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柄留:正座は苦手ReviveTheGunSword灰蘇の剣銃13「亜瑠と和音と昔話」 Mの事を知りたいけどMは守山探偵事務所の依頼主だ。だから守秘義務で彼女が関わった資料は見せてくれない。 妹ちゃんはMとどう繋がってるの?分かんない分かんないよぉ……「妹ちゃんの手がかりが無さすぎるよぉ和音君……」「そうでもないぞ。亜瑠は蒐魅と知り合いだった、なら手掛かりはある」 妹ちゃんの携帯を取り出す和音君。「ネットワークの履歴を調べられる人間を紹介してください。これがオレからの依頼です」「ほほう……ネットワークの不正アクセスとは。家族の依頼とは言えサイバー警察の許可が無ければ捕まりますよ」「大丈夫な人間を知っているはずです。探偵ならば」「これはこれは……確かにそのような人物を知っていることは否定しません。しかしその場合紹介料だけでなく彼の仕事に対する報酬も用意しなくてはなりませんよ?」「それはご心配なく」「では……」 罅助はどこかに電話をかける。「引き受けるそうですよ。では紹介料の5万円頂きましょうか?それと彼は若くてスタイルの良い女性を連れてくるように言ってました。それで報酬金額を決めるそうです」「じゃあボクで大丈夫でしょ」「確かに……芸能人と比べても遜色ない容姿ですね」「場所と時間は?」「第一区の駅前のビジネスホテルに泊っています。フロントでソギカワ氏に繋いでくださいと言えば通じます時間は今から22時までの間で」「解った」「おっけー」 守山探偵事務所を出るボクと和音君。蒐魅のバイクに乗る。「どうするの?すぐに行くの?」「いや、一度瞬栄さんの家に戻ろう。このバイクは発信機付きだと思うが」「ええ~……いいの?」「オレたちはG/Tのアジトを知ってるんだ。向こうに知られても対等だ。発信機付きだからこそ七曲はあっさりと貸し出したのだろう」「なるほどね~」 和音君めちゃくちゃ凄い!えーなにーボクがバカなだけ!? 途中コンビニで食料を買ってお家に戻る。「少ししたら食事にするぞ。そのあとグレイブラスターとおまえの剣と鞘について試そう」「うん」 そうだった!怪人と戦った後そう言ってたよね。蒐魅の事で頭いっぱいですっかり忘れてた…… ソファに転がるボク。和音君は手早く食料を冷蔵庫に入れ炊飯器のスイッチを入れた。「ねぇ和音君、亜瑠ちゃんの事話してよ」「そういえばあまり話してなかったな……いいぞ」 和音君と亜瑠ちゃんは二卵性双生児だという。性格も似てなくて静かにしてるのが好きな和音君と違って亜瑠ちゃんは行動派だったらしい。「何にでも興味を持ってある程度できる奴だったな。地元で2位か3位くらいにまでなるとすぐにやめて次の興味に移っていった。習字、絵画、楽器、歌、ダンス、水泳、暗算、かるた、剣道……そして刀鍛冶だ」「何で辞めちゃうんだろう?」「『楽しくてやってるから敵はあんまり作りたくない』と言っていた。やめるときは飽きたとは言わないで限界だか体調のせいにして徐々にやらなくしていった」「刀鍛冶もいつかやめちゃうのかな?」「どうだかな。オレが認めるまでやめないと言ってたから認めなければ一生やりそうだが」「友達多かったのかなぁ」「ほどほどに仲のいい連中は多かったみたいだが親友と呼べるのは二人だけと言っていた。その内の一人が兜金蒐魅なのかもしれん」「和音君は亜瑠ちゃんとあんまりお話しなかったの?」「そうでもないつもりだったが……オレは誰かとつるんだりせずに一人で行動することが多かったからな。食事の時くらいしかあまり顔は合わさなかったかもしれん。あいつはじっとしてなくて家にあまり居なかったから余計にな」「和音君はずっと刀鍛冶を練習してたの?」「他にもしてたぞ。毎日違う道場に通ってた。柔道、空手、剣道、合気道、ボクシング」「ええ……亜瑠ちゃんのこと言えないじゃん」「成り行きだったんだ。最初はどこに通うか迷っていてな、それぞれ見学にいったら一つに決められなくて親父相談したらに全部いけばいい、嫌なのはやめればいいと言われ今年の夏まで全て通ってた」「そうなんだ、夏で辞めたのはなんで?」「受験の事もあったが……刀鍛冶に専念したくなった。道場やジムは完全にやめたわけでは無くて気が向いたら顔を出すようにするつもりだ」「亜瑠ちゃんは刀鍛冶に興味持ってからどうだったの?」「物凄い勢いで技術や知識を吸収していったな。二人で刀を打ったこともあった。思い通りにいかない事がかえってあいつを夢中にさせたみたいで楽しそうだった」「ふ~ん……」 和音君と亜瑠ちゃんはあまり一緒に行動してなかったんだねー。蒐魅の事も特に話題に出なかったんだろうな~。 白米とお味噌汁、卵焼きとコンビニで買った焼き鳥。テレビを付けてニュース番組を流して時々和音君に質問したりしながらご飯を食べる。「どうしたの和音君?」「……お前がMだったとして記憶がこのまま戻らなかった場合の事を考えてる。亜瑠が目を覚ませばすぐに解決するんだがな」「うーん……ボクの顔妹ちゃんと同じなのも意味わかんないからね」「お前の居場所の話だ。いつまでもオレは瞬栄さんの家にいるわけじゃない、連休が終われば奈良に帰るからな」「和音君についていく気満々なんだけど?ダメ??」「……駄目だな。お前の事を説明して誰が納得するんだ」「亜瑠ちゃんと同じ顔の素性のしれない女が突然転がり込んでくる状況は……ヤバすぎるね、確かに」 一瞬亜瑠ちゃんの振りすれば行けるかも?と思ったけど和音君に怒られそうだし家族には秒でバレると思うから口に出さないでおく。「和音君休みはいつまで?」「あと三日だな。それまでに色々と解決しなければな」「ひえー……」 亜瑠ちゃん急に目が覚めないかな……それが一番早いんだけどなー。「食器を片付けたらグレイブラスターと剣と鞘の検証始めるぞ」「うん」 2階のバルコニーに出る。目隠しのフェンスがあるので周囲の家からは見えない。「まずはグレイブラスターからだ。柄留、この画像をよく見ろ」 和音君の持つタブレットの画像にはコンクリート色のスマートなロボット?パワーアーマー?が写っている。「これは……キャリバーの画像だよね?」「そうだ、コイツをイメージしてさっきやったように自分を変身させる弾丸を撃ってみろ」「おっけー……」 カードリッジをセットして上に向かって撃つ。戻ってきた弾丸がボクに命中、体内に満ちていくエネルギー、体が光って装甲のようなものが現れる。「どうかな和音君?」「似ているが……体形が違うな。この画像のキャリバーは女性っぽいフォルムをしていない中性的だ。もう一度その辺をイメージしてやってみてくれ」「りょうかい!」 もう一度さっきよりも強いイメージで変身してみる。 でも結果は……「変わらないか」「ごめん……」「それならそれでいい。お前はこの画像のキャリバーになれないことが解った。次は……」 和音君は奥の部屋から全身骨格の標本を持ってきた。「こいつをキャリバーに変えてみてくれ」「おっけー!」 強いイメージを持って弾丸発射!骨格標本に命中!!めちゃくちゃガリガリのキャリバーに変身した。「成程……では解除してくれ」 解除すると骨格標本は崩れ落ちた。「ええー!?なんで??」「……」 和音君は崩れ落ちた骨格標本を拾って眺めている。「つぎはこいつを撃ってみてくれ」 大根を置く和音君。言われるままに大根に変身弾丸を撃ち込む。 大根に装甲が着いた。トゲトゲした変な形。「解除!」 解除すると大根は若干しなびてた。「爆発するかと思ったけどしなびただけだね」「ああ……これで大体解った……」「??」 バラバラになった骨格標本を組み立てる和音君とボク。頭蓋骨に今度はトマトをセットして変身弾丸を撃ち込む。今度はガリガリのキャリバーじゃない。画像のとほぼ一緒の恰好になった。それから解除すると――「あ!バラバラにならない!!」「トマトは少ししなびているな」 どういう事??「キャリバーへの変身は生命力を吸収するようだ。トマト骨格標本はサイバネ者を想定した実験だ。グレイブラスターを持つ者だけが変身できる訳ではないのも解った、弾丸を発射するのが持ち主の必要があるだけだ。」「キャリバーに変身できるのは生身だけじゃなくサイバネ者も可能って事なんだね……じゃあ……グレイブラスターの持ち主の蒐魅がキャリバーって確定できないんだよね?」「ああ、現に院瀬見の重役・鈴村功太朗がキャリバーの疑いで逮捕されてる」「ボクが完全なキャリバーに変身できないのはなんでかな?」「お前がキャリバーの姿に成る事を心のどこかで否定しているんじゃないか?自覚が無くてもMがお前ならMはキャリバーを否定しているのかもしれない」「うーん……」「グレイブラスターとキャリバーについては今はこれくらいにしていくか。剣と鞘について少し調べるか」「うん、こっちの方が謎だらけだしね」 早速剣と鞘を出現させる。相変わらず生き物みたいで何とも言えない感触。「……守山探偵事務所から電話だ」 例のハッカー男との待ち合わせ時間にはもうちょっと時間があるけど何だろう? 和音君はスピーカーモードで電話に出る。『突然すみませんね。先方がすぐにでも来て欲しいとの事です』「構いませんが」「ええ~……」『それでは宜しくお願いします』 ちぇー……もうちょっと試したいことあったのに…… 二人でバルコニーを片付けて家を出る。 蒐魅のバイクで数分走るとすぐに待ち合わせのビジネスホテルに到着した。「ソギカワさんに繋いでもらえますか」と、和音君がフロントの人に聞いた。すぐに電話を繋いでくれる。 電話はボクには聞こえない。和音君の相槌を打ってるのを聞くかぎり契約とかそういう感じかな?「行くぞ柄留。暴れるんじゃないぞ?」「??」 フロントでカードキーを受け取る和音君。 ん?なんかおかしくない?? エレベーターで10階まで行く。降りて一番奥のランドリーの横を過ぎて物置部屋に到着した。カードキーを使って開ける。「どういう事?和音君」「ソギカワの指示だ。この物置を抜けていく」 物置の奥の非常口に入る従業員用の狭い廊下に出た。またカードキーを使って扉を開けると……薄暗くて変な臭いの部屋に出た。「フヒッヒヒヒヒヒヒ……ようこそ諸田和音氏に謎のエッチギャルちゃん……」 ゴミの塊と思ったのは人だった!サイバーウェアを物凄い数全身につけている。コードとセンサーだらけ。「拙者はソギカワ。守山氏の古い友人さぁ……フヒヒヒヒヒ……」 タバコみたいなのをスパスパしてる。ホントにタバコ?怪しいなぁ……「早速仕事の話をしたいのだが?」 和音君は気にしていないっぽい。変な奴の詮索はしないって事かな?「OKOK、そうしよう。諸田和音氏は妹のネットワーク履歴を知りたいんだったねぇ……それだけでいいのかな?」「まずはそれだけで。気になっているのもあるがそれは後で考える」「報酬はそこのギャルちゃんで」「はああああああああああああああ~~~~???」 この変態サイバーオタクめ!!ボクを肉奴隷にする気だったなんて!! グレイブラスターを出現させる。「落ち着け柄留、最後まで話を聞け」 「拙者はもう不能者でして……物理的にはもう男として駄目な訳だけど電脳空間ならまだまだイケましてなぁ~なのでギャルちゃんを精密にスキャンして拙者の構築した電脳空間に配置したい訳ですわ」「キモ……それで精密にスキャン……って何するの?