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諸田和音:龍の力が覚醒しつつある柄留:グレイブラスターの使いすぎの影響があるReviveTheGunSword灰蘇の剣銃30「覚醒と変革」 影彦派閥はLOKIの襲撃で混乱、西側と北側に戦力を分けた。西側二本の橋の一つは崩壊し残る橋を通って影彦派閥は侵攻してきた。圧倒的火力の派閥兵を街に入れるわけにはいかない。第六区の連中を下がらせてオレが前に出る。 『和音君!一人で行くの!?』 携帯から柄留の声がした。 「大丈夫だ問題ない。徐々に力は増しているし思い出したことも色々ある。お前はLOKIを見張っておいて欲しい」 『わかった~……』 柄留にはLOKIを見張らせる。オレはオレの出来る事をする。 オレの目の前には軽く2メートルを超える怪人が二人。一人はカマキリと日本鎧が組み合わさった姿、もう一人はクワガタと西洋鎧が組み合わさった姿だ。連中は武装したアーマー兵を待機させ大型の怪人だけが前に出てきた。 「怪人になってお前がどれほど異常な存在かって解るぞ少年……なぁ」 「我らはお前の力を分析していた。DMC怪人のハンマーキングを赤子の手をひねるよりも容易く仕留めた映像を見ていた」 「それで?」 「通常の兵器、人間では相手にするのは犠牲が多くなりすぎる。お前が怪人なのかそれとも超能力者なのかわからんがここは超進化した我らが相手をすることにする。そしてここで負けようとも戦闘データは無駄にはならん、何れお前を追い詰めるようになるのだ」 「いいだろう。オレも徐々に力を解放できて嬉しいんだ」 オレがそう言い終わると同時にカマキリとクワガタの怪人は同時に襲ってきた。常人ではあり得ない速度で距離を詰めてくる怪人。ハンドガンを片手に撃って来る。 皮膚を硬化させて腕を前にして迎え撃ち弾丸は拳と腕で弾く。左右に分かれたカマキリとクワガタは同時にオレの足と頭を狙って鎌と化した手と爪を振るう。 「シャア!」「ウルア!」 錐もみ側宙捻りで同時攻撃を回避。着地と同時に横蹴りでカマキリを竜の息吹でクワガタを吹き飛ばす 「ゲハッ」「ゴヘェ」 怪人は転倒するがすぐに立ち上がった。なるほどこれまでの敵とは違うようだ。 「まさか回避された上で反撃までされるとは」「いてぇじゃねえかよ……」 「何故お前たちは怪人になっている?DMCと関わっているのか?」 「DMCなどと関りは無い。だがこの怪人化については無関係ではないな」 「それでいいのか?怪人になどなってしまって良かったのか?」 「良いわけがないだろう……これは生存する為に仕方なく成っただけの事。改造手術で怪人化した連中と違い強制的に変えられた我々はもう人間の姿になる事は不可能、怪人として生きていくしかないのだ。だからこそ覚悟は決まった」 「誰がお前たちを変えた」 「女だな。突撃前に装備のチェックをしていた時突然足元にヘドロのようなものが絡みついてきた。成す術もなく飲み込まれ気が付けばこの姿、目の前には知らない女が立っていたそいつがヘドロを操って見せたのですぐにそいつの仕業だと理解した」 「その女がDMCだと名乗ったのか?」 「女はDMCの怪人化に関わっていることを話した。手術で誕生した怪人との違いを説明してすぐにヘドロと共に消えた。それだけだ……なにがなんだか解らないまま作戦が始まり勢いで怪人化を受け入れたのだ。この作戦に失敗すれば俺たちに居場所はないことが明白」 「その通り。この第六区を完全に掌握すれば俺たちはここで生きていける。