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諸田和音:そばとうどんならそばの方を選ぶことが多いReviveTheGunSword灰蘇の剣銃26「LOKI2」 クリムゾンはサイバーウェアの中から映画の小道具で見るような羊皮紙の巻物を取り出して広げた。 「この契約書同じものが2枚、1枚は貴方に。契約破棄の条件に当てはまるとこれは炭のように真っ黒に変化します」 契約書は見たことのない文字が並んでいる。クリムゾンが説明をすると。 1:LOKIの指示に従う事。判断に迷った場合は必ず相談する事2:LOKIは鈴村功太朗の身の安全を保障する。3:LOKIは鈴村功太朗の要望で戦力として協力する。4:LOKIに対する裏切り行為は即契約解除とする。 と書かれているらしい。表情や声色から嘘かどうかは読めない。 「……解った大事に保管しておこう」 契約書を見つめる功太朗。 「第六地区の襲撃はいつ行われるのです?」 「早朝だと聞いています」 「そうですか……」 クリムゾンが手をかざすと宙に地図が現れた。 123 456 オータムホースのそれぞれの地区にナンバーが記されている。 「第六地区は東と南が海、北は住宅街の第三地区、西に工場地帯の第五地区。院瀬見が武装勢力を突撃させるのなら第五地区からでしょうね。流石に住宅街の中を通る訳にはいかないですからね。第三区側の道路を封鎖などはするでしょう」 「ええ……第五地区と第六地区の間には人工河川が流れています。掛かっている橋は二つ。ここから武装勢力は入って来ると私も予想しています」 「ヘリコプターやドローンで上からの侵入もあるでしょう。問題なのは……」 「第五地区住人の逃げ場がない………ですね」 「いえ、もっと怖いのが北の第三区住宅街への逃走経路を開いているように見せかけて一網打尽にする場合でしょう」 クリムゾンは住宅街へ続く道路に印をつけて周囲から矢印を書いた。 「そんな……影彦派閥はそこまでやると!?」 「やるからには徹底的にやるでしょう。中途半端にやれば大騒ぎになります絶滅させれば証拠は何もなくなりますから。鈴村功太朗さん、敵の数の予想はどのくらいです?」 「……影彦派閥が動かせる戦闘員はおよそ300人。そこに雇われの者を加えれば1000人くらいにはなるかもしれません」 「こちらの戦力は?」 「第六地区で戦えるものは聞いた話では100人程度……その内戦闘経験のある者は半分にも満たないと……後はここにいる諸田君、柄留さん、守山さんです」 「中々に絶望的な状況ですね……しかし―」 クリムゾンがオレと柄留を見た。 「彼とそちらの彼女で半分は相手にできるでしょうから残り半分をどうするかですね」 「どうしてそう考えた?常識的に考えても個の戦力であり得ない計算だぞ?」 オレはクリムゾンのサイバーゴーグルに目を合わせて言った。 「昼間のトンネル付近の映像をここに来る前に見てましてね。貴方とそこの彼女が怪人らを撃退した姿から判断しました」 「アレを見ていたのか……なるほどな。話を中断してしまったな続けてくれクリムゾン」 「院瀬見派閥の殆どは実戦経験の無い者。ヴァーチャル訓練は受けているでしょうが諸田さんと柄留さんのような常識はずれな者には対処できるはずもありません。すぐに混乱して戦線は崩壊するでしょう」 「では二人には守りの要である橋の傍で待機してもらった方がいいですかね」 功太朗はオレと柄留のアイコンを二つの橋の横に配置する。 「……できるだけ第六地区の戦力で橋で迎え撃ち進行を遅らせ橋を突破してきた敵を諸田さん柄留さんに迎撃をお願いする形がいいでしょう。空からの襲撃と他ルートから街に侵入してしまった敵はLOKIにお任せを」 「わかった……それで行きましょう。この作戦は第六地区を仕切っている兜金大河にも伝えます」 「ええ、是非とも。ではみなさん後程第六地区でお会いしましょう」 クリムゾンとハートは静かに立ち上がりガレージを出て行った。 「……これで良かったのでしょうか」 うなだれる功太朗。 「ここまで来たらやるしかないだろう。もしLOKIが妙な動きをしたらオレが止めてやる」 「……お願いします」 襲撃を撃退してその後は怪人王の二人を捕らえる。それで終わるとは思えないがしばらくは騒動も収まるだろう。 「罅助は功太朗さんに付いて護衛するのだな?」 「そうです。一応功太朗さんにも戦闘用装備で来てもらいますが基本的に後ろで控えてもらい住民の誘導に参加してください」 「ああ、わかったそれならば……使いたいものがある来てくれ」 功太朗はガレージの奥に進んでオレたちを呼んだ。 「これを使う」 壁に隠した収納式ベースから人間より一回り大きい人型が現れた。 「あ!これってキャリバーの姿に似ている!!」 柄留が言った。オレはニュース記事のキャリバーの画像を思い出す。 「これは蒐魅のサポート用に作った搭乗型外骨格でAIを搭載してある。蒐魅はこれに自我が芽生えたと言っていたが私には解らないままだ。ただ、普通に乗りこなすことはできる。これに乗ればキャリバーとして戦えるだろう……」 搭乗型外骨格の話をした功太朗の表情が固まった。 「どうした?」 横にいる柄留の目がオレンジ色に光を帯びている。それに呼応して外骨格の頭部のカメラアイが僅かに光を帯びた。 