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2023.05.31
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​​ 100days100bookcovers no91 91日目
​茅辺かのう「アイヌの世界に生きる」(ちくま文庫)​
 前回、 YAMAMOTOさん からのご紹介が 檀ふみ 『父の縁側、私の書斎』 でしたので、当初、 檀一雄 つながりで、若い頃によく読んだ 坂口安吾 にしようかと考えたのですが、ふと、全然関係ない方向へ行ってみようかな、と思い立ちました。
​​​  9月 に交わした 句友 との会話に端を発して 『ゴールデンカムイ』 にはまり、以来、アイヌへの興味が強まっているのですが、先日、散歩の途中にふらっと入った書店で、たまたま見つけた本がありました。むずかしい研究書や資料の類いはもう読む根気がなくなっているのですが、この本は、日本人として生まれながらアイヌのコタンで育った女性への聞き取りで構成されていて、とても面白く読めたので、今回はこれを紹介したいと思います。​​​
『父の縁側、私の書斎』 との連関ワードを探すならば 「家族」 でしょうか。でも、本書に描かれているのは、血縁ではない 「家族」のありよう です。

『アイヌの世界に生きる』(茅辺かのう著、ちくま文庫)。
 本書は、アイヌの世界で生きてきた 「トキさん」 茅辺かのう が訪ね、 1973年 におこなった聞き取りをまとめたものです。数奇な運命のなかで誠実に生きてきた トキさん の人生は波乱に満ちたものでしたが、そのことについて書く前に、まず、著者の 茅辺かのう に少し触れたいと思います。私はまったく知らない人だったのですが、彼女の人生もまた、波乱に富んだものでした。
1924年 京都 に生まれた 茅辺かのう は、東京女子大学を経て京都大学文学部に入学しますが、1年で中退してしまいます。すぐに上京し、 編集者 をしながら労働運動に携わるのですが、 1962年 、今度は 東京 を引き払って 北海道 へ渡り、 網走 の水産加工工場で働き始めます。 東京での労働運動 から突然 北海道の労働者 に転身したいきさつは、本書の中でこのように書かれています。
「……このまま惰性に流されて生きたくないと思い始めた私は、今の生活を変え、生産の現場で働いてみようと決心した。
 東京を離れることを考えたのはこのころであり、北海道で働こうと思ったのは、その自然を知りたかったからだった。ただの行きずりではなく、実際にその土地の生産的な仕事に就き、自分の生活をもったうえで季節を感じたいと思った。」
1964年 帯広 から 阿寒湖 を訪れたときに、アイヌの観光土産品店を手伝ったことからアイヌ民族への思いが深まり、 1965年 には本格的に移住してアイヌコタンの近くで生活するようになります。そうした生活の中で、 「アイヌの言葉や生活を伝えておきたい」 という思いを抱いていた トキさん と知り合い、本書が生まれました。 茅辺かのう 1973年 京都 へ戻りますが、その後 「思想の科学研究会」 などに参加し、 『階級を選びなおす』 などの著書を残して、 ​2007年​ に亡くなっています。
 さて、いよいよ トキさん です。 トキさん 1906年 福島県 の農村で生まれて間もなく、母親に抱かれて 北海道 へ渡りました。母の夫は先に入植して準備を整えていたのですが、じつは トキさん は、母の夫が北海道へ渡ったあと、母と近所の神主の間にできた不義の子でした。母の夫である義理の父は、それでもいいから一緒に来るようにとふたりを呼び寄せます。現代では考えられない大らかさですが、ひとりでも多く女手が欲しいという生活上の必要があったのかもしれません。が、 トキさん 以外にも3人の異父兄がおり、貧しく、母親の目はとうてい トキさん に届きませんでした。 トキさん は子守りを嫌がった異父兄のひとりに川へ投げ込まれますが、手前の藪に引っかかり、大怪我を負いながらなんとか一命を取り留めます。
 その噂を聞きつけたひとりの アイヌ女性 が、 トキさん を引き取りたいとやってきました。やがて、 ネウサルモン という この女性 トキさんの養母 となり、アイヌ社会の中で育てます。 養母 トキさん の利発さに早くから気づき、 トキさん にアイヌの生活や伝統、言葉、儀式などを教えました。
 その頃、政府はアイヌ民族に対する 同化政策 を進めていて、アイヌ人たちは住み慣れたコタンを離れ、土地を与えられて農業を始めていました。が、もともと自然物を採取して生活していたアイヌには土地を私有する意識が薄く、養母も農業になじめなかったので、長ずるにつれ、 トキさん が畑仕事に精を出すようになります。小学校にも通うようになりましたが、厳然と差別があった日本人との混合学級になじめず、すぐにやめてしまって、文字が読めないまま大人になりました。
トキさん は、成長した彼女を取り戻しにやってきた実母や親戚たちから逃れるように、 17歳 でアイヌの青年と結婚します。結婚後は家族も増え、充実した人生になっていきますが、書くとどんどん長くなりますので、ここから先は本書に直接あたっていただきたいと思います。
