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2020.01.19
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​中井久夫編「 1995 年1月・神戸」(みすず書

​​ ​ 今日は 一月十七日 です。ぼくには、この日に関して忘れられない本が数冊あります。その中の一冊が、当時、神戸大学の医学部の教授であった精神科医 中井久夫さん が編集なさった 1995 年1月・神戸」(みすず書房) という、 阪神大震災 における 精神科医療の現場報告 の本です。​​​
​  まず表紙の写真を見てください。一人の少年が、こちらを向いてピースサインをしていますが、この写真を撮ったのは、この本の編集者である 中井久夫さん 、ご自身です。​
  表紙カバーの裏にこんなキャプションがついています。

​ ​兵庫区の歩道に出ていた小さな店を通りかかった時、一人の少年が「ね、食べていってよ、お願いだから」と手を合わせた。いったん行きすぎた私たちが戻ると、黄色い帽子のオジサンが「無理をいったらだめだよ」といった。私は「きみがあんまりかわいいから」といい、ビール( 300 円)とオデン( 250 円)を注文した。オジサンは同行の二人の女性に缶コーヒーを出し、決して金を受け取らなかった。
 ポラロイドを 1 枚ずつ渡すと少年はよろこんでとびはね、だんだん像が見えてくるのに新鮮な驚きを示した。
 一家かと思った人々は、一組のきょうだいと一組のもとの職場仲間とから成り立っていた。少年は 「どこかこの辺りの子」 であった。つまり彼はこの店のボランティアであった。​​
​  ​続けてページを開くと本冊の表紙の見返しには地図が印刷されています。

​​​  ​これが 表表紙 。次が 裏表紙
 書店の棚で、この本を触りながら、この 表表紙の写真 と、 裏表紙の地図 を見て、ちょっと興奮したことを覚えています。
 ぼくは、当時、この地図のちょうど西の端に住んでいましたが、この年の 1 月から 2 月の初旬にかけて、西からの電車が動いていたのは JR 須磨駅
まででしたが、そこから 神大病院 を目標に避難所をめぐって、若い 同僚Y君 と、ほぼ毎日歩いていました。職場はこの裏表紙の地図のすこし北にありましたが、生徒は学校ではなくて避難所にいたのです。
 ​​​表紙の写真のような ボランティアの少年 は、通りかかる公園や避難所にたくさんいました。 1 日に 10 キロ以上歩いていましたが、この期間不思議と疲れたという記憶がありません。
​​​ この地図の行程をめぐって 、中井久夫さん と彼を輸送した S病棟長 (本書中、 白川治 の名あり)について、本書の​「災害がほんとうに襲った時」の中にこんな記事があります。​​​​​​​

1995 1 17 10 時前後
 臨床の指揮を直接取る立場の S病棟医長 は私よりもさらに遠い団地に住んでいたが、間髪を入れず、 「オカユ」 になった家を後にしてただちに出撃した。
 しかし機敏な彼にして通常は 40 分以下の行程に 5 時間を要した。翌日に出た助手の一人は全体の三分の一に 5
​​時間を要してついに引き返した。私は運転ができず、ついでにいってしまうとバイクにも自転車にも乗れない。
 到着した は私に私の到達努力の非なることを連絡してきた。私は結局、最初の二日間を自宅で執務した。
「渋滞に巻き込まれて進退きわまり、数時間連絡不能になることは最悪」 であると彼は言い、私も思った。いつも動ぜず、ユーモアと軽みとを添えてものをいう彼は 「いずれお連れしますよ、それまで私がいます」 と言った。​

