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目次
1 黄金の雨の恍惚— グスタフ・クリムト「ダナエ」
2 母権制から父権制へ— アテナの誕生
3 出産は神が与えた刑罰か— 楽園追放後のイヴ
4 天使の知らせをどう聞くか— 「受胎告知」
5 世界で最も多く描かれた赤ん坊— 「キリスト降誕図」
6 白象の夢から仏陀が生まれた— 「托胎霊夢」
7 愛欲の空しさをこえるもの— 「国宝 源氏物語絵巻・柏木(三)」
8 生命としての胎児— レナルト・ニルソン の胎児写真
9 産む・産まないは誰が決めるのか— バーバラ・クルーガー のポスター作品
10 傷と痛みへの共感— 松井冬子「浄相の持続」
11 流産を描く— フリーダ・カーロ「ヘンリー・フォード病院」
12 大地母神の復活— フェミニズム・アート の諸作品
13 女性の身体とは何か— 笠原恵実子「PINK#9」
14 レオナルド・ダ・ヴィンチは何を産んだのか— 森村泰昌「身ごもるモナ・リザ」
15 妊婦の美— 葛飾北斎「身重の女」
16出産という大事業 アステカの女神 の出産像
17 生と死の連鎖—中嶋興「MY LIFE」/ビル・ヴィオラ「ナント・トリプティック」
18 生命誌の謎— 工藤不二男「幻郷」
下の引用は、 「まえがき」 からですが、取り上げられた作品に対する視点が、ほぼ順番に記されています。
美術に表現された妊娠と出産と誕生は、広大な時空間のある一つの地域と時間の中で、誕生がいかにとらえられていたかを示している。命を産み出すことのできる力を持つ女性への畏敬、その力をめぐっての母権制と父権制の闘い、全女性への罰(原罪)与えられた月経と出産、聖なる子も不義なる子もともに持つ無垢な輝き、子宮内の胎児への注目、産むか産まないかを決定するのは自分たちであるという女性たちの闘い、中絶の傷と流産の悲しみ、女性たちが取り戻そうとした大地母神の力、女性自身による女性の肉体への問い、自分自身を身ごもることと文化を身ごもること、妊婦の姿の美しさ、出産の痛みと戦う女神の姿、母から子どもへと連綿と続く命のつながり、一人の誕生の中に見える生物の進化の姿、生命誕生に入り込んできた科学とテクノロジーなどである。
まあ、ぼくのよう、あれこれ関心型の人間には、実に 「ベンキョー」
になりました。西洋絵画について、 「怖い!」
とかで流行っている芸術ですが、こういう視点で紹介される芸術作品というのは、見る人間を考えこませますね。
たとえば、そればっかり言ってますが、 笠原恵実子
の 「PINK#9」
の中の子宮の出口のピンク色の連作を見ながら、考え込むことは。やっぱり、自分の 「男性性」
についてでした。本当に 「怖い」
のは、多分、こっちだと思いますね。
2007年初版
ですから、現代芸術を論じているというには少し古い本ですが、現代の表現者たちのポジションというか、立ち位置を概観するには好著だと思いました。
追記2022・09・10
中川素子さん
に関心を持ったのは、翻訳家の 高杉一郎
のことが話題になったからです。彼女は 高杉一郎のお嬢さん
ですね。彼女自身が、ぼくなんかより年上の方ですが、感心の広さはさすがでした。
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