格変化について、言葉で説明するよりも見てもらった方が早かろう。ということで、例は「píse?(歌)」と「kost(骨)」である。まずは単数から。
1格 pís-e? kost-
2格 pís-n? kost-i
3格 pís-ni kost-i
4格 pís-e? kost-
5格 pís-ni kost-i
6格 pís-ni kost-i
7格 pís-ní kost-í
一見してわかるのは、この二つのタイプの違いは2格しかないということである。「píse?」で「e」が消えているのは、後ろから二番目の「e」は所謂出没母音だから、形が変わったものとはみなされない。ということは、「?」で終わるものの2格は「e」、「t」で終わるものは「i」と覚えておいてそれ以外の子音の場合には、個別に覚えるしかないということである。2格以外は女性名詞であることがわかっていれば、間違えようがないので楽と言えば楽である。
「píse?」タイプの名詞は、「báse?(詩)」など、「e?」で終わるものが多い。ただ、「v?tev(枝)」のような例もあるので、出てきた場合には、いや、出てきた言葉で重要そうなものは一つ一つ覚えていくしかない。それから地名でもこのグループに属するものがある。「e?」で終わるもので終わるものとしては、プルゼニュがあるし、それ以外では、われらがオロモウツも女性名詞で、「do Olomouce」となるのである。
「kost」タイプの名詞は、「ost」で終わるものはすべてだと言いたいのだけれども、そんなことはなく、「most(橋)」は小文字で書いて一般名詞として使っても、大文字で書いて地名として使っても男性名詞である。ルールとして一般化できるのは、形容詞を名詞化した「ost」で終わる名詞はすべて女性でこのグループに属するということぐらいである。例えば、「veliký(大きい)」からできた「velikost(大きさ)」なんかである。
他の子音で終わるものとしては、「noc(夜)」「ves(村)」「le?(嘘)」「?e?(話)」などが重要だろうか。こちらも出てきた重要なものは覚えていくしかない。重要と言えば地名の中にもこの変化になるやつがあって、知らないと、何それとか、それって詐欺だろうと言いたくなるので、新旧のボレスラフ、ブジェツラフあたりの末尾が「lav」で終わるものがこのグループに属することは、特徴的だし覚えておいたほうがいい。
まあチェコ中の地名の性、単複の区別を完璧にできる人なんてチェコ人の中にもそんなにいるわけではない。事前に調べるべきテレビやラジオのニュースでも、ボヘミアの連中がモラビアの地名の性や単複を間違えることがままあって、モラビア人の怒りを買っている。それに、方言では性が変わてしまうこともあって、オロモウツを男性名詞にして使う人たちもいるのだ。この辺はもう間違えても、そんな難しいことを外国人に求めるなと言うのが正しい態度であろう。
では複数はどうかと言うと、以下のとおりである。
1格 pís-?e kost-i
2格 pís-ní kost-í
3格 pís-ním kost-em
4格 pís-n? kost-i
5格 pís-n? kost-i
6格 pís-ních kost-ech
7格 pís-n?mi kost-mi
「píse?」タイプのほうは、「e」で終わる軟変化の名詞と全く同じ格変化である。単数の変化も統一して何変化ということにしておいてくれれば、チェコ語を勉強する外国人にとっては楽だったのだけどねえ。外国人のことを考えて言葉を簡単にするというのは、愚の骨頂もいいところだから、愚痴に過ぎないのだけど、格変化のややこしさに、いや微妙すぎる違いにこんなことを言いたくなることもたまにある。間違えたのはチェコ語が悪いという開きなおりがいつもやりかただけどね。
「kost」タイプのほうは、3格、6格に男性名詞的な要素が顔を出すのがちょっと厄介である。ただ形容詞から作られた、このタイプの格変化をする名詞を複数形で使う機会が、そんなにひんぱんにあるとも思えないのが救いと言えば救いである。でも「zajímavosti(興味深いこと)」「události(ニュース)」なんかは複数でも使うか。
これで、女性名詞の復習は終わりなのだけど、よくもまあこんなにあれこれ覚えたなあと我ながら感心してしまう。いや、まだ名詞に関してでも中性名詞が残っているし、形容詞や動詞の復習もしないといけないんだけどね。このチェコ語の文法に関するシリーズ、チェコ語を勉強していない人には読むの辛いだろうなあと思いつつ、ちょっと間をおいて中性名詞に手を出す予定である。
2017年10月1日23時。
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