あの女もまた現れて怪人化を解くやもしれん。つまりその為に邪魔なお前も始末しなければならん」 「第六区なら怪人であろうと誰も関与してこないという訳か」 顎を蹴られたカマキリ怪人、胸に龍の息吹を受けたクワガタ怪人は再びハンドガンと鎌、爪を構える。 「シャシャー!」「ウリャリャー!」 羽を広げて突進する二体、ハンドガンの銃弾で牽制しながら接近戦を仕掛けてくる。 「フゥゥ」 弾丸、鎌、爪を腕で弾いて側面に回り込む。この程度の動き山での訓練に比べたらどうという事は無い。 ――山での訓練か。 「(……なぜ忘れていた)」 オレは一人で山で訓練をして力の使い方や体を鍛えたのではない。ついこの前までそう思い込んでいた。この街に来て怪人らと戦い徐々に龍の力を解放してきた。それで思い出したのか。 山には妹の亜瑠と入っていたのだ。そして訓練の相手は……僧を名乗る男だった。 名前は……輸波(ユバ)を名乗り曾祖父の知り合いと言い放った。 「(そうだ……思い出してきた。あの男からうちの家が龍に連なる者だと聞かされた)」 オレと亜瑠が15歳になった時あの男はオレ達に何かしたのだ。そのせいで輸波徒の記憶はあいまいになり龍の力も抑えられた。 『成すべき事、しかるべき機が訪れた時、龍の力と記憶は解放されよう』 あの男は不思議な力と武術を使っていた。 「(あの男の力……仙術と言ったか?亜瑠は適性からそれをメインに。オレは古布志宇知(こぶしうち)と呼んでいた武術をメインに叩き込まれたんだ」 記憶が繋がってきた。様々な武術を地元で学んだ時に驚くほど吸収できたのはあの男に叩き込まれた古布志宇知が生かされていたのだ。 平らな場所で無くても、暗闇でも、複数相手でも戦えるようにオレと亜瑠は訓練された。龍の力の暴走を抑える目的と活かす為に。 「(この怪人など輸波や奴のうごかすからくり人形に比べたら大したことはない)」 輸波ならコイツらを鮮やかに制圧するだろう。亜瑠なら敵の戦意を奪って無力化するだろう。オレは……叩きのめすのみ。 「動きが変わった!?」「攻撃が当たらん!!」 カマキリ怪人の銃弾を弾いてクワガタに命中させて腕を捻る。体制を崩したところに足を払って投げカマキリに衝突させる。そしていつもより息を大きく吸い込み龍の息吹を放つ。 オレの口から熱線が発射された。カマキリとクワガタは炎に包まれながら吹き飛び橋の欄干に衝突して川に落ちていった。自分の体が薄っすらと青緑のオーラに包まれているのが見える。 「スウウウウウ……」 更に大きく息を吸う。今度は出力は下げて広範囲に龍の息吹を放つことにする。橋を渡って来る派閥兵を吹き飛ばす為に。 「ハアアアアアア……」 ゆっくりと勢いを殺す事を意識して放つ。オレの口から大量の炎がとびだす。扇状に広がり突撃してきた派閥兵を飲み込んで押し返す。 体が熱い。 眼が冴える。 夜である事を忘れるほどに視界がクリアだ。 沸き上がる力に思わず咆哮をしてしまいそうになる。 「なんだあれは……」「大河さんかそれ以上の……」 後方で声がする。G/Tの連中だろう。 携帯が鳴った、また柄留だ。 『和音くーん!マジでドラゴンなんだねー!!』 「なんの用だ?」 『いやその……ボクのお気持ち表明というか』 「切るぞ、雑談してる暇はない。奴らを追い返さないとならんからな」 『ボクもそっち行きたいな~LOKIの連中見張ってるの疲れるし』 「30分もかからん、大人しく待ってろ」 『はぁい……』 右手を見る。薄っすらと青白いオーラが包み込んでいる。その形は人間離れした凹凸のある皮膚で指先には鋭い爪。 