「……この子の声が聞こえる。【戦いたい】ってさ」 「そんなまさか……ドライブユニットは外してある……電源は入っていない」 「あー……多分だけど蒐魅もこの子に何度も何度も乗ったんだよね?グレイブラスターの弾丸に蒐魅が何か……応急修理の装甲とか?追加武器弾倉にを込めてこのフレームに撃ち込んだのならあり得るよ。思いがAIに移ったのかもね」 「……そうか、それならあり得るのか」 「えっとまだ何か言ってる………【Gウェポン用意】だって」 「Gウェポン……蒐魅がグレイブラスターで作ってた特殊な武器の事か。兄の大河、G/Tに渡す為に用意してたな。しかしここにはGウェポンは無いが」 「ボクに作れってさ……出来るかなぁ」 「う~む……私には何も聞こえない」「自分もです」 功太朗と罅助はフレームを近くで眺めながら首をかしげている。オレには声は聞こえないが何かの念は感じる。 「……AIは私については何か言ってないかね?」 「なんかねー……【乗ってれば守ってあげるから】とか自信たっぷりに言ってるよ」 「そうかわかりました……では早速柄留さんGウェポンをお願いします私はフレームのチェックを」 功太朗は端末を操作して作業用のマニュピレーターを動かす。 「Gウェポンを作るには素材がいるって訳ね……盾と銃とブレードの三点分。Gウェポンて……蒐魅がグレイブラスターで特殊効果付与した武器なんだよね。チャージは蒐魅がしなきゃなんないけど誰でも使える便利やつ……」 「できるのか?」 「う~ん……多分いけるかなーもう半分の力が邪魔しなければ大丈夫そう」 もう半分の力とは、白魔女ミレーヌの力か。 「ともかくやるしかないな」 柄留はAIと会話しながらグレイブラスターで廃材を破壊してGウェポンの精製に挑戦する。功太朗はキャリバーフレームの調整、罅助は自分の装備をメンテナンスをしている。 「オレは……兜金大河に連絡を取ってみるか」 リビングに戻ってソファに座って大河に携帯をかける。6コール目で出た。 『諸田和音か。大体の事はキョウヤに聞いてんぜLOKIの事もな。で、何かあったか?すぐにこっちに来るんだろう?』 「あと少し準備に時間がかかる、その間に北の第三地区に繋がる道路付近の警戒をしてくれないか?」 『派閥の奴らは西の第五地区から来るはずじゃあないのか?』 「実は……」 虐殺が目的の影彦派閥は北に逃走ルートを開けておいて待ち伏せ一網打尽にしてくる可能性があると大河に伝えた。 『わざと逃げさして集まった所を皆殺しやと!?えげつなすぎんぞ……』 「あり得るんだ。奴らの第六地区に対する態度を見てたらな」 『……解った今から北の道路周辺をG/Tの何人かに警戒させる』 「オレ達もなるべく急いでそちらに向かう」 『頼むぞ』 「ああ」 大河との通話を終えリビングのソファに座って第六地区の地図を眺める。 「虐殺が目的と考えると……奴らは火を放つかもしれない。風向きからして第六地区の北西から始めるかもしれないな」 東と南の港は海上封鎖されると予想できる。そもそも第六地区にまともな船は無い。 「消火は……柄留のグレイブラスターで対応可能か?」 「なあに~?呼んだ和音君?」 灰色と黒のモザイク柄の銃を持った柄留がリビングに来た。あれがGウェポンか。 「派閥の連中が火をつけた場合お前に消しに回って欲しい。第六区の者は消火どころじゃなくなるだろうからな」 「オッケー!どんな火も消して見せるよ!!」 「奴らの侵攻はオレが止めて見せる。頼んだぞ」 *** 功太朗のキャリバーフレームと罅助の準備が整いガレージを後にする。 功太朗はキャリバーフレームに乗り武器を積んだコンテナを背負っている。罅助は医療品を詰めたボストンバッグ、柄留は食料のバックパック、オレは水のタンクを持っている。 地上に出て守山探偵事務所のワゴン車に乗り込み、そこから大河の家に向かう。 第六地区は相変わらず光が少ない。街灯は無く街の明かりも少なく消えかけたネオンと道端でドラム缶の焚火が目立つ。 「……第六地区に来るのは始めてじゃないが夜は始めてだよ。まるで終末の世界の街だ」 ワゴン車の荷台、キャリバーフレームに乗ったままの功太朗が言った。 「そうなの?蒐魅と組んでたのに?」 柄留は棒付きキャンディーを咥えながら言った。 「目立つのと夜は何があるか解らないから来るなと言われててね。昼間に車で来た時はいきなり街の人間に泥団子をフロントガラスに投げつけられてね、停車してガラスを拭こうとしたら5人くらいに囲まれた」 「それで?」 「車強盗だと気付いた時にはもう遅かったよ。大きなサイバネ男二人が私を掴んでる隙に一人が車のロックをこじ開けようとして後の二人は武器を持って見張ってた。私は防弾防刃で武器を仕込んだビジネススーツを着ていたから電気ショックで抜けだして何とか逃げようと考えてたら声がしたんだ『やめなー』ってね」 「それが蒐魅?」 「ああ、蒐魅の登場で強盗の連中は舌打ちをして去っていった。G/Tに潰された半グレチームの残党だとか言ってた。そこから蒐魅のコンテナアジトに行き今度からは第五地区で会う事になった。どうしても第六地区に行く必要があった時もそれ以降は襲われなくなった蒐魅が私の車のナンバーを街の連中に伝えたんだろうね」 「ふ~ん……じゃあ夜に来るなって言ったのはなんで?」 