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2021.07.11
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カテゴリ: カテゴリ未分類
図書館で『のっけから失礼します』という本を、手にしたのです。
ぱらぱらとめくると気安いテーマのエッセイが並んでいて・・・どこを読んでも頭のコリがほぐれるような気がするのです。






三浦しをん著、集英社、2019年刊

<「BOOK」データベース>より
『BAILA』好評連載に5本の書き下ろしを加えた、自称「構想5年!」の超大作。ありふれているのに奇想天外な日常が綴られる三浦しをんワールド炸裂の抱腹絶倒エッセイ集。

<読む前の大使寸評>
ぱらぱらとめくると気安いテーマのエッセイが並んでいて・・・どこを読んでも頭のコリがほぐれるような気がするのです。

rakuten のっけから失礼します

初代ゴジラ


ゴジラやアマゾンの先住民・イゾラドが語られているので、見てみましょう。
いずれも「未知との遭遇」という括りで紹介されています。
p135~139
<未知との遭遇>
 夏のあいだ、仕事ばっかりしてましたよ!
 噂に聞く海の家って、楽しそうだなあ。季節の行楽をあまりしたことがないので、夢想と期待だけがどんどんふくらんでいく。ふつうに洋服を着てる状態でも、海の家に行っていいのだろうか。ほら、わたくしがうっかり水着など着用してしまった日にゃあ、「うわあ、海からトドならぬトド型怪獣が出没した!」と、浜辺が大パニックになるかもしれんからな。

 あ、怪獣といえば、話題の映画『シン・ゴジラ』(庵野秀明総監督)を見た。仕事ばっかりしとらんじゃないか。がつり遊んどるじゃないか。

 私が見たことあるゴジラシリーズは、初代『ゴジラ』(本田猪四郎監督)とハリウッド版『GODZILLA』(ローランド・エメリッヒ監督)ぐらいなのだが、前者は傑作、後者はすでに記憶から抹消済みである。今度の『シン・ゴジラ』はどうかなーと、特撮ファンどやされそうな軽い気持ちで見にいったら、おもしろかった! ゴジラがまじでこわくてよかった。

 荒ぶるゴジラのせいで、東京は踏みつぶされ焼かれて大変なことになる。当然、人間がわも反撃するのだけれど、戦車の砲弾とかミサイルとかがバンバン命中し、「ちょっと痛い…」ってなってるゴジラを見ていると、「みんなでよってたかってゴジラをいじめないで!」という気持ちにもなってくるのが不思議だ。私が住んでいるあたりもゴジラの通り道になり、壊滅状態になったっぽいというのに、なぜゴジラに思い入れてしまうのか…。

 かといって、人間がわのドラマに感情移入できないかというと、そんなことはない。「ああ、なんとかしてゴジラを止めて」とハラハラもしている。双方を応援してしまう感じは、初代『ゴジラ』を見たときの感覚と通じるなと思った。人間とゴジラは立場が異なり、決して通じあえない仲なのだが、どちらが善でどちらが悪といったように、単純に二分化できるものではない。

 ゴジラは「荒神」や自然災害の象徴だ、という解釈は以前からあるが、たしかにそうかもしれない。台風や津波そのものに善悪の基準を適用することはできない。それはゴジラと同様、ただただ圧倒的な荒ぶり、エネルギーなんであって、その荒ぶりがもたらした事象からなんらかの感情を抱いたり言動を選択したりするのは、すべてひとの心がなすことだ。

 つまり、ゴジラが出没したとしても、もし地球上に人間がいなかったら、「こりゃあ攻撃しないと大変なことになる」と判断する存在もいないわけで、ゴジラは気がすむまで暴れたのち、海へ帰っていったかもしれないのである。善悪や敵味方という概念を生みだすのは、ひとの心以外にない、ということだ。

 似たようなことを、『NHKスペシャル 大アマゾン最後の秘境(第4集)最後のイゾラド』というテレビ番組を見ていて感じた(やっぱり仕事してないじゃないか、私)。これがすごいドキュメンタリーで、アマゾンの森のなかで生きる未知の先住民との接触の記録なのである。

「イゾラド」と呼ばれるかれらは、文明社会とまったく交流がなく、裸で暮らしているらしい。ほかの先住民の言葉が一部通じるみたいなのだが、詳しいことはまったく不明。何人いるのかも、なんという部族なのかもわからない。
(中略)

 怪獣になぞらえるのは失礼だが、イゾラドが発散するわけのわからないエネルギー、「荒ぶり感」は、ゴジラと通じるものがある気がした。出没にはなんらかの事情があるのだろうとうかがわれるのだが、それもこちらが勝手にそう思おうとしているだけなのかも、という気もして、困惑が深まるあたりも。

 そしてなにより、こわい。「わからない」存在がこわい。善悪で割り切れず、敵なのか味方なのか判断がつけられない状態がこわい。まさに、イゾラドはゴジラ的なのである。たぶんイゾラドも、「文明人」のことを同じように感じているだろう。

 そうか、人間ってのは、世界を善悪や敵味方で識別しないと落ち着かない生き物なんだなと、『シン・ゴジラ』と『大アマゾン』を見て思ったのだった。けれど世界は当然ながら、そんな単純な二元論で成り立っていない。だからこそ、ゴジラとイゾラドは何度でも出没し、そのたびに我々は恐怖におののきながらも、かれらに心惹かれずにはいられないのだろう。
(中略)

 森からいきなり現れた先住民の男性二人。「アウレ」と「アウラ」と名づけられた彼らは、ほかのだれにも通じない言葉を使っていた。つまり、この地球上で、アウレがなにかを語りあえる相手はアウラだけ、アウラがなにかを語りあえる相手はアウレだけ、という状況なのだ。

 ところが、アウレが亡くなってしまう。アウラの話す言葉を理解できるひとは、とうとう一人も存在しなくなったということだ。ちょっともう、想像を絶する孤独である。言語学者が一生懸命、アウラの用いる言語を解明しようとするのだが、あまりうまくいかない。

 一緒に番組を見ていた弟は、
 「アウラにポルトガル語を教えてあげたほうが話が早いんじゃないか!? とにかく、だれかアウラと会話してやってくれ!」
 とめずらしくテレビに向かって叫んでいたが、その気持ちもわかる。私も「アウラよ~」と滂沱の涙であった。

 これまでも、こうして消えていった言語はたくさんあったのだろう。だれにも通じない言語を抱えて生きる、最後のひとり。そのひとがどんな思いでいるのか、言語で通じあえないがゆえに、周囲のひとたちは十全には理解できないわけだが、しかしテレビという映像表現のおかげで、アウラの言動や振る舞いから伝わってくるものはある。

 それがせめてもの救いであり希望であるのかもしれないとは思うけれど、アウラはアウレとしゃべる夢を見るのかなあと想像すると、なんかもう切なくてたまらなくなったのだった。

ウーム だれにも通じない言語を抱えて生きる最後のひとりってか・・・たしかに想像を絶する孤独感である。

『のっけから失礼します』2 :本屋さんに関するエッセイ
『のっけから失礼します』1 :もやしとぬた





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Last updated  2021.07.11 01:34:35
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