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「あらま!ここでも出会ってしまった!」 と勝手にご縁を感じたのです。別の本を複数冊読んでいる途中だったので、それらをようやく読み終えて図書館に本を借りに行ったのが 9月14日 。家の近くの古なじみのレトロ図書館が閉館し、車で15分ほどの中央図書館まで行くのが容易ではありません。大きくてそこそこ蔵書があるのですが、駐車場に停めて歩いて…という手間と物理的・心理的な距離感があり…。
《アーメンはもたない。たださずかり、受ける。もたないで、刻々にアーメン…。》 『アメン父』 の中の次の箇所から、父をさしつらぬいているアメンが理解できるように思われる。教義や十字架でないものを表現するのは難しいので、コメントを入れながら逡巡し、何度も同じことが繰り返し書かれている。とにかくできるだけ父や父のアメンに近づこうとする試みなのだろう。
もっと根本的なことで、今まで、自分が信仰とおもっていたものが、はたして、ほんとに信仰なのだろうか、という疑問となやみだったのではないか。 『ポロポロ』 での中国戦線の記述にも、 コミさん が理解しようとした父のアメンと同じく、自分の戦争体験を言葉で表現しつくせなかったからか、 「はたして、ほんとうなのだろうか」 という問いが何度も出てくる。 昭和19年12月24日 ごろ、 コミさん は山口の聯隊に19歳で入営した。徴兵年齢が1年繰り上げになり、ほとんど訓練なしで 南京 の城外にいれられる。
そんなふうに、苦しみながら祈っているときに、父はポロポロがはじまったのだろう。それは、その瞬間、見よ、天は開け、なんていわゆる劇的なものだったのではあるまい。
…海の底のうすあおい水のなかをおよぐようにノロ(シカみたいなウサギみたいな小動物)がとんでいき、そのあとに、ゆらゆら、細長いニンゲンが立っていて、それがこちらに近づき、発砲したら、たおれて、死んでいた…なにかの幻想か、夢のなかのできごとのようだというのでもあるまい。 コミさん はアメーバ赤痢にかかり、その後マラリアがおこったので隔離生活となり、終戦からまる1年後にようやく内地にかえってくる。その1年後東京で大学生活をしていた時に故郷の海水浴場で北川とぐうぜん再会た。その時北川は、ぽつりぽつり自分に撃たれて死んだ初年兵のことをはなした。
夢や幻想でなく、事実だもの。しかし、事実だからこそ、事実そんなことがおこっただけというのはわるいし、そういう言いかたには、なにかゴマカシがありそうだが、事実、そんなことが起こったのだ。
しかし、どうして、北川はそのことをぼくにはなしたんだろう?
ぼくは、あちこちで、あの初年兵のことをはなすようになってたのだ。八月十五日の夜、では、まだ終戦をしらず…といった調子で、撃った初年兵もぼく、胸の物入れに小枝の箸を挿して撃たれた初年兵も僕自身であるかのような思い入れで、ぼくはしゃべってた。 文章は平易でひらがなが多用されている。周辺の、というか人物や場所について、当時の行軍の非人間的なこと――たとえば行軍の途中たおれる者を何度も見たと。たいていうしろにひっくりかえるのは、重い背嚢を背負っているからなのだが、戦争も最後の方の初年兵は鉄砲も飯盒ももたされず、完全軍装の目方の半分もないという背嚢なのに…。
だが、こんな物語は、北川にはしゃべれない。あのとき、北川がぼくにはなしてくれたのとは内容がちがうというのではない。内容もちがうだろうが、内容の問題ではない。
いや、それを内容にしてしまったのが、ぼくのウソだった。あのとき、北川がぼくにはなした、そのことがすべてなのに、ぼくは、その内容を物語にした。
ひとのはじめとおわりに関与することなど、神のすることではないか。ぼくは、おこがましくも、神の名で、大尾の物語をかってにつくってしゃべっていたのだ。
父がすでにある宗教団体から出て、十字架をもたず、湧きあがることばをポロポロするように、ことばや描写を削ぎ落し、滅亡することなく追究するのは共通しているなと考える。 翻訳した作品も多いが、よく海外に滞在し、路線バスであちこち行かれたという。あと1冊図書館で借りた 『コミさんほのぼの路線バスの旅』 は日本国内のバス旅行。 『新宿ゴールデン街の人たち』 は、私が愛するゴールデン街の飲み屋を舞台にしたエッセイかと思ったら、こちらは海外旅行や滞在記が多く収められており、やはり路線バスに乗ってふらふらあちこちに行っている。私は青春切符のローカル線に揺られるのが大好きな、なんちゃって鉄女だけれど、路線バスの旅も面白そうで、しばらくコミさんの滋味に浸りたいものだ。 というわけで、お待たせした割にふがいない(いつも…)投稿ですが、 SODEOKAさん 、続きをお願いいたします。
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