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ReviveTheGunSword灰蘇の剣銃9「兜金大河(とかねたいが)」 目の前の男はこの前ひったくりで衝突した奴だ。「優男!何でキョウヤさんを知ってんだって聞いてんだよ!!」「喚くな、騒がしい。七曲キョウヤを呼んでくれればいい」「この状況で舐めた口を聞かない方が良いぜ?」 目の前の男と他4人の指、拳から刃物が飛び出す。想像通りのサイバネ者か。「おっと!動くなチンピラども!和音君に指一本触れさせないから!!」 柄留がグレイブラスターを構えている。「なに!?それはグレイブラスターか!?何でお前がそれを……」 男が動揺している。ここで一気に畳みかけるか。「その通り、そいつの持ってる銃はグレイブラスターだ。その意味は分かるよな?コンテナを見る資格はあるはずだが?」「くっ……で、でもよう。蒐魅さんの盗んだんじゃねえのか?」「ふん」 オレは柄留に目で合図する。「じゃあ撃って見せようか?何なら色んな弾丸発射してあげても良いんだけど?」 柄留が得意げにカードリッジをグレイブラスターに装填する。「マジかよ……どういう事だよ……蒐魅さんはアンタみたいなチャラついた話し方した事ないし顔も違う……でもグレイブラスターはあの人しか使えないハズだし……」「その辺も含めて七曲キョウヤと話がしたいのだが」「よ、よしわかった……」 仲間を下がらせる男。柄留もグレイブラスターをしまう。「お前の名前は?オレは諸田和音だ」「木津彪(きづたけし)ってんだG/Tのメンバーだ」「木津、七曲キョウヤから何も聞かされてないのか?」「俺はあの人とは直接やりとりしてねえよ。大河のアニキの友人だからな。俺はアニキの命令でコンテナを変な奴らに触らせるなって言われただけだ」「変な奴ら?」「ああ、怪人だかDMCの連中とかそのへんのややこしい奴らの事だ」「そういえば何でお前はひったくりなんかしたんだ?G/Tってのは強盗団なのか?」「バカ言え!G/Tはそんなんじゃねえ!!あれはキャバ嬢の撮った映像に用があったんだよ。警察に取られる前にどうしてもDMCの連中が怪人と繋がってる証拠を握りたかったんだ……てめぇのおかげで面倒な事になったがよ」「DMCって連中が怪人と繋がり?」「噂なんだよ。決定的な証拠はどこからもでてねぇ。DMCに潜入入会させたメンバーも行方不明だしな……警察は事件を起こしたDMCの会員、怪人には対処するがそれだけだ。アニキの影響力のおかげでG/Tはグレーゾーンで動けるんだ警察の一部は俺らを利用し俺らも奴らを利用してる……蒐魅さんのおかげでこの街はどれだけ救われたことか」「……中々興味深い話だな。ところでキャリバーってのはG/Tと関係あるのか?」「……その名前は安くねえぞ?」「オレは他所者だからな、ちょっと前に知った程度だ」「ふん、そうか。まあいい、とにかくキャリバーについては俺から話せることは殆どない。この秋馬の街での評判は地区によって違うだろうな」「ほう?キャリバーってのは怪人でこの街を騒がせている存在だとニュースで知ったんだがな」「真実は当事者しか知りえないのさ!」 木津と話していると大きな音を立てたバイクが近づいてくる。サイドカー付きだ。「キョウヤさんのバイクだ」「おやおやおや……俺っちの勘はあたるもんだなぁ」 ドリフトでタイヤを焦がした後飛び降りる七曲キョウヤ。「彪(タケシ)!そのお嬢さんはコンテナを調べる権利があるぜ」「え?そうなんすか……」「オマエは感じないのか?蒐魅の波動をよ?顔や体じゃねえ、魂の波動って奴をよ」「俺にはよく分かんねえっす……」「ま~凡人のお前には無理ねえな。それでそっちのおっかねえ波動のお兄さんは何者?」 そう言いながらゆっくりと歩み寄って来る。こちらの隙を伺ってる。「七曲キョウヤだな?柄留が世話になったな、オレは諸田和音という」「こりゃドーモ。AH探偵事務所の代表にしてアーティストの七曲キョウヤだ」 3m程の距離で足を止める七曲キョウヤ。全身に電気の信号を感じる、奴はサイバネだ。「諸田クン、キミ何者?生身でそんな波動纏うの反則っしょ」「ただの学生だが?