「……」 近くに転倒した車があるのでサイドミラーをもぎ取って自分の姿を見る。 「……なるほど」 全身を包み込む青白いオーラ。額から枝分かれした角の、腰からは足よりも太い尾の、背中からは翼のオーラが見えた。 「輸波が封印していた力が完全に解放された……確かにこれは日常生活においては不便。地元の平和な街では不要なものだ」 ―亜瑠もこの街で覚醒したのだろうか? アーマー兵の一斉射撃を受けるが全て龍のオーラで弾き返す。圧倒的質量で無い限り何の力も込められていない武器はこの龍の力には通じない。 「撃て撃て撃てー!!」「なんだ!?なんで効かないんだ!!」「ひいいいいいいっ!」 炎を纏わない龍の波動で数十人のアーマー兵を吹き飛ばして昏倒させる。この場にいる影彦派閥全員を昏倒させれば終わる。後の面倒ごとは比留山刑事と鈴村功太朗に任せればいい。 オレは影彦派閥を斃し、次にDMCを壊滅させる。 シンプルだ。 「いやはや……ここまでとは」「ゲホゲホ……強すぎんだろ」 カマキリとクワガタが上がってきた。装甲は吹き飛び虫の外骨格は剥き出し。所々破損して体液がにじみ出ている。 「まだやるか?」 「そうしたいところだが……1%も勝ち目はなさそうだ」「化け物ってのはお前の事だぜ……お前ならあのヘドロの魔女をぶちのめしてくれそうだ」 「投降するならこれ以上攻撃は加えない。DMCを潰すついでにヘドロの魔女と会えば潰す」 「投降しよう……」「ところでお前は何の為に第六区で院瀬見と戦う事に?」 「妹とその親友の為、オレ自身が許せないと感じたからだ」 「そうかその姿……」「龍の逆鱗に触れたって訳かい……」 カマキリとクワガタは頭に手を置いて伏せる。その姿を見たアーマー兵たちも武器を捨て座り込んでいく。 『和音君!北側にいる影彦から連絡があったみたい!!降参して功太朗の元につくってさ!!』 柄留が通信してきた。 「そうか、じゃあオレはそちらに戻る」 *** ――数時間後。日は高くなり昼前。 影彦と残りの影彦派閥の連中はLOKIと功太朗が連れて第六区の廃校に移動した。G/Tと罅助、柄留、オレは兜金大河のアジトで待機している。 「一件落着という訳には中々ならん……と」 大河はタバコの煙を吐きながらモニター越しの比留山陶子刑事に言った。 『これでもあり得ないくらい迅速に動いているのよ。院瀬見より速く動けただけありがたいと思って欲しいわね』 「で、どうすりゃいいんだ?第六区に怪人どもが済むのは構わねえがまたあの規模の戦闘を仕掛けられたらたまらん」 『橋の崩壊は事故、北の騒動はテロリストが起こしたことにして警察が鎮圧。北側は第三区のエリア内だから警察も動かしやすかった。だからしばらくは大人しくしていて。G/Tの人間にも第六区からは出ないように言い聞かせて欲しい。鈴村功太朗が院瀬見と交渉してうまくいけばもう第六区は【見捨てられた地区】ではなくなるから』 「どういうことだ?」 『院瀬見の第六区の事業開発に鈴村功太朗と影彦が共同で取り組むことになってそのチームに第六区の住民を入れるって話よ。影彦側も怪人姿の部下たちを世間から隠せるし第六区の住民も正式に院瀬見の雇われになるからもう他の地区からの襲撃には晒されないはず』 「……けっ!結局は院瀬見のいいようになるんか!まぁでもこの話が上手くまとまれば職にあぶれて犯罪に走る奴も激減するやろうしな……」 『どちらにとってもいい話であることは確かよ。これに関して気に入らないと感じる者は少なくないでしょうけど反抗して台無しにするまでいかないかと。邪魔が入るとすればDMCかしら』 「陶子、DMCってのは結局院瀬見の関係なんだろう?」 