽とか、奥六郡に逃げ込むわけです。

 だから別世界というか、そういうかたちで境界線を引かれていただけで、そっち側に住んでいるのがつまり夷というか蝦夷。そういう括られ方だったと思いますよ。それが一応は鎌倉時代に統一されて、そして鎌倉幕府、特に北条が東北にずいぶん楔を打ち込んでいって、どんどん、どんどん境界線をなくしていったんですね。

 僕は今でもね、東北に暮らす人はやっぱり蝦夷だというふうに感じてますけどね。まあ広い意味で地方人はみな蝦夷だというふうにイメージはしてますよ。だから阿弖流為の問題というのはけして東北の問題ではなくて、地方と中央の対立の問題というかな。

浅田: 僕、東北人て弱いんだよなあ。東京人てみんなそうなんですけどね、東北の人と相性が悪いんですよ。仲が悪いという意味じゃないんですよ。僕は長い間商売をやっていて、自分が今まで被害を被ったのはどこの出身かって分析すると、ほぼ全員東北出身なんですよ。これはどうしてかっていうとね、相性なんですよ。

 東京人の気性っていうのは意外と脆くて、頼まれるといやと言えない。つまり押しが強くて、何度断ってもまた来られてとやられていると、しまいにはしようがない、いいよっていうことになる。その商売相手が東北出身だった場合、これはもう腰が強いから。

高橋: なかなか諦めないんだ。


更に読み進めました。
p116~118
浅田: 僕はね、東北弁に関して言いますとね、偏見どころか、強い憧れを感じてたんですよ。なぜかと考えると、僕ら東京人というのは言葉を失ったんですよね。これはほんとに原東京人じゃなきゃ分からない悲しみなんですけれども、特に、特に高度成長期に生まれ育った僕らというのは、ある意味で古きよき東京も知ってるわけなんです。僕の祖父母は、それこそ歌舞伎の台詞みたいに美しい江戸弁を使ってた記憶があるんですよ。うちの父親まではそうだった。

 でもそれが僕らの世代になってから、まず、町の面影がなくなって、町名までも全部奪われて、もう見る影もなくなった。それでね、自分が言葉を扱う仕事をする段になったときに、方言に関してある使命というか、強い強迫観念を抱いちゃったんです。ともかくそれは使わなければならない。失わせてはならんと。

 実はすごく難しかったんです。あの岩手弁というのは。僕は小説の中でいろんな方言をマニアックに書いてますけれども、どの方言も岩手弁ほど難しくはなかった。東北弁の特徴は、ほんとは言葉の持っている音楽的な美しさで、それを字で書いてしまうとちっとも伝わらない。それをいかにして伝えるか。あの小説のなかでいちばんエネルギーを使ったのは方言だったような気がしますね。

高橋: あれは指導してくれる人がいたんですか。

浅田: ええ。予め、資料で方言のおおまかな部分は頭に入れてましたから、まず自分で書いてみて、それに手を入れてもらいました。

高橋: なるほどね。

浅田: 実は今日、こちら(盛岡)のラジオ局が岩手弁で、一部朗読をしてくれたんですよ。それを聞いてちょっと涙が出ましたね。とっても音楽的なんですよね。

高橋: そういう側面はあるでしょうけど、私がなぜ東北弁を使わないかという理由のひとつには、いわゆる戦さとか政治向きの語彙が少ないんですよ、東北弁には。ということは、蝦夷がいかに戦さと無縁だったか、政治と無縁だったかということなんですが、だから思想を語るときにね、僕らも東北弁で語るということはないですよ。それはどうしたってね、新しい言葉を入れてこなきゃいけない。これはけして卑下じゃないですよ。


『歴史・小説・人生』8 :龍王=天命はどこに?
『歴史・小説・人生』7 :陳舜臣さんとの対談(続き)
『歴史・小説・人生』6 :森永卓郎さんとの対談
『歴史・小説・人生』5
『歴史・小説・人生』4 :陳舜臣さんとの対談
『歴史・小説・人生』3 :宮部みゆきさんとの対談
『歴史・小説・人生』2 :岩井志麻子さんとの対談
『歴史・小説・人生』1 :『蒼穹の昴』





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Last updated  2018.09.26 08:53:32
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