「ハンターの連中がうろついてるからだと言ってた。第六地区の住民を狙う人攫いで人殺しの雇われ傭兵の事だよ、それが夜には多く出る」 「知ってるー!怪人の実験をしている院瀬見の収容所とかに連れていくって訳ね」 「白魔女Mの邪魔さえなければ収容所は破壊できたはずなんだ。でも今となってはあの時潰しても別の場所で同じ事が行われていたと考える。怪人王を止めなければ同じ事の繰り返しになるだろう」 「怪人王を潰した後も大変だよきっと、功太朗はLOKIと契約したんだから院瀬見のドロドロの派閥闘争に戻らないといけないんだし。それでもやるしかない、この街を良くするには院瀬見から変えていかなきゃどうしようもないもんね」 「私が院瀬見で力をつけたらこんな終末世界のような状態の街を放ってはおかない」 「あ~なるほど蒐魅が功太朗と組んだ理由改めて解った……」 そこから二人の会話は無かった。オレ達のワゴン車に近づいてくる不審な車も居ない。G/Tがこの車の事を知らせておいたのだろう。 大河のアジトの前には武装したG/Tのメンバーと七曲キョウヤが立っていた。 「待ってたぜ~さぁ中に入ってくれ」 ゲートが開かれワゴン車を誘導するG/Tのメンバー。既に敷地内には数十台の改造車両が停車していた。 「LOKIの連中は?」 「オレ達とは来てない」 「あっそ、まぁいいや。大河は何人か連れて北の第三地区に繋がるゲートの方に出てるから皆適当にガレージでくつろいでてよ、諸田くんはちょっと俺っちと一緒に来て」 「ああ」 ガレージの中にはG/Tのメンバーが武器を持って待機していた。オレとキョウヤは半分二階になった大河の部屋に向かう。 「で、どうした?」 「ハッキリ言ってこの戦い勝ち目は無いヨ。LOKIがどれほどか知らないけど影彦を討ち取ったらさっさと六区を放棄して散って生き残った方がいいと俺っちは思う訳。その後はゲリラとして院瀬見を揺さぶった方がいいんじゃないかと」 「何が言いたい?」 「ゲリラ化すれば院瀬見は完全に俺っち達を完全に排除する事は出来ない。味方も増えるだろうし俺っちの依頼主も動きやすくなる。だから……諸田君には頑張りすぎないで欲しいんだな。圧倒的な力で殲滅してもこの街の人間じゃないからその後の街の未来に君は居ない、ゲリラ英雄にはなれない。大河は荒くれ者の英雄にふさわしいとは思うけどゲリラには向いてない蒐魅こそが最高の存在だったんだけどネ」 「ゲリラか……泥沼の殺し合いに持ち込ませる気は無いぞ。オレはあと二日で院瀬見の功太朗に敵対する派閥も怪人王も潰す気でいる」 「マジかよ……どんだけ自信ある訳?失敗が怖くないのかよ?達成で来たらガチの伝説になるぜ……」 「自信か……あるとも言えないが全力を出してこの作戦に挑むだけだ。第六区を守りきって影彦派閥を殲滅する。完全勝利を目指す」 「……ケッ!プランBは却下かぁ。諸田くんがこの街に現れなけりゃプランBしか俺っちたちが生き残る道はなかったんだがね。しゃあねえプランAに賭けるとするか!第六区の完全勝利だ!!」 続く
Oct 30, 2022
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諸田和音:子供の頃裏山に秘密基地を作ってたReviveTheGunSword灰蘇の剣銃25「LOKI」 功太朗が画像ファイルを拡大する。そこには手描き風の書体で『LOKI』と描かれていた。 「LOKI……心当たりはないな。皆さんはどうですか?」 「ないな」「ないですね」「ないない」 突然功太朗の携帯電話が鳴った。 「ん?知らない番号だ……」 「……出てください、逆探知を行います」 罅助がサイバーゴーグルをかけた。 「もしもし……」 『出てくれて良かった。私はLOKIのメンバーだ』 スピーカーモードで全員に聞こえるようにする功太朗。相手は音声合成ソフトを使っているようだ。 「LOKI……すると画像データを仕込んだのは君なのか?LOKIとは何者かな?」 『LOKIは非営利団体の事だと思ってくれればいい。早速だが本題に入らせてもらう、単刀直入に言おう、鈴村功太朗貴方と取引したい。こちらは貴方の抱える問題の解決に協力しよう、そのかわりこちらの要求を飲んでくれないかな?』 「いきなりそんな話をされても困るのだが」 『それもそうだ、しかし貴方のガレージを荒らさなかった事を誠意と受け取ってもらいたい。一部データはコピーさせてもらったがね。そのかわりこれ以上他の連中にガレージを触らせないように外にセキュリティボットを置いておいたよ。貴方のデータを入力しておいたから攻撃はされなかっただろう?』 「あのセキュリティボットは君らの仕業だったのか。折角置いてくれたのだが友人が破壊してしまったよ。ところで君はKAMINAと繋がりがあるのかい?KAMINA製のアレは簡単に手に入るものじゃない」 『その質問がくると思っていたよ。答えは半分Yesだ。KAMINAとは縁があってね。そして今逆探知中なのだろ?いいとも存分にしたまえ、今電話をかけているのは院瀬見の所有する場所であって個人のものじゃない勝手に来て調べればいいさ』 「随分と余裕があるんだな。LOKIは私の事もくわしく調べているのか?」 