そちらこそ殺気を纏ってるな」「……へぇ、キミは大河に匹敵する逸材だな!諸田クンに柄留チャン……なるほど、兜金兄妹そっくりだ……彪、車を用意しろ。お二人を丁重にアジトに案内するぜ」「え!?マジっすかキョウヤさん………アニキに聞かないと」 慌てて携帯をかける木津彪。七曲キョウヤはオレに近づこうとしない。「ボクを無視しないでくれる?」 柄留が七曲キョウヤを睨みつけている。「ソーリー、そんなつもりじゃないんだよ。ただそこの諸田クンを前にしたら緊張しちゃってねぇ。車を用意するまでの間コンテナを好きなだけ調べるがいいさ」「……そーする!」 柄留は蒐魅のコンテナに向かう。オレも柄留についていく。「いいんすかキョウヤさん、よそ者に触らせて」「いいんだよー。彪、オマエさぁ諸田クンのヤバさ分かってないのな~お目出たいよなー大河と付き合い長い癖にそういう勘鈍いんだよ」「は?え?……こんな優男の何処がヤバい……」「諸田クンは上手い事隠してるからな。大河のようにバキバキに晒してないから無理もないか」「???」「大河と同じくらいヤバイって事さ諸田クンはさ」 兜金大河。G/Tのリーダーで柄留と関係のある兜金蒐魅の兄。「柄留チャンは俺っちのサイドカーに乗りなよ」「は?絶対嫌だし。ボクは和音君と一緒がいいの」 コンテナのウェビングの前に立つ柄留、机を眺めて首をかしげている。「どうした柄留」「気になるんだよねー……こんだけマメにウェビングしてた蒐魅がメモ帳の一つも残してないなんて」「誰かが持ち去ったのかもな」「そこにいる七曲キョウヤとか兜金大河とか」「さぁな。ともかく兜金大河に会って詳しい話を聞こうか」「えぇー!行くの?絶対危険だよ和音君!」「危険は承知だがこちらからも動かなくてはな。妹の亜瑠のように器用な立ち回りはオレにはできないからな」「妹ちゃんそういう人なんだ……」 しばらくコンテナを調べているとワゴン車が2台到着した。「さぁ乗ってくれ諸田クンに柄留チャン」 ワゴン車に乗り込む。木津彪が助手席に残りのG/Tのメンバーが運転手、後方のワゴンに乗り込んだ。七曲キョウヤはワゴンの先を走り先導する。「タバコ臭い車だなー」 柄留が口をとがらせて言った。車内はタバコと妙な香の臭いがする。「は!悪かったな!!一応、イセミの臭い消しつけてるんだがな!」 木津彪が手を上げて履き捨てるように言った。 大手企業院瀬見のグループ会社イセミ化学のロゴが入った芳香剤を柄留が見つけ手に取ってる。「イセミね……うーん何か思い出せそうな?」「アンタが蒐魅さんなら知らねーはずはねえからな。まぁ詳しい話はアニキが話すだろう」「ふーん……」「蒐魅はタバコを吸わなかったのか?」「ああ、あの人は臭いとか音に敏感だったからな。だから車には乗らなかったよ、自分の単車で移動してた」「そうか」 単車はコンテナにも近くにも無かったな。それらしい部品はあったが。「ほれ、キョウヤさんが乗ってるあの単車が蒐魅さんのだよ」 前を走る七曲キョウヤのサイドカー。それが蒐魅のバイクなのか「サイドカーって事は蒐魅は誰かと行動を共にしてたのか?」「さぁな。時々大河のアニキを乗せてる所を見たが」「……」 柄留は目を細めて前を走るサイドカーを睨みつけている。トンネルに入り東側の車線に。第六区に向かっている。トンネルを抜けるとこれまでとは違い途端に色褪せた街並みが広がっていた。「なんか他の所とは雰囲気が違うね」「第六区はこの街の開発時からあるもっとも古い地区の一つだ旧第一区でもある俺たちが生まれる前のことだが。元々は第五区の工場地帯、院瀬見やその関連会社に雇われている労働者の仮設住宅があった場所。開発が進んで大半は新しくできた地区に移住したが賃金の低い者たちは残らざるを得なかった。あとは思い入れがあったりこだわりの強いものが残った……」「へぇ~……」「この辺は更地にして空港を立てる予定もあるんだ。住民は当然反対、何度も開発側と衝突してる。他の区の奴らはスラムって呼ぶのもいる。まぁ実際治安も良くねえし訳アリの奴らも住み着いてんだが」「よく見たら道路も整備されてないし手作り感のある建物がちらほら」「そりゃそうさ、開発側からも市長からも見捨てられてんだからな。