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ReviveTheGunSword灰蘇の剣銃28「クリムゾンとハート」 影彦派閥の様子を院瀬見ビルの一室から見ている時田麻村と妻の樹玲。程なくして戻ってきた魔女。 「戻ったか、これでオータムホースシティは次のステージに移行する訳だな魔女」 「ええ、影彦君が勝っても負けてもこの街は変わります。従来の普通の人間の犯罪者は減って行く一方で怪人犯罪者が増える。怪人は人間ではないので裁くための法の整備には時間がかかります。その間に我々が優位になるダブルスタンダードの準備を進めるのですよ」 「一方で怪人をばら撒き支配!もう一方で怪人に対するヒーローもしくはヒロインを立ち上げ対処させるのね!」 「はい」 「ヒーローは見た目は満点、不遇属性の少年少女がいいわね!」 「そうとも!悩んで苦しんでいくつもの壁を超えて成長していくヒーローこそが人々の共感を得る!そしてその存在は我々の掌の上という事だ!」 「至高の存在を誕生させる為の実験で生まれる怪人。そのテストと合理的に処分してくれる存在、それが我々の作るヒーローの真の役割」 「フフフ……何も知らない怪人共は人類を超えた新しい支配者層となる為に動き、街の人間はヒーローヒロインに秩序と平和を求める。まぁ上手い事バランスよくやっていきたいですね。」 魔女はほくそ笑む。仮に時田夫婦のダブルスタンダードがバレたとしても殺されたとしてもいくらでも怪人王の代えは作れる。最悪院瀬見が傾くことになっても担ぎ上げたヒーローに建て直させ新・院瀬見にすれば人々は簡単に騙される。 魔女にとって最大の邪魔な存在であった【グレイマンと白魔女】はもういない。院瀬見は既に支配したようなもの。街の地下に挑む楽しみもある。あと100年は楽しめると考えた。 ―魔女は諸田和音&柄留、それとLOKIの存在を取るに足らないとこの時は考えていた。 *** 影彦のプライベート携帯電話が鳴った。知っているのは数人だけ、かけてきたのは知らない通知の番号。 「……誰だ?」 『影彦、私だ。功太朗だ』 「兄!……なんだ今更!』 「私は第六区の住民を守るために手を貸す。お前たちの虐殺を見過ごせない」 「なんだと!?」 『影彦、お前と戦いたくない。引いてくれないか?お互い無駄な犠牲を出さない為にも』 「第六区の殲滅は確定事項なんだ!全て破壊する、何もこの地には残さない。抵抗する者は死ぬだけだ逃げたい奴は海に飛び込んででも逃げるがいい。ただし他の区に逃げる事は許さない、退去命令は出していたし移住の提案もした。オータムホースは院瀬見が支配する街だ、不法占拠者も不法滞在者も許さない」 『どうしたんだ影彦、何がお前を追い詰めてる?』 「やるべきことをやるだけだ!今更止まれないのだ!!兄よ!!失脚して大人しくなったと思ったらまだ俺の邪魔をするのか!!」 影彦は通話を切る。 「クソッ!!あの謎の連中も兄の用意した奴って事なのか?……許せないどいつもこいつも俺を見くびりやがって……」 更に薬物を打つ影彦。腕に取り付けた端末からバイタルチェックのアラームが鳴る。既に許容範囲の摂取量を遥かに超えておりいつ死んでもおかしくない状態にあった。 「俺は……俺は絶対にやりとげるぞ……」 影彦の目の前には魔女が置いて行った小瓶。 「やれる!俺ならやれる!!この仕事をやり遂げれば他の派閥を出し抜ける!!」 市長から命じられた第六区の開発計画。この街の頂点に君臨しているのは市長であり、院瀬見が他の企業を出し抜いて実質街の企業トップに居られるのは彼のおかげであった。 市長の応えられなければ影彦派閥に未来は無い。 