『そのガレージで得た情報とこの街で得られる範囲で鈴村功太朗という人物を知ってるよ。そこにいる少年少女はよく知らない、もう一人の青年は探偵の守山罅助、弁護士の資格も持っているね』 「どこからか見ているのか?」 『超小型ドローンを遠隔操作してそのアジトに入って行くところを見ていたよ。ああ、アジトの中に盗聴器は仕掛けてないから安心してくれたまえ。穏便にいこうじゃないか。ということで早速そちらにLOKIのメンバーを向かわせた、契約の話をするためにね。もしもメンバー何かあったらLOKIは君たちをあらゆる手段を使って追い詰めるからね』 「これから!?」 『そういう事、急かしてすまないね』 「……少し考えさせてくれないか。突然の事で頭を整理したい」 『駄目だね、これから会って話そうよ。じゃあ10分後に』 そこで通話は切れた。 「逆探知はどうですか?」功太朗は罅助に言った。 「第4地区の院瀬見タワー……超高層マンションですね」 サイバーゴーグルを付けたまま罅助が答えた。 「LOKIは院瀬見派閥の一つなのか?」 「無関係ではなさそうです……かなり相手は話慣れてます、企業に務める者の独特な取引の持ちだし方を感じました」 オレの問いに功太朗は眉間に皺を寄せながら答えた。 「10分後か……守山さんはLOKIをどう考えますか?」 「ガレージをLOKIに知られてる以上無視はできませんね。しかしこの街では味方を得るのは難しい敵を増やすのは簡単ですが……上手く立ち回って利用できれば良いと考えます。なので一度会ってみるのもいいかと」 「ふむ……」 「LOKIが来る前にオレ達の敵影彦派閥と繋がってるのか知りたい……怪人王・時田麻村の事のついでに七曲キョウヤに聞いてみるか?」 あの男ならLOKIの事も知ってるかもしれない。 「なるほど、七曲キョウヤですか」 「あの男に頼るのは癪ですが仕方ありません……和音君のいう事も一理ある」 罅助はサイバーゴーグルから七曲キョウヤに通信する。3コール目で相手は出た。 『いよう!ヒビスケ君から連絡くるなんて珍しいねぇ~?どういう風の吹き回しだい?』 「聞きたいことがあるんだ」 『はぁ~ん?イイケドさ、情報によっちゃあタダって訳にはいかないぜ』 「聞きたいことは二つある。一つ目は第六地区の防衛参加の報酬でいいだろう?」 『ま、仕方ないねぇ。で、聞きたいことのまず一つは何?』 「時田麻村の居場所を知りたい」 『おっほ!とんだ大物の名前が出て来たもんだ!!何か掴んだって訳だねぇ……何で知りたいか聞いてもいいかな?』 「……第六地区の襲撃計画に無関係ではないんだ。時田麻村はDMCの怪人を仕切る怪人王と名乗っている。この情報は確かな所から手に入れたから信用してくれ」 『ほほぉ~……ナルホドねぇ~………それは面白いわ。俺っちの中で色々とパズルが組み合わさっていくなぁ。丁度俺っちの依頼主も時田麻村をマークしててねぇ』 「では居場所を知ってるんだな?」 『奴は第五地区の中央棟にいる。けどねぇ……知ってても簡単に会えねぇんだ』 「どうしてだ?」 『追跡不可能なんだヨ。出入り口の無い建物の壁の中に消えたかと思ったら突如建物の反対側から現れたりね……奴自身の特殊能力なのかはたまた院瀬見の最新技術なのかは分かんねぇけど。依頼主も俺っちも絶賛捜索中って訳。中央棟周囲の警備も異常に厳しくてねぇ監視カメラにレーザータレット、それとショックガンを装備した防弾ドローン、通信遮断装置にゴリゴリの最新装備を身に着けたアーマー警備兵。だから別のアプローチも考え中なんだ』 「……そうか」 『時田は1週間の内、外に出るのは1回。場所も大体決まってる、民間の収容所と第二区繁華街の会員制のバー。依頼主は生きたまま捕まえたいらしいけど大河は襲撃する気満々なんだ困っちまったぜ。だがまぁ奴は一人で行動する事はまずねぇし怪人王と解った今、迂闊に近づけねぇわな。でも今度外に出る所を目撃したら教えてやってもいいぜ』 「……解った頼む。もう一つの聞きたいことだがLOKIという奴らを知ってるか?」 『ロキ??』 「L.O.K.IでLOKIという非営利団体だそうだ」 『説明してくれるかな?LOKI……何でそれを俺っちに聞いてきたか』 「実は……」 罅助はガレージの場所を誤魔化しながら七曲キョウヤにLOKIの事を説明した。 『ふ~ん……それは俺っちも無関係じゃあなさそうだな。俺っちの依頼主がLOKIの一員かもしくは繋がりのある者かもしれない』 「どうしてだ?」 『これ以上はタダでは教えれないね』 「金か?」 『まー金も欲しいけど俺っちにとって大事なのは人との繋がりだからな。時には協力し合う関係を続けて邪魔をしないならイイゼ?そうじゃねーと守山探偵事務所に厄介な出来事が降りかかるかもよ?』 「……」 罅助は歯を食いしばっている。横で聞いている柄留の目はオレンジに輝きグレイブラスターを出現させてリボルバー回しをしている。 『ハハッ!こういう所が俺っち蒐魅に嫌われる所なんだよなぁ~……でもな、この街で底辺からのし上がるにはこのくらいしないと使い潰されるだけなんだよ。ヒビスケもずっと安泰で今の仕事続けられる保証は何も無い。トクゾーの爺さんみたいにならなきゃいいがなぁ~?』 「……」 柄留が突然立ち上がる、サイバーゴーグルに顔を近づけた。 「いい加減にしろよテメー!