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2021.07.18
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『小川洋子対話集』という本を、手にしたのです。
小川洋子対話集ってか…目次を見ると対話者が異色で、期待できそうである♪
(帰って調べてみると、この本を4年まえに借りていたことが分かったのです。で、この記事をその7としています)



小川

小川洋子著、幻冬舎、2007年刊

<「BOOK」データベース>より
日ごろ孤独に仕事をしている著者が、詩人、翻訳家、ミュージシャン、スポーツ選手と語り合った。キョロキョロして落ち着きがなかった子供時代のこと、想像力をかきたてられる言葉や文体について、愛する阪神タイガースへの熱い想い、名作『博士の愛した数式』秘話など心に残るエピソードが満載。世界の深みと、新たな発見に心震える珠玉の対話集。

<読む前の大使寸評>
小川洋子対話集ってか…目次を見ると対話者が異色で、期待できそうである♪

amazon 小川洋子対話集


台湾文学に関する鼎談を、見てみましょう。
なお、藤井さんは李さんの作品を和訳した翻訳家です。
p82~86
<言葉の海>
小川: 李昴さん、遠いところを日本までおいでくださいまして、まことにありがとうございます。きょうは、文学を愛する者同士としてお話しできればと思います。

 李昴さんの小説を読んで避けて通れないのは、李昴さんが生まれ育ち、そして小説の舞台にもたびたび登場している鹿港という町です。かつては台湾米を大陸に輸出するための港として栄えながら、急流の河が流し込む土砂に埋まり、20世紀初めには廃港になってしまったという、町そのものがすでにひとつの物語であるかのようなところです。路地、暗がり、古いお屋敷、そこに住む古めかしい人々、そういうものがすべて、李昴さんの作家としての血となり肉になっていったような気がします。鹿港という町に李昴さんが生れたことが、台湾の文学にとって大いなる幸運であったといえるでしょう。

 李昴さんの作品はおそらく、フェミニズム文学というような便利な表現で語られることが多いと思います。けれども、男性と女性、あるいは支配する者と支配される者というような二者間の対立を単純に描くものではありません。たとえば『夫殺し』という長篇は、飢えにかられて行きずりの兵士に握り飯二個で身をまかせ、その後行方不明になったとされる母をもつ林市という女性が、屠夫である夫・陳江水に嗜虐的な凌辱をたびたび加えられたあげく、朦朧とした意識のなかで夫を殺してしまうという物語です。

 一見、男女の相克を描いているように見えますが、林市が夫を刀で刺したとき大量に噴き出す血液と、夫に擱かされた林市がベッドで流す血液、屠られた豚から流れる血、この三つの血液の描写には、すさまじいエネルギーがあふれていて、彼らが単にさげすんだりさげすまれたりしているだけの存在ではない。いやむしろ、生命の源を象徴するような崇高さを持っていると感じられます。
(中略) 

李: 『夫殺し』という小説は、台湾で出版されたときには、内容が血なまぐさく、しかも性に関する描写が過剰であるというので、たくさんの批判を受けました。一方、日本では藤井省三先生の翻訳のおかげで、多くの方に愛読していただいて、とても感激した覚えがあります。

 現在台湾で出版されている小川洋子さんの本は4冊あります。『純白的渇望』(『完璧な病室』)、『不冷的紅茶』(『冷めない紅茶』)、『不安的幸福』(『妊娠カレンダー』)の3冊は読んだのですが、あと1冊は十数年前に出たものなので、見つけられませんでした。

 小川さんの小説で好きなのは、夫婦とか兄弟とか、どのような関係であっても、登場人物のあいだにきわめて安定した距離感があるところです。これは、私の小説の血なまぐささとはきわめて対照的な特徴だと思います。

 作品を読む限りでは、小川さんはかなり孤独な人ではないかという印象を受けました。というのは、小川さんの小説では、愛や希望というものが、あまり表面には出ないようなかたちで、実にクールに隠されていますから。

 たとえば、『完璧な病室』という作品は、若くして不治の病にかかった弟と、彼を介護する姉をめぐる物語です。通常、私たちにとって、病室というのはあまり快適な空間とはいえません。ところが小川さんの小説では、現実の雑多で混乱した世界から隔離されたかのような、すっきりした美しい世界として描かれています。
(中略)

藤井(司会): 自己紹介かたがた、お互いの作品に対する感想を語っていただきました。実は、今回、日本と台湾を代表するふたりの作家に対談をしていただくにあたって、同じテーマで短篇を競作したうえで、それをめぐって対話していただくという企画をたてています。これは台湾、中国といった中国語圏と日本との間では初めての試みとなります。

 小川さんは岡山県出身で、現在は神戸のすぐ隣の芦屋にお住まいです。李昴さんは古い港町である鹿港の出身で、おふたりとも海辺に生まれ育ったということから、「海」をテーマに選ばせていただきました。

 李昴さんの作品は『海峡を渡る幽霊』、小川さんはずばり『海』というタイトルで、それぞれ翻訳であらかじめお読みになっています。まず小川さんから李昴さんの『海峡を渡る幽霊』についてお話しいただきたいのですけれども。

小川: 私の洋子という名前は、親はおそらく太平洋のように広い心を持った子どもにという願いをこめてつけたのだと思いますが、その意に反して、小さな川という姓の人と結婚してしまいました。なかなか思惑どおりにいかないものですね(笑)。

 さて、「海」という共通のテーマをいただいたのですが、その海のとらえ方がふたりの間でこんなにも違っていたことがとても嬉しくて、大変興味深く読むことができました。

 私が描いた短篇は、海がテーマでありながら、実は海が出てこない物語です。ところが、『海峡を渡る幽霊』は、海そのものが主人公であるといってもいいものです。なにより、作者自身が、書き手ではなく、あたかも語り手であるかのような錯覚を与える独特な文体が非常に魅力的でした。遠い昔におばあさんにおとぎ話を聞かせてもらった、そいう喜びを思い出させてくれます。


『小川洋子対話集』1 :翻訳家の柴田元幸さん、作家のレベッカ・ブラウンさんとの対談p69~72
『小川洋子対話集』2 :翻訳家の柴田元幸さん、作家のレベッカ・ブラウンさんとの対談の続きp133~136
『小川洋子対話集』3 :田辺聖子さんとの対談p11~14
『小川洋子対話集』4
『小川洋子対話集』5 :田辺聖子さんとの対談(続き)p16~20
『小川洋子対話集』6 :翻訳家の岸本佐知子さんとの対談(続き)p71~74

この本も 小川洋子ミニブーム に収めるものとします。





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Last updated  2021.07.18 00:40:50
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