『ええ、表向きは無関係のカルト集団だけど実際は繋がっている。DMCは解体させなければならないけど尻尾切りして無関係を貫くでしょうね』 「だが潰すと」 『ようやく捕まえた尻尾ですもの、引きずり出して叩き潰すわ。それで少しはこの街の治安バランスも良くなるはずよ』 「直接叩くのは難しいからはみ出している部分を潰していくってぇ訳か」 『貴方にも期待しているわ大河』 「警察には出来ねぇことをやらせるつもりなんやろう?相変わらず偉そうな女や」 『また何かあればこちらから連絡するわ。第六区の住民への説明と誘導お願いね』 「貸しだぞ陶子……」 そこで通信は切れた。 「これからアホ程忙しなるな……」 大河は吸いかけのタバコに火をつけて大きく煙を吐いた。 「……で、諸田。お前はどうする?LOKIが連れて行った鈴村功太朗と影彦を見張るんか?」 「いや、オレはDMCを潰しに行く。比留山刑事たちだけでは怪人に対抗できるとは思えないからな。時間をかければ奴らに逃げられる」 「陶子らが逮捕状を取ってる間に踏み込んで敵のボスを捕まえるんやな?」 「ああ、一気にやってやる。後の事は比留山刑事らに任せる」 「ボクも一緒に行く!絶対に行く!!」 柄留が近づいてきた。左目が充血している。 「自分の身は自分で守れるな?」 「うん、和音君の足は引っ張らないむしろ助ける!」 「そうか、なら自分の体調にも気をつけろ。左目が充血しているぞ?グレイブラスターの影響じゃないのか?」 「え!マジ!?」 柄留は慌ててアジトの鏡を覗き込む。 「ホントだぁ……ちょっとバカスカ撃ちすぎたのかもね。Gウェポンつくるのに大分弾撃ったから」 「しばらく休んでろ」 「え?待って和音君もう行くの?そもそもDMCのボスの居場所第五の中央塔であってるの?」 「外れてたらその辺の奴に聞くまでだ。時間をかければ奴らに逃げられる一気にやる」 「ひょえー……超電撃作戦……わかったボクも行く!グレイブラスター使うの控えたら多分大丈夫だし待ってるの嫌!!ダメって言われても付いて行く!!」 「無理するなよ?オレが退けと言ったら絶対に退くんだぞ?」 「うん!」 「バイクを借りるぞ兜金大河」 オレはこの前借りたバイクを見る。 「ああ、使ったってくれ!飾ってても意味ないしな」 サイドカー付きバイクに跨ってエンジンをかける。サイドカーには柄留が飛び込んだ。 朝日はまだ見えないが周囲は明るくなり始めている。第六地区の荒れたアスファルトの道路をバイクで走り抜ける。橋を渡りサイドカーを見ると柄留はうとうとしていた。 『よぉー和音っち』 七曲キョウヤからの通信が入った。 「何だ?用があるなら無駄話は無しで言ってくれ」 『冷てーじゃないの、まぁいい。そのバイクを使ったって事は俺っちに追跡されても問題無いって事だよな?……警戒しなくても後ろから狙ったりとかしねえって。ただ勝手に付いて行って好きに動かせてもらうって事を一応伝えたくてね。ほらコソコソしてたら蒐魅……柄留チャンに撃たれちまうかもしれねえしナ!』 「精々巻き込まれないようにな。オレはお前に配慮などしない」 『オッケー十分気を付けるわ。そんじゃーなー』 一々癇に障る奴だ。龍の力が徐々に解放され感情の高ぶりが激しい。七曲キョウヤを見かけた時に潰さないように気を付けなければ。 第五地区に入ると無数のドローンが飛んでいるのが見える。警戒を強めている。それならそれで構わないDMCの戦力を引きずり出して潰すまでだ。 続く
Dec 31, 2022