茅辺かのう は聞き取りの際に トキさん宅 に何週間か滞在し、共に生活をしていますが、聞き取りの合間に記されている毎日の生活のルーティンもとても興味深く、 トキさん の地道な人となりをよく伝えています。いまは住宅も暖房も進化しているでしょうが、 50年前 の冬の北海道の寒さ、厳しさは並大抵ではなく、それが手に取るように伝わってきます。前夜、寝る前にやっておかなくてはならないこと、そうしないと翌朝さまざまなものが凍ってしまい、午前中は仕事にならないこと、食料の保存法のこと、食事のこと。
​​ 生活は小さな煩雑な作業の積み重ねであり、手を抜いたら些末なところから崩れてきて、身体にも影響を及ぼす。 トキさんの暮らしぶり を読んでいると、そんな当たり前を忘れていることに気づきます。けれどもまた トキさん は、晩年になってからテレビ番組で文字を覚え、読めるようになっていたり、教育がないために何もできなかった自分の人生を省みて、娘たちが独り立ちできるように、きちんと教育を受けさせています。毎日の生活を繰り返しているだけではなく、前を向く力が強い人なのです。​​
​​​ そして何より トキさん は、自分を育ててくれた血の繋がらない養母を敬愛し、感謝の念を持ち続けました。その気持ちの強さが、アイヌの生活や文化、言葉を何とか後世に伝えたいという行動に繋がっていったのだと思います。 トキさんの語り口 からは、そのときそのときの状況を受け入れながらも流されず、前を向き続けてきた人間としての力が伝わってきて、読者を明るい気持ちにしてくれるのです。​​​
​​​​​ 本書では 「アイヌ語の世界」 という項目を立てて、 アイヌ語 にも言及しています。生活と強く結びついている アイヌ語 の成り立ちに着目していて、 「アイヌ語辞典」 という役割は比較的希薄なのですが、言葉を通して アイヌの文化 に触れることができます。​​​​​
​​​​ 例えば、 「神」 を表す 「カムイ」 という言葉は動物にも使われるのですが、名前に 「カムイ」 とつく動物は当然信仰や儀式と深い関係があり、それがつくかつかないかで、その動物とアイヌの結びつきの種類が分かります。自然の色を抽象的に表現したり、顔料をつくったりする必要がなかったことから、色彩を表す言葉が極端に少ないことや、自然と深く関わり採集する生活だったので、気候や自然の呼び名も、五感と結びついたものが多いことなどもうかがえます。​​​​
​​​​​​​​​  トキさん が聞き取りのあとしばらくして農業を辞め、商売を始めるらしい、と最後に書かれた本文を読み終えたあと、 本田優子氏 「解説」 で、読者は本文では語られなかったことを知らされます。 「トキさん」 というのが仮名で、本名は 澤井トメノさん だということ、そして トメノさん は、 1980年代以降 にアイヌ語辞典や教本を監修し、アイヌ民話の書籍を著し、 平成9年 アイヌ文化賞 を受賞している人物だということを。​​​​​​​​​
 おそらく トキさん は、 茅辺かのう の聞き書きを受けたあと、アイヌ文化の伝承に強い使命を見いだし、それが人生の最晩年の短い間に結実したのではないでしょうか。 『アイヌの世界に生きる』 に描写された トキさん の好奇心、向上心、頑固さと柔軟性を併せ持つ人となりを思うと、それが自然にうなづけるのです。そして本書に描かれた トキさんの人物像 には、 茅辺かのうの人生観 もまた、大きく反映されていることを感じます。本書は、ふたりの女性の生きざまの結晶のような書物でもあるのです。
 それでは KOBAYASIさん 、お願い致します。 ​2022・12・17・K・SODEOKA​

​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​ 追記2024・04・05
 ​100days100bookcoversChallenge の投稿記事を ​​​100days 100bookcovers Challenge備忘録 ​ (1日目~10日目) ​​  (11日目~20日目)  ​​​ (21日目~30日目)  ​​​ (31日目~40日目) (41日目~50日目)  ​ ​(51日目~60日目)) ​​  (61日目~70日目) (71日目~80日目) ​という形でまとめ始めました。日付にリンク先を貼りましたのでクリックしていただくと​備忘録が開きます。​​​​​​​​​

​  追記

 ところで、このブログをご覧いただいた皆様で 楽天ID をお持ちの方は、まあ、なくても大丈夫かもですが、ページの一番下の、多分、楽天のイイネボタンを押してみてくださいね。ポイントがたまるんだそうです(笑)​​ ​​​
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最終更新日  2024.04.06 23:13:01
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