電気水道が使えてるだけまだマシだ」 古いビルの駐車場で車は止まった。「兜金不動産……」「アニキの祖父さんがやってた所だ。今はもう引っ越してここには居ない。G/Tのアジトの一つだ」 車を降りるとビルの隣にある倉庫にバイクを入れている七曲キョウヤ。「……」「こっちだ」 それだけ言うと七曲キョウヤは倉庫の中に戻った。「行くぞ柄留」「うん」 倉庫の中に入ると中は工作機械が並んでいた。町工場並の設備だ。その一番奥の一段高くなった場所にあるソファには髪は金色総髪で白黒のメッシュが入って筋肉質で合成ラバーで出来た艶のある上着を素肌に着た男が座っていた。「ワシが兜金大河じゃ。お前らがキョウヤの言ってた者やな」「諸田和音」「柄留だよ」「蒐魅の事を嗅ぎまわっとる聞いたが何の目的じゃ」 兜金大河は鋭い眼光をオレと柄留に向けたままよく通る大きな声で言った。「妹の事とコイツの事色々と繋がってるんだ」「どういうことか簡単に説明せぇ」 オレは大河にグレイブラスターと柄留の事を話した。「……ふん、キョウヤの話と違わねえな」「へへっ俺っちは大河の依頼で動いてる。二人の事もこの二日間調べてたんだぜ」 七曲キョウヤ凹凸の無いサイバネフェイスで分からないがニヤケていると想像できる。「蒐魅の行方はワシらが追っている。お前らはチョロチョロせずに大人しくしとけや。な?よそ者なんやから」「そうはいかない。妹の足取りを調べている、蒐魅は関係しているんだ」「ほう、この街で勝手な真似するとどうなるか分からないのか?」「大体は想像できる。それでもオレは続ける、お前たちの邪魔をする気は無い。だからオレたちの邪魔をしないでくれないか」「ハッ!!言うじゃねえか……このワシの目を見て声を聞いてようもそんな態度を取れたもんじゃ……大概の奴は震えあがって青い顔をするもんだが」 確かに兜金大河の発する殺気は異常なまでに鋭い。腹をすかせた猛獣に匹敵するだろう。G/Tのメンバーは落ち着きのない様子だ。「……」 柄留は無表情で大河の顔を眺めている。「柄留、どうした?」「うーん……この人知ってる気がする。でもそこから何か思い出すって感じじゃないなー」 柄留は階段を上がって大河に近づいていく。「ねえ、蒐魅の事色々教えてよ。ボクは知る権利があるはずだから」 グレイブラスターを瞬時に出して天井に向ける。そしてゆっくりと銃口を大河に向ける。だが次の瞬間―「バオオオオオオオオオオオッ!!」 大河の咆哮で吹っ飛ばされる柄留。階段を転げ落ちる。大河は飛び上がり柄留を追いかける。「フウウン!」 太い腕で柄留に掴みかかる大河。オレは間に割って入り手刀で大河の手を弾いた。「!?」「そこまでだ!柄留も何をやっている!」「あははー……ここから面白くなりそうだったのに!」「なんだと?」「あ……ゴメン!違うの、そのそんなつもりじゃなくてなんていうか……」 一瞬違う表情を見せた柄留。すぐにいつもの調子に戻った。「面白い!見た目は蒐魅とは違うが今の気は蒐魅を感じた。キョウヤのいう事も納得だ」 それなりに強く手刀を当てたが大河は痛がる様子も無い。咄嗟で余り手加減出来なかったので粉砕骨折くらいはしてると思ったが。「諸田和音と言ったな。お前も面白いな……どうやらお前はワシと似た所があるらしい」「お前こそ只者じゃないな。生身でその領域に達しているのだからな」「まずは話をしようやないか。それでお互いを知りどうするのか決めればいい」「そうだな。オレとしてもむやみに敵を作りたくはない」 ソファに大河、向かいの椅子にオレと柄留。ソファの後ろには七曲キョウヤ。倉庫の出入り口には木津彪が立っている。他のメンバーは大河がいったん倉庫から出させた。「蒐魅の事を知りたいんやったな。だが覚悟はして貰うぞ?蒐魅の事を知るって事はG/Tとは無関係ではなくなる。お前たちが知りえたことを他所で話せば敵対行為とみなすぞ」「分かった」「それと只で話すつもりはない。お前たちの知りたいことは話してやる、だからワシのいう事も聞いてくれや」「内容にもよる。まずはそちらの要求から聞こうじゃないか」「……諸田和音、お前の事を聞かせろ。それから内容を決める」続く