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ReviveTheGunSword灰蘇の剣銃29「第六区北側の戦闘」 ――第六区北側のゲート付近 侵入した戦闘フレーム機、装甲車両はぬかるみに足を取られ立往生していた。歩兵たちも肩の深さ程度もある緩いぬかるみで作業は捗っていない。 「クソ!こんなトラップ仕掛けやがって!!」 戦闘フレーム機は動けば動くほど嵌りこんでおり両足部分は完全に沈んでいる。第六の抵抗勢力を追って先に進んだ歩兵部隊は細い道を選んだ為ぬかるみのトラップに掛からなかった。しかしその先にはハートが潜んでおり半数以上が彼女の犠牲となったのだ。 「大したもんやな……」 少し離れた建物の屋上から暗視双眼鏡で眺めている兜金大河。その横にはハート。 「……」 「無口なやっちゃな、まぁええおしゃべりしとる場合でもないな。ワシらG/Tはここで奴らを迎え撃つ。この付近の住民の避難も終わったしな、お前んところのボスにそう伝えといてくれ」 「分かった」 屋上の床に沈んで消えるハート。 「ホンマにあの院瀬見の部隊に勝てそうやぞ……粘って敵を諦めさす気でおったが」 院瀬見としても長時間の戦闘は避けたいはずと兜金大河は読んでいた。戦闘が長引けば第三地区からの通報で警察は動かざるを得なくなる、そうなれば院瀬見としても放置しておくわけにはいかない。そうすればとりあえずは撤退させられる。第二の襲撃も考えられたがまずは今回の襲撃を止めなければ先は無い。 「オイ!彪(たけし)!西側はどうなっとる?」 G/Tの部下木津彪に聞く。 「めちゃくちゃいい調子ですぜ!LOKIの連中のおかげで殆ど侵入させてないとの事!!」 「そうか」 兜金大河は喜ぶと同時に突如加勢に現れたLOKIの強さが引っかかった。 「(ホンマになにもんやあいつら……諸田は別としてLOKIは信用してええんか)」 *** 「ギシュウアアアアアアアアアッ」 崩壊した橋の下で派閥兵らと戦闘をしていた緑の獣シャパリュは自分の弾薬が切れたことに気付きイラついた。 この場で食事を続ければ爆発する弾丸の精製も可能であったが敵の数は多く耐久力も高い。更に怪人化で常人を超える体力で迫ってくるため食事の余裕はなかった。 『そろそろ退くでござるよシャパリュ』 シャパリュのランドセル型カバンから声がした。LOKIのメンバーでサムライのアンバーの物。カバンの中にはアンバーの分身の小さな蛸が潜んでシャパリュに声を伝えていた。盗聴の心配のないLOKIメンバー専用の連絡手段。 「ギイイイイイ……」 『目的は敵の全滅ではござらんよ。殿(クリムゾン)が敵の大将を取れば終わるのでな』 「ギギギ」 高速バック宙返りであっという間に上に登り、派閥兵らを睨みつけるとシャパリュは後方のアンバーの元へと退いていった。 後方のバリケードの傍に止まっているトラックの荷台にアンバーは立っていた。 「ギィ!」 「戻ったな、おぬしは食いしん坊でござるからな。ほれ、たんと食うがいいたこ焼きより肉の方が好きであろう?」 アンバーはスイカほどの大きさのケバブをシャパリュに渡す。自身は好物のたこ焼きを食べている。 「トニトルス、北側の様子はどうでござるか?」 アンバーは小蛸を使って上空を飛んでいる第六区全体の様子を伺っている白い羽のシスター・トニトルスに問いかける。 『主(クリムゾン)は敵の大将がいる部隊と接触、ハートは作戦通り北側から侵入した部隊を混乱に陥れて足止めをしている』 「拙者とシャパリュは次は鈴村功太朗の護衛に入る。