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2018年10月11日

チェコ語の選挙——復習編2(十月七日)





  プラハ           24
  中央ボヘミア        26
  南ボヘミア         13
  プルゼニュ地方       11
  カルロビ・バリ地方     5
  ウースティー地方      13
  リベレツ地方        8
  フラデツ・クラーロベー地方 11
  パルドゥビツェ地方     10
  ビソチナ地方        10
  南モラビア         23
  オロモウツ地方       12
  ズリーン地方        12
  モラビアシレジア地方    22


 かなり選挙区間の定数には(つまりは人口にも)差が多く、カルロビ・バリ地方など隣接するプルゼニュ地方と一つにしてしまってもいいのではないかと思わなくもないのだが、歴史的な経緯とか、主要都市のプライドなんかを考えると、単純に人口に基づいて地方区分するというわけにもいかないのだろうか。プラハから電車で一時間ほど東に行ったパルドゥビツェと、その北にほぼ隣接するフラデツ・クラーロベーの場合にも、それぞれ別の地方を構成しているのは、同じ地方に入れた場合にどちらを地方庁の所在都市として選ぶかが問題になるからだと考えられそうである。
 とまれ、各政党は選挙区ごとに候補者名簿を作成し、有権者は支持する政党を選んで投票する。政党に所属しない候補者も立候補できなくはないが、どこかの政党と交渉して名簿に入れてもらうしかない。名簿に載せる候補者数には特に規定はないようだが、恐らくは選挙区の議員定数を越えないようにはしているはずである。

 票の集計は各選挙区ごとに行い、議席の配分を行っていくのだが、政党が議席を獲得するためには得票率5パーセントの壁を越えなければならない。ただし、この5パーセントの壁は、個々の選挙区ではなく、チェコ全土で合計5パーセントを越えなければならないのである。これが達成できれば、滅多にないことだが、選挙区での得票率で5パーセントを下回っても議席を獲得することがある。その反面、選挙区で5パーセント以上の票を獲得しても、全国で5パーセントを越えなかったら、議席を獲得することはできない。これが下院の選挙で地域政党が議席を獲得できない原因で、無所属の候補者だけで独自の候補者名簿を作成するのが難しい理由である。
 政党が議席を獲得することが決まった後の政党内での議席の配分は、原則として名簿の上位から順番に当選が決まっていく。原則としてというのは、例外が存在するからなのだが、候補者は個人票を集めることで名簿内の順位を上げていくことができるのである。実際に何票で順位が上がるとか細かいルールは知らないが、名簿の最下位に記載されていた候補者が順位を上げて当選したとか、上位に名前があったのに、順位を下げて落選したとかいう話はいくらでもある。

 政党に投票する比例代表職の選挙で個人票とは何ぞやという疑問は正しい。チェコの投票用紙は日本人の目から見ると紙の無駄の極致で、有権者は投票に際してその選挙区で候補者を立てている政党の数だけ投票用紙をもらう。それぞれの紙には一つの政党の候補者名簿が印刷されているから、自分の投票したい政党の候補者名簿の印刷された紙を投票箱に入れて(その前に封筒に入れる必要もある)、残りは廃棄することになる。その選んだ政党の候補者名簿の中で特に支援したい人がいる場合には、その人の名前に印を付けることができるのである。もちろん数に制限はあって3か、5つだったと思う。
 だから、開票にあたっては、まず投票用紙の数で政党の得票数が確定し、政党の獲得議席数も決まる。そして、個々の投票用紙の印の数を数えて集計し、個々の候補者の獲得した個人票を確定させる。それに基づいて、名簿内の順位の変動が行われ、誰が議席を獲得したかも決まるのである。ここで強調しておく必要があるのは、個人票を入れることができるのは、自分の選んだ政党の候補者名簿に記載されている候補者だけで、他党の候補者には入れられないということである。

 この下院の選挙とほぼ同じ方式、同じ選挙区の区分で行われるのが、それぞれの地方議会の選挙である。地方議会の選挙には、下院の選挙区にはあったプラハは含まれないので、全13の地方で行われる。それぞれの地方をさらに分割して選挙区を立てるようなことはせず、地方全体で一つの選挙区になっている。
 下院の選挙との違いとしては、全国で5パーセント以上という縛りがなく、それぞれの地方で5パーセント以上の得票があれば議席を獲得することができようになっている点である。そのため、地域政党が議席を獲得する余地は大きく、中央の連立とは関係なく、その地方の事情に合わせていくつかの政党が合同で候補者名簿を作成することもある。
 例えば、リベレツ地方では、2012年、2016年の地方選挙でリベレツ地方のための市長連合が勝ち、最大与党として地方知事を輩出している。この市長連合と、全国政党と化しつつある市長連合の関係はいまいちよくわからない。理解できないことに、市長連合という名の通り、この党(両方とも)から立候補するのは、ほぼみんな現役の市町村長である。こういうのは兼職はよくないと思うのだが、チェコでは何の問題もなく、市長兼地方知事とか、地方知事兼上院議員とかがいくらでも存在するし、国家公務員も、特殊な職を除けば政党に加入して現職のまま選挙に立候補することが許されている。チェコという国は、政治家と官僚に甘い国なのである。

 ということで、下院と地方議会の選挙は、政党主導で比例代表制で行われることを覚えておこう、ただし、個人への票も存在するが、それは選んだ政党の中からしか選べない。前回と今回で二つのタイプのチェコの選挙を復習したが、それを踏まえて、次回は今週末に行われた市町村議会の選挙についての説明に入る。
2018年10月9日18時。









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