Apr 30, 2022
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柄留:ブラックコーヒーは飲めない。ReviveTheGunSword灰蘇の剣銃8「疑惑の探偵」 和音君の最高のご飯を頂いて、楽しいお話をして眠った。 ―夢を見た。 夢の中のボクは子供。目の前の女の子はくせっ毛でネコみたいにしなやかで気分屋。 夏休みの間だけ彼女はボクの街で過ごしてた。出会ったきっかけは公園でたまたま隣のベンチに座ったそれだけだった。彼女は正直者で純粋で悪を許さない子だった。ボクがサイバネ者に絡まれた時も小さな体で果敢に挑んでいった。 そして両腕を失った。 しばらくして彼女は両腕をサイバネ化してた。お金持ちだったので再生医療をするかと思ってたのだけど、新しい腕が気に入ったのだそうだ。 その両腕は変形してカマキリのように鋭い刃を出現させるものだった。 相変わらず可愛くてネコみたいな子だったけど。次の年また次の年と会うたびに彼女は体のサイバネ化を進め、最後に会った18歳の時にはほぼ全身サイバネ化していた。『今年でこっちに来るのは終わりだと思う』 そう言った。危なっかしい所はあったし不良っぽい子だったけど素直で決して弱い者いじめや悪事を働くようなことはしなかった。 でも― 最後に別れた時の彼女の思いつめたような表情が気になって頭から離れなかった。 だからボクは―「んぁぁぁ……おはよー和音君……」「起きたな。顔を洗って着替えてこい、朝食にするぞ」「はぁい」 洗面所に行くと洗濯されてきちんと畳まれたボクの服がカゴに用意してあった。「あ!」 全部だ。そう全部、上着とスカートだけじゃなくて……「……うっわ~超恥ずかしい」 借りていた妹ちゃんの服を洗濯機に放り込みボクは自分の服に着替える。「はーあっついあっつい……」 鏡の前のボクは顔が真っ赤なのがわかった。 顔を洗ってボクは出来るだけ平静を装ってリビングに戻る。「なんだ?顔が赤いぞ柄留」「いやーあははははーあついなーって」「ああ、まだ残暑が厳しいからな。エアコンつけるか」 和音君が朝ごはんを持ってきてくれた。ベーコンエッグにトースト、コーヒーだ。「砂糖とミルクはどうする?」「両方一個入れて」 ぼんやりとTVを見ながらおいしい朝ごはんを食べる。夢を見た気がするけどもう忘れてしまった……その事で和音君に聞こうとしたけど仕方ない。「病院に亜瑠の様子を見に行ってから守山探偵事務所に行くぞ」「おっけー」 妹ちゃんのお見舞いの間ボクは病院の向かいのコンビニで時間を潰す。病院2階のロビーから歩道橋で繋がっている超便利なコンビニ。病院の中にあるコンビニとは違ってこっちは広くて一般的なスーパーと同じくらいの広さ。「下着とタオルと歯ブラシと……シャンプーとリンスに化粧水……」 妹ちゃんの買い置きの新品ばかりを使う訳にもいかないからボクは自分で必要なものを買う。……和音君のくれたおこづかいなんだけどね。 必要な物を買ってボクは店内にあるイートインスペースでジュースを飲んで待つ。 ここ数年で病院のセキュリティも厳しくなったとかでIDの無いボクは妹ちゃんの顔を直接見る事は出来ない。直接見れば何か思い出すかもしれないけど……「うわああああん!風船がー!!」 窓の外を見ていると今時めずらしい風船を持った子供が叫んだ。うっかり手を離してしまったんだね。「あ!」 そこに颯爽と現れた和音君が大ジャンプで風船をキャッチ!子供に渡してあげてる。「うーん王道なイケメンムーヴ……」 和音君カッコいい!だけど今のジャンプちょっと高すぎなかった?3階分くらいいってた……いやまぁボクも多分あれぐらい跳べるけど。サイバネが普通な世の中だから皆特に驚いてない。「おおーい和音くーん!」 店を出て和音君と合流する。「さ、行くぞ」とだけ言ってすぐにバス停に向かって歩き出す。バス停に到着すると既にバスは出発待ちだった、乗り込んですぐに発車した。「守山探偵事務所のある第四区で降りるからな」「うん」 他の乗客は十人くらいでお年寄りが多い。病院から乗るのだからそうだよね。次の停留所で高校生くらいの男の子たちが乗ってきた。