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2023.10.28
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カテゴリ: 気になる本
見覚えのある『筒美京平 大ヒットメーカーの秘密』という本を、また借りたので、新しく読んだ箇所を追加して(その3)として復刻してみます。

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近田春夫著、文藝春秋、2021年刊

<「BOOK」データベース>より
筒美京平のシングル総売上げは7560万枚で、2位の小室哲哉をはるかに凌ぐ。作った曲は3000曲近く、名実ともに日本一のヒットメーカーだ。筆者はこの作曲家を一貫して評価してきた。実弟・作詞家・歌い手と共に、その創作の秘密に迫り、知られざる素顔を探り出す。

<読む前の大使寸評>
日本歌謡でもっとも売れたヒットメーカーは筒美さんではなかろうかということで、チョイスしたのです。

rakuten 筒美京平 大ヒットメーカーの秘密


第2章「王者への工程(1971~1975)」で郷ひろみやユーミンが語られているので、見てみましょう。
p25~30
<郷ひろみ「男の子女の子」の衝撃>
聞き手: アイドル歌手の王者としての筒美京平像を決定づけたのは、昭和46年にデビューした南沙織と、その翌年にデビューした郷ひろみ、この二人でしょうね。

近田: 南沙織のデビュー曲「17才」は、リン・アンダーソンの「ローズ・ガーデン」(1970年)が元ネタだよね。従来の歌謡曲とは違った、乾いた感覚が新鮮だった。末期のGSが歌謡曲化するなど、音楽界がどんどんドメスティックな方に向かっていった一方、一般世間では、「anan」が創刊されたりして、ちょっと洒落た外国風のものを求める風潮が高まっていた。その時代のアイコンとして、南沙織が機能したということは言えると思う。

聞き手: ちなみに、南沙織も郷ひろみも、所属レコード会社は昭和43年に設立された新興のCBS・ソニー。アメリカのCBSと日本のソニーが折半出資を行って生まれた会社です。

近田: やっぱり、コロムビアやテイチク、キングといった老舗と比べると、圧倒的に新しいイメージがあった。ほどよく和風なんだけどどこか外国の匂いがする筒美作品の音楽構造と、CBS・ソニーの社風との間には、親和性があったんだろうね。

聞き手: 郷ひろみのデビューには、近田さんは相当な衝撃を受けたそうですね。

近田: 「男の子女の子」を歌う彼を見た時、あのルックスにあの声、という意外性にびっくりしてさ(笑)。あの曲、歌詞もシュールじゃん。僕たちと君たちの関係性がよく分からない。そこがいいんだけど、どういう風景を想像しながら歌っているのかなあって。

聞き手: 作詞は、越路吹雪のマネージャーとしても知られる岩谷時子さん。

近田: 郷ひろみの初期の楽曲に関しては、京平さんと作詞家との相性がみんな抜群によかったのよ。しかも、女性作詞家が多かった。「男の子女の子」の岩谷時子、「よろしく哀愁」の安井かずみ、「わるい誘惑」の有馬三恵子、「逢えるかもしれない」の山口洋子、「洪水の前」の岡田富子・・・。
 京平さんのメロディーには柔らかさがあるから、構造的ではなく感覚的、男性性ではなく女性性の勝った歌詞が似合うんだよ。
(中略)

聞き手: 柳腰という言葉が頭に浮かびます。

近田: そうね。一歩引いた感じの女性性、今のJポップからは失われてしまった類の女性性とも言い替えることができる。それが、京平さんの時代と現代を隔てている大きな特徴のひとつなのかもしれない。歌謡曲なりJポップなりにおける女性像を塗り替えたのは、恐らくユーミン(松任谷由美)だよね。「守ってあげたい」という曲名に象徴されるように、勝気で能動的なヒロインが活躍する時代が到来した。

聞き手: 「ルージュの伝言」の歌詞にもそれを感じます(笑)。 

近田: そういう意味で、郷ひろみの作品で特筆すべきは、昭和50年にリリースされた『HIROMIC WORLD』というアルバム。全編、作詞は荒井由実、作編曲は筒美京平なんだ。

聞き手: ユーミンが松任谷正隆と結婚する1年前、まだ荒井姓の頃に発表されています。タイミングとしては、彼女の「あの日にかえりたい」がオリコン1位を獲得した直後。

近田: 京平さんが1枚丸ごと作編曲を手がけたアルバムの中でも、これを超えるクオリティの作品は存在しないと思う。職業作詞家ではなく、自ら詞も曲も書いて歌うことができるシンガーソングライターとコラボレートしたという点でも他に類を見ない。そのコンセプトによって、京平さんは違う角度から音楽を楽しむことができたんじゃないかな。

<さまざまな意味での「含羞」>
聞き手: 女性作詞家たちとは反対に、構築的で男性性の強い作風の作詞家というと?

近田: 阿久悠さんだね。論理的に、「これこれこうだからこう」と詰めていく。だから、「また逢う日まで」にしても、京平さんの曲というよりは阿久さんの曲という印象が色濃く残ることになるんだよ。

聞き手: 確かに、あの尾崎紀世彦の堂々たる歌いっぷりとも相まって、バンカラなロマンティシズムが前面に押し出されていますね。ちょっとしたマチズモを感じるというか。

近田: そういう意味で、阿久さんと一番マッチするのは、戸倉俊一さんなんだよ。

聞き手: 阿久さんと戸倉さんは、ピンク・レディー、フィンガー5、山本リンダ、それからペドロ&カプリシャスなどで大ヒットを飛ばした名コンビです。

近田: 戸倉さんの書く旋律は、どれも定規で引いたように直線的。アタックが強い。一方、京平さんの書くメロディーは、すべて丸みを帯びている。戸倉さんの楽曲には、阿久さんの言葉が上手くハマるんだよ。


『筒美京平 大ヒットメーカーの秘密』2 :平山三紀の声は「楽器だ」
『筒美京平 大ヒットメーカーの秘密』1 :「真夏の出来事」





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Last updated  2023.10.28 00:13:35
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