​​​ ​地震初日から、この地図作成に至る悪戦苦闘の始まりを語るエッジの効いた、さすが中井久夫というシャープな文章なのですが、ぼくは、このくだりを読んで思わず笑いながら涙を流してしまったのです。
 というのは、全くの私事ですが、 1995年1月16日 の深夜のことです。 数時間後に ​​​​​ 大地震が勃発する などということは夢にも思わない二人連れの酔っぱらいが、三宮から S病棟長の自宅 に帰還し S夫人 を困らせて騒いでおりました。ようやく、二人のうちの一人、 シマクマ君 S夫人 が自宅まで車で送り届け、取って返してご機嫌の、もう一人の酔っ払いを寝かしつける頃には日付けも変わっていたという出来事があったのです。​​​​
​​ 二日酔いであったに違いない(?) S病棟長 は、 1月17日 5時46分 にたたき起こされ怒涛の日々が始まったというわけです。​​​​
 初めて本書を手に取り、この記述に出会った時のことを今でも覚えています。 「あの日」 ​、あらゆる道路が大渋滞を起こしていることは言うまでもありませんが、あちらこちらで火の手が上がり、煙が立ちこめ、ガラスの破片がまき散らされている街路に S君 はいたのです。 5時間 かけて病院への道を探し、運転を続けた姿を思い浮かべて、ニヤつきながらも、ある誇らしさを感じたのです。 やるじゃないか! ​​この本が、ぼくにとって忘れられない理由はそんなところにもあるわけです(笑)。
 さて、この本の読みどころは何といっても
​​​​​​​ 「災害がほんとうに襲った時」 という 中井久夫さん による、緊急現場報告です。この文章は 2014 年、 最相葉月 さんが 中井久夫 さんのポートレイトのようなインタビュー集 「セラピスト」(新潮文庫) を出版なさいましたが、その出版と相前後してだったと思います、 ​​ 「阪神大震災のとき精神科医は何を考え、どのように行動したか」 ​​ として無料で(著者・出版社の承諾を得て)、 最相葉月さん によって公開されています。本書が手に入れられない場合でも、上記のアドレスにアクセスすれば今でも読めるはずです。是非、お読みいただきたいと思います。​
 さて、ここから本書に収められているのは現場の実働部隊の人々の生の声、参考資料、チラシ、避難所地図など多彩です。

 大学病院の医師・看護師は言うまでもなく、秘書、大学院生、連携した地元の県立病院や個人医院の医師、遠くから救援ボランティアとして来神した精神科医療従事者すべての人の声が収録されています。今でも真摯でリアルな声が聞こえてきます。
 ​​​​​​​​​​そして、最後の奥付を見てください。 1995 3 24 日 第 1 刷発行」 となっています。地震が起こったのは 1995 1 17 です。災害発生から出版までの時間の短さにお気づきでしょうか。たった二ケ月です。 「みすず書房」 の編集者も大変だったに違いありません。
 しかし、ここにこそ、この本の目的が明確に表れているとぼくは思います。この本は 「思い出」 をまとめた本ではありません。今まさに悪戦苦闘を続けている被災者や、その救援者に対して、共に戦っている人たちからの励まし、 「エール」 を伝える フラグ を立てることを目指したのではないでしょうか。
 ぼくは、そこに 「ほんもの」の医者 中井久夫 の真意があると思うのです。かつて、いや、ほとんど同じ時代に、アフガニスタンで井戸を掘っていた 中村哲さん 「生きておれ。病気は後で治してやる。」 という名言がありますが、あの年の 6月 にこの本を手に取ったぼくには、 中井さん 「一休み、さあ、ここからが本番だ!」 という声が聞こえてきたのでした。
 なにはともあれ、いろんな意味で思い出深い本であることは間違いありません。どうぞ、一度、手にとってみていただきたいと覆います。
追記2020・01・19
 いきなり追記ですが、この本を思い出した理由が、もう一つあります。今日から NHKのテレビ放送 「こころの傷を癒すということ」 という、実在で、若くして亡くなった 安克昌 という精神科医を主人公にしたドラマが始まりました。
第一回 を見ると 柄本佑君 が主人公を演じていて、なかなかいい感じでしたが、 「安克昌」 ファンのぼくは、ちょっと泣いてしまいました。
安克昌さん 「被災地のカルテ」 という文章も、上記の、この本に入っています。彼の著書 「心の傷を癒すということ」(角川文庫) にも収められていたと思いますが、この本で読むことができます。彼の、この著書は、出版当時、 「サントリー学芸賞」 を取った本ですが、書棚のどこに隠れているのか行方不明で、ここでは紹介できません。見つかれば 「案内」 したいと思っています。​
追記2022・08・13
​​​  ​中井久夫さん​ 2022年の8月の8日 に亡くなってから5日たちました。 中井さん はカトリックの洗礼を受けておられたようで、葬儀が 垂水のカトリック教会 で行われたようです。もう、 中井久夫 の新しい文章には出会えないのです。学問においてであれ、日常生活の些事についてであれ、人を励ます文章を書き続けてきた人だった、少なくとも、ぼくは学生時代からずっと励まされてきたと、今になって思います。子供のような言い草ですが、亡くなられて残念でなりません。
追記2023・01・17
 今年も、 1月17日 が来ました。 28年 たったそうです。あの時、高校1年生だった少年や少女たちはみんな元気に厄年を越えたのでしょうか。
 あの日、助けに駆け付けてくれた 義母 もこの正月に亡くなりました。当時、小学生だったヤサイ君が 「おばーちゃん、あの日のことは忘れません。」 と霊前に語りかけるのに涙しながら、あの日、とんでもない渋滞の中、駆け付けてくれた 義母 義父 の顔が 本当にうれしかった ことを思い出しました。

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最終更新日  2023.01.17 23:44:48
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