ボクをチラ見したのは見逃さない。「おい、なんでもたれかかるんだ」「えへへー何となく……ボクと和音君って傍から見てどう見えるのかな?」「知らん」「和音君さっきから携帯で何見てるの?」「名前のリストだ。Mから始まる女性の名前のな。柄留も見てみろ何か引っかかる名前があるかもしれんぞ?」「Mって蒐魅の偽名じゃないの?」「決めつけるな、まずは名前のリストを見るんだ」「はぁい」 しかしMから始まる名前多すぎ……全世界のリストなんて見てられないよ…… しぶしぶ眺めてるうちに降りる停留所に到着した。英語名でピンとくるものは無かったね。このリストにはあと9ヶ国分ある……「む、和音君。昨日話した七曲キョウヤからメッセが入った」「それは後だな。まずは守山探偵事務所だ」 既読スルーも何か面倒な事になりそうなので見ないでおく。 和音君の後をついて守山探偵事務所に到着した。ビルの3階で監視カメラにゴツイ金属扉の所だった。『どうぞ諸田さんお入りください』 インターホンの声がしてロックの開く音がした。面倒くさい二重扉を抜けてやっと事務所に入れた。「やぁ待ってました。さぁどうぞおかけになって。そちらの女性は例の方ですね」「そうだ」「守山罅助といいます」 如何にも作ったビジネススマイルを向ける守山罅助。後はハッキリした喋り方に声量、バチバチに目を合わせてくる。初対面から相手を油断させない立ち回りがうまい男だ。「柄留だよ」 グレイブラスターは0.5秒で出現から発射まで多分できる。妙な動きをしたらすぐに麻酔弾を打ち込んでやる。「念のため先ほどの二重扉でスキャンさせてもらいました。お二人とも携帯はそちらの箱にどうぞ」 アルミっぽい箱に携帯を入れさせられた。和音君は特に緊張もしていない様子。 七曲キョウヤとはまた違うちょっと嫌な感じがする。「そうぞおかけになって下さい。すぐに資料を持ってきますので」 凄く体が沈みこむソファだ。咄嗟に立ち上がれないし机は透明のプレートで作られた重そうな物。壁際でパーテーションもあるからもしもの時はグレイブラスターをぶっ放す!「……眉間に皺を寄せてどうしたんだ柄留?」「居心地悪いなーって……和音君は平気そうだけど」「一度来てるからな」 数十秒後守山罅助はもう一人男を連れて戻ってきた。助手の剛力猛というらしい。「まずはこちらをご覧になって下さい」 守山罅助はノートPCの画面をボクたちに見せる。そこにはCGで作った顔があった。「これはMのモンタージュです、剛力君が作ってくれました。Mを見た剛力君のお父さんの証言を基に一晩で作り上げてくれました」「これがM……」「むむ……」 金髪の女の子だ。ちょっと影のある表情で顔立ちは整っている、年齢はボクたちと近い感じ。でも……ボクにも妹ちゃんにも似てない。「ますますわからなくなった……なんでとくぞーさんはボクを見てMだなんて言ったのだろう?」「え?」 守山罅助が反応した。 あ、そりゃそっか。亡くなったはずのとくぞーさんの話が出てきたんだから。「祖父と面識があるのですか柄留さん?」「えっと……あるのかも?記憶喪失なのでなんとも……」「なるほど、記憶の混乱ですか。差し支えなければ柄留さん、祖父の話を思い出せるだけ話してもらえますか?」「いいけど……」 ICカードの事は言うべきか言わないでおくべきか。和音君の顔を見ると難しい顔をしていた。「和音君?」「……柄留、後で話す。今は嘘は無しで守山さんに『徳三さん』の事を話せ」「う、うん」 とくぞーさんを強調した!?……って事はそれ以外は嘘は無しで言わないでいいことはそのまま隠してればいいんだよね?「えっと……とくぞーさんとは路地で……」 ICカードの事は敢えて言わないでホームレスとの繋がりとかを話した。「なるほど……それだけですか?何かを受け取ったりしたとかは?」「うーん……受け取ったような何もなかったような?記憶があいまいで……」「そうですか……ま、その辺はこちらでホームレスの事を調べておきます」「守山さん、いいですか」 和音君が切り出した。「妹の亜瑠の足取りを得る為にこの探偵事務所に来たわけですが……依頼料などの話を先にしませんか。このまま後で請求されても困りますので」「それはごもっとも。