海外旅行紀行・戯言日記

海外旅行紀行・戯言日記

2002.12.05
XML
テーマ: 本日の1冊(3684)
カテゴリ: Books
ドイツという国は、独語ではドイツュラント(Deutschland)、英語ではジャーマニー(Germany)、仏語ではアルマーニュ(Allemagne)と全く別の国の様に呼ばれる国ですが、どの様な経緯でそうなったのでしょうか?

1993年発行の手塚富雄著「増補 ドイツ文学案内」の序説に次のような説明がされている。

「ドイツ国」とか「ドイツ語」等における「ドイツ(Deutsch)」と言う言葉ないし意識が発生したのは8世紀末で、「ドイツ語」で書かれたドイツ文学が興った時期でもあった。有名なカール大帝が中西部ヨーロッパの主導権を取り、ローマ法王から西ローマ帝国の帝冠を受けたことから、「ドイツ(Deutsch)」と言う意識がゲルマン族に生まれたと言われている。
それまでは地中海に育ったラテン文明の勢力下にあったヨーロッパ地域に、そのような意識が、他に対して自分と言う自覚を押し出して来たのである。ドイツという言葉は、語源的には「民族の」という意味だと言われている。よその人達では無くて、自分の民族を指したのである。即ち、在来の世界に対してゲルマン族の意識独立が行われたのである。

それに対して「ゲルマン(Germanisch)」と言う言葉はどうかというと、本来の意味は今も十分には解明されていないが、兎に角これはローマ帝国の人達が、外部からこの民族に対して与えた名称であった。しかし、そこには統一的な姿も意識もなく、フランク族、ゴート族、ブルグント族等々と、多くの種族に分かれていたのである。ローマ大帝国の版図が広がるに連れ、古来の信仰や思想では到底一般大衆を押さえることが出来なくなり、キリスト教を国教とするに至る。又4世紀の末頃からゲルマン民族の大移動と言うものがあって、それが数世紀続いて、嘗てのローマ帝国の領域は、実質的にゲルマン民族の生命力で満たされる様になった。そして8世紀、カール大帝のローマ帝国皇帝の即位を契機に、フランスを中心とするラテン文明に対抗して、西欧文化圏に入り込んだのである。

ただ、ドイツは、ローマ帝国の後継者であるという意識が強すぎたため、諸王侯は世界統一の理想もしくは夢想に走りすぎて、しばしば外征に従事し、内政の上で足元を固める点では、ラテン文明圏に対して遅れを取ってしまった。これは後々までドイツが背負った宿命の一つとなってしまった。

現在ドイツ人は自分をドイツ人と呼び、イギリス人等は今もそれをGermanと言っているのは、内からと外からの掴み方を受け継いでいるのである。又、ドイツ的に対比させてゲルマン的と言う時には、カール大帝以前、キリスト教との融合以前の状態に根ざしている民族的性格を指すものと考えて間違いはない。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2005.07.12 20:30:58
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Category

カテゴリ未分類

(188)

My Town

(521)

Little Journey

(784)

Overseas US

(229)

Overseas Europe

(189)

Opinion

(1322)

Classic Music

(523)

Technology

(199)

Flower

(598)

Books

(207)

Goto Islands

(260)

Gardening

(214)

PC

(173)

Social Security

(35)

Stock

(138)

Politics

(724)

技術士

(18)

Overseas Oceania

(19)

Paintings

(72)

TV

(69)

Profile

カーク船長4761

カーク船長4761

Favorite Blog

「歴史は予言する」… New! 七詩さん

夏蝋梅、アメリカザ… New! 隠居人はせじぃさん

雲の上はいつも蒼空 蒼空0205さん
旅でのひとり言 旅行好き2002さん
Der Loewenzahn(たん… G-panさん

Comments

カーク船長4761 @ Re[1]:米国を懐かしんでスコーンを食する(05/01) maki5417さんへ イギリス発祥なのかも知…
maki5417 @ Re:米国を懐かしんでスコーンを食する(05/01) 英国が起源かと思っていました。
通りすがり@ Re:桜ヶ丘公園のキンランとギンラン(04/25) 掲載画像はギンランではなくササバギンラ…
maki5417 @ Re:ツツジ・花水木の美しい季節(04/27) こちらもハナミズキが咲き始めました。 ア…
オジン0523 @ Re:花のある生活(04/21) 奥様との思いでいいですね。 我が家でも家…

Freepage List

東京都多摩市


多摩市周辺


神代植物園


自宅周辺で良く行くお店


近くの低山


低山でも注意を


供養登山-低山トレッキング


西海国立公園


上五島日記


下五島日記


海外旅行の思い出


ホテルが見つからない


レンタカーが変調


大都会の一方通行


北米家族旅行


北米家族旅行(2)


ヒューストンの住居


アメリカは広い!


テキサス州の州花


Deep South


住み良い都市統計


パクス・アメリカーナ


キャンプ生活


カリフォルニア1号線


カナダお国自慢


温泉国立公園


化石の森国立公園


カールスバード鍾乳洞


Everglades国立公園


Great Smoky Mt.


ニュージーランド南島


珈琲が美味しくない


Kingston Flyer


南ヨーロッパ旅行


チロルでは寄り道


パンと湯はホテルで


ザルツブルクの魅力


美しい夏の行方


北ヨーロッパ旅行


夏の個人旅行は難しい


天才アーベル


Clara Haskil ?


ディヌ・リパッティ


ホルン信号


Charllote Church


ヨーゼフ・シゲティ


エミール・ギレリス


ナルシソ・イェペス


キリ・テ・カナワ


半額チケット


ブレンデル


Andras Schiff


バレンボイム


コレルリ


ヘルマン・プライ


へブラー


グレン・グールド


ラズモフスキー3番


デュ・プレ


カール・ライスター


油絵を描く楽しみ


美術館での写真


レンブラント


如意輪観音


拙いパステル画


スケッチと模写


ゲーテの詩は如何?


陶淵明の雑詩


奥の細道


ヨーロッパとは何か


魔法使いの弟子


ボードレール


杜甫


すみれ-ゲーテ


北米の国立公園


米国 国立公園


カナダ国立公園


ドイツ旅行


遅れてきた国民


プロテスタント


フランクフルトと京都


Riemenschneider


ドイツとゲルマン


ベートーベン生家


シュヴァイツァー博士


フランス旅行


星の王子さま


落葉


ボードレール


東欧旅行


幻想都市プラハ


スイス旅行


アインシュタイン


ハイジの道


シオンの城


ベネルックス三国旅行


夢の跡-ブリュージュ


英国旅行


三越のライオン


オーストラリア旅行


海外生活


JCBが使える


Globalization


レッド・ドラゴン


「大学」-宇野哲人


世界の美術館 訪問記


読書評


イタリア旅行


ポルチーニ


カナダ旅行


メキシコ旅行


インド旅行



© Rakuten Group, Inc.
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: