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2016年01月09日

チェコ語 その一 発音(一月五日)




 しかし、毎回そんな返事を返しても面白くないので、苦手な英語と比較して、英語よりは簡単だと答えることが多い。なかなか信じてもらえないのだが、単語や文法を覚えるという部分はともかく、実際に言葉を発するという面では、英語よりもはるかに楽だと思う。

 まずは発音であるが、母音が日本語と同じで五つしかない。だから、微妙に違うものもあるが、基本的には日本語と同じように「アイウエオ」で発音しておけばいいのである。ただ、ウ段の音を発音するときに、特に語末にUがあるときに、やや強めに発音することは心がけておくといいだろう。日本語では語末のUは弱くなる傾向があるので。
 母音に関しては、英語起源の外来語の場合に、日本人がア段の音で聞くものを、チェコ人がエ段の音で取り入れてしまうので、チェコ語風に発音されてもわからないことがあるが、そんなのは笑ってしまえばいいのである。「ヘメネクス」と言われて、それが「ハムアンドエッグス」、つまりハムエッグのことだとすぐに理解できる人はいないだろう。それ以外は、「ジャム」が「ジェム」、「ジャズ」が「ジェス」になるぐらいなので、可愛いものである。

 子音のほうは、発音が少々厄介なものもあるのだが、それぞれの子音の発音さえ覚えておけば、あとはローマ字読みをすればいいだけなのでありがたい。同じ子音が位置によって濁ったり濁らなかったりするという問題もあるが、これもルールさえ覚えてしまえば問題はないし、チェコ人でもいい加減だったりするからあまり気にしなくてもいい。
 子音で日本人にとって発音が問題になるものとしては、LとRがあるが、これはどのヨーロッパの言葉を勉強する場合であっても、逃れられないので諦めるしかない。ただ、面白いことに、日本だと日本人はRの発音ができないと言われるが、チェコではLがRに聞こえると言われるのである。

 一般に、チェコ語の発音で最大の問題だといわれるのは、チェコ人の誇り?である。チェコの有名な作曲家、私が小学生の頃にはドボルザークと書かれていたが、今はドボルジャーク、もしくはドボジャークと書かれることが多いだろうか、とまれ有名な「新世界より」を作曲したこの人の名字の「ルジャ」「ジャ」の子音に当たるのがこの音で、世界中でチェコ語にしか存在しない音だと言われている。
 チェコ人は、ほとんどみんな、外国人には発音できないと思っているので、チェコ語を勉強している学生は、必ずと言っていいほど、この子音の入った言葉を発音してみろと、飲み屋なんかで要求されることになる(素面で知らない外国人にこんなことを頼む人は、チェコにもそんなにはいない)。発音できなければ、「できないだろう、やっぱりこの音は外国人には無理なんだよな」というような反応が、できれば、「外国人の癖になかなかやるじゃねえか」みたいな反応が返ってきて、一度や二度なら楽しいのだが、何度も繰り返されるといい加減にしてくれといいたくなる。チェコに住まわせてもらっている外国人の義務として、求められれば嫌な顔をせずに、発音してみせることにはしているけれども。
 では、その発音がどのぐらい難しいかと言うと、実はチェコ人が言うほど難しくはない。先ず口の中で舌を、日本語で「ル」と発音する時の位置において、できればもう少し上に上げて口蓋に当てておく。その状態から、無理やり「ジャ・ジ・ジュ・ジェ・ジョ」と言う練習を繰り返していけば、チェコ人にもそれなりに聞こえる音が出せるようになる。それができるようになると、舌が動かせるようになってくるので、Rを発音するときにも、日本語風のRの発音が、チェコ語風の巻き舌のRに近づく。ここまで来れば、巻き舌のRから派生した本来の?の発音までは、あと一歩でしかない。
 しかし、?なんて、スロバキア人の中にも最初からできないと諦めてRで代用する人もいるし、チェコ人の子供でもうまく発音できなくて、特別の発音教室に通うこともあるらしいから、外国人がうまく発音できなくても当然で、できたら儲け物ぐらいの気持ちでいればいいだろう。チェコ語の師匠の話では、イラクサの葉っぱを舌の先につけて、しびれで舌の振るわせ方を練習するというとんでもない方法もあるということだが、これはさすがに冗談だと思いたい。

 チェコ語の発音に関しては、英語が得意な人のほうが、チェコ語の言葉も思わず英語読みしてしまって、なかなか発音が上手にならなくて苦労することがあるので、英語の発音が苦手という人で、外国語コンプレックスを払拭したいと考えている、かつての私のような人は、チェコ語を勉強するといいのではないかと思う。
1月6日16時30分


タグ: 母音 子音
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