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諸田和音:学校の身体測定は手を抜いて平均程度にしている。ReviveTheGunSword灰蘇の剣銃16「デモンズエッジ・デモンズスキャバード」 ソギカワから得たデータを見る。 亜瑠は【子猫ちゃん】と登録した相手とメッセージのやり取りをしていた。 頻繁とまではいかないが、まれにメッセージのやり取りをしている。【子猫ちゃん】とは恐らく兜金蒐魅の事。 会う約束をしているのは夏頃。そして意識不明になる一ヶ月前だ。「このやり取り見る限り……亜瑠ちゃんと蒐魅ってただの友達っぽいよね?まるでMに繋がる何かありそうにないんだけど?」 柄留のいう事も最もだ。メッセージのやり取りは他愛のない友達同士のやり取りばかりだ。更にデータを見ていく。「あれ?急に蒐魅の様子が……もう会えないとか言ってる」「何かあったのだろう。亜瑠はその後東京に行くと言っているな」「このやり取りが一ヶ月前……その前に蒐魅に何かあったんだ……」「その後、東京についた亜瑠は毎日昼頃に蒐魅と会っていたようだ」「亜瑠ちゃんの方も何かあったのかな?やり取りのメッセージが物凄く簡素になってる」『会える?』『うん』等の簡単なやり取りだけになっていってる。「どこで会って何を話してたのか気になるよー」『もう引き返せない所まで来てしまった。亜瑠はアタイの事なんか忘れて地元に帰って』『忘れられるわけない、蒐魅が何に巻きこまれているのか大体解ってる。だから私頑張るよ全力で。何もしないで帰れない。明日、第四区の自然公園の噴水前0時に居るから』「ここで亜瑠のメッセージも終わっている。蒐魅の既読は最後までついていない」「ここまでのやり取りじゃあなにがなんだかだねー」「写真のデータも見てみるか」 食べ物の写真が多い。夏頃に蒐魅と一緒に写っているものが何枚かあった。最近の写真には……「Mが写ってるな」「ホントだ!」 アイドルが着るような服だ。白が基調で顔はオレがモンタージュで描いたものと一致している。「う~ん……ねぇ和音君、動画はどんなのがある?」「ちょっと待て」 動画のフォルダを新しいものから再生する。『……さて、楽しかった日々も今日で終わりかな。ボクは使命を果たして帰る。亜瑠がボクのパートナーで良かったよ。忘れないでね、動画に残すよ』 自撮りをしている様子の動画だ。場所はどこかの建物の屋上のようだ。「Mの話し方、完全にお前と同じじゃないか柄留?」「ええ~~~~……そう……かな。でも全く覚えが無いし何も思い出さないんだけど」「他の動画も見てみるか」 一つ前の動画を再生する。『ほら~蒐魅笑って』『……』『そんな顔の蒐魅見たくないぞー』『ゴメン亜瑠……アタイ……』『言いたくない、言えない事があるんだろ?いいよ別に、私だってあるよそういうの。でもね、私は蒐魅が大切だし。全部が全部嘘言わないってのは違うと思うんだ。隠し事や嘘が全部悪い事なんて私は思ってない』『亜瑠……アタイは馬鹿だ。思い込みで落ち込んで怒って泣いて……大切な人が居るなら話し合うべきだったんだ。どうしてこんなことになったんだろう』『私は蒐魅の味方だよ。取り巻く環境に染まることはできないけど蒐魅を救うためなら全力を尽くす』『ありがとう亜瑠。アタイは決着をつけてくる。自分自身の手で。終わったらまた遊ぼう』『解った!蒐魅が自分でやりたいのなら余計な事はしないよ私も自分のやるべきことはやっておく終わったら絶対に遊ぼうね!』 亜瑠と蒐魅は肩を寄せ合って笑顔で携帯のカメラに視線を向ける。そこで動画は終わっていた。「この動画はさっき見たメッセージの前っぽいね」「そうだな……この動画を最後に亜瑠と蒐魅は会わなかった事になる」「まだまだ謎だらけだね……他の動画も見てみようよ」 次の動画を再生する。『完璧でしょー!……え?調子に乗るなって?動画撮るなって?いいじゃんいいじゃんボクだって現代のものに触れたいんだよー。亜瑠だってボクの姿利用してんじゃんお互い様だよー』 自撮りしながら喋っているM。場所は瞬栄さんの家のベランダだ。ここで言ったん動画を一時停止にする。「お!おおっ!!これは手掛かりになるでは?」「何か違和感があるな。Mと話してるはずの亜瑠の声が聞こえない」「イヤホンか何か付けてるのかな?」「動画配信しながらイヤホンで通話しているのか?それと気になったのは『亜瑠だってボクの姿利用してんじゃん』の部分だ。動画の続きを再生するぞ」「うん」 携帯を机に置くM、カメラは天井を向いている。『……まったく、まだ録画中じゃない!ホント馬鹿なんだからミレーヌ!』 亜瑠の顔が見え携帯を拾って録画を停止させた。「いま!名前呼んだ!!」「ああ、ミレーヌとな。