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27日、もうあきらめていた翻訳の仕事が突然入った。
メールで「特別プロジェクト」に参加の要請が、10月1日に来ていたのを久々に受信ボックスで10日に発見。それで、慌てて10日に「引き受けます」と返信した。
向こうは、「翻訳ソフト(Tratool)をインストールしたら、その旨お返事下されば、正式に発注します」と13日に返信してきた。それで、15日に「インストール完了しました。発注お待ちしています」と返信した。
それから、待てど暮らせど返事はなかった。
だから、「あの会社はよく『手違いでした』ってことがあるからなあ」と、もうあきらめていた。
ところが、電話で、2日前に「もう15日に正式発注しています。メールが届かなかったというのは、そちらのプロバイダの不具合でしょうから、サイトの受注ページに至急、ログインして、ファイルをダウンロードして、始めて下さい。締切は2週間後です」と連絡があった。
締切は11月10日の午後6時だった。
それまでに1万行の和文・英訳文の対訳ファイルをチェックする。となると、1日700行~720行は進めないといけない。1時間で60行進んだら、御の字なのだ。
「1日、5~6時間、お仕事の時間、確保できますか?」
電話の向こうで、担当者のやや切羽詰まった声が聞こえてくる。私は、25日頃から、Windows movie maker で、Monster Hunter の動画を撮るのに凝り出した息子の方をちらっと見やって「......できるだろうか」と心配したが、何とか、息子が寝ている時間を利用すればできるだろう。
そう感じたので、「はい、できます」などと答えてしまった。
電話の後、仕事を2週間、毎日するので、パソコンをその間、1日中とは言わないが使いたい、ということを彼に伝えると、案の定、困惑兼不服そうな答えであった。
「でも、僕、リアルな友人、今いないし......パソコンを夕食後、使うこともあるし......その時しか通信できない人だっているのに、2週間も長いよ。すごい報酬じゃないんでしょう?」
私も、息子にとって、オンライン上の友人との交流が彼の心の支えになっていることは分かっている。でも、パソコンは、彼だけの遊び道具ではないのだ。
報酬だって、パートに4,5日出た方が翻訳の2倍は入る。でも、私が必要なのは、仕事を何らかの形で継続すること(間にやっていない時期があっても)による、社会的信用なのだった。
何とか彼を説き伏せて、仕事を開始したものの、しょげた息子のため息を聞きつつ、いざ1万行に挑戦となると......
案外時間がかかる。1時間で60行なんて無理だ。
朝の9時から夕方5時までやって、やっと150行だった。もう精神的にも、肉体的にも疲労困憊。
とても無理だとあきらめた。
だから今回の仕事は、「体調不良」ということで、キャンセルしてしまった。
何より、1日に進む量の少なさ、「締切を1日でも過ぎると、いかに少ない報酬と言っても、1円も手に入らない」というプレッシャー。
7年前に眼精疲労になったのは、大学から採点の締め切りを急かされたせいであったことを考えると、無理は禁物だと悟った。
それに、1万行という量の多さに、反比例するような少額の報酬(といっても、これまでその会社で仕事をした中では、最高の額だったのだが)に、やる気が萎えてくる。
また、現在「現実の友人がおらず、学校に通えない」という日々を送る、心が不安定で揺れがちな息子がいるという時に、いきなり「パソコンを2週間仕事でやらせて」などと言ったのが、間違いだった。
「ネットの友達がいなくなる、楽しみがなくなる」と嘆く方に気持ちが落ち込むのは、中1の終わりから、ずっと家にいるから、そんな傾向が出てくるのだ。
「仕事はしていいよ」とは言ってくれたものの、「あああ、つまらない。何して過ごせばいいの、2週間......」と、魂が抜けたようになっている息子を見ながら、とても仕事はできない。
量的にも、今の私の体力では太刀打ちできないし、精神衛生的にも、ハラハラ、イライラしながら仕事をすることは、また私の神経に何らかの負荷を与えるだろう。
だから、仕事はあっさり断って、息子にパソコンは今まで通り、好きにしていいと伝えた。
これは甘やかしではなくて、彼の心の安定のためなのである。それで、彼がホッとして、私もホッとして、お互い今まで通り笑って暮らした方が、結局は平和なわけである。
仕事は今回は駄目になったが、かえってスッキリした。
それよりも、こういった不登校で不安定な子に対する私の接し方を「甘やかし過ぎ」と、何も実情を知らない他人から言われることの方が、今の私には辛いのである。
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