触ったら指折るよ?それからボクは柄留って名前あるからギャルちゃんじゃないし」「このセンサーを装着してもらって後は拙者の質問に答えてくれればOKですわ。AIに柄留ちゃんの事を学習させるのです」「ふ~ん……」「フヒヒヒヒ……拙者の電脳空間には既に美女が23人も居ましてなぁ……」「もういい、その話は聞きたくないよ」「では……開始しますぞ~」 歯医者の椅子みたいなのに座ってセンサーをいっぱい取り付ける。そこから物凄い量の質問攻め。一部きわどい変態質問もあったけどその反応含めて必要だとか。 たっぷり2時間程かかって終了。和音君は横で壁にもたれて見守っててくれた。うーん流石立ってるだけでも絵になるイケメン。「携帯のネット解析の方も終了しましたぞ。今データをコピーして渡しますわ」 「ソギカワ、アンタはこんなことしてて何れ捕まるとは思わないのか?」「こう見えて中々太いパイプと大きなバックがついてましてね。よほどのことがない限りこの街に居れば数年は安心ですわ」続く
Jun 26, 2022
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柄留:持っていたカードキーの存在は忘れてない。ReviveTheGunSword灰蘇の剣銃12「過去と写真とサイボーグ」 G/Tの倉庫に戻るボクと和音君。ホバーボードを返す。「戻ったか、荷物の中身は見てへんやろな?」 デカい声でいう兜金大河。アタッシュケースを受け取った。「ああ、見てない」「ただのお使いや、楽なもんやったろ?」「怪人二人に遭遇した。取引相手のメリーさんは無事だったが仲間は助からなかったらしい。オレと柄留がついた時には既にメリーさんだけだった」「怪人二人相手によう無事やったな。しかしあのボーリング場も安全じゃないとなると……」「あの怪人どもはなんだ?収容所から出て来たとか言ってたぞ」「収容所か……」「収容所とは何だ?留置場では無いのか?」「民間委託の留置場の事でな。留置場だけでは手に負えないような奴や団体を閉じ込めておく施設や。あの大企業院瀬見が経営している」「怪人もそこに収容されてる訳か……」「少し前に起きたオーグル事件の後から急に怪人が増えだしてな。怪人にも種類がある、殆ど人間と変わらないような奴と明らかにバケモノがな。そんな奴らを留置場に入れておけない。院瀬見は元々精神病院だった施設を改装して収容所を造ったんや」「オレもこの街の事を少し調べたが院瀬見が支配しているようなものなんだな」「ああ、第五地区の工場の殆どが院瀬見と関連業者の物。今や神名にトップを譲っているが院瀬見の方が企業としては古く関連会社の数は多い。ワシの勝手な意見やが院瀬見はグループとしての力が強く、神名は少数精鋭の天才集団ってイメージがある。民間人にとって身近なのは間違いなく院瀬見グループやな」「CMでよく見るのは院瀬見の関連企業ばかりだからな」「神名の名前はみんな知っていても何処で何をしてるのか殆どの人間は知らん。ただ凄い開発、技術を持っていてて度々世間を賑わせている存在って認識や。たまにTVだかで紹介されるあんなものやこんなものが実は神名が開発製造した物だったて世間の関心引いている。この国最大の化学工業メーカーが実は神名ってな」「怪人の事もだが、オレと柄留は兜金蒐魅の事を知りたい。あとはキャリバーについても」 そうそれ! 企業がどうとかボクは何にも興味ないし!!「ええやろ、仕事もキッチリこなしてくれたしな。キャリバーを知りたがるのはお嬢ちゃんがグレイブラスターを持ってるからか?」「ボクは蒐魅がキャリバーだって何となくわかったかも。