Mとはミレーヌか、しかし何故名前を隠してたのか」「うう~ん……」「名前を残したくなかったのか?何か事情があるのか……近くに亜瑠が居たにもかかわらず声がしなかった事も気になる」「ボク頭がこんがらがってきた……」「いったん整理するか」 亜瑠と蒐魅は昔からの友人。蒐魅は何かトラブルを抱えていた。行方不明。 Mはミレーヌ。亜瑠と共に行動、現在行方不明。 ミレーヌの発言から亜瑠はミレーヌの姿になることが出来たと推測。 守山探偵事務所に顔を出していたのはミレーヌの姿を借りた亜瑠の可能性大。「柄留、何か気になるのか?」 一度見たミレーヌの動画を繰り返し見ている柄留。「ミレーヌの最後の使命がどうとか言ってる動画の場所……ここってボクが最初に目を覚ましたビルの屋上っぽい」「ほう……調べてみる必要があるな」「和音君!もう一個気になる動画あるよ!剣と鞘が映ってる!!」 動画を再生する。携帯を前に腰に手を当てて得意げな顔で立っているミレーヌ若しくはミレーヌの姿をした亜瑠。場所は外、周りには廃材が積み上げられている。『デモンズエッジ!デモンズスキャバード!』 両手を前に突き出すと剣と鞘が出現する。柄留の物と同じようだ。『ソハヤノツルギ!』 剣と鞘が青白い光を放つ。ゆっくりと鞘から剣を引き抜くと柄の無い茎(なかご)剥き出しの状態の刀剣が姿を現した。『っしゃあああああああ!!』 後方に用意されたブロックとドラム缶に向けて刀剣を投げつけた。青白い光輪となった刀剣はまるで豆腐のようにブロックとドラム缶を切り裂きミレーヌらしき女の手に戻った。『もういっちょ!』 再び刀剣を投げつける。今度は投げた瞬間無数の礫となりブロックとドラム缶を穴だらけにした。戻った刀身を鞘に納める女、そこで動画は終了した。「おお~……剣と鞘はデモンズエッジ、デモンズスキャバードって名前なんだ」「……この動画を撮ったのは亜瑠だと思われる。ミレーヌが携帯で動画を取ったのはベランダのが初めて、そして最後のメッセージのものと二つだな」「なんでこの動画撮ったのかな?後で見返す為とか?この場所はどこかなぁ?」「デモンズエッジ、スキャバードを後で他の者に見せるつもりだったのかもしれないな。話の流れから、ミレーヌは使命を果たせば亜瑠と別れる事になっていたと考えられる。だから言葉で説明する他に動画を残した」「ミレーヌの使命って何なんだろうね?」「うむ……」 これまでこの街で見て来たものと照らし合わせる……「やはり兜金蒐魅が鍵を握っているとオレは考える。彼女に起きたトラブルこそが亜瑠とミレーヌに繋がるはずだ」「……蒐魅ってグレイブラスターをいつ手に入れたんだろうね?」「……」 柄留の言葉で気が付いた。「蒐魅がグレイブラスターを使い出した時期とこの街で起きた事件を調べる必要があるな……もう一度蒐魅のコンテナにあったウェビングを詳しく調べる必要がある」「撮った写真はこれだね」 柄留が携帯でコンテナの写真を見せてくる。 焼肉屋:水垂ミチオ 金融業:金山轟 弁護士事務所:山下孔 ホスト店:八丁堀繁秀 アダルトショップ:草蝮誠志 イベント会社:安村磨 ナイトクラブ:ロバート・マクマホン この七名には×印が付いている。「これってさぁ蒐魅がコイツら始末したんじゃないの?焼肉店の前通ったけど臨時休業になってたしね」「だとしても蒐魅がコイツらを狙った理由が解らない。大河が七曲に聞いてみるか」「ええ~……G/Tと関わるの嫌だよー」「だったらオレたちで動くしか無いな。柄留、それは危険な場所に足を突っ込むという事だが理解してるか?」「うん?全然オッケー和音君こそ大丈夫?」「平気だが?」「ボクと違って和音君は家族とか色々迷惑かけるんじゃないかなーって」「心配するな、手はある」「ふぅーん……」 口をとがらせて瞬きをしている柄留。理解できていないのだろう。オレがその気になればどこまで出来るのか知らないのだから。「柄留、デモンズエッジ・スキャバードでソヤハノツルギ出せるか?」「ちょっと待ってね……」 柄留はタブレットでソハヤノツルギの資料を漁り出した。デモンズエッジ・スキャバードでの錬成は理解することが大事だと解ってきているからだ。「理解とイメージ……理解とイメージ……」 柄留がつぶやいている。亜瑠がデモンズエッジ・スキャバードを使いこなせたことは納得できる。あいつはオレと競うようにありとあらゆる刀剣の知識をインプットしていた。 ミレーヌが何者かまだ解らないが、亜瑠と手を組んだのは正解だったのだろう。もしくは引き寄せの力で亜瑠の方からミレーヌを引き寄せたのかもしれない。「よーし!いくよ!!デモンズエッジ!!デモンズスキャバード!!」 やたらとデカい声で叫ぶ柄留。剣と鞘を出現させる。心成しか剣と鞘に艶が出た気がする。