「あの市長……鬼か魔王の類だあれは」 現市長が当選してから院瀬見は凄まじい右肩上がりをした。彼が院瀬見と縁のある者で政財界とも繋がりがあり学生時代に立ち上げた会社が海外の一つの国を救ったことで話題にもなった。その会社は院瀬見に売却され金は孤児院の設立に使われた。院瀬見に就職してからも週168時間連続労働も苦も無く、成果を上げ続けあっという間に1年で派閥の2番手に上り詰め電撃的に市長選に出馬。いつの間にか行っていた街への奉仕活動の甲斐もあって圧倒的票差で当選。疲れを知らず恐れを知らず確実に仕事をこなしていく姿は人間離れしていた。 誰ともなく市長の事を鬼、魔王と呼ぶようになった。 ――第六区の北側から侵入すべく第三区の端の幹線道路を進んでいたA隊が停止した。第六区へと繋がるゲートは目の前。 「どうした?」 『誰かが立ちふさがっています』 「退かせろ、言って分からないようなら黙らせればいい。三区での騒ぎはマズいが一人くらいどうにでもなる」 『はい』 装甲車からプラズマライフルを装備したアーマー兵一人が降りる。普通はこの姿を見ただけで逆らう者など居ない。圧倒的武力の前には反社会的なサイバネであっても道を譲る。警察とは違い持っている武器の殺傷能力が違いすぎるからだ。警察は基本ショックガン、ゴム弾、ネット弾、催涙弾などの非殺傷武器が主だが企業のアーマー兵が持つ武器は戦争でも使われている公には使用が禁じられている物。一般流通はしていないがこの街ではそこかしらで見かける。アウトローの中には仲間がプラズマガンで灰にされたのを見た者もいる。 「退け、プラズマガンで灰にされたくないだろう?」 アーマー兵はワザとらしく院瀬見のロゴのついたプラズマガンを見せつけた。院瀬見の特殊部隊を相手にすればどういう事になるか子供でも知っている。プラズマガンで灰になるか銃弾でハチの巣になるかだ。 「引き返した方が良いですよ」 人影が言った。 アーマー兵は舌打ちをしてライトを照らすと赤黒いコートを着た小柄な人物― 「な!?」 ――人物と判断していいのかアーマー兵は迷った。目の前のコートの者は、コートを着ているのは肉体の無い骸骨だった。 「は?え??」 ライトを照らしながらアーマーヘルメットに搭載されたエイム機能でサーチする。温度も鼓動も呼吸も感知できない。 「わたくしはクリムゾン。警告をしに来ました、これ以上進むのであれば全滅を覚悟しなさい」 「何を!なんだ、何だお前は!!」 思わずプラズマガンを撃つアーマー兵。プラズマはクリムゾンの目の前で霧散する。 「そちらがその気なら」 左手に持った金の杖剣を前に突き出す。弾丸めいた速度で切っ先が伸びアーマー兵のプラズマガンの銃口に突き刺さった。 「ウワアアアアアアアアッ!!」 アーマー兵が絶叫する。防弾、防火、アーマーの内部の己の肉体から炎が上がった。 「何が起きた?」 影彦は部下に投げかける。 『解りません突然アーマーの内部から発火したように見えましたが』 「話をしませんか?橋での戦闘でトニトルス、アンバー、シャパリュを見たでしょう?あの者達を率いてるのはこのわたくしクリムゾン。そしてもう一人後ろのゲートの中に控えているのはハート。わたくし達はLOKIと言います」 影彦たちは答えない。 「まぁ、そうでしょう。いきなり話を持ちかけても警戒して武器を構えますよね?ですが考えてください、トニトルス、アンバー、シャパリュは問答無用であなた達を襲いましたがわたくしは違うでしょう?話に応じないのならもう何人か黒焦げにして見せればいいですか?」 「……」 「わたくしを無視して進んでもハートがあのゲートの向こうに居ますから全滅を覚悟で進んでください。あの子には来たもの狩るように伝えてますから」 「大した自信だなクリムゾンとやら……!」 