さっきやってみたからね」「なんだと……!?グハハハハ……そうかそうか、流石蒐魅を感じる女だ」「アンタたちだって蒐魅を探してるんでしょ?だったらボクたちも協力するよ。その代わり全部教えて欲しいな~」「お嬢ちゃんはともかく、諸田を信用するのはまだ早い」「なんでよー?」「オマエを利用しているだけかも知れんし、何より危険やからな」「はぁあ~?和音君が危険??アンタの方が危険っしょ?」「それはオマエがそっち側にいるからや。G/Tの者は諸田を見て同じように思ってるやろ」「そうかなぁ……だってタケシって奴全然和音君の凄さ解ってなかったじゃん」「あいつはアホやからな。まぁでもそれがアイツの長所でもある。諸田がもしDMCのハンターならとんでもない事やぞ」「そんなことある訳ないし!!ああもう鬱陶しいなぁ!!」「落ち着け柄留。兜金大河のいう事も最もだ。いきなり兜金大河が家に来て家族の事教えろって言われたら警戒するだろ?」 立ち上がろうとしたボクを和音君が抑えた。「まぁ……そうかもね。じゃあどうするの?」「取引しかないだろうな」「ええ~……」「まぁそう落胆するな。少なくとも今回の仕事の分は話してくれそうだ」 和音君がそういうと兜金大河はニヤリとして頷いた。「解ってるじゃねえか諸田。ワシらも蒐魅の行方を知りたい、だから持ちつ持たれつの関係でいこうや。今回の仕事の分の話はしてやるからお嬢ちゃんもそれでええやろ?」「うううーん……仕方ない。それと……お嬢ちゃんはやめてよね。ボクは柄留だよ」「ああ、解った。柄留」 兜金大河はアタッシュケースを持って立ち上がった。付いて来いと言ってガレージの裏口から外に出る。外からは解らなかったけど裏口の壁の反対側に秘密の通路があったんだね。コンクリートに囲まれたトンネルから地下に降りていく。「ここはG/Tの倉庫の一つや」 カードキーで分厚い扉を開ける兜金大河。中は鉄格子で仕切られた部屋がいくつもある。「気いつけろ、鉄格子には電流が流れてるからな。黒焦げになっても知らんぞ」 一番手前の鉄格子の部屋を開ける兜金大河。ファイルが一杯並んでる。そこから一冊手に取って出てきた。そのままあるいて一番奥の鉄格子の部屋の手前にある席に着いた。「こっちに来て座れ」「随分変わった地下室だが」「元々ここはワシの祖父が趣味で飼ってた虎が3匹おったんや。蒐魅が殺すまではな」「そうか」「ええぇ……」 椅子に座るボクと和音君。大河はファイルを広げた。「これが蒐魅や」 写真に映ってるのは小柄で黒髪のショート、インナーメッシュは青灰色の女の子。顔立ちは幼いけど凄く目つきが悪い。ニコニコしてればその辺の美少女に勝てる。服はパンクっぽいシャツにショートレザージャケット。「思ってたイメージと違うな」 和音君が言った。 でもボクは――やっぱりって思ってしまった。 イメージしてた蒐魅とほぼ同じ。というか記憶の中?の蒐魅と合致した感じ。「まだこの頃はやんちゃ程度の妹ですんでたんだがな。体の改造率も40%程度やった」 次のページをめくると蒐魅の腕は完全にサイバネ化してるのがわかる戦闘用のものに。グレーのパーツに覆われ首から上だけが生身に見える。「これが一番最近の写真だ。どこで見つけてきたが知らんがサイバネ改造手術を引き受けてくれる奴と知り合い限界とされる90%までしやがった。この蒐魅は首から上と内蔵の一部だけが生身で後は機械や。こんなもん普通は無理らしい」「サイバネ恐怖症か」「ああ、どんな高性能なサイバネを装着しても元の体やない。幻肢痛は発生するし自分が自分で無くなる恐怖が迫って来る」「動物実験の記事を見たことがある。猿を完全に縦で両断しサイバネそれぞれの半身をサイバネに変え二匹にして様子を見る実験」「なにそれ!!」 