そして柄留は目を閉じて構える。「ソハヤノツルギ!!」 ゆっくりと鞘から刀身を引き抜く柄留。青白く輝き柄は茎(なかご)の状態に変化する。「出来た!!」「使えそうか?」「ボクより和音君が使った方がいいかも」 柄留から形成したソハヤノツルギを受け取る。オレはペットボトルを手にベランダに出る。柄留は後をついて見ている。「フン!」 全力でペットボトルを空中に投げる。そしてソヤハノツルギを構えて投げつけた。 亜瑠の動画とは違いソヤハノツルギは一瞬でペットボトルを粉微塵に切り裂き次の瞬間オレの手に戻ってきていた。「……」「え!すごい和音君!!」「……やはり龍とソハヤノツルギは相性がいいらしい。オレはコイツを意のままに操ることが出来そうだ」 「他にも和音君がいい感じに使えそうな剣つくれるかなぁ」「ソハヤノツルギは投擲の伝説が多い刀。ならばもう一つ作るのなら違う性質をもった刀」「えっと……」 タブレットで資料をまた漁りだす柄留。童子切を表示させた。「これってどうだろう……実際に博物館とかにあるわけだけど」「逸話や伝説は実際にある物と同じとは限らない。デモンズエッジ・スキャバードは博物館と同じ童子切を作るものじゃないだろう?」「えっと……多分。望んだ剣を作り出せるものだと思う」「ならば後世に語り継がれる逸話伝説を上乗せした最強の童子切をイメージして作れ。今博物館にあるあの童子切は形だ」「うまくいくかなぁ……ソハヤノツルギは動画で一回見てるのもあるし自分でどんなものか強くイメージできたからいけた気がする」「オレがやろうか?」「ええ~……でも前みたいにお腹が辛くなるかも。和音君の意識が強すぎるせいかもしれないけど」「なるほどな……ならお前の思い描く童子切を作ってみろ。上手くいかなくても良い」 再び大きな声で叫ぶ柄留。毎回叫ばれては困るのだがコイツにとって重要なプリショットルーティーンなら仕方ない。 必死の形相で刀を形成する柄留。見た目はほぼ完ぺきな童子切が出現した。「どうだい和音君!」「ふむ」 手に取ってみる。柄は白鞘のものだが仕方ない。刀身は薄く緑に光っている。机に置いてあるペットボトルに先を当てると吸い込まれるように突き刺さった。殆ど抵抗はなく、ペットボトルはほんのわずかに揺れただけだった。「どうかな?」「これなら実際の鬼でも切れそうだな。いい出来だ」「これで怪人とかもっとヤバいの来ても大丈夫だね、ボクのグレイブラスターと合わせれば無敵だよ!」「もっとヤバいのだと?」「例えばえっと……エイリアンとか?」「そこは鬼とか悪魔じゃないのか………エイリアンとは変わってるな」「そうだね~だってほらグレイブラスターって……」「ん?」「……わかんない!なんとなくエイリアンヤバいって思ったの!」「そうか」 デモンズエッジ・スキャバードの検証はこのくらいにして柄留が気になっている屋上へと向かう事にする。蒐魅のバイクは目立つため家に置いて行く。「お二人さん、何処に出かけるんだ?」 家の前に黒いフードを被った男が立っていた。続く
Jul 23, 2022
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ReviveTheGunSword灰蘇の剣銃15「思惑・動き」 暗い部屋で一人男は呟く。 ―――――――。 ……グレイブラスター。なぜあれがあんな女に? 唯一、兜金蒐魅が使用できるはずでは無かったか? そもそも兜金蒐魅も使いこなしてるとは言えなかった。俺ならもっと最適に真の性能を引き出して使いこなして見せる。キャリバーの姿を見た時に確信した。 グレイブラスターは世界を変える程の力を持つ。想像力、発想力、判断力を兼ね備えた者でなければあれは只の便利な銃だ。 俺がグレイブラスターを直接使えないのなら、導けばいい、懇願すればいい、洗脳すればいい。兜金蒐魅を思うように操ることができればそれはグレイブラスターを手に入れた事と同じ。 全ては上手くいくはずだった。あの女が現れるまでは。 〇〇ー〇・〇〇〇〇! ことごとく俺と兜金蒐魅の邪魔し続けた!彼女と共に姿を消した!! 俺は必死に探した。兜金蒐魅の行方を!グレイブラスターを!! そんな時にあのバカ女がグレイブラスターをチラつかせて現れた。 本物か偽者か確かめる必要なんて無かった。一目見ただけで解る。 手に入れなければ……一緒に居る男は邪魔だ消えてもらうしかない。 *** 身動きが取れずに横になっている女。 ―――――――。 まただ。誰かが剣と鞘を使用した。 相変わらず私は何もできない。周囲で起きていることも解らないし、あれからどのくらい時間が経ったのかも知らない。 もしかしてあのバカ他の人間と契約した?ってことは無事だったのかな? ……それならそれでいいけど私をどうにかしろっての。 ……ん?でもよく考えたらおかしい。剣と鞘の状態が解るって事は私との契約は破棄されてない。 私は今自分の状態が解らない。昏睡状態なのか?これは夢の中なのかな? 起きたら忘れるのかな?そういえば最後の記憶は…… あれ?今さっきまで頭の中にあったのに消えた。夢の記憶が消えるようにスッと…… 〇〇ー〇・〇〇〇〇…… あのバカの名前が思い出せない。顔はハッキリしてるのに。 私の名前は何だっけ? 嘘、思い出せない…… 剣と鞘を使ってる人、どうか気を付けて。 それは便利なんか武器じゃない。アクマなんだから…… *** 大理石で出来た浴槽に浸かり天井を見上げる若者。 ―――――――。 飽き。唐突にそれは訪れた。 勉強も部活もやればできてしまう。家も裕福で不自由など無い。 周囲と違う事は小学生に上がる時に気が付いた。 私は他人の考えている事が何となく感じ取れる。だから思うように操れる。両親もクラスメイトも男子も女子も教師も大人もならず者も。 思うように出来てしまえば刺激を求めてしまうのは当然。だから中学に上がる時には私が絶対支配する組織を作りあげありとあらゆる事に手を付けた。 私がやっていけない事など無い。この世界は私の遊技場だ。怖いものなど無いと思っていた。あの女に出会うまでは。 あの女は異質すぎた。 嘘で誤魔化せない、誘導できない、洗脳できない。 ――ああ。魔女というものはあの女のような存在を言うのだ。 それでも私にはプライドがあった。どうにかして魔女を屈服させたかった。周囲の人間を使い思いつく限りの事をさせてた。数にものを言わせ蹂躙出来ると思った。 ――だけど。あの魔女には通用しなかった。 私の動かせる人間の力なんてたかが知れていた。圧倒的上位者の存在の前には無力。そして魔女はあろうことか私を褒めたのだ。 才能を活かして欲しい。共に世界を変えようじゃないかと。 誘いを断る理由は私にはなかった。 魔女についていけば退屈からは解放されると確信したからだ。*** デスクで書類に記入をしている者。 ―――――――。 人生は順調だった。子供のころから目標を立て努力して達成していった。 周囲の期待には応えてたし、なにより憧れていた職業に就くことが出来て嬉しかった。 コミュニケーション力はある方とは言えない。だが、知識と手先の器用さは誰にも負ける気はしない。 細かい調整の他はロボットに任せる者が増える中、自分は身一つでこなし続けた。 そしてこの業界でそれなりの地位を得た。自分の目標は地位を得る事では無かったが出来る事は多くなる。受け入れて更に上のステージを目指す。 切磋琢磨する良き競争相手が出来た。大いに刺激を受けお互いを磨き上げていった。下らない足の引っ張り合いをする連中など自分たちは眼中になかった。 どうしても看過できない状況になった場合はアイツが何とかしてくれた。自分は借りをつくるのはライバルとしてフェアじゃないと考えたのでアイツの頼みを聞いてやった。 持ちつ持たれつの関係になり生涯アイツと張り合いながら人生を送るのだと思っていた。 ――だがアイツは……姿を消した。 お互い家庭を持っていた。家族に行先も告げずに突然消えたのだ。 最高の環境で最高の仕事が出来るハズではなかったのか?何故手放して消えた? ――数か月後、自分はアイツの居場所を突き止めた。東京の秋馬原市(オータムホースシティ)に居ると。千代田区秋葉原ではない、紛らわしい。 ならば自分も行こう。仕事はオータムホースでも出来る、問題ない。丁度新しい経営者のご機嫌を取るのに辟易してたところだ。 ――アイツは変わってしまった。相変わらず頭脳と腕はため息が出るほどのものだったが覇気が無くなってしまっていた。もう自分とは張り合えないと言い出す始末だ。 それなら自分はアイツの興味を引くような仕事っぷりを見せよう。そうすれば覇気も戻るはずだ。 【世界の為に】という共通の目標があるのだから。*** ソファでグラスの酒を呷る者。 ―――――――。 知らないままでいればどれほど幸せだったろう。知ってしまった今もう以前の私には戻れない。 すまない……すまない……もう私はどうしようもなく変わってしまった。 ――あの日、ボストンの街で飲んだ。ある意味到達点ともいえる職場に所属することが出来て浮かれていたのだ。日本に残してきた家族が居るというのに私はあの者についていってしまったのだ。酷く泥酔していたのでよく覚えていないが、地下に入っていった。 そこで見たものは……想像を超えるものだった。酔いはそこで少し醒めた、似たような存在は職場で目撃していたので興味はあった。あれは不老不死をテーマに掲げた実験であったが実際は異能者モンスターを作り出すだけで不老不死には程遠いものだった。