スゲー不快なんだよ!ドブみてぇな臭いセリフを吐きやがって!今度は脳みそ半分でも吹っ飛ばすか?ああっ!?」 『ハハッ!そこに居たのかエルちゃん!やっぱ蒐魅じゃんかよ!その話し方!俺っちの勘は当たってたなぁ』 「蒐魅じゃないけど蒐魅の気持ちは良ーくわかるんだよ!次イラつく事言ったら神経引き裂く炸裂弾を撃ちこむよ?生き地獄味わせてやろうか?」 『OKOK……軽口はここまでにしてビジネスの話に戻ろうぜ』 一瞬で七曲は真剣な声色に変わった。オレは柄留を座らせて水を飲ませる。 『俺っちの依頼主とLOKIが繋がってるのかどうかは正直わかんねぇ。だがまずは第六地区襲撃をなんとかしなくちゃなんねぇよな?だったらLOKIととりあえずと組んでもいいんじゃあないか?コウタロウさんを派閥の最大勢力に据えるって話も悪くないだろ?今後の事考えたら俺っちとヒビスケは院瀬見にコネができるんだからナァ』 「まずは第六地区の問題に対処か……」 『とりあえずLOKIと組む方向で話を進めてみてよ。第六地区の襲撃を防がなきゃ俺っちもどうにもならないんでね。今の話でこっちとしても動きやすくなった』 「どういうことだ?」 『キャリバー事件で失脚した鈴村功太朗を実は一番評価してるのが俺っちの依頼主だからよ、それなりに調べはついてるのさ。で、LOKIの接触してきたタイミングと重ねりゃ色々察するだろ?』 「……」 『こう見えて俺っちも色々動いてんのよ。困った時はお互い様じゃね?競争相手であってもわざわざ潰しあう必要は無え、時には協力し合うのもアリだろこの街じゃあ』 「……そうだな。また後ほど連絡する」 『ああ待ってるぜ』 通話を終える罅助。オレは柄留の肩を掴んで椅子に座らせる。 「時田の居場所は判明したが結局LOKIの事は殆どわからなかった……だが七曲は興味を持っていたな」 「ええ、奴は今の話を依頼主にすぐに報告してるでしょう。あの男は街のバランスを崩さないように立ち回るでしょうから」 「こちらも上手く七曲を利用しなくてはならないな。そうだ罅助、今のうちに比留山さんにもLOKIの事を報告しておいてくれ」 この場は功太朗が聞いている、比留山陶子が刑事という事は知られてはならない。このガレージはLOKIが既に侵入した、盗聴の可能性もある。盗聴器が無いなどという言葉は信用できない。 罅助はサイバーゴーグルを使って比留山陶子にメッセージを送った。 【LOKIと慎重に接触しろ。後で詳しく報告をしろ。以上】 それだけが比留山陶子からメッセージで帰ってきたと罅助は言った。 「それで私はどうすればいいのかな罅助君?君の相談役の比留山さんはなんと?」 疲れた顔の功太朗が言った。 「慎重に接触して欲しいとの事です」 「そうか……」 そろそろ10分経つ。LOKIが来る頃だ。 *** ガレージの外に気配を感じる。かなり異質で今まで出会ったことのないものだ。 「監視カメラで確認できました。良く見えませんが二人歩いてきます」 「いつでも動けるように」「もちろん」 柄留の目はオレンジ色に光を帯びていた。すぐにグレイブラスターを出現させて立ち上がる。罅助は両腕とバックルに取り付けた機械をチェックする。 『鈴村功太朗さん、LOKIの遣いです』 ドアの外で声がした。男とも女とも判別できない少し機械的な高めの声。 「開けるぞ……」 ドアの前にオレが立つ。功太朗を一番奥に、その前に罅助、横には柄留。 自動扉が開くと目の前には濃紅のつなぎの全身サイバースーツを着た人物と黒に白い模様が入ったフード付きコートを着た人物が立っていた。 「……」 先に足を踏み入れる黒いコートの人物が部屋を一瞥。フードの奥で桜色の目が光ったように見えた。 「ハート、大丈夫です。そんなに殺気立っては話が出来ませんよ」「失礼しました」 濃紅の方の発した言葉に従うハートと呼ばれた黒白のコートの人物。 「こちらにどうぞ」 奥の功太朗が言った。 「では失礼致します」 濃紅サイバースーツと黒白コートの両名とも妙な気配がある。怪人とも違う。人間性をほとんど失うほどのサイバネ手術をすれば僅かな機械音はするものだがそれも無い。 「どうぞそちらにおかけになって」 「では」 濃紅は功太朗の向かいに座るが黒白の従者は座らずに椅子の横で立って離れない。柄留と向かい合う形になった。 「私はLOKIのクリムゾン、こちらの者はハートといいます」 濃紅の奴が言った。 「鈴村功太朗です、こちらの皆さんはボディガードです」 「諸田だ」「柄留だよ」「守山と言います」 「どうぞよろしく」 柄留とハートはお互いに目線を合わせ続けている。 「さて……早速本題に入らせてもらいましょうか。LOKIは鈴村功太朗さんに力を貸して院瀬見の最大派閥にしたいと考えております。理由は二つ」 「はい」 「一つはLOKIが院瀬見の動きを常に把握しておきたい」 「それは御しやすい私を担ぎ上げて院瀬見を裏から支配するつもりですか」 「正確には違いますがね。誠実で正義感が強く人気があって精神的に強い貴方に今の院瀬見を改革して欲しいのですよ。今の院瀬見はあまりに混沌としています誰かが統一すべきなのです。さもなけば院瀬見だけではなくこの街にも未来はありません」 「簡単に言いますね。もしかするとですが……LOKIのリーダーが私と知り合いなのかな?