聞いただけで寒気がする実験だ!「拒絶反応は起きなかったが左右両方とも1ヶ月で死亡。次に60%と40%に分けて実験。結果は生身60%の猿が生き残った。この実験を繰り返し、最終的に60%までのサイバネ改造が許容範囲だと結論付けられた」「ああ、だから蒐魅の改造は違法や。ふらっと出て行くことが多かったあいつは徐々に改造してたんやな。気が付いたら90%って訳や。挙句の果てにあいつは99%が目標だとかぬかしやがってな」「なぜそこまで?」「強くなりたいんやと。ワシとちがってあいつはホンマに普通の人間やったからな。そのくせに勝ち気で負けず嫌いで誰よりも精神が強かった。普通のサイバネ者は薬で精神の安定を図っている。それでも抑えられん奴は違法ドラッグに手を出す。蒐魅はそういった物に一切頼らずに自力やった。『アタイはアニキと違って才能も力も無いけどサイバネとの相性だけは良いみたい』ってぬかしてやがった」「80%を超えて正常を保ってられる例は……100万人に一人もいない」「ああ、だから認めざるを得なかった。蒐魅はサイボーグの才能があるってな」 蒐魅がつけていたサイバネのリスト。物凄い数だ。これってめちゃくちゃお金かかってるんじゃないの?そんなお金持ちなの兜金家って。「虎はなんで蒐魅に殺されたの?」「アイツが初めて両腕をサイバネに変えた時にやりやがった。サイバネ者にケンカ売って失った両腕をサイバネにする時、無理言って戦闘用のに変えた後にな。スパーリングのつもりだったといってやがった。あいつは獣の臭いが嫌いで虎を嫌がってた」「そうなんだ」 ――あれ? サイバネと喧嘩して両手失って改造したって話……ボクは知ってる……?「ちょっとよく見せて」 ファイルを手に取るボク。アルバム代わりでもあるみたい。いっぱい写真が入れてあるファイルのポケットから全部写真を出して見ていく。「どうした柄留」「何か思い出せそうな気がするんだよ」「――」 和音君が一枚の写真を手に取って眺めている。「これは……オレの実家の近くだ。蒐魅と一緒に映っているのは……亜瑠」「え!?妹ちゃん!?見せて見せて!!」 公園で並んでいる小学生くらいの二人の少女。満面の笑みの妹の亜瑠ちゃんの横でほんの少しだけ口角を上げて恥ずかしそうにしてるのが……蒐魅!まだ生身だ!!「ほう……お前らと蒐魅は繋がっていたんか。奇遇やな」 「亜瑠と蒐魅は知り合いだった」「うっわ~……マジかぁ~」 ―って。 そうなるとまた謎が出来たっぽくない?なんでボクにその記憶があるんだと。 益々Mって人物がわからなくなったよ……「よく見ると……この写真のガキとオマエ似てるな?」 大河は亜瑠ちゃんとボクの顔を見比べて言った。「そーなんだよ。それがボクにも分かんなくてさぁ……」 写真を見ていくとグレイブラスターを持った蒐魅の写真があった。かなり怒った顔をしている。「それはキョウヤが不意打ちで撮った写真やな。その時のキョウヤはまだ顔は生身や」「ふーん」 七曲キョウヤって蒐魅の事どう思ってたんだろう?蒐魅には嫌われるっぽくない?「それにしてもアナログ写真で残しているのは珍しいね」「親父の影響で蒐魅の趣味でもあったからな。ワシが15歳、蒐魅が10歳の時に親父は逝った、そっからアイツは写真より強さを求めだした」「この工場だけで蒐魅の改造手術代払えたの?」 ボクは率直な疑問を投げかけた。「……まぁ祖母の方が金持ちでな。あとはコネもあって改造手術はかかってない」「その辺はまだ話す気がないって訳だ。和音君の妹ちゃんと蒐魅が知り合いなのに」「もっと知りたいならワシらのいう事も聞いてくれや」「キャリバーの事も?」「話す気は無いな」 和音君は蒐魅の写真の数枚をじっと眺めている。