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2021.04.07
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カテゴリ: メディア
「内田樹の研究室」の内田先生が日々つづる言葉のなかで、自分にヒットするお言葉をホームページに残しておきます。
内田

最近は池田香代子さんや、関さんや、雨宮さんなどの言葉も取り入れています。
(池田香代子さんは☆で、関さんは△で、雨宮さんは○で、池田信夫さんは▲、高野さんは■で、金子先生は★、田原さんは#、湯浅さんは〇、印鑰さんは@、櫻井さんは*、西加奈子さんは♪で区別します)


・後手に回る政治
・倉吉の汽水空港でこんな話をした。
・中国はこれからどうなるのか?
・アメリカ大統領選を総括する
・アメリカの新しい論調から「ベーシックインカムについて」
・韓流ドラマとコミュニケーション・プラットフォーム

・反知性主義者たちの肖像
・『沈黙する知性』韓国語版序文
・書評・食いつめものブルース 山田泰司
・書評・白井聡「武器としての「資本論」
・『街場の親子論』のためのまえがき
・パンデミックをめぐるインタビュー
・ホ・ヨンソン『海女たち』書評
・2020年度寺子屋ゼミ受講要項
・『山本太郎から見える日本』から
・『人口減社会の未来学』から
・「サル化する世界」についてのインタビュー

・週刊金曜日インタビュー
・桜を見る会再論
・『Give democracy a chance』2
・『Give democracy a chance』1
・沈黙する知性

・[週刊ポスト」問題について
・『低移民率を誇る「トランピアンの極楽」日本の瀕死』
・『ネット右翼とは何か』書評
・『最終講義』韓国語版あとがき
・『「そのうちなんとかなるだろう」あとがき』
・『参院選にあたって』
・『廃仏毀釈について』
・『論理は跳躍する』
・『「おじさん」的思考』韓国語版序文
・『市民講座』韓国語版のための序文
・空虚感を抱えたイエスマン
・大阪万博という幻想
・外国語学習について
・大学院の変容・貧乏シフト
・『知日』明治維新特集のアンケートへの回答
・カジノについて
・中国の若者たちよ、マルクスを読もう
・『街場の憂国論』文庫版のためのあとがき
・直言3月号「韓国の教育と日本のメディア」
・人口減社会に向けて
・時間意識と知性
・Madness of the King
・吉本隆明1967
・大学教育は生き延びられるのか?
・こちらは「サンデー毎日」没原稿
・奉祝「エイリアン・コヴェナント」封切り
・米朝戦争のあと(2件)
・気まずい共存について

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内田先生かく語りき8 目次

(目次全文は ここ )

(その32):『後手に回る政治』を追記



2021/04/03 後手に回る政治 より
 私たちは子どもの頃から「後手に回る」訓練をずっとされ続けている。「教師の出した問いに正解する」という学校教育の基本スキームそのものが実は「後手に回る」ことを制度的に子どもたちに強いているものだからである。教師の出す問いに正解すれば報酬があり、誤答すると処罰されるという形式で状況に処することに慣れ切った子どもたちは、そのようにして「構造的に後手に回る人間」への自己形成する。

 それは会社に入った後も変わらない。仕事というのは、すべて上司から「課題」や「タスク」を出された後に、それに適切な「回答」をなすという形式でなされ、上司によってその成否を査定されるものだと信じているサラリーマンたちは全員が「後手に回る」人である。

 なぜ日本社会ではこれほど念入りに「後手に回る」訓練を国民に強いるのか? 難しい話ではない。権力者に頤使されることに心理的抵抗を感じない人材を育成するためである。「問いと答え」というスキームにすっぽり収まって生きていると、「問いを出す上位者」と「答えを求められる下位者」の間で非対称的な権力関係が日々再生産されているということに気づかない。でも、そうなのである。

 記者会見で、記者からの質問に答えず、自分の方から(記者が絶対に答えを知らないようなトリヴィアルな)質問を向けて、記者を追い詰めることを得意としている政治家がいた(いまもいる)。彼らは直感的に「質問をする者が先手を取り、正解を考える立場に追いやられた者が後手に回る」ということ、そして、いったん後手に回ったものには勝ち目がないことを知っているのである。

 たしかに相手をやり込めるにはうまいやり方だが、そんな姑息な技術に熟達しても一国のリーダーにはなれない。リーダーに求められているのは記者や野党議員を相手にマウントをとってみせることではない。状況の「先手を取る」ことである。

