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2015.01.05
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カテゴリ: カテゴリ未分類
今日は『和漢三才図会』から。
『和漢三才図会(わかんさんさいずえ)』は18世紀初頭に医師であった寺島良安という人物が執筆した百科事典です。この事典の最後の105巻に「屠蘇酒」についての説明があります。

『和漢三才図会』より 屠蘇酒。
≪屠蘇酒 附白散
 本綱蘇ハ魅鬼ノ名ナリ。此ノ藥鬼爽ヲ割リ屠フル故ニ名ヅク。此レ華佗法也。元旦ニ之ヲ飲ミ、疫癘一切不正ノ氣を辟ク。造法ハ赤朮、桂心(各七銭半)防風(一両)菝葜、蜀椒、桔梗、大黄(各五銭七分)烏頭(二銭半)赤小豆(十四枚)ヲ用フ。三角ノ絳(アカ)キ嚢に之を盛リ、除夜ニ井底に懸ケ、元旦ニ取出シ酒中ニ置キテ煎スルコト數沸、家ヲ擧ゲテ東ニ向ヒ、少(ワカキ)從至リ長ケタル次第ニ之を飲ミ、藥滓ハ井中ニ還投ス。歳ゴトニ此ノ水を飲マバ、一世無病タリ。
按醫林集要月令廣義等ニ載スルアリタル所ノ藥方ハ近世ニ用ル所トハ少シ異ナレリ。
 白朮、桔梗、山椒、防風各一銭、肉桂五分、大黄二分半、小豆十四枚、韻語陽秋ニ云、或董員ニ問フ屠蘇ハ必ズ幼キヨリ取ルハ何ゾ也。少(ワカ)キ者歳ヲ得ル故ニ先ンジ、老ユル者ハ歳を失フガ故ニ後ニスト。
 春毎に けふなめ初むる 薬子は ががえつつみん 君が為とか  為秀
 天子元旦四方拝ノ後、御歯固ノ供有リテ、典藥頭ニ屠蘇酒及ビ白散ヲ献ジ、藥子ニ先ズ之ヲ甞メ試サシメ、而ルニ之ヲ奉進ス。嵯峨天皇ノ弘仁年中ニ始メテ之を行ヒ、今ハ士・庶人ニ至ルマデ之を用フ。所謂白散ハ白朮、桔梗、細辛(等分)ノ散藥ナリ。(『和漢三才図会』屠蘇酒)≫
→ 屠蘇酒 白散を付随

 『醫林集要』『月令』等に記載されている方法は、近世の方法とは異なる。近世では 白朮、桔梗、山椒、防風各一銭、肉桂五分、大黄二分半、小豆十四枚である。『韻語陽秋』には、ある人が晋の董員(トウイン)という人物に「なぜ屠蘇は年少から先に飲むのか?」と質問したところ「若い者は歳を得ていく立場にあるから先に飲み、老いた者は歳を失っていく立場にあるから後に飲む。」とのやりとりがある。
 春毎に けふなめ初むる 薬子は ががえつつみん 君が為とか  為秀
 元旦に天子が四方拝をなされた後、「歯固ノ供」があって、典藥頭に屠蘇酒と白散を献上するという。藥子が最初に嘗めてから奉進する習わしである。嵯峨天皇の御世、弘仁年間に始まり、現在では、武士や庶民の間にも広まっている。ここにいう白散とは白朮、桔梗、細辛の散薬のことである。

・・・お屠蘇の説明としては最もオーソドックスな内容であると思われます。三国志の時代の華侘が考案したものとして、素材や使い方、由来や経緯についても記されています。

四方拝。
「屠蘇酒」は、一説によると嵯峨天皇の時代、弘仁二年(811)に蘇明という唐人が伝えたのが始まりとも言われております。道教の影響の強い、元旦の宮中祭祀、四方拝も嵯峨天皇の時代に始まったことですので、唐の時代の風習がそのまま日本導入されたのだろうという推測ができます。

参照:四方拝と北斗七星。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/005172/

屠蘇の説明で、現存する最古の記録は葛洪の『肘後備急方』であろうと思われますが、これも華侘説です。ただし、たとえ、華侘が考案したものでないとしても、三世紀にはお屠蘇の原型はあったはずです。
『肘後備急方』。
『正朝屠蘇酒法、令人不病溫疫。
大黃五分、川椒五分、朮、桂、各三分、桔梗四分、烏頭一分、楔二分、七物細切、以絹囊貯之。十二月晦日正中時、懸置井中至泥、正曉拜慶前出之、正旦。取藥置酒中、屠蘇飲之、於東向、藥置井中、能迎歲、可世無此病。此華佗法、武帝有方驗中、從小至大。少隨所堪、一人飲、一家無患、飲藥三朝。』(『肘後備急方』治百病備急丸散膏諸要方 第七十二)
→正朝屠蘇酒法。疫病にかからずに済むようにする。


参照:『肘後方』とクソニンジン。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/diary/201411040000/

