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2011.04.01
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カテゴリ: 気になる本
サウジから脱出したあと、ドーハのトランジットラウンジで飲んだくれた大使である。

そこで英語を操るアジアティックなカウンター嬢に国籍を尋ねるとフィリピンとのこと。サウジの工事現場でも、フィリピン人作業員は思いのほか信頼に足るものであったし・・・
クリスティーナ(カウンター嬢)の魅力もあり、私の中でフィリピン株は上がったのである。

図書館で野村進の「調べる技術・書く技術」という本を借りたが、タイトルが一見ハウツウ本のようではあるが、もっと深いというか面白い読み物となっていたのです。
昨日のアレクサンドラ・ハーニーに続く書籍紹介であるが、奇しくも、アジアに向かうお二人の視点が似ていなくもないのです。
違いといえば、野村進が人類学的、アレクサンドラ・ハーニーが経済的というところでしょうか。(かなり荒っぽい断定ではあるが)

前ぶりが長くなったが、韓国やフィリピンに精通したノンフィクションライターということで、野村進は個人的に要注意の作家なんですね。


「調べる技術・書く技術」野村進著、講談社現代新書、2008年刊

<偶然か意志か>p23~24
 私が大学一、二年のとき、最も愛読していたアジアの作家は、魯迅と金芝河である。魯迅は「阿Q正伝」で知られる中国革命前の作家、金芝河は韓国の軍事独裁政権を批判して死刑を宣告され獄中にあった詩人だが、この二人の作品がいまや若い世代にまったくと言ってよいほど読まれなくなった現実が、日本人のアジア観の激変を物語っている。金芝河は、韓国では何やら“オカルト・マニア”のごとくみなされているようだ。
 こうしたアジアに関する書物の輪読会を大学の友人たち4,5人と開いていたのだが、アジアに留学したのは結局、私一人きりであった。彼らと私とを分けたものは、閉塞感の違いだけだったような気がする。いまから思うと傲慢きわまりない話なのだが、私は息苦しくてたまらない日本を脱出して、アジアの「混沌」のただ中に身を投げ込んでみたかったのだ。
 フィリピンに行ったのは、大学の交換留学制度のある相手国が、アジアではフィリピンだけだったからにすぎない。交換留学生になれば、往復の航空運賃と年間50万円の滞在費が支給される。50万円は、欧米では数ヶ月しかいられない額でも、フィリピンでなら優に1年以上は過ごせる大金である。
 はっきりとした動機とは言えないが、フィリピンという国に何となく心動かされてもいた。私の留学しているあいだに、ひょっとしたら当時のマルコス独裁政権が倒れるのではないかと思ったのである。私は、絶対的な権力が崩壊する現場に立ち会いたかったのである。
 それからデビュー作の「フィリピン新人民軍従軍記」を刊行するまでの三年間は、偶然の連続だったと言ってよい。人づてに紹介してもらったマニラの下宿先が、たまたまフィリピン人作家の家であった。しかも、このフィリピン人作家が、マルコス政権に対して武装闘争を繰り広げていたフィリピン共産党の地下活動の支援者だったのである。
(中略)
「人間はある運命に出会う以前に、自分がそれを作っている」という箴言は、たぶんそのとおりなのである。


次はハウツウというか、ライター裏話です。

<技術はあとからついてくる>p25~27
 私のケースは、ノンフィクションライターになる道筋としては、かなり異例かもしれない。しかし、どのような過程を辿るにせよ、出発点はやはり自分自身なのである。
 自分は何者なのか。なぜノンフィクションを書くのか。この二点だけは、若いうちに突き詰めて考えておこう。その答えはたいてい、自分の出自や生い立ち、なかでも思春期までの体験に求められるはずだ。それを、以前は「原体験」と呼んだ。
 かっての作家には戦争や貧困、旧弊な家族制度といった“わかりやすい”原体験があった。現役の作家でも、五木寛之には朝鮮半島からの引き揚げの際、母親を失った過酷な葛藤があり、梁石日には在日朝鮮人二世としての被差別体験や一世の父親との激越な葛藤がある。
 以前、吉行淳之助は、身の周りに殺人犯がいたり、妹が娼婦をしていたりする作家のことを「サラブレッド」と呼んだが、読者の大半はそのような「サラブレッド」ではあるまい。だが、何かを書きたいなら、現在の自分を形作った根っこにあるものを、しっかりとつかまえて、よくよく噛みしめておきたい。フィクションであれ、ノンフィクションであれ、書き手が立ち返れるところはそこしかない。
 ノンフィクションを書くという仕事には、深い充足感がある反面、さまざまな“シンドさ”もつきまとう。特にプロで生きていこうとすると、自分の書きたいことを書くだけでは生活できない現実に、すぐさま直面する。そこで、やむなく意に染まぬ仕事も引き受けるはめになるのだが、そんな仕事でも専念しさえすれば案外容易に生計が成り立ってしまう。書きたいものだけでは食えない。食えるけど書きたくない。このジレンマをほとんどのノンフィクションライターが抱えている。だが、ここで易きに付くと、沖合に流される小船のように初志は遠ざかっていく。
 ほかにも、取材が立ち行かなくなったり、原稿が進捗しなかったり、発表の媒体が見つからなかったり、「一難去ってまた一難」と言いたくなるくらい“シンドさ”は押し寄せてくる。そのとき立ち返れるところがなければ、ノンフィクションを書く仕事は続けられないかもしれない。
 繰り返しになるけれど、自分とは何者なのか、なぜノンフィクションを書くのか、自分なりの、そして自分をある程度(完全に、ではなくてもいい)納得させられるだけの答えを、まず見出しておこう。ここさえしっかりしていれば、技術はあとからついてくる。

<チェックポイント>
・時代を貫く普遍性を持っているか
・未来への方向性を指し示せるか
・人間の欲望が色濃く現れているか
・テレビなどの映像メディアでは表現できないか、もしくは表現不可能に近いか
・そのテーマを聞いた第三者が身を乗り出してきたか。

ライターを気にせずに「コリアン世界の旅」という本を既に読んでいたのだが・・・・
野村進のこの本は、1997年に大宅壮一ノンフィクション賞と講談社ノンフィクション賞をダブル受賞していたんですね。

このところ、チェーンのように途切れずに、図書館で本を借りているが・・・・
乱読のようでいて、傾向が現れているようです。

ところで、 地獄のサウジレポート でサウジアラビアの修羅場を思い起こすのであるが、約40日の間、ビールが呑めなかったのが・・・堪えたのです。





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Last updated  2011.04.01 11:34:53
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