凄みのある少年と交代だ、確か名前は諸田和音であったか」 『アンバー、シャパリュ、主の狙い通り存分にLOKIの力を見せつけたか?』 「ちと拙者もシャパリュも暴れ足らんが力は見せつけてやったわ」「ギィギィ!!」 たこ焼きとケバブをほおばりながらアンバーとシャパリュは言った。 *** クリムゾンの操る戦闘フレーム機が院瀬見の戦闘フレーム機を組み伏せる。邪魔者を押さえつけたクリムゾンは影彦の乗る装甲車両に向かって走る。 「させん!」 二人の軽装兵怪人が立ちふさがる。ヘルメットの顔下半分から昆虫めいた口部が見えている。一人は両腕がカマキリ状、一人は右手が鞭状であった。 「影彦さんと話がしたいと言ってるのですが?」 「させんとこちらは言った」 「うっとうしいですわね。ハート!こちらに!!」 クリムゾンが叫ぶと地面から黒い影が飛び出した。呼びかけに応じハートが現れた。 「ハート、邪魔する者は全て始末なさい」「了解しましたクリムゾン様」 「チェリャアアアアアアア!!」 ハートに一斉に飛び掛かる軽装怪人。地面に吸い込まれるように消えて回避するハート。その隙にクリムゾンは駆ける。 クリムゾンに向けられるアサルトライフル、ショットガン、プラズマライフルの一斉掃射は全てコートの変形で受け流しすれ違いざまに怪人らを発火していく。 「と、止めろ!!奴を食い止めろ!!私の居場所を特定されてるぞ!!」 「お任せあれ!!」 装甲車から飛び出したのは諸田和音を襲ったブラックヴァリーエージェントの同僚・翼真。キリギリスめいた怪人となっていた。 「忍法爆炎遁!!」 キリギリスの脚力で飛び上がって印を結びクナイを投げつけるキリギリス忍者。クリムゾンは右に躱して回避。追撃の手裏剣は金の杖剣で弾いた。避けたクナイが次々と爆発、クリムゾンの背中を爆風が襲う。それに合わせキリギリス忍者は背負った身の丈ほどもある手裏剣を全身を使って投げつける。ジェット噴射で超高速回転の巨大手裏剣。 「爆炎+鉄骨を切り裂く巨大手裏剣の回避不可能な二重攻撃だ!」 爆炎で体を焼きながら吹き飛ばし回避不可能な状態を作り出しての巨大手裏剣投擲。この必殺のコンボは様々なサイバネ、同業者を葬り去ってきた為、翼真は自信を持っていた。キリギリスの力を得てこの必殺コンボは数種類のパターンを使い分けできるようになった。必殺コンボの後は真っ二つに避けた肉体が転がるだけ、そのつもりだった。 「空中で……停止している……だと!?」 クリムゾンに命中した爆炎は消えて霧に、巨大手裏剣は砂に変わって霧散していく。 「馬鹿な!」 「中々の術でしたよ。かなりの衝撃をくらいましたわ」 着地して砂を払うクリムゾン。骸骨の空双眸の奥で赤い光が見えた。 「ありえん……」 「貴方の技術は凄いものですよ。ですがわたくしにダメージを与えるには至りません」 「オオオオオオオオオオッ!!」 クナイを連射しながら突進するキリギリス忍者、ぬかるみに足を囚われ転倒する。 「ごぼっ……!?」 「半径3メートルの地面を泥に変えました」 クリムゾンの金杖剣が地面に突き刺さっている。 「さようなら」 泥の中から巨大な手が現れキリギリス忍者を掴み地面に沈んでいく。 「ごぼぼぼぼぼ……」 泥は徐々に赤みを帯びマグマへと変わる。沈められたキリギリス忍者は成す術もなく燃え尽きた。 クリムゾンは金杖剣を振る、するとマグマは蛇の如く四方に伸び様子を伺っていた怪人兵に降り注ぐ。 「ぎゃああああ!」「ぐあああああああ!」「ごあああああああ!」「ぎええええええ!」 軽装兵の耐火温度は500度。マグマの1200度には耐えられない。 「来るな来るな来るな!!」 影彦は慌てて装甲車内にある自動装甲装着装置に腰を下ろす。3秒で専用超重装甲を身にまとう。神名のパワードスーツを参考に開発した地球環境全適応型戦闘スーツのプロトタイプである。 「あ……」 影彦が立ち上がった時装甲車の中にはコートを着たルビー色骸骨が立っていた。 「ようやく会えましたわ。ですがすぐにさよならです時間が惜しいので」 「な!?」 クリムゾンの金杖剣が超高速で伸びる。影彦の専用アーマーは自動回避システムを搭載していたが感知出来ずに易々と触れさせてしまった。金杖剣は胸から装甲と同化、アーマー内では警告の表示。影彦はパニックを起こし放電して撃退を試みるもそれがかえって悪化を招いた。金杖剣は電撃をエネルギーに変え同化の速度を増す。 「あ、ああああああっ!あああああああああああああああああ!!」 院瀬見の最新技術を発揮できないままアーマーは沈黙。全身を金色に変えその後液体に変化して影彦の体から離れた。 「鈴村影彦、および院瀬見の新型アーマーのデータ収集完了しましたマスター」 金の液体金属から声がした。徐々に伸びあがり一糸まとわぬ影彦の姿となって表面の色を人体の物にかえていく。 「ひいいい!!」 腰が抜けた影彦は尻もちをついたまま後ずさりする。 「ご苦労様【来夢】」 クリムゾンは液体金属に向かってそう言った。 「な、なんなななななんだそれは!!お前は何だ骸骨!!」 「わたくしはLOKIのクリムゾンと言ったはずです。こちらの子は【来夢】。この子はわたくしの大切なパートナーSuper Life Medical Equipment通称SliME」 来夢がクリムゾンを包み込むと幼さの残る若い女性へと姿を変えた。その姿はクリムゾンの骨格に最も適した姿に。元々そうであったかのような容姿。 「解らん………意味不明だ……液体金属のAI搭載型ロボットなど……聞いたことも無い」 「まだこのSliMEを知るものは僅かです。この世に3体しか無い存在ですので」 「お、俺をどうする気だ!!」 「貴方はわたくしの操り人形となり鈴村功太朗の為に動くのです。第六区は鈴村功太朗によって救われるというシナリオの為に」 「そ、そんな事がうまくいくわけがない。他の派閥も警察も市長も黙っていないぞ!」 「さてそれはどうでしょうか?第六区に限りませんが人の恨み執念と恩を甘く見てはいけませんよ」 「く……」 幼さを残した整った顔立ちのクリムゾンの鋭い眼光に気圧される影彦。骸骨の時とは違う恐ろしさ。 『人の恨み執念と恩を甘く見てはいけない』 この言葉にただならぬ力が込められているのを影彦は感じた。 「影彦派閥は半数を生き残らせて功太朗派閥に加える予定でしたがイレギュラーが発生しましたので……全滅ですね。どこの誰が余計な事をしてくれたのか知りませんが怪人化とは……なので貴方に命じます。兵は退かせずにひたすら突撃させなさい。第六区も多くの犠牲が出るでしょうがLOKIの他にも強力な者達がいるので派閥の勝利はあり得ません」 「ま、待ってくれ助けてくれ………」 「わたくしの操り人形でいるうちは死なせませんよ?ああ、他の派閥とのトラブル等は自分で解決してくださいそれでは」 秋馬昊菜は影彦の胸を刺し心臓に金杖剣で鎖を巻きつけた。 「これで生殺与奪の権利はわたくしに。心臓に取り付けた鎖は来夢とリンクしていますのでいつでも握りつぶすことができます。わたくしの事も来夢の事も話せば死にます」 「あああああ……うあああああああああああ……」 「何を言ってはいけないのか、どう行動すればいいのかよく考えてくださいね?そうすれば貴方は長生きできる。まぁ露払いくらいはしますとも」 「ダメだ!殺される!!自分の派閥を全滅させて生きていられるものか!!」 「やり手の貴方なら生き残れると信じています」 頭を抱えて床を転がる影彦を置いてクリムゾンは骸骨姿に変え装甲車から出る。外に広がっていた光景はハートが兵たちを肉塊に変えた後の金属と血と肉の海であった。 「クリムゾン様」 声をかけるハート。 「集合場所に行きましょうハート」 *** 第六区の中央にあるG/TのガレージにLOKIは集合する。鈴村功太朗は戦闘フレーム機に座ったままタブレットを操作して戦闘の状況を確認している。 「影彦の説得は失敗したのか……」 「ええ、残念ながら。何かに怯えるように必死でしたわ」 クリムゾンは功太朗の戦闘フレーム機の腕に飛び乗って言った。 「影彦の派閥と全面戦闘か……第六区の人たちが戦っているのにここで私はじっとしていていいのだろうか?」 「北側の戦力はほぼ鎮圧、西側からの主力部隊も時間の問題です。貴方は自分の身を守ることを考えてください。そして勝った後にどうするのかが大事です」 「勝った後の事か……クリムゾン、君が影彦から得た情報によると第六区は都市開発計画により空港へと変えられる予定だとか」 「ええ、そうです。もはや第六区空港建設計画は決定してしまってるようですね。では貴方はどうすればいいか」 「……これから計画を廃止させるよりは……影彦派閥の代わりに私がここを担当して第六区の住民に対して出来るだけ配慮する……」 「はい。そして空港建設計画の人員は他派閥に取り込まれた貴方の元派閥メンバーと第六区の住民」 「そんな上手くいくだろうか?」 「いきますとも、貴方の人柄、話上手、熱意、思いやり、情熱それにLOKIの力があれば影彦派閥では成し遂げられなかった事も容易に可能です。ここから始まるのです」 「私は院瀬見を変えられるのか?」 「貴方とわたくし達で変えるのです」 功太朗の見つめるカメラの画像には西側の諸田和音と大型の怪人たちの戦闘。北側の派閥兵と戦う兜金大河+G/Tのメンバーたち。 「このガレージはLOKIが守ります」 「ボクもいるんだけど」 グレイブラスターを回しながら入ってきたのは柄留。LOKIの見張りとガレージの防衛をかねてここに戻ってきた。 「おや、そうでした。北側では貴女の出番はありませんでしたね」 「それは別にいいんだけど……結構押してたはずなのにあっさり退いたのはなんで?」 「補給と現状把握の為ですよ。貴女こそ殆ど前には出ずに後方居ましたね何故です?」 「LOKIが怪しいからだよ。前行って後ろからなんかされるの嫌だったからね」 「それで後ろから見ててどう判断しました?」 「……とりあえず様子見でいいかなって。街と功太朗の為に動いてるのは本当っぽいし。ボクはこの街を……特に第六区がマシになればいいなーって思ってるんだ」 「じゃあ味方ですね」 「ま、とりあえずは……」 柄留はクリムゾンに近づかない。戦闘を目撃して彼女の金杖剣、術の範囲には入らないと決めた。それと同時に数時間前のことを思い出した。功太朗のアジトで目の前で話をしていたことにゾッとした。 「不思議な力を持った柄留さん。これからもLOKIと仲良くしましょう、勿論あの幻獣のようなオーラを放つ諸田和音さんとも」 クリムゾンはタブレットの画像を見て言った。和音が大型の怪人2体を同時に叩き伏せている所であった。 続く
Dec 11, 2022
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