今度はミニガンを持ったアーマー兵が車両から現れた。数秒で車をスクラップにする火力を持つ民間企業が持つには過剰すぎる武器。魔女によって怪人化されているためアーマー兵はアシスト機能とあわせてミニガンを片手で持てる身体能力を手に入れていた。 「この毎分6000発を吐き出すミニガンを前にしてもデカい口が叩けるのかな?」 「流石に物理パワーで押されると厄介ですが……負けはしませんね」 「馬鹿が!ミンチ1号はテメェだ化け物!!」 ミニガンのスイッチを入れるアーマー兵。だが銃身の回転が始まらない。 「何だ!?何故動かない!?アツウウウイッ!!」 燃え上がるミニガン。アーマー兵の両腕は内部から炎に焼かれる。 「どうですか?」 火を一瞬にして消すクリムゾン。アーマー兵は地面を転げる。いつの間にか離していた金の杖剣は転げまわるアーマー兵の横のミニガンに着いていた。 「チッ!こちらは何があっても退けんのだ!!奴にかまうなゲートに突撃だ!足止めにフレームを2機に対処させる」 影彦は搭乗型戦闘フレーム2機をクリムゾンに向かわせ脇から数十のアーマー兵、車両を走らせてゲートに向かう。 「なるほど、私には構わず第六地区の住民の始末が最優先と。確かにこの数の差は私一人では止めきれませんね」 クリムゾンの目の前には戦車並の火力装甲を持った高機動人型兵器が2機。この街では重量と大きさの為普段は滅多に姿を現わさない。この機体は主にサイバネ処置を受けた者がパイロットとなる。元々は宇宙海底探査用に開発されたものを改造した。 これは神名の小型で搭乗者のサイバネ改造の必要のないアーマーのように運用できるパワードスーツに対抗すべく造られた物。 命がけで院瀬見の者が手に入れた神名のパワードスーツの一部。そこから判ったのは第一世代ですら院瀬見には到底追いつけない技術の塊。京都に本社がある会社センジョーは旧型ではあるものの神名の第三世代パワードスーツを運用している。噂では神名は既に第五世代を開発したという。 クリムゾンはこのデータを知っていた。神名の第五世代らを相手にするのならともかく、院瀬見の戦闘慣れしてない兵が操作する旧型機など、どうにでもなると考えていた。 「(院瀬見の1派閥が持てる戦力はこれで大体予想できた。後は怪人らに対処すれば……)」 *** クリムゾンを無視して進んだ影彦派閥のアーマー兵、装甲車両、フレーム機体は第三区から繋がる第六区への立ち入り禁止と書かれたゲートを打ち破りが侵入した。一番に踏み込んだアーマー兵のヘルメットにスナイパーの弾丸が命中、火花を散らして傷つけた。兜金大河率いるG/Tの戦闘員の狙撃。 「なんだぁ?第六区のクズ共一丁前に!!」「ひき潰せぶち殺せ!!」「ヒャアアアハハハー!!」 アーマー兵はひるむことなく先頭を走り続いて装甲車両、フレーム機体と続く。 「ヘヒヒヒヒ!隠れても無駄だぜぇ!!センサーに引っ掛かりまくりなんだよなぁ!!」 人間相手に対物ライフルを放つアーマー兵。廃材で作ったスナイパーライフルを持った男の上半身が粉々に砕け散った。 「まず一匹~!!」「オラオラ皆殺しだぁ~!!」「ギャハハハハハハハー!!」 連射ショットガン、プラズマガンを持ったアーマー兵が狭い通りを撃ちながら走る。次々と第六区の抵抗勢力+G/Tの者達が倒れていく。 「火を放て~!!北西のここからなら一気にボロ街は火の海だぁ!!」 先頭を走るアーマー兵ら。異常なまでに興奮していて後ろの同僚たちがいない事に気が付かない。怪人化の影響で息切れを起こさず走り続ける。 「ヒヤアアアハアアアアアアア!!」 逃げる抵抗勢力を撃ち続ける。壁を背にして弾倉を交換している時に自分たちの後ろには他の同僚がいないと気が付いた。 「ああん?也坂らはどこ行った?」「ん?