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2018年10月15日

市町村議会選挙2018プラハ(十月十一日)





 プラハの状況を簡単に説明しておくと、かつては市民民主党の牙城ともいうべき町で、特に悪い意味で市民民主党の政治家の典型であったベーム氏が中心になって市政を壟断してきた。市民民主党が退潮に入ると、シュバルツェンベルク氏を擁して都会人の人気を集めることに成功した新政党TOP09がプラハで一番多くの票を獲得することに成功する。これは市議会選挙ではなく、下院の選挙だったかな。
 そして、TOP09が一見新しいけれども中身はキリスト教民主同盟から分かれた古い政治家の集まりでしかないことが明らかになると、2011年に誕生したANOが当初は中道右よりの有権者を狙って選挙運動を展開したこともあって、前回の市議会選挙では、第一党になり市長を輩出したのである。その後もいくつかの選挙でプラハでの第一党の座をANOとTOP09で争ってきている。


 ふたを開けてみると、上位五党は大接戦で、一位の市民民主党からANOまで、得票率で2パーセントちょっとの差の中に納まっていた。全65議席の各党の獲得議席は以下のとおり。ソースは ここ

 市民民主党 14
 海賊党 13
 プラハ・ソビェ 13
 プラハのための協力 13
 ANO 12

 6位に入ったオカムラ党は得票率約3.5パーセントで議席を獲得できなかった。ANOが15パーセント超だから、5位と6位の差は滅茶苦茶大きかったのである。大事なのはこの5党に票が集まった結果、伝統的に議席を有してきた社会民主党と共産党が議席を失ったことである。また、市政に混乱しかもたらさなかった緑の党が、前回の三党連合が解消され単独で候補者を立てた結果、議席を失ったのは、プラハにとっては喜ぶべきことであろう。
 議席を獲得した五つのうち、二つプラハの地域政党があるように見えるが騙されてはいけない。4位に入ったいかにもな団体は、実はTOP09と市長連合にキリスト教民主同盟などの団体が加わってできた連合なのである。クラドノの場合と同じで党名隠しなのではないかと疑っている。それに対して、プラハ・ソビェのほうは、プラハの各区の区政で活躍し実績を上げた人たちが集まって結成した政治団体だと、選挙速報で政治学者が語っていた。こちらの方が期待できるかな。

 簡単に言えば、五つの政党が5分の1ずつ議席を獲得したわけだから、与党として市政府を組織するためには3党の連合が必要になる。ここまで差が小さいと、市民民主党が第一党だから市長を出すべきだという話にはならないようで、真ん中の三つ、いずれも13議席を獲得した団体が、市民民主党とANOを排除する形で連立を組む交渉をしているようである。
 この状況に対して、ANO党首のバビシュ氏は、ANOのプラハ支部の連中があれこれやらかした結果がこの選挙で第一党の座を失うことにつながったのだから、今回はANOは与党には加わらないで、野党となるべきではないかと少し突き放したコメントを残していた。バビシュ氏は選挙期間中に、選挙の顔、選挙後の市長候補を交代させたとも言うから、プラハ支部に不満を持っているのかもしれない。

 市民民主党のほうは、せっかく勝ったのだから、市長の座を奪還したいということで、あちこちに交渉の声をかけているようだが、ここも野党に回るのは、現時点ではほぼ確実である。かつての市政の乱脈の責任を取るという意味でも、しばらく野党で、市政府に不満な人たちの支持を集めるのに撤した方が、今後のためにはいいかな。
 では、三つの党の交渉がすんなり進んでいるかというと、そんなこともなく、特に誰を市長として擁立するかでもめているようである。普通に考えれば、得票率の一番高かった海賊党の市長候補フジープ氏なのだが、プラハ・ソビェのチジンスキー氏が反対しているのかな。この人、元キリスト教民主同盟の党員で、下院議員の選挙に立候補して当選し、下院議員を務めている上に、プラハ7区の区長も務めているというから、三つ目の職として市長を狙っているのかもしれない。
 一見、これまでの国政の穢れに巻き込まれていない人たちの集まりに見えるプラハ・ソビェでさえこうなのだから、チェコの政治家というのは、何とかと一緒で一日やったら辞められないってやつなのかねえ。プラハ嫌いとしては、プラハの市政が混乱するのは、見ものとして楽しめるから、しばらく決着の付かない政治劇場を見せてもらいたいものである。
2018年10月13日14時50分。







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