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2019年10月08日

ラグビーでチェコ語を勉強する3(十月六日)




 昨日の話が短くなってしまったのは、ラグビーに時間を取られているからだけど、今日も状況はそんなに変わらない。サッカーだとよほどのいい試合でない限り、見た試合の余韻に浸るなんてことはないが、ラグビーの場合にはほぼ全試合余韻に浸ってしまうので、試合と試合の間の時間が短すぎてもどかしくなることがある。余韻に浸っている間に、次の試合が始まってしまうのである。見なきゃいいとは言う勿れ。ラグビーとハンドボールは、放送されていて時間があれば見てしまうものだ。

 さて、チェコ語のラグビー用語の続きである。ラグビーのボールは、普通のスポーツと同じように「mí?(ミーチ)」と言ってもいいようなのだが、この前、試合を見ていたら、解説者が、ミーチを使ったことを、ラグビー関係者に詫びていた。それはラグビー界ではミーチではなく、「šiška(シシュカ)」という表現を使っているかららしい。シシュカは本来は長めの松ぼっくりのことをさすのだが、そこから形の似たものをさすようになり、ラグビーのボールも楕円形で似ているから、種々化と呼ばれるようになったようだ。ボールをミーチと呼ばないのも、チェコのラグビー界の誇りなのかもしれない。ミーチじゃなくてバローンと呼ぶスポーツもあったような気がするし。


 ボールを蹴る選手は「kopá?(コパーチ)」で、ラグビーやサッカーの選手たちが履いているスパイクは「kopa?ky」という。日本語では同じ言葉になる陸上用の、特に走るためのスパイクは、「tretry(トレトリ)」になるから注意が必要である。もう一つ「kop」に関連する言葉としては、「kopátko(コパートコ)」がある。今回聞いて最初は何のことかわからなかったのだが、ペナルティーキックの際に蹴りやすいようにボールの下に置く物のことだった。妙に音の響きがかわいくてラグビーにそぐわない気もするんだけど。

 ラグビーでペナルティがつく言葉には、「ペナルティー・トライ」があるが、チェコ語では、最近のルール改正で問題が生じている。以前どこかに書いたが、トライは5点獲得できることから、数字としての5を意味する「p?tka(ピェトカ)」という。ペナルティーがつく場合も同様で「trestná p?tka(トレストナー・ピェトカ)」である。問題は、7点もらえるようになったペナルティートライが5を表わす言葉で示されていいのだろうかということで、これをきっかけにトライの呼び方が変わることを期待している。
 ペナルティーキックやトライの後のコンバージョンで狙うもの(ゴールでいいんだっけ?)は、形から「há?ko(ハーチコ)」、つまりアルファベットのHとよぶ。ゴールに成功するのを、蹴ったボールが二本の棒の間を通り抜けることから、「prokopat(プロコパット)」という。ラグビーは接頭辞の「pro」の勉強に向いていて、バックスの選手が相手のディフェンスラインの隙間を抜けて走るのを「proniknout(プロニクノウト)」、ディフェンスにぶつかりながら間を抜けて突進するのを「prorazit(プロラジット)」という。ハンドボールではプロラジットは反則なんだけどね。

 トライを決めるのは、「polo?it(ポロジット)」「pokládat(ポクラーダット)」という動詞を使うのだけど、これは本来置くという意味である。接頭辞を変えて「s」、つまり「skládat」にするとなぜかタックルするという意味になる。正確にはタックルして相手を倒すという方がいいかな。接頭辞の「s」には、いくつかのものを集めるという意味と、上から下へという意味の二つの意味があるのだけど、ここは立っているものを倒して下の地面に置くと考えておく。折り畳み傘にもこの動詞を使うから、おなかの当たりにタックルして相手を二つに折りたたむと解釈しても面白い。
 タックルそのものは、「skládka」となる。本来はいろいろな物を集めて置いておく倉庫とか、荷卸しを意味する言葉なのだけど、ラグビーではタックルである。反則のハイタックルが「vysoká skládka」になるのは、チェコ語を勉強している人ならすぐわかるはずである。

 よく出てくる接頭辞には「p?e」もあって、ラックの中で相手側に倒れこんでボールを押さえるのを「p?epadnout(プシェパドノウト)」、モールで相手を力で圧倒して押していくのを「p?etla?it(プシェトラチット)」、バックスのパス回しで何人か飛ばすのを「p?ehodit(プシェホディット)」なんて言う。「p?e」は何かを越えることを意味しているのである。

 ラグビーに限らずスポーツの中継を見るのは、外国語の勉強に、特に語彙を増やしたり、言葉に対する感覚を磨くのにものすごく役に立つ。それなのに、外国語の上達にテレビを役に立てようなんて言う人が紹介しているのを見たことがない。状況がわかっていないと意味不明になりがちなニュースやドラマを見るよりもはるかにいいと思うんだけどなあ。特に自分のよく知っているスポーツを見ながら日本語での表現と比較していくと得るものは大きい。
 我ながら無理やり感のある終わり方だけど、この件はこれでおしまい。そのうちハンドボール用語とかサッカー用語もやってみようかな。
2019年10月6日24時。











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