そういやいねえっすな?」「ち、はぐれやがって!!影彦さんにどやされるぞ!!」 アーマー兵ら数十人の内半数の姿が消えた。 「クソ!暗すぎるんだよこのクソ吐きだめの街はよー!!」「通信の反応もない」「完全にどっか行っちまいましたねぇ」 アーマー兵らはお互いに背合わせになり円の陣形を組む。 「こちらウルフチーム!ホークチーム、応答せよ!!」 反応は帰ってこない。 『どうしたウルフチーム。何があった』 影彦からの通信。 「ホームチームと連絡がとれません」 『何だと?こちらはクズ共の仕掛けたぬかるみのトラップで足止めされている……ウルフチーム一旦こちらに戻れ』 「了解」 ウルフチームはV字の陣形で撤退を開始する。先ほど走り抜けた通路が水びだしになっている事に気が付いた。 「なんだ?水……か」「脅かすな!可燃性の液体化と思ったじゃねえか」「おい!11時の方向に何かいるぞ!!」 アーマー兵の一人がライトを照らした先には黒い三角形の物体が地面を走っている姿だった。それは海での捕食者が得物に迫る様子であり、或いは海が舞台の映画で恐怖を煽るシーンでみる様子。 「鮫(さめ)!?」「馬鹿か!こんな所に鮫がいるわけないだろう!!」「じゃあ何だあれは!!」 『鮫じゃあないんだよ……もっと怖い鯱(シャチ)なんだよなぁ』 声がした。迫って来る三角の物体から聞こえた気がした。 「撃て撃てぇー!!」「うおおおおおおおおお!!」「がああああああああ!!」 三角の物体は沈んで消える。そして次の瞬間アーマー兵の一人の足の間から黒い影が現れ股間に噛みついた。 「ウギャアアアアアアアアアアア!!」 防弾アーマーを軽々と噛み千切り股間から腰にかけてゴッソリと失うアーマー兵。臓物をまき散らして倒れる。 「ひいいいいいい!!芳賀村ぁああ!!」「ううううああああああああ!!」 一気に混乱に陥るアーマー兵達。残り20人程度のアーマー兵らは狂ったように弾丸をまき散らす。 「どこにいるんだ!どこだ!!」「感知できねえ!!なんでだ!!」「シャチってなんだよ!なんで地上にいるんだよ!!」 鯱の姿で潜むのはLOKIのメンバーであるハート。 『恐怖しろ心臓が止まるほど!』 ハートは近接攻撃の他に消音銃での攻撃を混ぜアーマー兵を翻弄する。 「ヤバイぞ!水たまりから離れろ!!奴は水に潜んでいる!!」 『残念、惜しいけど違うんだなぁ』 壁から飛び出したハートはアーマー兵の頭部を食いちぎり地面へと消える。 「撤退!!てったーい!!」 一目散に逃げるアーマー兵。その様子をハートは地面に潜みながら眺めていた。 *** ――ゲート前。クリムゾンの前には戦闘フレームが行く手を阻み、後ろには軽装のコンバットスーツを着た男がフォトンソードとハンドガンを持って構えていた。 「どうやらハートはやってくれたようですね。こちらもなんとかしますか」 金色の杖剣を弄ぶクリムゾン。 「随分と余裕だな?戦闘フレーム機とプロの暗殺者に囲まれているというのに」 「そう見えます?そちらは発火が怖くてわたくしに仕掛けられないみたいですけど。言っておきますとわたくしがその気になれば一気に機体の中の人も忍者みたいなあなた達も燃やす事が可能でしてよ」 『パイロキネシスか……恐らくはカテゴリー3かそれ以上』 影彦が装甲車から呟いた。 「あ、ちなみに超能力者じゃあないです。これは錬金術ですよ私はサイバーアルケミストを名乗ります」 クリムゾンは金の杖剣を地面に突き刺すと黒焦げになったアーマー兵が立ち上がった。 「ゴーレム錬成。ついでにミニガンとプラズマガンも復元しましょう」 アスファルトを纏った黒焦げのアーマー兵ゴーレム。糸で操ったマリオネットのような動きで一斉に戦闘フレーム機に攻撃を仕掛ける。 「!?」 