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2011.05.05
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カテゴリ: 経済
「フレンチ・パラドックス」紹介の続きです。

「フレンチ・パラドックス」榊原英資著、文芸春秋社、2010年刊
p166~168

<大切なのは長期の国家戦略>
 大切なのは目先の評価に一喜一憂しないで、一期四年に終わらない長期的な国家戦略を持って、それに沿って着実に政策を実行していくことです。
 現在の政権にまず必要なのは、「これから二期八年間で、日本をこういう国にしていく。未来の日本の姿はこういう形になる」というビジョンをしっかり示すことです。
 雇用については、十分な失業手当の制度を作っていく。
 育児についても政府が経済的な面を保障していく。
 そして教育は無料にしていく公立高校の授業料の無料化だけではなくて、将来的には大学まで全て、少なくとも国立については無償にする、と宣言する。
 OECDの2009年の報告によれば、2006年加盟各国のGDPに占める教育費の公財政支出割合は、日本は3.3%と、調査対象28ヶ国中、下から二番目となっています。加盟国の平均は4.9%で、一位はアイスランドの7.2%。デンマーク、スウェーデンなど北欧諸国が上位を占めています。日本の支出割合は1992年以降ほとんど変わらず、下位に低迷しています。
 社会保障政策は、全体のコンセプトを見直さなくてはなりません。
 これまでのように高齢者への年金と医療保険だけにとどめるのではなくて、より若い世代の問題となっている、育児と教育、雇用という分野に政府の支援の手を差しのべていく。そのことによって出生率を回復させ、少子高齢化の進展に歯止めをかけるとともに、拡大してきた社会の格差を解消していく、という方針をはっきりと掲げるべきです。
(中略)
 このようになすべき政策を積み上げていくと、どうしても大きな政府になります。これは仕方がありません。その事実をごまかそうとするのではなく、「政府は今より大きくなります。国債の発行額も一時的に増えます。しかしこれはあくまで改革の過渡期のものである」とできるかぎり情報を公開して、国民を安心させなくてはなりません。
 日本政府が国債を大量発行すれば、ギリシャのように短期的には円売り材料になる可能性はあります。
 破産寸前のアイスランドやギリシャのように、他国に買われていた国債によって追い込まれていったのと違い、自国の貯蓄によって消化されている日本の国債発行にはまったく問題がないのですが、経済の規模に対して国債の残高が大きいですから、そこだけ注目されて、格付け機関が日本国債の格付けを落としてくる可能性もあるでしょう。
 そうなるとヘッジファンド等が仕掛けて「円売り」というより、「日本売り」というムードをつくりだすかもしれません。
 私としては、それでもあえて大量発行すべきである立場です。「無駄が多くて歳出が増えているのではなく、国家モデルの変更である。フランス型国家を選択しているのだから、歳出が増えて当然なのだ」と丁寧に根気よく世界に説明していく必要があるでしょう。 中長期的な日本としての国家像のベースが固まっていけば、円売りは続かないでしょうし、円売りによって円安になれば、製造業にとってはかえって良い影響が出てくるはずです。 


p208~219

<フランスに地方の在り方を見る>
 さて、グローバリズムの時代を乗り切るために、日本ならではの強みを考え、それを活かす必要があると説いてきました。
 それは、突き詰めて考えていくと、私たちの住む身の回りの力をより強く意識していく必要があると、私は考えています。
 この点においても、フランスには一日の長があると、私は感じています。

