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2025.05.21
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カテゴリ: 気になる本
予約していた『夜深特急5』という文庫本を待つこと1カ月ほどでゲットしたのです♪

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沢木耕太郎著、新潮社 、2020年刊

<「BOOK」データベース>より
アンカラで“私”は一人のトルコ人女性を訪ね、東京から預かってきたものを渡すことができた。イスタンブールの街角では熊をけしかけられ、ギリシャの田舎町では路上ですれ違った男にパーティーに誘われて…。ふと気がつくと、あまたの出会いと別れを繰り返した旅も、いつのまにか「壮年期」にさしかかり、“私”はこの旅をいつ、どのように終えればよいのか、考えるようになっていたー。

<読む前の大使寸評>
追って記入

<図書館予約:(4/⒓予約、副本1、予約6)>

rakuten 夜深特急5 トルコ・ギリシャ・地中海


「第13章 使者として トルコ」で、バス旅が語られているあたりを見てみましょう。
p13~16 
第13章 使者として トルコ
「代金はドルでもいいか?」
 私が訊ねると、運転席から運転手が大きく頷いて言った。
「オ-ケー、オ-ケー」
「ドルではいくら?」
 私がさらに訊ねると、運転手と荷物係がなにごとかペルシャ語で言葉を交わし、12ドル、と手で示した。

 750リアルは確かに11ドルから12ドルに相当する。それは必ずしもフトウナ言い分ではなかったが、試しに、冗談じゃない、もっと安いはずだろう、と押してみると、思いがけず素直に11ドルに値下げしてきた。 

「もう少し安く」
 私が粘ると、二人は顔を見合わせ、どうしたものかという表情になった。どうやら、750リアルは掛け値なしの料金だったらしい。私を乗せたいのでストレートに値段を提示してきたようなのだ。考えてみれば、同じバスを走らせるなら、ひとりでも多くの客を乗せたいと思うのは人情だ。
 窓越しにバスの中をうかがうと、まだかなりの空席がある。私は俄然強気になりかかったが、ここで延々と交渉しているとそれだけ出発が遅れることになり、他の乗客に迷惑をかけることになる。

 適当なところで手を打った方がよさそうだと判断し、あと少しだけまけてくれないか、日本風に言えば、ちょっとはイロをつけてよ、というニュアンスのジェスチャーをすると、運転手と荷物係はまた顔を見合わせ、ふたこと、みこと相談し、十ドル半という値段をつけてきた。
 そこで私は十ドル札を取り出し、
「これでいいことにしよう!」
 と勢いよく日本語で言い、笑って荷物係と握手すると、向こうもなんとなく笑いながら手を握り返してきた。その瞬間、自分が交渉慣れというより、交渉擦れしてきたような気がして、微かな嫌悪感を覚えた。

 私は後部の空いている席に座った。乗客は大半がイラン人とトルコ人のようだったが、中央より後ろの座席に何組かの外国人がいた。バスが走り出してしばらくすると、自己紹介というほど改まったものではなかったが、外国人同士が言葉を交わすようになり、それで互いがどこの国の人間であるかがわかってきた。
 私の斜め前に座っている白人の男性はアメリカ人、その前に座っている7,8歳の少年を連れた若いカップルはフランス人、そして私の席のひとつおいた前の二席に座っている肌の浅黒い四人組はスリランカ人。
(中略)

 見当がつかないと言えば、フランス人の親子連れもわかりにくかった。男と女はヒッピー風の格好をしているが、もしそうだとすると少年は学校にも行かず旅を続けていることになる。気になったのは、少年の眼に、外界に対する途方もない無関心の色が浮かんでいたことだ。恐らくは、若い両親に付き従ってさまざまな土地を流れ歩いているうちに、好奇心というものが摩耗してしまったのだろう。

 それに比べれば、これからドイツまで行くというスリランカの男たちの目的ははっきりしていた。スリランカからインドに渡り、中近東を経てヨーロッパに出稼ぎに行くのだという。彼らもまたユーラシア大陸を股にかけた往来者のひとりだった。

 イランからトルコに向かうこのバスは妙に静かだった。客が比較的少ないということもあったのだろうが、いつも乗客のざわめきの中でバスに乗っていた私にとって、その静けさにはどこか物足りないものが感じられた。聞こえてくるのは、スリランカ人の男たちがたまにささやき合う超えぐらいである。

 アメリカ人に確かめると、このバスはイスタンブールまで行くことになっており、途中エルズルムとアンカラに寄るが、エルズルム到着は明日の夜になるだろうということだった。イスファハンからテヘランまでの7時間を合わせると、30時間以上もバスに乗り続けなければならないことになる。そう思うと、いささかうんざりしてきた。





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Last updated  2025.05.21 00:19:19
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