だが、目の前の案内人は生まれ直して200年以上は生きているという。案内人の話は荒唐無稽で聞き流していたが目の前で行われた儀式は私の好奇心を強く刺激した。 口からのでまかせだと聞き流していた私の目の前で黒い大きな肉塊は、枯れた老人を飲み込み、咀嚼の後吐き出し、若く張りのある筋骨隆々の肉体へと変化させていた。 案内人は言った。『真の完成にはあなたの力が必要となる』と。 既に完成されているのではないか?の問いに案内人は『所詮は模倣した存在、オリジナルに到達するにはあと一歩足りない』と答えた。 目の前の光景を目にした今、オカルト集団の戯言では片付けられなかった。そして案内人自ら黒い大きな塊に飲み込まれ……少女の姿へと生まれ変わって見せた。「さぁ行きましょうドクター」 彼女は何だ?悪魔か魔女か?職場には天才と評される人物が多くいたが、目の前の彼女はそれらとは全く違う異質な存在だった。ゆえに強く魅かれてしまったのだ。 向かう先は日本の都市。そこで私は新たな人生を進むのだ。*** 第一区の175mの市庁舎最上階に位置する市長室から六区全てを見渡せる。ダークスーツに身を包んだそこに立っているだけで緊張が走る空気を発している男が居る。 オータムホースシティ(秋馬原)市長、大嶽秀義(おおたけひでよし)「第六地区の開発が進んでいない……何故かな?」「いいいやあ……その……」 男の後ろには眼鏡の中年男性。目の前の大武秀義とは20歳以上も年上の彼は滝のような汗をハンカチで拭い続けている。「私は無理を言っているのか?」「滅相も無い……!これは私とその他の者の努力不足でして……」「街を騒がせる者どもを漸く排除できたのだ。後は第六地区の不法占拠者を追い出せばいいだけではなのかな?私は彼らに十分な条件を出したのだが伝わっていないのか?」「いえいえ、しっかりと不法占拠者共には説明しました。第五地区の工場への就職+社宅への移住。その他手続きの案内も……しかし応じたのは10%程でして……」「ふむ……では、応じなかった不法占拠者は市民ですらない。第六区を実効支配する犯罪者共ではないかな?」「……と思います」「では、私の言いたいことは解るだろう?」「は、はい……」「いい結果を知らせてくれよ?院瀬見グループ取締役特別事業開発推進部長くん」「はい!」 90度に頭を下げ市長室を出る眼鏡中年男の名は鈴村影彦。 院瀬見グループ取締役特別事業開発推進部長の肩書を持つ。キャリバー事件で既に逮捕拘留されている鈴村功太朗の弟であった。彼はエレベーターに乗ると部下に電話をかける。「緊急対策会議だ。1時間後に行う、セッティングを頼む」『承知致しました』 市庁舎の駐車場に待っていた車に乗り込み第一区の院瀬見ビルに向かう。*** ――その様子を見ていたのは七曲キョウヤ。「やはり動くかぁ~院瀬見の鈴村影彦」 小型スクーターで追う。 そしてその七曲キョウヤを監視しているのは守山罅助。「剛力君、院瀬見の車と七曲をステルスドローンで追ってくれ」『は、はい』 守山罅助は耐衝撃繊維で編まれた黒手袋を引っ張り指に食い込ませる。「三流のチンピラ探偵……精々泳いでくれよ」 座席が縦に2列並んだ細長い車に乗り込む守山罅助。水陸空を移動できる世界に数台(軍用を除いて)しかない特殊車両である。 オート運転に切り替えメールをチェックする。『守山さん、まずはお礼を。私が保釈できたのも貴方のおかげです。例の場所で落ち合いましょう』 罅助の特殊車両は第五地区・工場地帯へと向かう。車内でサプリを大量に摂取する。 第五地区の発電所エリア、化学プラントエリアを通り抜け社宅が立ち並ぶ住居エリアに入る。仕事帰りの労働者たちが疲れた顔をして送迎バスから降りていくのが見えた。 罅助の車は住宅地の入り組んだ細道を進み指定された仮設住宅の前で止まった。「到着しました」『確認しました、どうぞ中へ』 1階部分のガレージシャッターが上がり中に車を入れる。2階の部屋で待っていたのは筋骨隆々の彫りの深い中年男性、鈴村功太朗であった。「保釈中の身なのでこちらからお伺いする事も出来ず申し訳ありません」「いえ、構いません」「早速ですが依頼の話をしても?」「どうぞ」***第六地区・メインストリート「プッフゥ~……どいつもこいつも面倒だぁ」「クソ……こいつら第六のゴミ共のくせに」 大毛玉怪人と軟体ジャベリンの怪人がメインストリートの商店を次々襲い略奪と破壊を始めていた。 逃げ惑う人々、そこにG/Tの仮面をつけた武装集団がトラックに乗って駆け付けた。「あいつらはワシが相手する、お前らは周りの奴らを避難誘導せい!」「了解!!」 運転席から降りてきたのは兜金大河。「プッフゥー!イキリ筋肉ダルマだぁ!!」「チッ!モテるんだろうなぁ!!