とまれ、昨年の今頃は、ブログを始めたばかりで、自分がブログを始めたことを知り合いに知られたらどうしようと戦々恐々としていたものだ。メールのチェックをするたびに、誰からかブログとかいうタイトルのメールが来ているのではないかと不安と期待の入り混じった気分になっていた。自己顕示欲はないわけではないけれども、読者対象も想定せずに適当に書き散らしたものを、知人に読まれると思うと何ともいえない気恥ずかしさがあった。北村薫の推理小説『覆面作家』シリーズの主人公の気持ちが少しわかった気がした。
それが、一月経っても誰からもそんな連絡はなかった。考えてみればインターネットという大海の中で、日本語で書かれたものに限定したとしても、このささやかにひそやかに始めたブログに、決して数が多いとは言えない、今でも連絡のつく我が友人、知人たちがたどり着くのは、砂漠に落ちた一本の針を見つけ出すのと同じぐらいには困難なのだろう(この例えは、どこかで読んで気に入っていつか使ってやろうと思っていたものである)。
二月の終わりだったと思うが、非常にうれしいことがあって発作的に、三人の方にこのブログの存在をお伝えした。同時にとくに犯人については内緒にしてくれるようにもお願いしたので、そこから広がって連絡がくるということもなかった。その後は、五月雨式にポツ、ポツと全部で十人いかないぐらいの方に教えただろうか。
こちらから教えることはあっても、お前だろというメールもコメントも来なかったので、これはもうばれることはないだろうと安心していたのだけど、ばれた。ばれてしまった。たまたま、オロモウツ在住の日本の方に会う機会があったときに、いきなり「ブログ」と言われて、しらばっくれることができなかったのだ。ブログを初めてちょうど一年経つ今年の初めにばれたというのも運命なのかもしれない。
その人の話によると、自分で発見したのではなく、昨年末に日本の知り合いから、こんなブログがあるけどと連絡を受けて犯人ではないかと疑われたらしい。それで、実際にブログを見てみたら……。知り合いが見ればわかるようなことがあちこちに書いてあるから、当然、犯人の正体は一発でわかったと。
知人が見ればわかるというのは予定通りなのだけど、ばれたルートが想定外だった。友人知人のうちの誰かが、「チェコ」「オロモウツ」あたりで検索したら、何かの間違いでこのブログに到着して、メールをよこすか、ブログのコメント蘭に書き込むかするのではないかと予想していたのだ。そうなのだよ、チェコに住んでいる人に直接言われることも想定していなかったのだ。だから、とぼけられなかったのか。
さて、これからどうしよう。当初の予定では、誰かにばれたら全面的に公表しようと思っていたのだけど、「実はブログを」なんてふれて回るのは、始めてから一年以上経った今となっては、今更という気がして、気が進まない。だから、これまでブログについてお伝えした方にお願いした内緒というのを撤回することにしよう。もし誰かにこのブログの存在を教えたいなんてことがあった場合には、「どうぞお願いします」と申し上げよう。ただ、「犯人についてだけは、言を左右にして明言しないでいていただけるとうれしいです」と付け加えておきたい。ということでよろしく。
1月6日23時。
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