ああ、記憶に焼き付けて後でスケッチするんだねきっと。「今日はここまでで終いや、また明日来てくれ」 ファイルを片付ける大河。元・虎の檻地下室を出るボクたち。 工場の外で待ってたのは七曲キョウヤだ。コイツ暇なのかな?「帰りはどうする?送ってやってもいいぜ?」「じゃあ蒐魅のバイク貸してよ。明日もそれに乗って来るから」「柄留チャンは免許持ってんの?パクられてこのバイクもサツに没収とか困るんだケド」「ぐぬぬ……」 和音君の顔を見る。「オレは持ってるが……いいのか?蒐魅の単車を借りても」「明日どうせくるんデショ?ならOKだ。一々足用意すんのも面倒だし」「なら借りていく。柄留お前はサイドカーに乗れ」「ええ~……和音君の後ろに乗ってしがみつきたいのにぃ」「駄々をこねるな、さっさと乗れ」「ふぁい」 七曲キョウヤからヘルメットを受け取って蒐魅のバイクに乗るボク達。和音君は慣れた手つきでキーを回してギア操作をしている。うーん、白Yシャツにダークカラージーンズでバイクに乗る和音君も絵になるなぁ。「何かあったら俺っちに連絡くれよ。じゃあな」 走り出す蒐魅のバイク。後ろからしがみつきたかったけどサイドカーから和音君をじっと眺めるのもいいね。汚い第六区の景色は見ないでずっと和音君を見ておこう。 第六区を抜け第五区の道路に入って西に進む。「和音君、どこ行くの?お家に帰るんじゃないの?」「守山探偵事務所に行く。兜金蒐魅の事を聞いておきたい」「お金かかるんじゃなかったっけ?」「ある程度は仕方が無い。G/Tの情報だけでは亜瑠とMの事は分からないかもしれないからな」「そうかも、蒐魅の事調べても妹ちゃんとMに繋がらなければ意味ないし」 蒐魅とかこの街の事情とかどうでもいい。ボクは自分が何者か知って和音君と一緒に居て妹ちゃんの謎を解ければいいのだ。 近くのパーキングに止めて守山探偵事務所に入る。めんどくさい2重ドアとスキャン毎回するのかこれ……「やはり来ましたね。ええ、予測していた通りですとも」 長髪を後ろで結んだ守山罅助が出迎えた。スーツのベストを着ていて如何にも絵にかいたような探偵の恰好。「その顔はある程度調べ周り情報は得た、しかし肝心の諸田亜瑠、Mの両名の行方は知れない。そんな所でしょう?」「そうです」と和音君が言った。 おもむろに和音君はメモ用紙とペンを手にしてスラスラと蒐魅の似顔絵を描き始めた。「その女性は?」「この人物の事を知らないのですか?」 む?これってどういう状況? 妹ちゃんがMを名乗っていたのなら蒐魅の事を守山探偵事務所で話してたって事? それとも蒐魅を知らないってとぼけるのか試してるの?「よく見せてください……ふむ、兜金蒐魅で間違いないですかな?」「はい」「それがどうかしましたか?」「Mは兜金蒐魅の情報を知りたがらなかったのですか?」 そうくるのか~和音君!「そういった記録はありませんねぇ……記録にはありませんが祖父の徳三と兜金蒐魅の話題はあったかもしれません。彼女は警察にマークされていましたし今や指名手配中です」「指名手配中なのにビラとか張ってないのは何で?」 ふと気になったし聞いてみた。「そもそも指名手配と言うのは一般に公開するものではないのですよ。全国の警察と相互協力する為のもの」「へぇ~……話変わるけどキャリバーについてはどのくらい知ってるの?」「ほう、そこに目をつけるとは中々ですねぇ。祖父の残した記録にもキャリバーの名前があります」 和音君と一緒に資料の背表紙を確認する。罅助の持っている資料を全部見たいけど守秘義務とやらで見れない……どうすればいいんだろう?続く
Jun 19, 2022
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