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2021.06.30
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『モノローグ』という本を、手にしたのです。
目次を覗いてみると・・・著者の守備範囲が広いことが圧倒的でおます。





平野啓一郎著、講談社、2007年刊

<「BOOK」データベース>より
三島由紀夫の新たな読みを提示した「『金閣寺』論」、「『英霊の声』論」を中心に、文学、音楽、美術、建築、そして、自らの作品について論じたファーストエッセイ集。『日蝕』の衝撃的デビューから現在まで、常に時代の最前線に立ちつづけた著者の軌跡。

<読む前の大使寸評>
目次を覗いてみると・・・著者の守備範囲が広いことが圧倒的でおます。


amazon モノローグ



横尾忠則さんが語られているので、見てみましょう。
p273~275
<記憶の波打ち際で>
 横尾忠則さんの幅広い交友関係の中でも、私はその最新の部類にはいるのではないかと思うが、元々、横尾作品が好きだったし、瀬戸内寂聴さんを通じてお互いに噂は耳にしていたので、最初の対談の時から話は大いに盛り上がった。
 その後、当時の事務所の近くでトンカツをご馳走になり、自宅にまでお邪魔して、遅くまで色々な話をしたのだが、その一々がおかしくて、私はソファの上で、比喩でも何でもなく、本当に転げ回って笑っていた。

 あの時横尾さんは、何の話をしていたのだろう?
 実は、特別な笑い話をしていたというわけでもなく、大半は横尾さん個人の思い出話だった。そこに、三島由紀夫だとか、ジョン・レノンだとかの名前が、道端を猫が横切るような何気なさで顔を覗かせるので、私は素朴に羨ましかったが、横尾さんにしてみれば、別にどういうこともない話だったのだろう。

 考えてみれば、世界中を探しても、三島とジョンとのどちらとも交友があったというのは(右から左まで!)横尾さんくらいなものである。そうした人たちの逸話がちりばめられつつも、そこに居合わせ、それを体験した横尾さんの話が、ともかく抜群に面白かった。
 私は、仕入れたネタの幾つかを、早速誰かに話したくなって、実際に人に聴かせたりもしたのだが、どうもうまくはいかない。内容は正確に伝えているはずだし、聴いている方も興味深そうだが、反応は、へぇ、と感心する程度である。直に横尾さんから耳にした時のあのえも言われぬ話の魅力は、私を経由する間にすっかり削がれてしまったようだった。そう考えながら、私は、これはひょっとすると、横尾芸術にも言えることではあるまいかと思い至った。



 横尾作品には、美術ファンにはお馴染の形象がチラホラ登場する。フラ・アンジェリコから、ルーベンス、アンリ・ルソー、ダリ、更には『ダーク・サイド・オブ・ザ・ムーン』のヒプノシスに至るまで、とにかく、色々である。一般的に、これは「引用」と解釈されるのか、あるいは「パロディ」と目されるのかもしれないが、観ていて私は、どうもそんな印象は受けない。小説でも、そうした手法の作品は多くあるし、それはそれで魅力的なのだが、私が横尾作品に見いだす対象との関係は、良い意味でもっと率直なものである。

 横尾さんは、決して単に情念的な画家ではなく、こう言って良ければ知的な画家である。美術史に通暁しているし、そのトレンドに対する感覚も鋭敏である。しかし、横尾作品に、美術史に対する批評的なアプローチというのは窺われない。そう見えるものもあるかもしれないが、それが創作の動機ではあるまい。

 例えば、ダリの幾つかのモティーフを取り上げるとする。しかし、ダリが当時、その絵を発表したことのパフォーマティブな意味にはまったく関心が示されない。デペイズマンであろうか? しかし、そうしたあざとさもない。ポストモダン流の脱構築ともまた違っている。

 随分と長い間、画家たちは海や山といった自然の風物を見て感動し、それを絵に描くということを繰り返してきた。それは単に描きたかったからである。横尾さんの先行画家たちのモティーフの取り上げ方には、そうした直接さがある。樹を見てその色と形とに感動し、それを自作のモティーフとして取り上げるのと同様に、例えば、ダリの絵のひび割れた卵を取り上げる。

 両者の間には、何の質的な差異もない。まったく同等の主観的な視覚経験として記憶の中に投げ込まれていて、人が前提とする、一方は自然界に存在するもので、他方は芸術家が生み出したものだというような区別の境界が無効になっている。

 その混沌は、丁度フロイトが、夢に於いては否定性が不在であると指摘したのと同じように、あらゆる禁止から解放された完全に自由な等質空間である。横尾さんが、夢に強く興味を惹かれ、それを言語化する作業は、その絵画的な源泉への遡行とそれを具現化する作業過程と軌を一にしている。







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Last updated  2021.06.30 00:01:40
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