殺すぞ!!」 怪人は全身の毛を膨らませ回転突進、もう一人は上半身を伸ばしてジャベリンで突く。「ガアアアアアアッ!」 両腕を突き出す兜金大河。目の前の毛玉怪人と軟体怪人の体が拳大の大きさで凹む。「ブフッ」「ゲボッ」 毛玉怪人は毛をまき散らして後方の建物に激突、軟体怪人は上半身をアスファルトに叩きつけられ仰向けのまま滑っていく。「ガッハッハー!名付けてタイガーバスター!!何が飛んでるのかワシにもわからんが効くやろ?」「なんだよぅ……また面倒な奴が出てきた」「あのイケメン野郎にもリベンジしなきゃなんねえのにまたムカつく奴が出て来やがった」「テメェらには聞きたいことが山ほどある。半殺しにしたるから覚悟せえよ?」「本気でやっちゃうよ~」「ギタギタにしてやんぜ」 毛を伸ばす毛玉怪人、ジャベリンを手に上半身を捻じって回転する軟体怪人。「タイガーバスター連射じゃああっ!!」 拳のラッシュを繰り出す兜金大河。拳大の衝撃が雨あられのように毛玉怪人と軟体怪人を襲う。伸ばされた毛は木っ端微塵、ジャベリンは火花を散らしてはじけ飛ぶ。「な……に?鋼鉄よりも硬い毛が!?」「バカな……コイツ………怪人でもない癖に」「尋問に二人もいらんなぁ……毛玉、お前は見た目が鬱陶しいここで消えとけや」 毛玉怪人が起き上がるよりも速く兜金大河は接近、左手で掴みかかる。「タイガースマッシュじゃあああああっ!!」 右手のアッパーカットを叩き込む。毛玉怪人は毛をまき散らしながら放物線を描いて商店を超えて飛んで行った。「ウ、ウシジマー!!」「人の心配しとる場合か?」 軟体怪人よりも先にジャベリンを拾う大河、拾いにかかった手を串刺しにする。「ぎゃあああ……」「もう逃げられへんぞ、ぞんぶんに喋ってもらおうかのぉ」続く
Jul 10, 2022
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諸田和音:ゲームはボードゲームの方が好きReviveTheGunSword灰蘇の剣銃14「情報屋」 ソギカワから亜瑠の携帯のデータを受け取る。「マスターデータはアンタが持っておくのか」「まぁね。拙者は用心深いんでバックアップは常に取っておくのです」「……顧客から得た情報を読み込んで自分の糧にして次の仕事に繋げるのか」「そうですねぇ。こういう商売は常に最新の情報を得てないと成り立たないっすから」「探偵だけでなく警察や政治家とも繋がりがありそうだな」「その辺は想像にお任せするでござるよ。表向き拙者は某有名メタバースエンタティメント施設の運営なので」「電脳遊技場か……入ったことは無いが巷でよく聞く」「何と勿体無い!是非来てみて下され!!」「話は変わるが……この街で一番信用できる探偵事務所は何処だ?」「そりゃあダントツ一番はミラージュ探偵事務所っすねぇ。探偵らは今ちょっと街を離れてるっすけども」「守山探偵事務所とOH探偵事務所はどうだ?」「おっとそれはノーコメントで。取引もあるので」「もうひとつ、またアンタに依頼したいことがあった場合連絡してここに来ればいいのか」「う~ん……仮の作業場なのでここに突然来ても拙者は居ない場合が多いですぞ。ちなみに拙者初回はサービスするんですが、次からは100万単位の報酬でないと動かんでござるよ?今回は美少女のスキャンがあるので部屋に入れましたが普段は代理人を通じてしかやり取りはせんでござるから……」「どうすればいい?」「連絡先を渡しておきますわ。諸田氏はお金持ってそうに見えんでござるが縁を作っておいても損はなさそうなお方ですので」「わかった、助かる」「もしお金が用意できなかったらまた違う一般美女をスキャンさせてくれればいいでござるよ。商売女や業界で擦れた者ばっかりスキャンしても面白くないですからなぁ」「ああ、考えておく」 ソギカワと別れビジネスホテルを出る。蒐魅のバイクに乗ると柄留がじっとオレを見つめてる。「和音君、ボク達お金要求されなかったよね。それってボクを気に入ったからなのかな?」「かもな。お前がアイツの好みで良かった」「ボクの顔って妹ちゃんとそっくりな訳じゃん?それって大丈夫なのかなぁって」「似ていてもお前はお前だろ。亜瑠に似ているからとか気にするな」「……和音君の好みってどんな女の子なの?」「さぁな、どんな女性を好きになるか解らん」「じゃあ和音君まだ好きになった女の子いないんだ」「だな。所謂初恋ってのはした記憶が無い」「へぇ~~~~~~~~~~~~」 上目使いで見てくる柄留。こいつは亜瑠とは性格はまるで似ていない。「女の子に興味なかったの?」「どうだかな……自分の事で精一杯でこれまで生きてきたからな」「そうなの?悩み事があるんだ和音君にも……」「あるぞ。