もしくは院瀬見の人間」 「LOKIのリーダーは貴方とは直接面識はありませんが古い付き合いの人間同士の関係とだけ。LOKIは非営利団体とは表向きで実際は秘密組織ですからメンバーの事など全てをお話することはできません」 「……そうですか、それでもう一つの理由とは?」 「院瀬見がこの街の隠している秘密を知る為です。貴方が最大派閥になればLOKIは動きやすい。我々は院瀬見の乗っ取りや転覆など図っていませんよ、ただ知りたいのですそしてLOKIはそれを知る権利がある」 「この街の秘密……?」 「旧時代の企業である院瀬見が時代に取り残されずに存続している秘密があるのです。この街が出来た理由もそこにあるのです」 「どういう事です?」 「鈴村功太朗、貴方が最大派閥の長になった時に詳しい話はしてあげましょう。どうです?興味が出てきたのでは?」 クリムゾンの言葉に功太朗はしばらく沈黙する。 「……LOKIの申し出を受けましょう。ただし条件があります」 「どうぞ」 「これから影彦派閥が計画している第六地区襲撃を止めるのを手伝って欲しいのです。それが成功してここにいる全員が無事だったらという条件です」 「いいでしょう、一つお聞きしますが敵対派閥にかける慈悲は一切なくても結構で?」 クリムゾンの言葉に功太朗は数秒考えて沈黙する。 「なるべく死者は少ない方がいい、それと影彦は生かしてくれ話をしたい弟なんだ」 「いいでしょう、では契約完了……ですね」 続く
Oct 16, 2022
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諸田和音:水族館に行くのが好きでよく行ってた。ReviveTheGunSword灰蘇の剣銃24「忍者と隠れ家」 柄留と罅助が出て行った後の事を思い出す。 ―柄留はDMCの集会所に、罅助は鈴村功太朗の隠れ家に向かって10分が過ぎた後。外に気配を感じた。 「功太朗さん、ここでじっとしていて下さい」 「ああ……」 彼を残してオレは外に出る。歩き方からして普通の人間ではない、足音を消す歩法だ。 静まり返った深夜の住宅街、他に感じる気配は野良猫だけだった。 「息をひそめても無駄だぞ」「……」 反応は無い。動悸の乱れも無い。龍の力を使って相手の事を探る。 この街に来てから徐々に自分の力を解放していった。地元では出来ないことがこの街ではできる。知らない街で知らない人間しかいないのなら多少は問題ない。コソコソと裏山で憂さ晴らしをしなくていい。自分の中に眠る龍の力を解放できる。 何故オレの家系は龍の力が発現するか解らない。そしてどの程度の龍の力かも解らない。祖父は既に亡くなり資料も肝心な部分が失われていた。妹の亜瑠はあまり重く受け止めずに受け入れていた。だがオレは違う、アイツと違って力の制御……解放したいという欲求を抑えるのが大変だった。少しでも解放すれば周囲の人間は簡単に壊れてしまう、それに社会には馴染めない。亜瑠とは違ってオレの力はあまりにも人間社会には向かなかった。だからこっそりと裏山で解放してストレスを発散してたのだ。 つまらない不良や反社会的組織に絡まれても少し力を見せてやれば大人しくなった。時には逆恨みをして家族を巻き込もうとしてきたやつもいたが裏山で理解するまで相手してやったら大人しくなった。 「出てこないのならこちらから行くぞ」 怪人と戦った時に少し気持ちが高ぶった気がした。今度の相手はどの程度なのか。 「……」 オレの呼びかけに答えない侵入者。 「ハァッ!」 コンクリートの壁を殴りつけ隠れている奴を狙う。伝わった衝撃で吹っ飛んだのが解った。 「何者だ?」 「……なるほど、下忍の連中では手に余るわけだ。想像以上の男だな」と全身黒尽くめの男が言った。サイバーゴーグルにコンバットアーマーを装備している。 「何者だと聞いたのだが?」 「プロは余計な事を話さない」 低い声で言った、緊張はしているみたいだ。 「そうか、ならば吐かせるまで」 「……デカい口を叩くその力どの程度か測らせてもらうぞ」 コイツは初めからオレや功太朗さんを殺すつもりで来たのではない?戦力を調べに来たのか? 「速きこと風の如く……」 「む」 両手で印を結んだあとつむじ風を纏い飛び出す男。オレの背後を取ろうとする。降りかえるとまた加速する。 「静かなること林の如く……」 男の体が透けて透明に変わる。加速しながらの透明化、だがオレには気配で丸わかりだ。 「侵略する事火の如く!」 加速しながらオレの周り360度から手裏剣が放たれた。オレは飛び上がって回避。 「知りがたきこと陰の如く!」 男から伸びる黒い影、オレは空中で体を捻って躱す。男は伸びた影に乗って距離を詰めてきた。 「動かざること山の如く!」 オレの着地を狙って男は印を結び力を込めた拳で殴りつけてくる。オレは男の拳を踏み台にして蹴り、反動で地面に着地する。 「動くこと雷霆の如く!」 無数の電撃が降り注ぐ。この攻撃が本命か、だがこの程度オレには効かない。 「これぞ風林火山陰雷の術!只ではすむまい!!」 「残念だったな」 「なに……!?」 裏山で雷に打たれた時よりも弱いくらいだ。 「お前、この前の工作員の仲間か。ブラックヴァリーとかいったか」 「……少し加減が過ぎたか」 「加減だと?少しも効いていないが?