 フランスは強い中央集権的な政府をもっていますが、一般の人がフランスに行ってまず気がつくのは、むしろ地方色が豊かであるということではないでしょうか。
 地方が地域の伝統を大事にしていて、高級レストランにしてもパリだけに集中はしていません。フランス東南部にはリヨンがあり、地中海にはマルセイユがありということで、地方にそれぞれ独自の食文化があります。
 とくに有名な制度としては、原産地統制呼称制度(AOC)と呼ばれるものがあります。ワインやチーズなどで一定の基準を満たしたものにしか、その商品の名前を許さない厳格な制度です。
 たとえば、AOCによって認められたワインでは必ずボルドーやローヌ、あるいはブルゴーニュなどと原産地が表記されています。有名な産地ではさらにどこの村、どこの畑で採れたものか、まで表記されています。
(中略)
 フランスはアメリカに次ぐ農産物輸出額世界第二位の農業国として知られていますが、農業補助金もかなり出していて、そのためもあって地方の文化が非常に豊かなのです。
 美しい田園地帯としてはプロヴァンス地方が世界的に有名ですが、「」といわれるリヨンの街も良いところだし、ブルターニュ地方なども美しい。
 ドイツも同じように格地方地方に独自の文化と伝統があります。アジアの国では人もモノも、東京、ソウル、バンコクといった首都への集中が激しいのですが、ヨーロッパは文化も豊かさも分散している印象があります。

 フランスの文化人に日本が「好きだ」という人が多いのは象徴的なことのように思えます。
 作家アンドレ・マルローなどはその典型ですし、2009年に亡くなった人類学者レヴィ・ストロースなどもたいへんな日本好きとして知られています。最近では、映画監督としても活躍する北野武さんが、フランスの最高の芸術文化勲章、コマンドゥール章を受章し、現代芸術のひとつとして個展も開かれるなど、フランスでたいへんな人気を得ています。 一方の日本人も、ワインにしても、ファッションにしても、フランス的なものは概して好きです。フランス文化へえの憧れは、おそらく両国の間にあるある種の共感性があるからなのだろうと私は思っています。
 フランスはEUを主導して自ら域内グローバリゼーションを進めながら、アメリカ流の徹底した自由主義経済には懐疑的な立場を保ち、平等性を重視する社会を創り上げました。同じように文化という点でも、安易にアメリカ文化に流されることなく、フランス的なものを大事にしています。
 フランス農水省が農事功労章という章を出しているのですが、それは農事といいながら実は、フランスの食文化に貢献した人に対する表彰を含んだものです。フランス料理の日本人シェフなども受章しているのですうが、料理人が農業に貢献したということで表彰を受けたりしているところが、いかにもフランスだと思います。
 これを日本に置き換えて考えるなら、日本の伝統、日本の文化を大切にし、世界に発信していくということになるでしょう。
 その意味で私は、私たち日本人も今、地方を大切に考える新たな「江戸時代モデル」を構築すべきときを迎えていると感じています。
 これは「鎖国せよ」という意味ではありません。
 フランスで印象的なのが、地方の農民が豊かなことだと述べましたが、江戸時代の日本も、当時としては世界的にも珍しいほど、地方文化が豊かな国だったのです。
(中略)
 日本の中央集権は明治時代に進められたものですが、それは基本的には軍事力を高めるため、富国強兵のためでした。
 明治時代になって、日本は富国強兵を唱えて、軍事国家に転換します。19世紀後半から20世紀は「戦争の世紀」であって、日本としても植民地になるのを防ぐためにやむを得ない転換だったといえます。
 一方の江戸時代の日本は治安も良く、きわめて平和的な国家でした。
(中略)
 21世紀の現在、世界はかってと比べ、ずっと平和になっています。もちろん軍事力はある程度は必要にしても、もはや20世紀のような「戦争の世紀」ではありません。
 むしろ「限られた資源のなかで、どうやって今の豊かさを維持していくか」という時代です。リサイクルとエコロジーが世界の潮流となっている今、私たち日本人は、日本文化のルーツである江戸の生活スタイルを、誇りをもって見直すべきだといえるでしょう。


やっと打ち終わりました・・・・というか打ち止めにしました。
左側のフリーページ欄に通しの「フレンチ・パラドックス」を入れておきます。





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Last updated  2011.05.05 11:43:01
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