六歳頃からずっとな」「知りたいなー……ボクに言いたくないなら無理に聞かないけど」「そんなに複雑な事じゃない。オレの体の事だ―家についたら話してやろう」 蒐魅のバイクで瞬栄さんの家に帰る。 オレが周囲の人間と違う事を意識し出したのは小学生になった時からだ。砂場でクラスメイトと遊んでいた時に六年生が追い出しに来た。相撲の邪魔だと。 オレは相撲で勝てばそっちが出て行けと言い六年生をあっさり投げ飛ばした。これで思う存分砂場で遊べると思ったが……そうはならなかった。六年生は骨折、一緒に遊んでいたクラスメイトは泣きわめいていた。状況が分からず立ち尽くしてた俺を亜瑠が手を引いてその場から連れ出してくれた。『和音はあんなことしたらダメだよ。強いんだから』「亜瑠ならどうしてた?」『あたしなら……おおきい声で泣いてあの六年生を悪者にしてたかも』「オレは男の子だしそんな事しないよ」『でも弱い者いじめはダメ、カッコ悪いよ』「そっか……」『先生にはあたしが上手に言うね、和音はウソ泣きでもしてればいいよ』「うん……亜瑠はかしこいなぁ」 それ以来オレは自分を抑える事にした。ストレスが溜まった時は裏山で大暴れした。亜瑠は器用で上手く立ち回っていたがそれはそれで大変だったと思う。「亜瑠ちゃんって頭脳派だったのかぁ~」「頭脳派と言うよりは……良い結果を導き出せる奴なんだ」「??」「説明しにくいが……トランプのババヌキであいつは負けない」「そーなの?」「感覚的にどれを選べばいいか解るんだ。だから他の事でも勝って勝ちすぎてしまう。周囲の人間と合わせるのに苦労してた」「あ~……そっかー。この前言ってた亜瑠ちゃんが次々他のものに興味移ってたのはそれが原因かぁ」「ああ、オレとは違う悩みを抱えてたんだ」「和音君は……超人だから苦労したって事……だよね?」「超人なんていいものじゃない。周囲の人間全てが脆弱で儚い存在なんだ。オレが学校で全力を出せるのは勉強だけだった。休み時間、クラスメイトが全力で走ったりドッジボールをしたりしてるのを見て羨ましかったな」「ふ~ん……ライオンとハムスターみたいな?じゃあさ、将棋とかは?」「小学生の頃は体力をもてあましてたんでな、集中できなかった。今は気分転換に時々やるがな。まぁそういう訳で異性に興味を持つどころじゃなかったんだ」「そっかぁ……和音君のその特殊体質ってなんなの?」「詳しい事はまだ解ってないが……夢で見る龍が関係してるようだ。亜瑠も龍の夢を見ると言っていた。曾祖父がまだ生きていれば話を聞けたのだがな」「龍……ドラゴン……あぁ~だからブレスで怪人を吹き飛ばしたりしてたの……?」「しっかり見ていたようだな。あれは曾祖父の残した手記を読んで家の裏山で色々試して身に着けた『龍の息吹』だ。その気になれば炎や凍結するのも吹ける。使う機会などないだろうが」「ええ~!!凄い凄い!!亜瑠ちゃんもできるのかな?」「あいつはできない、五感を少し高めたり一時的に身体能力を上げる程度だ」「龍の力かぁ……和音君にビビり散らかしてた奴らってそういう力感じてたのかな」「かもな、出来る限り抑えているが……同じような体質の者には解るらしい。兜金大河のようにな」「そーなの!?アイツも龍?」「いや、四足の獣のようなものを感じた……名前に関係しているのなら虎か」「大河だからタイガーって……出来すぎでしょ。じゃあ他にそういう特殊な感じしたのは居た?」「守山罅助は……全身を流れる脈が常人とは違う、異能者、所謂エスパーの類かも知れん。七曲キョウヤは……普通の人間に近いが怪人に似ているところから最新の生体サイバネ手術を受けている可能性もある。お前は……よく解らない、今まで見たことも無いタイプだ」「ボクが見たことないタイプってどんな風に?」「ぼんやりしているんだ。何者でもない」「ええ~……それって和音君みたいに特殊でもなく、異能者でもなく、怪人でもない……」「オレに判るのは特殊体質、異能者、怪人や魑魅魍魎の類、サイバネに動物くらいだ。その他の存在ならオレにはぼんやりと見えるのかもしれん」「あははー……ボクってエイリアンだったりして?」「確かに宇宙人はまだ見たことがないな」「冗談だって!も~~~~~~~~~!!」 自分の事をこんなに他人に話したのは初めてだ。こいつには打算も嘘も無い。共に行動していてストレスを感じなかったのは今まで亜瑠しかいなかった。「ん?どうしたの和音君、ボクを見つめて。チューするタイミング?」「フッ」「あー!鼻で笑った!ボクから仕掛けるぞー!!」「やめろ」 ソギカワから得た亜瑠のデータの事もだが確認するよりも先に柄留の事だ。柄留の居場所も確保しなければならない。今日は瞬栄さんが帰って来る。上手く説明しなければ。「柄留、グレイブラスターで姿を変えるんだ」「え?なんで?」