……質問に答えろ」 「答えればお前には死んでもらう事になる。今度は全力で行くぞ」 「来い、嫌でも答えさせてやる」 「玄武・青龍・白虎・朱雀……」 男は高速で印を結んでいく。 「……お前相手には用心深すぎる事は無いと悟った。この本気の状態になるのは久しぶりだ。この忍法・爆裂究極体を見て生き残った者はいない」 男は左右にステップを踏んでオレの出方を見ている。 「それでもういいのか?来ないのならこちらから行くぞ」 歩いて距離を詰める。 「ぬううううううん!」 手裏剣を10枚投擲してきた。軽く龍の息吹で吹き飛ばして逸らす。 「ツェリャアアアアアアアアアア!!」 男は背中から銃剣を取り出して斬りつけてくる。オレは刃を左手でつまんで受け止めた。 「デエエイ!爆炎遁の術!!」 指先から爆炎を放つ男、オレは全身を龍気で纏っているため影響はない。 「くっ……これでも効かぬか!」 目を向いて驚く男に龍の息吹を軽く放つ。反応はしたが回避も防御も間に合わず胸に衝撃を受けて後方に転がっていった。 「ぐはっ……」 体勢を立て直し印を結んで術を唱える男。左右に奴の残像が広がっていく。所謂分身と言う奴らしい。 「ゲホガハッ……あり得ん……貴様のたった一撃で俺の究極忍法が解除された……だがこの森羅万象の術なら……」 「出し惜しみはしなくていい遠慮するな」 オレの一言で男の力が増したのが分かる。森羅万象の術とやらはコイツの最大の術なのだろう。 「超多重分身からの銃弾+爆炎遁+雷撃+毒+捕縛粘着の雨あられだ!!」 「龍気活性」 オレは襲い掛かる全てのものを全身から放つ龍気で吹き飛ばした。周囲で爆炎が上がる。 「!?……どうなっている……理解できん、お前は完全なる生身……カテゴリー3以上の異能者なのか?それとも……怪人……」 「どれも外れだ。さて、これ以上暴れられて周りを壊されても困るのでな、大人しくしてもらおうか」 「ぬううううう!!」 男は銃剣のアサルトライフルを連射。銃弾はオレの体に弾かれて地面に落ちていく。 「おのれおのれおのれ……」 アサルトライフルを弾切れまで撃つと銃剣を構え必死の形相で突いてきた。オレはマシンガンを掴んで取り上げる。 「ここまでだ」 軽くアサルトライフルのストックで殴り腕を掴んで捻じり上げる。呼吸を荒らげ脂汗を流し始める男。 「はなせええっ!」「フン」 男が動くと同時に腕を捻って地面に転がす。捻じって関節を極める。 「ヌグググ……莫迦めこんな極め技など関節を外して脱出すれば……」「ならばこうだ」 持ち上げて背後の地面に叩きつける。何か仕掛けようとしてきたので更に叩きつける。4度繰り返すと静かになった。 「理解したか?」 「化け物め……人間じゃな……い」 「かもな」 ここで尋問したいところだが……この男は相当訓練を詰んでいる。簡単に口を割りそうにない。オレには拷問の趣味はないので比留山陶子刑事に連絡して男を警察に引き渡す。普通に通報すれば院瀬見の息のかかった警官に全てをもみ消されてしまうからだ。 だがこれでいい。比留山刑事がこの男をきっかけに院瀬見の調査に踏み込めるかもしれない。 *** 「あの忍者は怪人と同等くらいの実力はあったぞ」 「……ほぇ~院瀬見は怪人だけじゃなくてニンジャもいっぱい雇ってるって事かぁ」 柄留がパックのジュースを飲みながら言った。 「話を聞く限り襲ってきた忍者はかなりの使い手。和音君じゃなかったらこの家も功太朗さんも危なかったかもしれませんね」 罅助は足をテーブルに上げて組んでる柄留を見ないようにして言った。 「ボクでもちゃんとやれたよー!!」 「まぁ柄留さんなら忍者には勝てますね。ですが隙を突かれて家と功太朗さんを攻撃されてたかもしれません。忍者は圧倒的な和音君を前にして破壊工作どころじゃなくなったという事なのでしょうから」 「破壊工作かぁ……さっそく功太朗の居場所バレてるかな。それとも確かめに来た?他の派閥全部敵なら面倒だなぁ」 「それはどうでしょう……院瀬見にも色んな派閥がいますからね。平和的な派閥を説得すれば争いは減るかと」 「だが監視はされるだろうな。平和的な派閥も敵対する派閥を潰した存在を無視はしない」 「こちらも警戒しますしお互い様になるんでしょうね。陶子さんの立ち上げる組織に入れば我々も動きやすくなりますし……そういえば和音君はまだ卒業まで半年はあるんでしたか、この連休が終わったら地元に帰るんですよね」 「ああ、明日で連休は終わる。キッチリ片をつけて地元に帰ってやるさ」 「ねぇ~ボクはどうすればいいの?」 連休の後、柄留をどうすればいいか考えなくてはならない。比留山刑事に預けるのが一番だとは思うが。 「比留山刑事にその事も聞いておくか……お前を連れて地元に帰る訳にはいかないからな。亜瑠と同じ顔のお前の事を説明するのが面倒だ」 「やだやだやだ~!大人しくするし顔はミレーヌに変えておくしさぁ……変身中はグレイブラスター出しっぱなしになるけど大丈夫っしょ」 「大丈夫なわけないだろう。今ここで言ってても仕方が無い全て解決した後に考える」 「はぁ~い……」 *** 鈴村功太朗は自室で深い眠りに付いている。色々あって疲れているのだろう。寝息でそれが分かった。罅助は守山探偵事務所から呼んだ助手から着替えと装備を受け取っている、柄留はシャワーを浴びている。