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2019年03月23日

もう一つの受身(三月廿一日)




 受身という観点から問題になるのは、後半部分の「dve?e se zavírají」なのだが、地下鉄だけでなく、トラムでも使われることがあると思うし、最近気づいたところでは、エレベーターでも、アナウンスが入るので、「ドベジェ・セ・ザビーライー」というのは、挨拶を除けば、外国人が一番よく耳にするチェコ語の表現かもしれない。

 折角なので、珍しくまじめに文法的な解説をしてみると、「dve?e」は複数でしか使われない女性名詞で、ここでは1格で使われている。「se」は、いわゆる再帰代名詞の4格短形となる。「zavírají」は、完了態の「zav?ít」と対応する不完了態の動詞「zavírat」の三人称複数の形で、これは主語の「dve?e」が複数であるのに対応している。
 再帰代名詞の「se」は4格で「自分を/自らを」という意味を表すから、直訳すると「ドアが自分を閉めている」ということになるだろうか。もちろん自然な日本語にすれば、上記のように「ドアが閉まる」となるのだが、チェコ語ではこの他動詞(という概念はないけど)と再帰代名詞「se」を組み合わせた形も、受身としているのである。日本語に訳す場合には、受身形よりも組み合わせになる自動詞を使う場合も多いけど。

 この手の受身で、日本語でも受身で訳せて、しかもよく使うものとしては、動詞「?íct/?íkat」を使ったものだろうか。初学のころによく使った、

  Jak se to ?ekne ?esky.

 は、「チェコではこれを何と言いますか」と訳すこともできるが、受身を使って「何と言われますか」としてもさして違和感は感じまい。
 不完了態にすると、日本語の受身との親和性はさらに高まり、

  ?íká se, ?e…

 というのは、「〜と言われている」と訳すしかない。いや、もちろん伝聞を表す「そうだ」とか「らしい」を使ってもいいわけだけれども、動詞を使うことを前提とすれば、受身形を使うのが自然である。

 昔、チェコ語の勉強を始めたばかりのころに困惑したのは、チェコ語の動詞の中には、最初から使役の意味を含んだものがあることで、例えば引っ越しという名詞は、「st?hování」だから、その本来の動詞の形「st?hovat」は引っ越すという意味かと思っていたら、引っ越すは「se」を付けた受身の形で「st?hovat se」を使わなければならなかった。つまり「st?hovat」だけなら、引っ越しさせるという意味になるのである。
 それから「p?ekvapit」も驚くではなく、驚かせるという意味で、驚くという意味で使うのであれば、「p?ekvapit se」と「se」を付けなければならない。そして、「P?ekvapil m? kamarád」のように、誰かが私を驚かせたという形の文は、自然な日本語にすると「友達に驚かされた」と受身形を使うことになるから最初はちょっと混乱した。

 また、「se」を付けるけど受身ととるべきなのかどうかよくわからないものもあって、「vrátit(戻す)」「vrátit se(戻る)」は他動詞と自動詞の組み合わせになるから、受身と見たいところだけどチェコ人がどう理解しているのかは知らない。それから「najíst se(満腹するまで食べる)」は、「se」なしでは使えないから一般には受身とは取らないのだろうけど、「nakrmit(十分餌を与える)」という動詞の存在を考えれば、「najíst」だけで、食べさせるという意味を持っていたのではないかとも思えてくる。

 ここまで書いて、自分でもいったい何が言いたいのかよくわからなくなってきた。そう、この「se」を使った受身というのは、あんまり受身だと意識しないほうがいいということを言いたかったのかな。日本語で自動詞と他動詞の組み合わせのある動詞だったら、受身よりも自動詞を使う方が自然だし、チェコの中でも、どこまでが受身で、どこからが別の動詞扱いにするのかよくわからんし。
 最後に一言だけ言っておくとすれば、この受身は、動詞が直接4格を取るものでなければ使えないということだろうか。「Jinak se to ned?lá(そうでなければ、そんなことはするものではない)」のである。
2019年3月22日17時。













タグ: 動詞 受身
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