対応が遅れた戦闘フレームの1機はミニガンとプラズマガンの一斉掃射を受け脚部を損傷、うつ伏せに転倒する。 「貴様っ!!」と叫ぶと同時にフォトンソードで斬りかかる忍者風軽装兵。クリムゾンは振り返らずにコートを棘状に伸ばして迎撃。棘が刺さった箇所から発火する。 「うおオオオオオオっ……」 弾道を予測して回避もしくはフォトンソードでガードしながら接近して仕留めるスタイルの忍者風軽装兵は完全に虚をつかれた。 「この戦闘フレームは戴きます」 燃やした軽装兵には振り返りもしないで片足を破損した戦闘フレームの背に乗り、金の杖剣を突き刺すクリムゾン。 続く
Nov 27, 2022
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ReviveTheGunSword灰蘇の剣銃27「影彦派閥侵攻」 ――院瀬見グループ取締役特別事業開発推進部長・鈴村景彦は装甲車の中で薬物を過剰摂取して精神の安定を図っていた。 「スゥーッ!ハァーッ!スゥーッ!ハァーッ!スゥーッ!ハァーッ!」 失敗すれば後は無い。死ぬよりも辛い地獄を見る事になる。 他の派閥の連中、市長の圧力、怪人関連の連中。 「徹底的に!第六区全ての人間を駆除しろ!!ガキは全て収容所送りだ!!」 サイバーゴーグルで自分の配下に向かって叫ぶ。 「(大丈夫、大丈夫だ!!最新の武器にアーマー、装甲車に特殊訓練を受けたサイバネ戦闘員。それにニンジャだ!!ゴミ溜めのカス共なぞあっという間に駆除してやる!!)」 「おや、影彦サン。酷い様子ですねぇ」 「き、貴様は!!」 電子ロックをかけ誰も居ないはずの装甲車の一室に若い女が現れた。 「何のようだ魔女!!(こいつはいつの間にか院瀬見に入り込んでいた不気味な女。実年齢も経歴も出身も全てが不明。DMC時田麻村と繋がっているらしいが)」 「このままじゃ危ないですよ?戦う相手は怪人をあっという間にやっつけちゃう連中です。君の派閥だけで大丈夫かな?」 「お前に関係ない!!怪人なんぞには頼らんぞ!!」 「冷たいなぁ院瀬見同士の仲じゃあないか。院瀬見の事業障害となる無法者は排除しないとね。私としても影彦君には生き残ってもらいたいんだよ。君は院瀬見に誠心誠意尽くしてどんな事でもやってきたじゃないか。そういう愛社精神をもった人物を失いたくないんだよ」 「魔女、貴様に院瀬見の何が分かる!!勤続20年のこの俺に偉そうにするな!!」 「確かに院瀬見に来てからは日は浅いけど君よりずっと長く生きてるんだ少しは敬意を払ってもらいたいね」 魔女の影から細長い手が伸びて影彦を持ち上げた。 「な、何を……!!」 「私の目的は院瀬見の長~い繁栄さ。こんなに人間関係どろどろしてて人がいっぱいいて材料にも娯楽にも事欠かない場所は他に中々ないからね。街の地下にも興味惹かれるし最高の工房さ」 「ふざけるな!貴様のような化け物がいつまでも野放しにされてると思うなよ!近いうちに退治されるぞ!」 「そうならない為に君たちが頑張るんじゃないか。私は目立たず院瀬見の陰でじっくり研究して暮らすんだ、ヴィランになりたいわけじゃ無いのさ」 「寄生虫め……」 「おお、それは言い得て妙だね。そう!私は院瀬見という大企業に取り付いた寄生虫さ。安心したまえ外敵からは守ってあげるから。例え君たちがどうなろうと院瀬見は守ってあげるからね」 影彦の横にあるモニターは装甲車の外を映している。自慢の屈強な部下たちは倒れこんで動かない。 「貴様……何をした!!」 「負けないように手を貸してあげるんだよ。外で倒れている君の部下は皆怪人に変わる。でも大丈夫影彦君のいう事は何でも聞くようにしてあるから。時田君とドクターのおかげで怪人は次の段階に進んだのさ。