 適切な感染症対策をてきぱきと講じて、感染拡大を未然に防ぎ、権力者に阿諛追従する官僚ではなく、諫言することをいとわない有能な官僚を重用していれば、「こんなこと」は起きていなかった。「起きなくてもいい問題」は起こさない。それが統治者において「先手を取る」ということである。そのことに気づかない限り、首相は最後まで「後手に回り」続ける他ないだろう。





2021-2-08 倉吉の汽水空港でこんな話をした。 より
 2021年1月17日に倉吉の汽水空港という不思議な名前の書店に招かれて、お話と質疑応答をした。私の講演部分だけ採録。

 ここ汽水空港がこの地域の文化的な発信拠点となっているようですが、同じようなことが今日本各地で起こっています。共通項は、壁に本棚、コーヒーが飲める木造のスペースということでしょうか。新しい時代のモデルというのはイデオロギーとか理念とかではなく、実はイメージなんじゃないかと思います。手触りとか、匂いとか、そういうものにリアリティがあれば、イメージは浸透力を持ち現実変成力がある。

 何かトレンドが起きるときは、イメージが先行するんです。大学にポストを得て初めて授業をした日、僕はツイードのジャケットにダンガリーのシャツ、黒いニットタイにボストンの眼鏡といういでたちで教壇に立ちました。授業の後に学生から「そんなに着込んで暑くないですか?」と訊かれて、四月中ごろにどうしてオレはこんな格好しているのか考えました。そして、それが『失われた聖櫃(アーク)』でインディ・ジョーンズ博士が冒険の旅の後、大学でつまらなそうな顔をした女子学生の前で考古学の授業をしているときのスタイルだったことに気がつきました。映画を観て「ああいう恰好をして授業をしたい」とつよく念じたせいで、僕は大学の教師になった。イメージに引きずられて職業を選んでしまったのです。イメージにはそういう現実変成力がある。

 汽水空港の森くんは2011年の震災のときに千葉からひたすら西へ向かって逃れてきて、鳥取で足が止まって、そこでとにかく書店を始めたいと思ったそうです。僕の年若い友人である青木真兵・海青子ご夫婦が奈良県の東吉野村に移住して運営している私設図書館「ルチャ・リブロ」も、僕の友人の平川克美くんが東京でやっている「隣町珈琲」も汽水空港とイメージが似ています。

 壁一面の本棚、木の床、珈琲の香り。凱風館の2階も同じ構造です。壁一面の本棚と木の床。そこが公共の場になっている。書物というのは私有財産ではなくて、公共財です。書物は読んでも減らないし、モノとして独占しても意味がない。だから、書物を中核とする空間というのは、本質的に開かれたものになる。

 公共性をもつ施設として、図書館の他に、神社仏閣、教会、道場などがあります。そういう施設は基本的につねに訪れる人に対して扉が開いている。中に足を踏み入れるには条件は一つしかありません。それは場に対する敬意です。その開かれた場に対する敬意を持っている人であれば、誰でも受け入れる。

 例えば、うちの道場には神棚があります。神棚は外部に通じる「回路」です。異界への扉です。公共性というのは、単にいまこの現実を共有している人たちに対して開かれているというだけではなく、いまとは違う時間、こことは違う場所と繋がる回路があるということでもあります。

 汽水空港やルチャ・リブロや隣町珈琲に共通するのは「開かれた公共的な空間」に対する渇望ではないかと思います。空間がすべて私有化され、他者の立ち入りを許さない「パーソナル・スペース」に分断された社会に暮らすことの息苦しさに対して、もっと風通しのいい空間で暮らしたいという思いが強まってきた。そのことの表れではないかと思います。

 共有地のことを英語では「コモン(common)」と言います。中世から19世紀まで英国の田舎にはどこにでもあった村落共同体の共有地のことです。人々はそこで家畜を放牧し、釣りをし、狩りをし、果実やきのこを採取することができた。フランスには「コミューン(commune)」、イタリアには「コムーネ(comune)」と呼ばれる基礎共同体がありますけれど、発生的には同じものです。共通の土地、宗教、言語、生活文化を共有する共同体です。公共を共同的に管理することのできる共同体の再構築のための作業がいま世界的な規模で始まっています。それは言い換えると、「私たち」という一人称複数形がしっかりとしたリアリティと手応えを持つような共同体を創り上げるということです。


(以降、全文は 内田先生かく語りき(その25) による)





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Last updated  2021.04.07 00:08:17
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