「亜瑠と同じ顔の人間が家に泊まりますは説明に困るだろう」「そう?正直に全部言っちゃえば?」「……無理だ」「じゃあ無理に家に泊めてくれなくてもいいよー。ボクは24時間営業のマスドか公園のホームレスキャンプですごすから。和音君と同衾したかったけど伯父さんが帰って来るならちょっと激しい運動は出来ないしね」「顔を変えてくれるだけでいい。後は上手く説明する」「……和音君のスルー力にボクはくじけないから」「とりあえず……Mの顔にしてくれないか」「いいけど……む~~~~~~」 グレイブラスターを自分に撃つ柄留。Mの顔に変化する。「……」「どうしたの和音君?失敗してる?」「いや、大丈夫だ。ぼんやりしてたお前の気が少しはっきりした」「そーなの!?ちょっと顔見てくる」 柄留は洗面所に走って顔を確認しに行く。「思ったより違和感ないねーやっぱりボクはMなのかも?」「Mだとしても本名も素性も解らないがな。亜瑠の顔と同じ謎もある」「グレイブラスターの謎も」「ああ」 柄留の服は派手過ぎるのでオレのジャージを貸してやった。本人は大喜びだ。「着替えてる間に瞬栄さんからメッセージが入った。そろそろ帰って来る、オレは夕飯の準備をするからお前は2階でおとなしくしてろ」「ふぁい」 1時間ほどすると瞬栄さんが帰ってきた。顔色が良くない、疲労困憊のようだ。「瞬栄さんおかえり」「ああ、ただいま和音君。ご飯の用意までしてもらって悪いね。昨日は栄養ドリンクしか摂ってなくてまともな食事をするのは24時間ぶりだよ」「瞬栄さん実は友人が来てまして」「ああ、靴があったね。女の子か、和音君もこの街に女の子の友人いたのかい。亜瑠ちゃんも連れてきてたなぁ」「そうなんですか」 声を聞いた柄留が2階から降りてくる。「こんにちわー」 瞬栄さんは柄留を見て意外な事を言う。「やぁ君か。そっかそっか……ついに和音君も女の子を連れ込むようになったかと思ったけど亜瑠ちゃんと共通の知り合いだったとはね」「……」「え、あの……えへへへ、どもです~」「こいつを知ってるんですか瞬栄さん」「ああ、2回くらい見たよ。名前は確かエム(M)さんだっけか」「そそそそそうです!ボクはM!!」「Mさんなんかすっきりした顔してるねぇ。前に見た時はとっても深刻な顔してたから……亜瑠ちゃんがあんなことになって顔見せなくなったしどうしてたのかと思ってたら和音君とも知り合いだったとはね」「瞬栄さん、亜瑠が何をしていたか聞いたことありませんか?」「う~ん……友人を助けたいとかなんとか。自分は寝る時しか家には居なかったから亜瑠ちゃんとは結構すれ違ってたしちゃんと話はできなかったからなぁ」 そう言うと瞬栄さんは風呂場に向かった。あがったらすぐに食事して寝たいらしい。「ふ~焦ったぁ~………柄留だよーとか言わないで良かった……」「Mの顔に変えて良かったな。思いがけない情報が手に入った」「やっぱり亜瑠ちゃんとMは一緒に行動してたんだ。蒐魅と繋がっていくのかな?」「蒐魅との繋がり……食事の後はデータの確認だな」「和音君、晩御飯は何?」「鯖の塩焼きだ」「おっけー」「瞬栄さんの前でMのボロが出ないようにあんまりしゃべるなよ?」「わかった……」 瞬栄さんは特に何も言わずテレビをぼんやり眺めながら食事をしていた。柄留は大人しく食事をしてすぐに2階に上がっていった。「さて……明日も早いからもう休むよ。遅くなるかもしれないし晩御飯はいいからね」「はい」 瞬栄さんは自分の部屋に入って行った。オレは食器を片付け2階に上がる。「柄留」「……あ、和音君」 例の剣と鞘を構えていた。「何か形成しようとしてたのか?」「うん……龍の話聞いたからちょっと和音君の本を見て気になったのを再現してみようかなって」「どれだ?」「骨喰藤四郎(ほねばみとうしろう)っての。龍の刀身彫りってのあるから」「ほう……やってみてくれ」「ぬ~りゃあああああああ!!」 柄留の体の力が腹に集まっていくのが見えた。ゆっくりと鞘から刀身を抜いていく。龍の刀身彫りが施された刀が出現した。「今回はうまくいった……ちょっとコツみたいなの思い出した?っていうのかな?さぁどうぞ和音君、ボクの骨喰藤四郎を見て」 柄留から受け取る骨喰藤四郎。柄を握ると熱を感じた。そして徐々に刀身が輝き出す。「……」「え?ええ?何が起きてるの??」 亜瑠の携帯が鳴った。柄留に確認させるとまた例の奇妙なメールが入っていた。「この暗号のようなメール……ソギカワに解読依頼すればよかったな」「和音君それよりも刀が……」「問題ない」 熱は冷め輝きは収まっていく。骨喰藤四郎はオレの力に反応した。続く
Jul 3, 2022
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