オレは第六地区の地図を見て襲撃者に対するシミュレーションをする。 「地下アジトの行く道で罅助が遭遇した黒い影が気になる」 「確かにアレは無視できない存在です。敵対派閥と関係なければいいのですが」 「鮫もしくはイルカ、シャチだとすると高い知能を持っている……柄留のグレイブラスターで操れるかもしれないな」 「操る……なるほど、派閥の第六地区大襲撃作戦の前に少しでも戦力を増やそうという訳ですか。飼い主が居た場合そちらも取り込めるかもしれませんね」 「敵は怪人に忍者、最先端の武器を装備したアーマー兵にサイバネ。軍用武器を持ったハンターの連中だ。犠牲者を減らす為にもできるだけ戦力が欲しい」 「ええ、数の差を少しでも埋めたいです。洗脳がうまくいけばそのまま陶子さんの組織に入れられるかもしれませんしね」 「ええ~……ちょっと怖いなぁソレ……」 髪を拭きながら現れた柄留。 「まぁあくまで希望ですからね、実際に見定めるのは和音君にお任せしましょう。ほら正体不明の柄留さんを受け入れ成功してるのですから実績があります」 「はぁ~!?だってボクは最強にカワイイし何も怪しくないからではー?ね?和音君?」 「地面に潜る黒い影は会ってみない事には解らない、その時判断する。危険なら退治するまでだ」 「ねええええっ!……スルーしないでー!!」 「少ししたら出ましょうか。功太朗さんを起こしてきます」 罅助は荷物をアタッシュケースに詰め功太朗を呼びに行く。 「柄留、準備はいいのか?」 「んー?シャワー浴びでスッキリしたしいつでも行けるよ。準備もなにもボクの荷物なんて和音君に買ってもらったケータイしかないし」 罅助は功太朗を連れて出てきた。車庫に止めてあるRV車に乗せる。守山探偵事務所の助手が運転席に座って待っていた。後部座席にオレと柄留、功太朗。助手席には罅助。 「一応防弾仕様と姿勢制御を搭載してるので撃たれてもひっくり返されても平気です」 罅助が言った。車はゆっくりと走り出し第五地区の水路へ向かう道路へ入った。 「流石にもう追手は居ないみたいですね。院瀬見の派閥も第六地区の襲撃準備をしているのでしょう」 サイバーゴーグルで周囲を見ている罅助。 「七曲キョウヤから連絡がないということはまだ襲撃はされてない。予想通り早朝に仕掛けるつもりなのか」 「一応陶子さんにも警戒してもらってますがまだ何も動きはないようです。それと……柄留さんが大暴れした地下のバーの事何処にも話題に上がってません。消防が出動した程度の情報は毎日みますしね」 「院瀬見の圧力か」 「この街を支配している院瀬見なら可能でしょう」 第五地区の工場地帯の側道を走り抜け森林公園が見える所で停車した。 「この先は夜間、従業員の車しか入れません歩きましょう」 先頭に罅助、次に柄留、功太朗、最後尾の殿(しんがり)はオレだ。 「和音君ちょっとうれしそう……なんで?」 「……そう見えるか?そうだな……これまで発揮できなかった龍の力を使えてるからな。オレは全力を出したことがないと前にも言ったろ?全力を出せるかもしれないと期待しているのかもしれない」 「そっかぁ……これも亜瑠ちゃんの【引き寄せ】のおかげなのかな?」 「かもな、アイツにまんまと引きずり込まれたわけだ」 水路脇の道を進んでアンダーパスをくぐり抜けた先の交差点の橋から下に降りる。コンクリートで整備された用水路が流れている。 「ここを進んであそこのトンネルに入ります。突き当りT字路の左側で謎の黒い影と遭遇しました」 「そうか……まずはアジトを目指すぞ。功太朗と罅助はそこで待機だオレと柄留でそいつを確認する」 水路から廃地下鉄のホームに進む。そこから隠し通路に降りてしばらく歩くと罅助の言った通りセキュリティロボットの残骸が転がっていた。 「こんなもの私と蒐魅が使っていた時は無かったのだが……」 功太朗がつぶやいた。 「ちょっと待ってくれ……このセキュリティボットは……KAMINA(神名)製だ。この街で神名の製品を扱うのは街の外の者だ。簡単に手に入るものでもない」 「そうでしたか……しかし神名製だと何かあるのですか?」 罅助は残骸を拾って見ながら言った。 「派閥に属さない他勢力がこの周辺を探索したのだ。……神名製のセキュリティボットを所有して配置した者が私のガレージを発見してに何も手を付けてないのが気になる」 「敢えて触らなかった?……もしくはそう見せかけてるのですかね?」 「既に中に入り調べ終えた後かもしれない。その場合保存ボックスの状態が気になる」 周囲を警戒しながらアジトに到着。中に入ると自動で照明がついた。埃一つない清潔な部屋だった。少し薄暗く青系のライトがついている。 「どうですか功太朗さん?」 功太朗はデスクに座りコンピューターを起動する。 「やはり誰か侵入したようだ。メインコンピューターに痕跡が残っている……データの抽出を行った……それだけか。いや、画像ファイルが作成されてる」 「画像ファイル?怪しいですね……」 「ここまで侵入してロック解除も出来た者がそんな安易なトラップは使わないと思うが……一応スキャンをかけて見たが只の画像ファイルのようだよ」 続く
Oct 8, 2022
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