第二世代の最新型は適性が無くても自我を失う事は無く活動できるんだ凄いだろ?」 「貴様……勝手な事を!この戦いが終わった後はどうするんだ!部下が怪人なんぞ院瀬見で表立って置いておけん!」 「あー……まぁそうかこれは失念してたね。でも怪人化しないで戦ったらどの道負けて終わりだし良いのでは?君は生き残るんだから関係ないでしょ。部下はホラ……サイバネか何かで誤魔化したら?」 「この悪魔め」 「悪魔ねぇ……魔女と呼んで欲しいな。じゃあ後は頑張ってもうすぐ部下君たち目を覚ますよ」 魔女は黒い影に沈んで消えていった。影彦はサイバーゴーグルを拾ってかけ直し部下に声をかける。 「おい、聞こえるか?部下たちよ、立ち上がれ!準備は良いか!!」 『準備万端ダァ……殺して殺して殺し尽くしてやりますよぉ~部長~』 部下の棚科が答えた。影彦の右腕的存在の男で理路整然とし冷静な普段とは違う。 「棚科……大丈夫なのか?」 『チョット……気持ちが高ぶりすぎただけです……仕事に支障はアリマセンッ!』 「そ、そうか……では行くぞ!4:00作戦開始だ!」 怪人化した影彦の部下たちは唸りを上げ各車両に乗り込む。そして院瀬見ビルの駐車場から続々と出て行く。艶消しの防弾使用の車両らは明らかに異質。 *** 第六地区に繋がる二本の大きな橋の前に陣取る影彦派閥。まだ薄暗く日の出にはまだしばらくの時がある。装甲車から身を乗り出し暗視双眼鏡で橋の対岸を確認する。 「一丁前にバリケードなど張っているか……あんなもの障害にならん。まずは飛行部隊に先行させろ」「了解!」 影彦の合図で貨物トラックが展開し搭乗型ドローン10機が空中に飛び出す。乗っているのはライフルを装備したアーマー兵。 「ヒャッハー!バリケードの影にクズ共を発見!上から攻めるぞ狙い撃ちだぁ!!」 吠えるアーマー兵。しかし武器を構える事無く錐もみを描いて墜落。 「何だ!?」 他の搭乗ドローン兵が振り返ると金属の塊が顔面に炸裂した。防弾ヘルメットを陥没させて頭蓋骨を粉砕する。金属の塊は所謂メイスの形状をしており柄には鎖が着いていた。 「右だ!3時の方向!!」 一斉に右を向く残り8機の搭乗ドローン兵。そこには鳥類の羽を生やした純白のシスター服の存在が浮いていた。 「撃てぇ!!」 異形の相手にも硬直せずにすぐに攻撃行動に移る搭乗ドローン兵。訓練されていることが分かる。しかし一斉射撃されたフルオートのライフルの弾丸はあっさりと防がれる。シスターの翼が盾となり弾丸を弾き返した。 「なに……!?」 翼を大きく振るうシスター、大量の羽が発射され搭乗ドローン兵は針千本に。 「ぎゃあああああああああっ!!」「ばかな!防弾アーマーだぞ……」「慌てるな傷は浅い、俺たちは人間を超えたんだ耐えられる!」 大量の羽が突き刺さった兵たちは下がって陣形を立て直す。 「人間を超えた力見せつけてやれー!!」 木を砕いたような音と共に兵たちの顎が変形していく。一見1本のパイプ状に見えた口は開いて5つに割れる昆虫の蚊の口器と同じ構造に変わった。 「行くぞ!あのシスターの血を吸って回復だ!」「オウッ!!」 搭乗ドローン兵の背中からは翅が飛び出し羽ばたき始める。ドローンの動きを補助して加速、シスターを取り囲んだ。 「一斉攻撃だぁー!!」 8人が全方向から同時に口器の伸びる刺突を放つ。 ―だが。 「なにっ!?」「弾かれた……!!」 8人の口器は全て何処からともなく現れた鎖で弾かれた。シスターの周囲を竜巻めいて回転している。 「ええいっひるむな!!あんな鎖!!」 突撃する一人の兵。鎖の間から飛び出したメイスに胸を貫かれた。 「ゴホッ……」 シスターは分銅のように突き刺さった兵ごと鎖付きメイスを振り回して投げ捨てた。 「クソ!また一人やられたか……」「奴の武器は鎖付きメイスに羽攻撃」「立て直すんだ」 陣形を組み直す搭乗ドローン兵。 「準備運動終了」 それまで口を開かなかったシスターが呟いた。低く少し掠れた女性の声。 竜巻めいた鎖が青白い光を帯びる。そして次の瞬間― 「がああっ!」「ぎゃひいい!」 閃光の如く速さで振るわれる電撃を纏った鎖メイスが搭乗ドローン兵を直撃、爆散する。残りは一人になった。 「なんだ……何なんだオマエ………」 「コードネーム・トニトルス」 それだけ言うと目の前の搭乗ドローン兵に瞬きよりも速いメイスを叩きつけ粉砕した。 「何だあれは……」 装甲車の中でモニターを見ていた影彦。 「撃て!撃ち落とせ!!」 装甲車の銃座に着くアーマー兵たち。しかしトニトルスを名乗ったシスターは稲妻のように青白い光を纏って第六区の奥へと消えていった。 「第六区の隠し玉だというのか……フルサイバネに飛行ユニットを搭載しているのか?それにあの武器……」 院瀬見の兵ではありえない武器。鎖付きメイスなど近代兵器では採用されるはずもない非効率で無駄な構造。 兄の功太朗ほどではないものの影彦もエンジニア。すぐに録画した動画から分析を始める。 「飛行部隊は全滅か」「ハイ」 側近の棚科が答えた。 「迫撃砲を使ってバリケードを破壊しろ!アーマー歩兵で橋を確保し本隊を突撃させる」 想定外の敵の出現に影彦は動揺し精神安定剤を追加で注入する。 「(どこからあんな戦力を連れてきた?第六区は半グレのゴミ共だけじゃなかったのか?まさか他派閥が俺を陥れるために手を貸したのか!?)」 影彦の乗る大型装甲車の外ではアーマー兵が迫撃砲の準備を終え放とうとしていた。 「撃てェッ!!」 一斉に放たれる4機の迫撃砲の砲弾。放物線を描き対岸のバリケードに命中するかに思われたが全て空中で爆散した。 「なんだ!?」 サイバーゴーグルで映像を確認する。スーパースローモーションで迫撃砲の弾丸を追った所細長い物体に撃ち抜かれていた事が判明した。 「向こうの迎撃装置か?それにしてもこんなピンポイントで……」 超望遠スコープで確認すると小汚い第六の武装サイバネ集団の真ん中に場違いな姿の物が立っていた。 「何だあれは……サムライ……か?」 黄系の着物にプレートを鎧のように身に着けた大柄な女性サムライが見えた。大弓を構えている。 「まさか弓で撃ち落としたのか?」 次の瞬間装甲車のスコープは矢で撃ち抜かれ破壊された。 「スナイパーライフルの距離を撃ち抜く弓だと?ええい!撃てるだけ砲弾を撃ち込め!!バリケードを破壊しろ!!」 迫撃砲に加えロケットランチャーを装備したアーマー兵が前に出る。トリガーに指をかける前に対岸から放たれた矢に射貫かれ倒れていく。 「命中力だけでなく馬鹿げた威力……あのサムライをつかって橋を渡らせないつもりか。だが所詮は一人。数で押し切ればいいだけだ!」 砲撃のアーマー兵を退かせ対爆盾を装備した超重装兵と装甲車を前に出して進ませる。女性サムライの矢は30構造の盾に突き刺さって止まっている 連続発射される矢にハリネズミになりながら進行する装甲車に超重装アーマー兵隊。 部隊の半分が橋の中央に到達すると第六区の抵抗軍とサムライが退いていく。 *** 「よおし!予定通り敵は鈍重な兵を前に橋を進んでくるぞ!!」 大声で合図したのは矢を放っていた女性サムライ。 コードネーム:アンバー 「ギィイイイイイイイイイイイイ……」 アンバーの傍らには子供サイズの緑の獣。耳は猫科を思わせる形状、腕は熊のように太く鋭い爪、足は蹄で踵の浮いた趾行型。尾は太く長く身長と同じ長さはあった。バックパックを背負い両腕には拡張用のデバイスが付いている。 「退くぞ!後はシャパリュに任せるのだ!!」