屠蘇。
道教とかかわりの深い節句「七草」もそうですが、お屠蘇の場合にも、宗教的な意味合いだけでなく、医療的な意味も並存しています。

当然、日本最古の医療書、『医心方』にもお屠蘇の記述はあります。
『医心方』(いしんぼう)。
『「玉葙方」云屠蘇酒治悪氣温疫方∶ 白朮 桔梗 蜀椒 桂心 大黄 烏頭 菝 防風(各二分)。』(『医心方』巻第十四 避傷寒病方 第二十五)
→『玉葙方』が云うには屠蘇酒は悪氣温疫を治す方であり、白朮、桔梗、蜀椒、桂心、大黄、烏頭、菝、防風、各二分を用いる。


http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/diary/201411300000/

朮(ジュツ・おけら)。
このお屠蘇の中で注目したいのが「朮(ジュツ・おけら/うけら)」です。朮は、中国原産で、紀元前から用いられ、現在でも使われる生薬です。

『神農本草経』。
『朮 一名山薊。味苦温、生山谷。治風寒濕痺死肌、痙、疸、止汗除熱。消食、作煎餌、久服輕身延年不飢。』(『神農本草経』上品 江戸・嘉永七年、森立之校正本より)
→ 朮(じゅつ)。またの名を山薊(さんけい)、味は苦、温。山谷に生じる。寒気や手足の痺れ、痙攣、疸を治す。汗を止め、熱を除く。食を消し、前餌を作し、久しく服用すれば身は軽くなり、飢えることなく長生きできる。

参照:道教と神農。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/diary/201411230000/
・・・『神農本草経』にも載っていますし、『抱朴子』でも代表的な「仙薬」として書かれています。

葛洪(283~343)。
『南陽文氏、說其先祖、漢末大亂、逃去山中、飢困欲死。有一人教之食朮、遂不能飢、數十年乃來還鄉裏、顏色更少、氣力勝故。自說在山中時、身輕欲跳、登高履險、歷日不極、行冰雪中、了不知寒。常見一高岩上、有數人對坐博戲者、有讀書者、俛而視文氏、因聞其相問、言此子中呼上否。其一人答言未可也。朮一名山粦、一名山精。故神藥經曰「必欲長生、常服山精。」』(『抱朴子』 仙薬)
→南陽の文氏は先祖の話として以下のような話を伝えている。後漢末の大乱の折、先祖が山中を逃げ惑い、途中で餓死寸前であったとき、ある人が、朮(おけら)の食べ方を教わり、飢え死にを免れ、數十年の後に郷里に帰ることができたという。顔色は以前にも増して若々しく、気力も以前より充実している。彼は山の中では跳びあがるほどに身が軽く、険しい道も苦にならず、氷や雪の中にいても寒さを感じなかったそうだ。文氏は、ある高い岩山の上で、数人の人々が対面して遊戯をしているのを見た。その中で讀書をしていた者が、山の上から文氏の姿を認めて、見下ろしながら仲間に「あの者(文氏)はここまで上げてよいかどうか」と聞いていた。一人が「あいつはまだ駄目だ」と答えていたそうだ。朮は別名山粦、また山精ともいう。『神藥經』によると「長生を欲するならば、かならず山精(朮)を服用するように。」とある。

お屠蘇の素材の一つである「朮」ですが、京都の八坂神社では大晦日に行われる「をけら詣り」という祭祀では、朮は火種として使われています。年末年始を挟んで消費されやすい植物ですね。

「をけら詣り」 京都・八坂神社 朝日新聞。
----(引用はじめ)------------------------------
無病息災願い「をけら詣り」 京都・八坂神社  2015年1月1日05時08分
 京都市東山区の八坂神社で31日夜、新年の無病息災を願う恒例行事「をけら詣(まい)り」があった。時折小雨が降るなか、境内の灯籠(とうろう)前ではキク科の薬草オケラを燃やした「をけら火」を求める人々が長い列を作った。 竹で編んだ吉兆縄に移した火種で雑煮を炊くと1年を健康に過ごせ、残った縄を台所に飾ると防火のお守りになるとされる。参拝者らは、授かった火が消えないよう縄をくるくる回しながら家路についていた。
 家族4人で旅行に来たという川崎市立川崎中学校2年の松本孝之君(14)は「中学生活も来年で最後。受験勉強やパソコン部での活動を精いっぱい頑張りたい」と話した。(佐藤剛志)
------------------------------(引用終わり)----

参照:無病息災願い「をけら詣り」 京都・八坂神社
http://www.asahi.com/articles/ASGD0663ZGD0PLZB005.html

参照:Wikipedia オケラ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%82%B1%E3%83%A9_(%E6%A4%8D%E7%89%A9)

八坂神社 白朮祭
http://www.yasaka-jinja.or.jp/event/okera.html
・・・八坂神社でも桃の枝を使うようです。

おそらく奈良時代くらいに、大陸から薬として渡来し、現在も日本で自生している場合もあるようです。
インドには見られない植物であり、仏教の影響もほぼ無視できるので、そういったことからも道教の立ち位置をはっきり見せてくれる薬草です。

今日はこの辺で。





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Last updated  2015.01.08 11:30:44
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