モンタージュに関しては初回サービスという形にしています。比留山陶子刑事の紹介でもありますしね」 守山罅助はノートPCを閉じて自分自身の携帯端末を取り出した。「探し人の場合相場は20万~30万円となります。探す範囲や日数かかる経費などで変わりますがこのオータムホースシティ内なら一日2万で引き受けますよ。成功報酬として10万は頂きます。更に……」 ボクと和音君に手をかざして笑みを浮かべる守山罅助。「依頼人のあなた達が協力してくれるのなら更に料金は下がります。その場合一日1万円で成功報酬も半額の5万円にしましょう。一日で解決すれば6万円のみで済みます」「……そうですか」「どうします?あ、即断していただかなくても大丈夫ですよ。もしその気になったのならまた連絡してもらえれば」「やる気ですよ。ただ少しまだ用事が残っているので夕方に再度来ます」「わかりました、お待ちしております」 和音君は立ち上がった。携帯を返してもらってすぐに事務所を出ていく。そのまま黙ったまましばらく歩いてバス停に。「柄留」「なぁに?」「引っかかることがあるぞ。守山徳三氏の事だ」「ん?」「比留山刑事はオレに『元刑事の守山徳三氏がやっている探偵事務所』と言ったんだ」 「うん」「おかしくないか?やっていたならわかる」「あっ!……でもとくぞーさん死んだの知らないのかも?それか言い間違えとか?」「現職の刑事だぞ?それは考えにくい……」「それもそっか……じゃあ何で罅助はとくぞーさんは死んだなんて言ったんだろ?」「わからんが考えられるのは……徳三氏は死んだも同然の状態である。もしくは罅助は偽者で徳三氏の死に関係してる何者かのなりすましか」「警察がとくぞーさんを死亡扱いしてないのなら……なんで罅助がとくぞーさんが死んだ事にしたのか気になるね」「ああ、だから柄留。亜瑠の捜索依頼を罅助に協力しつつその辺を探らないか?比留山刑事にもその事は話しておく」「いいけど妹ちゃんの事が最優先だしとくぞーさんの事は別に警察に任せたらよくない?」「……全て繋がりそうな予感がするんだ。お前の事も亜瑠の事も。だからこの街で何が起きていたのか知る必要がある」「わかった。ボクは和音君についていくよ」「よし……それなら次は兜金蒐魅の事だな。お前の見たコンテナまで行こう、そこにAH探偵事務所の七曲キョウヤを呼び出すんだ」「おっけー!」「まだ連絡するなよ?オレたちがコンテナについてからだ」「うん」 ボクと和音くんはバスに乗って第五地区のコンテナに向かう。バスの中で和音君はメモ帳に顔を描いてた。「あ!さっきのモンタージュのMだ!凄い!!」「ああそうだ、しっかりと脳に焼きつけたからな。こうやって記憶した映像をスケッチするのは得意なんだ」「それって刀鍛冶に活かす為に日頃からやってるってコト?」「そうだ。良いと思ったもの気になったものをこうやって描いておくのが癖になってる。このMのモンタージュを七曲キョウヤに見せて反応を見る」「おお~……」 和音君って探偵の才能があるのかも? ふむ……そしたらボクは助手かな。【名探偵カズネ&える!!】 そんな事を考えながらバスに乗っていたら目的地の第五地区に到着した。 コンテナまでの道のりは覚えているから和音君を案内する。「……柄留、いつでも動ける準備をしろ。何人もの気配を感じる」「むむ……わかった」 警戒しながら兜金蒐魅のコンテナに着いた。すると他のコンテナや資材の影からぞろぞろと仮面の男達が現れた!「……何者だお前ら」 仮面の男の一人が言った。「その声、先日のひったくり犯だな?」「!?テメェそういやそうか……あの時の邪魔しやがった優男」「ひったくりの次は集団暴行か?」「黙れ!!」 ざっと見て仮面の男達は5人。グレイブラスターで一気に制圧出来ないことも無い。「そのコンテナはよそ者が勝手に触っていいもんじゃねえんだよ!!」「よそ者かどうかまだ判らない。おまえ、七曲キョウヤって男を知ってるだろ?」「な!?なぜそれを!!」「……やはりな。今すぐそいつと話がしたい」続く
Apr 3, 2022
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