「ギイイイイイイアアアアアアアアアッ!」 アンバーはトラックの荷台に乗って第六区の抵抗軍の兵と奥へと退く。 残ったのはバリケードと緑の獣シャパリュ。 「ギイイイイイイイイイイイイアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」 シャパリュの大咆哮。それを合図に橋の下部で爆発が起きた。亀裂が走り橋は中央から真っ二つに折れ曲がっていく。 「ぐわああああああっ!」「橋が崩れる!!」「ぎゃああああああ!!」 影彦派閥の装甲車の殆どが橋の崩落に巻き込まれ川に転落。怪人化した兵は溺れるまでには至らず下敷きになった者の他は這い出して侵攻を続けている。 「ギィィィィィ……」 牙を剥いて笑みを浮かべるシャパリュ。尾を使って器用にバックパックを開ける。弾倉ベルトの着いたフルオートマシンガンを両腕のデバイスに装着した。 「なんだあの動物?」「武器を持ってるぞ!!」「始末しろ!!」 アーマー兵は院瀬見の最新型サイバーゴーグルでシャパリュの姿を捉える。そしてプラズマガンのロックを試みる。 「おかしい……反応がない。水没程度で誤動作など起きるわけがない……」 再度ロックを試みる前にシャパリュは間合いを詰め飛び掛かっていた。 「ギィイイイイイイッ!!」 小さな体からを考えられない力でアーマー兵のヘルメットを引き剥し鋭い爪で首を掻き切った。そのままバック宙で両腕のマシンガンで左右のアーマー兵を撃つ。 「院瀬見の最新型重装兵の装甲をマシンガン程度で貫けるものか!」 マシンガンの弾丸は兵の言う通り装甲を貫くことはできなかった。しかし弾丸は装甲に張り付き広がっていった。 「ギイイイイイアアアアアアアアアアアアッ!!」 叫ぶシャパリュ。呼応するかのように張り付いた弾丸は爆発。アーマー兵は上半身を消滅させた。 「ギィイイイイイイイイ……」 シャパリュの弾丸はアーマー兵の装甲を爆発物に作り替え自身を爆弾へと変えていた。強靭な装甲であっても橋であってもシャパリュが浸食できるものは爆弾に変えられる。 「爆弾を使った!?」「奴をターゲットできない!?何故だ!!」 「原因は不明だがオートエイムはコイツには使えない!各自マニュアルに切り替えて対処しろ!!」 アーマー兵のリーダーが叫ぶ。シャパリュに狙いを定めフルオートのアサルトライフルを撃つがアーマー兵のエイムを超える速度で動くシャパリュを捉えることはできない。 「速っ!」「クソ!何て動きだ!!」 背後に回ってたっぷりと弾丸を撃ち込んだシャパリュはアーマー兵を盾にして突進。投げつけて爆破させる。10人以上のマーマー兵が巻き込まれた。 「ギィィィィ……」 シャパリュは折れた橋の斜面を駆けあがり周囲を確認する。もう一つの折れた橋を歩兵たちが進んでいるのが見えた。 「ギィ」 *** 「何が起きている!あの緑の生物は何だ!?」 机を叩いて叫ぶ影彦。 『不明です、あの生物に重装兵βチームが足止め状態現在交戦中。αチームは折れた橋を渡って対岸に到達しました』 「橋を落とすとは想定外だった……第六区の連中がそこまできるなど誰が想像した?」 圧倒的武力を持っての蹂躙虐殺だと影彦派閥の部隊の全員が考えていた。しかし突如現れた空飛ぶシスター、恐ろしい威力の矢を放つサムライ、正体不明の緑獣。 「(部下共が魔女に怪人化されていなければとうにパニックを起こしていた……か)」 影彦は後方に控えている人型搭乗式フレーム戦闘機に回線を合わせる。 「装甲車部隊は迂回して第三区から突入する戦闘フレーム部隊、A隊は装甲車の護衛、B隊は残って応戦!」 続く
Nov 13, 2022
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