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2021.03.17
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カテゴリ: メディア
図書館で『日露戦争と新聞』という本を、手にしたのです。
開戦論に傾くメディアを今日的に見つめることも意義深いのではないかと思ったのです。




片山慶隆著、講談社、2009年刊

<「BOOK」データベース>より
日露戦争の時代、新聞界は黄金期を迎えていた。福澤諭吉創刊の『時事新報』、陸羯南主筆『日本』といった高級紙から伊東巳代治による『東京日日新聞』、徳富蘇峰『国民新聞』や『東京朝日新聞』など時の政府に近いもの、政治家の女性問題のようなゴシップから政府・大企業批判、リベラルな主張までを載せる『萬朝報』『二六新報』。知識人から下層階級、政府支持から社会主義者まで、多様な読者に向けた無数で雑多な新聞が、大国との戦争へと向かう日本と世界をいかに語り、論争をしたか。膨大な史料を掘り起こし、新聞が大企業化する以前の、粗野で豊かだった時代を活写する、メディア史研究の試み。

<読む前の大使寸評>
開戦論に傾くメディアを今日的に見つめることも意義深いのではないかと思ったのです。
rakuten 日露戦争と新聞



「第2章 開戦論への道」で日露関係あたりを、見てみましょう。
p58~61
<日露関係の緊張>
■日本政府の姿勢
 満州還付条約で第二次撤兵期限に定められた1903年4月8日に、ロシアが満州からの撤兵を実施しなかったことが明らかになった。これを契機として、対外同志会によって開戦論が唱えられるなど、日本の世論は騒然とする。しばらくは情報が錯綜し、少なくとも一部は撤兵した可能性もあるとの報道もなされたが、同月下旬に撤兵実行されずという情報が確かになると、日露関係は緊張を増していった。

 では、この事態に対する日本政府の姿勢はどのようなものだったのであろうか。4月21日に、桂首相、小村外相、伊藤、山県は、京都にある山県の別荘無リン庵で密議を行ない、対露方針を決定した。ここでは、日本が韓国を勢力圏とすることを原則としながら、ロシアと交渉し、伊藤は韓国をめぐってロシアに譲歩することも仄めかすなど、慎重に事態を見守ることに決まり、まだ開戦の意思はなかった。

 また、寺内正毅陸相と山本権兵衛海相は、日本は戦争ができる軍備段階にはなっていないと考えており、山本は山県に対して、軍事的観点からすると、日露開戦は軽率の処置であると伝えていた。一方、ロシア側も対日開戦の意図はなかった。つまり、この時期は、日露両国政府とも開戦を現実的な政策としていたわけではなかったのである。

■新聞の冷静な反応
 ロシアに対する強硬論がわき起こった一方で、冷静な論調もかなりあった。『日本』は「斯る場合に至りても猶ほ空言的抗議のみを為す」ならば「拡大せる陸海軍は抑(そもそ)も何の用かある。況や、日英同名は支那の領土保全を目的として成るをや」と述べ、「世に猶ほ露国との協商を得策なりと説く者ありと雖ども、時機は己に遠く去れり」と交渉を否定して、一時は武力行使を唱えた。だが、同紙の論調はすぐに冷静なものに戻り、「今や幸に英国米国の共に満州開放を切望」しているのでロシアも従うだろうと楽観的な見通しを述べ、強硬論を撤回している。

 『二六新報』は、この時期も対露宥和的な論調であった。同紙は、世間ではロシアが満州より撤兵しないのでとにかく心配をしている者がいるが、それは無用の心配であり、ロシアは必ず撤兵すると断言した。なぜなら、ウィッテ蔵相が撤兵論に熱心なこと、バルカン半島情勢の緊迫化、「日英両国に対して、重大なる関係を惹き起すの啓端なり」という三つの理由により、ロシアの満州撤兵は明らかだからである。ロシアには戦争をする気がないとも述べ、「近来俄かに開戦論を聞くに至りたるこそ可笑しかれ」と開戦論を一蹴した。また、『毎日新聞』も日露両国民に冷静になることを呼びかけ、平和を訴えた。

 毎日新聞は、「列強と協同して、清国保全及び其の開放を実行せよ、満州を協同経営の開放地となし、其の実力を朝鮮に保持するは、我日本の穏健なる政策なり」と主張していた。そして、戦争する意図がないロシアは、「正々の公論」である日米英の抗議によって必ず撤兵を決意するであろうと予測し、そのため、ロシアとの交渉を行うように政府に訴えていた。同紙は、もともと軍拡や戦争に反対だったために、強硬論を唱えなかった側面もあったのである。


■「非戦論」の「萬朝報」?
 この時期には、前述の『毎日新聞』と政府系の『東京日日新聞』と『国民新聞』に加え、従来ロシアに対する不信感を表明する傾向にあった『萬朝報』までもが非開戦論を主張し始める。『萬朝報』の「非戦論」は、現在、歴史教科書に掲載されるほど有名であり、一般的に日露戦争直前の良心的な言論活動とされるが、史料を仔細に見ていくと、また異なる姿が浮かび上がってくる。本当に『萬朝報』は、戦争を望まない人々を勇気づけてくれる存在だったのであろうか。

『萬朝報』は、日本において対露開戦論が出てきたことを受けて、四月下旬から戦争に反対する社説を載せ始めた。たとえば、四月二四日の「外交問題」という社説では「露国は満州を撤せず」という出来事は日英や列国が黙視することはできないかもしれないが、「然れども国民が此事ありといふを以って」すべてを投げ出して「一時の野次馬、一時の興奮、一時の昏迷に依て」行動すべきではなく、「国民よ霊性なれ、殊に外交問題に於いて冷静なれ」と呼びかけた。

 また、五月に入るとすぐに幸徳秋水が「非戦論」を唱え、『萬朝報』で本格的に非開戦論が主張されるようになる。幸徳は、戦争に絶対反対する立場から、その後も同紙の「非戦論」を代表する記者として論陣を張ることになる。

 しかし、これによって『萬朝報』の社論が「非戦論」に固まったわけではない。この後も、かねてより表されていたロシアへの不信感は示し続けられている。また、社説でも、すでに幸徳が「非戦論」を唱え続けていた5月中旬に、強硬な意見が主張されていた。





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Last updated  2021.03.17 00:14:22
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