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2020年10月08日

地方議会選挙2020結果2(十月五日)





 バビシュ首相と対決姿勢を強めている政党としては、既存の政党側から市民民主党、キリスト教民主同盟、TOP09の三党、新興勢力としては海賊党と市長無所属連合の二党が上げられる。このうち、キリスト教民主同盟は、地方によって支持率のばらつきが大きくANOの対抗馬とするには弱い。地方議会選挙に、下院や上院の議員を務める党の大物を出馬させて票を集めるという子供のけんかに親が出るような手法を使っているのも高く評価できない。

 カロウセク氏がキリスト教民主同盟を割って結成したTOP09は、結党当時の勢いを失いその他の政党の中に埋没しつつある。一時市民民主党出身の政治家が党首を務めていたことからもわかるように、党の象徴だったシュバルツェンベルク氏が引退した後、迷走に迷走を重ねている印象である。実質的な党首だったカロウセク氏も、次の下院の選挙には出ないと言って、裏から反バビシュ連合の結成に尽力するというのだけど成功するとは思えない。この党は、結局シュバルツェンベルク党の顔をしたカロウセク党だったのだろう。世代交代をするなら党名も変えてしまった方がよさそうだ。

 市民民主党は、一時の解党の危機を脱して支持を増やしたが、それも最近頭打ちになった感がある。かつて1990年代から2000年代の初めにかけて、社会民主党と組んで好き勝手にやらかした過去を忘れていない有権者も多く、かつての支持者が完全にもどってきていない印象である。地方に大物政治家がいて中央の意向を無視しがちだという問題もまだ残っているようだし、しっかり過去の清算をしないと、新しい政治家たちは出てきつつあるけれども、ANOを批判しても、お前らも同じことやってるだろという反論に、程度が違うという反論しか出来なくなってしまう。

 以上三つの既存の政党の中で、ANOと対決できそうなのは、市民民主党しかない。実際、今回の地方議会の選挙でも既存の政党の中では圧倒的な支持を集めて一丸多くの議席を確保した。多少の凸凹はあっても全国的に支持者がいるから、どの地方でもある程度の票をえて議席を確保するだけの力があることを示した。疑念があるとすれば、今回来年に向けての実験の意味もあったのだろうが、いくつもの地方で単独ではなく他党と共同で同盟を組んで候補者を立てていた点である。それが新たな支持者の掘り起こしにつながって議席増をもたらす可能性もあるが、かつてのチェコ最大の政党である市民民主党の支持者の中には、姑息な手段だとして反発する人も出そうである。

 そうなると、期待は新興の二政党、海賊党と市長無所属連合ということになる。同時にこの二党は今回の地方議会選挙で前回と比べてもっとも議席数を増やした政党でもある。ただし、どちらの政党にも弱点があって、それをどう解決するかが、来年の下院の選挙で、勝てないまでも、バビシュ政権の成立を阻止するための課題になるだろう。

 海賊党はいくつかの市議会選挙で議席を獲得して、市政で実績を上げた後、地方議会に足場を築く前に国政選挙に進出して、一躍野党の第一党を争う立場に立った。そのため国政にかかわる政治家たちは知名度も高めているのだが、地方に、この地方ならこの人という有力者がいないのが弱点になっている。二年前の市町村議会の選挙でも議席を増やし各地で実績を積み重ね、今回の地方議会選挙でもANOについで二位の座(いろいろな政党の同盟があって明確には決められないのだが)を獲得したから、時間をかければANOに対抗できる唯一の政党になるとは思うのだけど……。
 問題は、保守派の有権者には敬遠されているところか。これも、市町村議会から国会までの活動を通して、意外とまともなどころか、極めてまともな政党で、日本の野党とは違って実務能力もあることを示しつつあるから、そのうちに保守派の中からも海賊党支持者が出てくるかもしれない。このぽっと出ではなく、地道に勢力を拡大してきた政党に必要なのは、やはり時間であろう。

 もう一つの市長無所属連合の場合には、もともと政権に不満を持つ地方自治体の首長たちが集まって結成した党で、地方単位で微妙に違う名称を名乗っていることもあって、党全体としてのイメージにかけるところである。今回の地方選挙でも、単なる市長無所属連合だけでなく、リベレツ地方市長無所属連合のように、チェコテレビの得票率集計では別扱いされているものがいくつかあって、一つの政党なのか別物なのか掴みにくいのである。
 結党の経緯からも明らかなように地方自治に関しては、明確な政策を持ち、高い実務能力を誇るが、ことが外交や国防などという国政レベルの問題になったときにどこまで党全体として意見をまとめられるのかという疑問もある。それから、今回の選挙で地方議会の議員になった人の多くが、同時に市町村の長を務めているのだが、これも兼職できるのが理解できない。ただ、市長たちが作った党であるということは、地方議会であれ、国会であれ、候補者たちが市長たちになるのは当然と言えなくもない。

 政治学者の中には、海賊党と市長無所属連合が来年の下院議員の選挙で同盟を組んで候補者を立てるのがANOを下野させる最善の手だという人がいるが、あまり賛成できない。二つの党の支持者って反バビシュでは一致できても他の点ではあまりに対照的な気がする。実際にこの二党が同盟を組んで立候補したオロモウツ地方では、ANOの得票率は27パーセントと平均よりもかなり高く、この二党は19パーセントほどだった。単独でこれだけの得票率ならすごいが、二党合わせてなら別々に立候補していても大差はなかっただろうと思われる。
 個人的には、ANOの次は海賊党だと確信しているのだが、それが来年の下院選挙で実現するとは、現時点では思えない。あせりすぎているように見えることもあるんだよなあ。あせらずに地道に勢力を増やしていけば、海賊党の時代が来るはずである。
2020年9月6日12時。










タグ: 選挙 地方議会
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