チェコ語では、各チームの選手をまとめて呼ぶときに、チームのある町、もしくは地区の名前から作られた形容詞の複数形を使うことがある。プルゼニュなら、形容詞がプルゼニュスキーで、複数形のプルゼニュシュティーを使うのである。スパルタ・プラハの場合には、プラハを使うとほかのプラハのチームと試合するときに混同するので、スタジアムのある場所であるレトナーから、レテンシュティーと言われる。
この手の形容詞は、どんな地名からでも作られるし、対戦相手によっては、モラバネー(モラビア人)、プラジャネー(プラハ人)なんて一般的な呼称で呼ばれることもある。ただし、チェシは、ボヘミア人であると同時に、チェコ人全体も指すので、方角をつけて、セベロチェシ(北ボヘミア人)、ザーパドチェシ(西ボヘミア人)などと呼ぶ。
ただ、チーム名がついていても、使われない場合もあって、ヤブロネツについていた、バウムトや、ブルノのズブロヨフカからは、バウムテャーツィとか、ズブロヨフカージとかできてもよさそうな気がするけど、聞いたことがない。チームの名前というよりは、スポンサー企業の名前であることが嫌われているのだろうか。
我らがオロモウツの場合にも、シグマはもともとはオロモウツにあったポンプかなんかを生産していた企業の名前である。ブルノやヤブロネツが、チーム名に使うスポンサーの名前がしばしば変わったりなくなったりするのに対して、オロモウツの場合には不変だからか、たまにシグマーツィという言い方を聞かなくもないような気もする。でも、ハナーツィ(ハナー地方のひとびと)と呼ばれることのほうが圧倒的に多い。
ところで、オロモウツのホッケーチームの選手たちはまとめて、コホウティ(オンドリ)と呼ばれているけれども、あれは市庁舎の天文時計の金色のニワトリから来ているのだろうか。うーん、あんまり強そうに聞こえない。
ボヘミアンズも、本来チェコ語の名前ではないせいか、ボヘマーツィというのはあんまり聞かない。その代わりに、クラブのマスコットとなっているカンガルーのチェコ語の複数形クロカニが使われる。同じマスコットでもスパルタのゴレームは、なぜか選手たちを呼ぶのに使われない。ボヘミアンズの場合にはクラブのエンブレムにまでカンガルーが使われているからだろうか。
それから、スラビアの場合には、もう一つ特別な呼称があるのだった。スラビアのホームでのユニフォームは、前面も後面も真ん中から左右に赤と白に分かれている。赤と白の布を縫い合わせたように見えるからか、もしくはかつては実際に縫い合わせてユニフォームを作っていたからか、チェコ語でセシーバニー、つまり縫い合わされし者たちと呼ばれることもある。
ユニフォームの色で呼ばれることもある。ただ単色の場合より、スラビアのように、はっきりと二つの色が使われている場合に、チェルベノビリー(赤白)などと使われる。よく聞くのは、プルゼニュのモドロチェルベニー(青赤)、ボヘミアンズ1905のゼレノビーリー(緑白)、テプリツェのモドロジュルティー(青黄)ぐらいかな。白黒であるチェルノビーリーは、フラデツ・クラーロベーだったか、チェスケー・ブデヨビツェだったか。
とまれ、チェコでサッカーに限らず、スポーツの中継を見ていると、チーム名、選手名以外に、さまざまな、チェコ人なら問題なく理解できる呼称が飛び交うので、チェコ語を学ぶ外国人には最初は大変である。でも、繰り返し耳にして慣れていくことで、地名からの形容詞の作り方など授業で勉強したことが身につくようになるし、えっと思うような名称が出てきたときに、どうしてそんな言い方をするのか、考えたり調べたりすることで、チェコ語の役に立たない知識を深めることができる。
実は、語学の勉強においては、この手のテストの点数を増やしたり、しゃべるのが上手だとほめらるためには、何の役にも立たない無駄な知識の集積というものが、意外と大切なような気がする。そういうどうでもいい部分に、言葉を使用する人々の言葉に対する感覚というものが隠れている。と言ったらかっこつけすぎか。
そのどうでもいい知識で、解決できていない問題が一つ。フラデツ・クラーロベーの選手たちのことを、しばしばオトロツィと言うのだが、これ、日本語に訳すと奴隷になるのである。どうしてフラデツが奴隷になるのか、答えを見つけることができていない。歴史的な経緯とかあるのだろうけれども、そこまで我が知識は深くないのである。
11月10日12時。
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